13 / 22
7 誓いの宝玉
しおりを挟む
部屋にやってきたヴォルフは、少しばかり頬を染めながらファナの瞳をじっと見た。
恥ずかしくて目を逸らしたいのに、このチョコレート色の優しい瞳に見詰められると、雷に打たれたかのように体が動かなくなってしまう。
「ファナちゃん、昔僕があげたたてがみ借りても良い?」
そう言われてはっと我に返る。
「も、もちろん! ……はい、どうぞ」
小箱からたてがみを取り出すとヴォルフに渡す。
「ありがとう」
微笑んで受け取って、彼はズボンのポケットから全く同じような物を取り出す。
違うのは、ファナが持っていた物よりずっと長くて量も多いという所。
「元服の儀式で切ったたてがみだよ。見ててね。これをこうして――……」
ヴォルフは、それを両手で包み込んだ。
口の中で小さく呪文らしき物を唱える。
人間には発音し得ない音。
歌のような、遠吠えのような。
同時に彼の体から、蛍のような淡い光りの粒がこぼれ出る。
(綺麗……)
圧倒されて、ファナは思わず息をのんだ。
やがて呪文の詠唱が終わり、光が消えていく。
ヴォルフが両手をそっと開く。
そこにはルビーに似た赤い色の宝石が一つあった。
大きさは親指の爪ほど。
彼はそれを、上着の内ポケットから出した銀の台座にはめた。
「『誓いの宝玉』だよ。
婚約したらブローチ。結婚する時にネックレスに作り直して、つがいに渡すのが獣人の習わしなんだ」
注意深く指先で、ファナのワンピースの胸元に留める。
たてがみから魔術で作った宝石は、光に当たると深い部分がチョコレート色に輝いた。
(ヴォルフの瞳の色と同じだわ……)
「とっても綺麗……! どうもありがとう、ヴォルフ……!」
感激のあまり、言葉に詰まってしまう。
「えへへ……。どういたしまして!」
頬を染めてはにかむヴォルフ。
ファナは自分の銀の髪に触れて聞いた。
「ねえ、ヴォルフ。その魔術、私にも教えて貰える?」
「え!? ええぇ!? だっ、駄目だよ!」
第二王子はギョッとした顔をして、ぶんぶん大きく首を横に振った。
「その綺麗な髪を切っちゃうなんてっ。
ファナちゃんは、人間だからマナが無いと思うし……。同じようにはいかないよう。
それに僕、その長い髪が好きだよ」
にっこり笑って最後にフォローも欠かさない。
ファナはわずかに頬を赤らめて、
「ヴォルフがそう言ってくれるなら……」
と、素直に諦めた。
恥ずかしくて目を逸らしたいのに、このチョコレート色の優しい瞳に見詰められると、雷に打たれたかのように体が動かなくなってしまう。
「ファナちゃん、昔僕があげたたてがみ借りても良い?」
そう言われてはっと我に返る。
「も、もちろん! ……はい、どうぞ」
小箱からたてがみを取り出すとヴォルフに渡す。
「ありがとう」
微笑んで受け取って、彼はズボンのポケットから全く同じような物を取り出す。
違うのは、ファナが持っていた物よりずっと長くて量も多いという所。
「元服の儀式で切ったたてがみだよ。見ててね。これをこうして――……」
ヴォルフは、それを両手で包み込んだ。
口の中で小さく呪文らしき物を唱える。
人間には発音し得ない音。
歌のような、遠吠えのような。
同時に彼の体から、蛍のような淡い光りの粒がこぼれ出る。
(綺麗……)
圧倒されて、ファナは思わず息をのんだ。
やがて呪文の詠唱が終わり、光が消えていく。
ヴォルフが両手をそっと開く。
そこにはルビーに似た赤い色の宝石が一つあった。
大きさは親指の爪ほど。
彼はそれを、上着の内ポケットから出した銀の台座にはめた。
「『誓いの宝玉』だよ。
婚約したらブローチ。結婚する時にネックレスに作り直して、つがいに渡すのが獣人の習わしなんだ」
注意深く指先で、ファナのワンピースの胸元に留める。
たてがみから魔術で作った宝石は、光に当たると深い部分がチョコレート色に輝いた。
(ヴォルフの瞳の色と同じだわ……)
「とっても綺麗……! どうもありがとう、ヴォルフ……!」
感激のあまり、言葉に詰まってしまう。
「えへへ……。どういたしまして!」
頬を染めてはにかむヴォルフ。
ファナは自分の銀の髪に触れて聞いた。
「ねえ、ヴォルフ。その魔術、私にも教えて貰える?」
「え!? ええぇ!? だっ、駄目だよ!」
第二王子はギョッとした顔をして、ぶんぶん大きく首を横に振った。
「その綺麗な髪を切っちゃうなんてっ。
ファナちゃんは、人間だからマナが無いと思うし……。同じようにはいかないよう。
それに僕、その長い髪が好きだよ」
にっこり笑って最後にフォローも欠かさない。
ファナはわずかに頬を赤らめて、
「ヴォルフがそう言ってくれるなら……」
と、素直に諦めた。
13
あなたにおすすめの小説
愛しいあなたは竜の番
さくたろう
恋愛
前世で無惨に処刑された記憶を持つ少女フィオナは、今世では幼い頃から番である竜族の王に保護されて塔の中で大切に育てられていた。
16歳のある日、敵国の英雄ルイが塔を襲撃しにきたが、なんとフィオナは彼に一目惚れをしてしまう。フィオナを人質にするために外へと連れ出したルイも、次第に彼女に離れがたい想いを感じ始め徐々に惹かれていく。
竜人の番として育てられた少女が、竜を憎む青年と恋に落ちる物語。
※小説家になろう様に公開したものを一部省略して投稿する予定です。
※全58話、一気に更新します。ご了承ください。
政略結婚のはずでしたが、黒の公爵に「君を愛するつもりしかない」と言われました。
ちよこ
恋愛
没落寸前のエーデル伯爵家の令嬢ルイーズは、この国最大の権勢を誇る黒の公爵エルハルトと政略婚を結ぶことになった。
釣り合わない縁談に社交界はざわめいたが、ルイーズは「家同士の利害が一致した取引に過ぎない」と割り切っていた。
ところが初夜、公爵は開口一番こう言った。
「私は君を愛するつもりしかない」
政略婚のつもりでいた令嬢と、最初から決めていた公爵の、少し不器用な初夜の話。
【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――
ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。
魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。
ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。
誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。
愛のない白い結婚や契約結婚を疑っていた私が、完璧な夫と「本当の意味で」結ばれるまでのお話
ぜんだ 夕里
恋愛
しがない子爵令嬢のイヴが政略結婚で嫁いだのは、誰もが憧れる完璧な大公爵アダマン様。
しかし彼は、お世継ぎはコウノトリが運んでくると本気で信じている、とてつもなく純粋な人だった!
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く
禅
恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。
だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。
しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。
こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは……
※完結まで毎日投稿します
※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
花瀬ゆらぎ
恋愛
囚われた弟を救うため、貧民育ちのリーゼは公爵令嬢になりすまし、騎士団長シルヴィオに嫁いだ。
彼女に与えられた任務は、夫を監視すること。
結婚後、新居で待っていたのは、「氷の騎士」と恐れられる無口な夫。
しかし──戦地から帰還した彼は、別人のようにリーゼを溺愛し始めて……!?
「あなたのことを考えない日は一日たりともなかった」
次第にシルヴィオに惹かれていくリーゼ。けれど彼女は知らない。この結婚には、さらなる罠が仕掛けられていることを。
守り守られ真の夫婦を目指す恋愛ファンタジー!
※ヒロインが実家で虐げられるシリアスな展開がありますが、ヒーローによる救済・溺愛へと繋がります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる