勇者(俺)いらなくね?

弱力粉

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第三章(中)

四天王について聞き出そう!

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前回のあらすじ、店員の女の子を気絶させる。


男が目を開けた瞬間、一番に視界に入ってきたのは、大剣を背中に収めた金髪ポニーテールの少女がしゃがんで自分を見下ろしている姿だった。

後ろにはメイド服を来た黒髪の少女と、杖を持った青みがかった黒髪の少女が立っていて、同じように自分を見下ろしている。


「おお、起きたぜ!おい、あんなので伸びてんじゃねえよ、おかげでメイに小言をもらっちまったじゃねえか!」


男は胸倉を掴まれ、わけの分からない言葉を浴びせられながら激しく体を揺さぶられる。


「タイランお嬢様、落ち着いてください。リリー様達が麻薬の件を探っておられますので、この男は衛兵に引き渡し、私達は魔獣の件に集中しましょう」


すると先ほどまでの様子とは打って変わり、男の顔は急に青ざめ始める。


「お、おい待ってくれよ!麻薬の件を探ってるって言ったな、買った先を教えるから見逃してくれよ!」

「お聞かせ願いますか?」

「しゅ、手芸用品店だよ。広場の近くの、赤い看板を掲げたやたらとしゃれた店!」


すると大剣持ちの少女は不思議そうな顔を浮かべ...


「お前馬鹿だなあ、メイは見逃すだなんて一言も口にしていないのに勝手に情報を喋るだなんて」


男は自分でおかしな汗をかいた事に気付く。


「この方は衛兵に引き渡し、リリー様にはこの事を報告しておきましょう」


更に無情な言葉が、メイド服の少女から漏れる。


*********


「それで、何の用ですか?はなから私を襲う気だったのは分かってましたが... まさか、そんなに小さい子を連れているのに、体目的ですか!?」


椅子に座った店員の女の子が、目を覚ました瞬間えげつない事を口にする。


「ふざけるのはそこまでにしてください。あなただって本当は分かっているんでしょう?」

「まあまあリリー、こんなに可愛い子だ、そう勘違いされるのも無理はない」


店員の女の子はピースを顎の位置で開き、ドヤ顔を浮かべる。

いや、この面子でその勘違いは無理だろ。


「そうですね。ではじっくりと時間をかけて勘違いを解き、じっくりと時間をかけて情報を聞き出すとしましょうか」


と、リリーはカズ王子の腹の所を見て言う。その箇所は先ほどハサミで刺されたところで、赤黒い染みが徐々に広まっていっているのが分かる。


「早くスズに会いたいからそれは困るね、では単刀直入に聞くとしよう。まや... 」

「茶髪で赤いドレスを着ていて、手足に包帯を巻いた、歳は十くらいの女の子を探しています。知っていますね」


すると店員の女の子は口をあんぐりと開け、リリーを見つめる。

お、この反応は知っているっぽい。


「いやあ、あの子めちゃくちゃおっかないんですよ。勘弁してくれませんかね?」

「駄目です」


速攻で却下される。

そんな店員の女の子は、リリーをジッと見つめたかと思うと...


「喋るのはいいんですけど、運動したら少し暑くなってきました。一枚脱いでもいいですか?」

「構いませんよ、早く話してください」


店員の女の子は軽く微笑むと、羽織っていた赤のマントのような物を外す。


「ははっ」


そして意味もなくいきなり笑ったかと思うと、それを派手に空中に放り... 自身の姿をマントの裏に隠す。

に、逃げるつもりか?だが外ならまだしも、室内でそんな事をしても... 

そしてやはりリリーは早い。マントに向かってナイフを投げ、視界を開けさせる。


「ナイフを投げましたね!今日の所はとりあえず逃げさせてもらいますよ!」


バリン!

ガラスの割れる音だ。よく見ると、店員の女の子は今まさに、割れた窓ガラスへ向かおうと駆けだし始めている。

リリーのナイフで窓ガラスを割らせたのか!?店の外に逃げられたら面倒だぞ!


「ぐぎゃっ!」


と思ったが、店員の女の子が一歩踏み出した瞬間、なぜか文字通り、足元をすくわれたように思いきり後ろにすっ転ぶ。

う、受け身が取れてなかったぞ...


「は!両足に紐が結んであった事に気付かなかったのですか!走り出した瞬間にピンと張る、丁度良い長さでしたでしょう!」


すると、店員の女の子は涙目で背中をさすり...


「は、ははは... 冗談ですよう。何でも喋りますから、痛いのと酷い事はしないでくださいね?」


そんな、苦笑いを浮かべ、参ったの姿勢を見せた店員の女の子は、再び冗談をたたきながらリリーに懇願する。


*********


先ほどと同じく、店員の女の子は苦笑いを浮かべ、椅子に座っている。

なんだろう、俺がガキの頃に悪さをして、親に叱られる一歩手前の雰囲気に似ているぞ。店員の女の子の顔が、ふてくされた時の俺を思い出させるな。

そんな少しどんよりとした空気を割ったのは、弾んだカズ王子の声。


「さあかわい子ちゃん、少女の行方を教えてくれるかい?」


すると店員の女の子は一拍置くと、ピースサインを裏向きにしたものをカズ王子に見せ...


「もうおだてるのは良いですようお兄さん。それに、お兄さんからは何か、気持ちの悪いものを感じますし」


まあ確かに、妹に両腕をへし折られても引っ付くその精神は気持ち悪いな。


「い、いやだなあ気持ち悪いだなん... 」

「そんな事はどうでも良いです。次にいつ少女と会うのか、話してもらいましょうか」


静止するカズ王子。目を逸らす店員の女の子。

見兼ねたリリーは太ももからナイフを抜き取り... 


「おっとっと!急に喋りたい気分になりましたよ!」

「ではどうぞ」


おちゃらけた仕草を解除し、ため息を吐き、一拍置いて話しだす。


「街はずれのもう使われていない監視台に、明日の昼前です。そこへ行くと魔獣が待機していますので、そいつについていけば会えますよ」

「魔獣はあなたをあなたと認識して連れて行ってるのですか?」

「一度だけ私の仲間が向かった事がありましたが、その時は問題無かったようですよ。あ、そうそう、女の子にお菓子をあげたら喜んでくれたと言っていましたっけ」


魔獣か... どうやらカズ王子が対応していた、増えすぎた魔獣っていうのも、アンが引き起こしたものらしいな。


「どこに連れて行かれるのですか?」

「さあ、木ばかりで何もない森の中かもしれませんし、ツタが侵入している廃墟かもしれません」

「周囲に他の魔獣は?」

「いいえ、毎回あの一匹だけですよ」


アンと魔獣一匹だけ。ならリリー達だけで問題無くアンを捕まえられそうだな。

問題は前回みたいに逃げられることだけれど、森の中なら木が高すぎなければリリーが追えるだろうし、タイランとスズで植物をひたすら破壊していけば植物で逃げられることもないだろう。


「薬を受け取る以外には、他に何かするんですか?」

「まあ、軽く話はしますね。薬がどのくらい広まっただの、生産元を探っている人物はいないかだのと、薬絡みの話です」


するとリリーが何かを考えるように顔を俯かせ、顎に手を当てる。


「あの女の子、死霊だろうと思っていたんですが、あの子の生前に何か関わりがあったんですか?」


リリーは答えない。だが一拍置くと、何か結論を出したように頷き... 


「はい、聞きたい事はこれくらいですね。この子は衛兵に引き渡しましょう」


と、無情ではあるが必然的な答えを導き出す。

当然店員の女の子は顔を青ざめ...


「ちょ、ちょっと待ってください!情報は喋ったんですから見逃してくださいよお!」


それに対してリリーは清々しいほどに満面の笑みを浮かべ...


「駄目です」


そしてその言葉に、店員の女の子は口を大きく開け... カクっと項垂れる。
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