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三章

リリアーヌの実力

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「では……始めっ」


テスト当日







教授の合図で、目の前の紙をめくる

とんでもない点数をたたき出してしまうのだけは避けたい
リリアーヌはいつも以上に集中して問題に取り組んだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




早朝、一通の手紙が彼女の元に届いていた



姉フェリアからの手紙かと思い、慎重に開封しようとしたが宛主は姉ではなく弟イアンからの手紙だと気づく

どうでもいい人物からの手紙を豪快に開封し、ビリビリに破れた手紙を取り出す



書かれた内容は…………………脅迫だった




「イアン王子。今日は、成績判定をするためのテストを受ける日だと伺っております。以前お渡しした紙に書かれているように、私は馬鹿ではありませんので……おぞましい点数を取った暁には貴方の命は私が奪いに参ります。
存知しておいて下さい。」

…詰んだ







約5時間後…

「やめ。テストを終了して下さい」

終了の合図と同時にリリアーヌは、腕を突き上げる

1教科1時間の計5時間
魔法学や天文学など基本的な教科をこなす


5時間という長時間、イアンの脅し、姉の笑顔、バナナの墓…
様々な思い出が彼女のテンションをおかしくさせた

「これでもうやることはやったわ」






リリアーヌは、全てが終わったことの愉悦にひたっていた





「おつかれさま、イアン!」

「どうだった?」

「この学園のテストの問題は、面倒くさいですからね。お疲れでしょう」



この3人は、ここに入学してから何かとリリアーヌに話しかけてくる

祖国では侍女や数少ない兄姉としか話すことがなかったため、素直に彼女は喜んでいた


「いや、疲れてない。むしろ走りに行きたい」

「ん?」

「ちょっと行ってく……」





3人の前にリリアーヌの姿はなかった


「あいつ、走るの速いんだよな」

「最後の言葉が聞こえませんでした」

「すっげー!今度競走したいな!!」




すでにこの3人も彼女の奇行に慣れ始めていた




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「…迷った」

リリアーヌは一人、見知らぬ場所にいた

(そもそも、ここ学園内?)

周りを見渡しても木々が立ち並ぶばかりで建物は建っていない

(原始人になった気分だわ)




「……何をしている」

後ろからした声に反応する







「ジークフリート…皇子」

相変わらずの無表情でこちらを見ていた


「テストは、終わったのか」

「さっき終わったところ」

「…なら、何故ここにいる?校舎からかなり離れている」

「そっちこそ、どうしてここにいるんだよ?」

「……はぁ」

リリアーヌが質問すると顔を僅かに歪め、ため息をつかれた

「寮に戻ろうとしたら、お前が見えただけだ」





ふと、リリアーヌは気づく

普通に会話してるじゃん、と

昨日までは視線すら合わなかったのに、今は顔を見るどころか会話まで成立している



…あの日とそっくりだ




「…おい」

「え?」


懐かしい思い出が蘇り、フリーズしてしまっていた


「…寮に戻らないのか」

「…いや、戻りたいんだけど?」

「…戻ればいいだろう」

「迷った」

「…はぁ」

また、ため息をつかれる

呆れたような顔をされたが結局最後は、何も言わずにリリアーヌを連れていってくれた

「いや、どこが冷酷?」

「…?」

「普通に良い奴じゃん」

「…………早く部屋に戻れ」




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過去にも、ある少年にあの皇子と同じような反応をされたことがある

まだ私が小さかった時
何も世界を知らなかった時

ーーまだ「王女」ではなかった時

何もかもが新鮮で、楽しくて、幸せだった日々

そんな、人生の最高頂だった時期に出会った不思議な子




迎えに来ると言ってくれた、あの優しい少年

彼は今、元気にしているだろうか








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テスト翌日




生徒達は掲示板に張り出されたリリアーヌの成績に見入っていた



リリアーヌも掲示板に書かれているであろう点数を見たいが前にいる人の背が高くて全く見えない


間に割り込み、かろうじて見える紙の端に注目する








(…00点?)

紙にはゼロが2つ並んでいた


(あ、これは終了のお知らせだわ)


リリアーヌがどんな武器で殺されるのだろうと考え込んでいると、肩を掴まれ生徒達と目が合う



「お、お前………」

(何?流石にバレた?)





































「賢かったの…………?」









リリアーヌの合計点数は、500点。

満点だった





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