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◇騎士団トップの密談②
しおりを挟むそして、フェリクスたちはランドマーク公爵家の動きをマークしており、資金源の一つとなるブレイクリー伯爵家の動向も探っていた。
公爵は野心家で、自分たちの家こそがこの国の、つまり王に相応しいと思っている。そのような発言を隠すことがなくなったので、その自信はどこからくるのかと動きを監視しているところだ。
そんな捜査の中で出会ったミザリア。
魔力なしを一族に出すことは、金や魔力とわかりやすく数値化できるものを絶対と崇める者たちにとって恥となる。
使えないのならとさっさと放り出し金銭などの必要なものも渡さないということは、命あるなしも関係なくいらないと捨てられたのだろう。
「そう。保護です。俺が見かけたのは偶然だったけど、慎重かと思えば簡単に騙され躊躇いもなく髪を切って売ろうとしていた潔さよさが気になって何ていうか放っておけなかった。その上、持ち物の中に毒が入っているとなったらね」
「確かに保護が必要な状況だ。毒ねえ。それにしては中途半端な効果のものだな」
「殺したいのか殺したくないのか意図が掴めない。ただ、苦しませたかっただけなのか。どちらにしろ悪質すぎる」
完全に犯罪だ。毒まで飲ませようとしたのは、ただの私怨か特別な理由があってか。そして、誰がそれを実行したのか。
明るいとは言い難いけれど卑屈にならずによくあんなにまっすぐに育ったなと思うほど、ミザリアの周囲は随分と殺伐しているようだ。
今まで散々こき使っておいてと、フェリクスは出会った時にうっすらと残っていた頬の叩かれたような痕や、躊躇いなく髪を切ろうとしていたことを思い出しぎゅっと強く拳を握った。
怒りを閉じ込めるように、ふぅっと息を吐き出すと続ける。
「どのような理由で誰が毒を混ぜたのか次第で変わってくるけど、ひとまずはこの件が片付くまでは保護すべきだと判断した」
ブレイクリー伯爵家と関係がある者として話をしたいと引き留めたが、そうしておいて本当に良かったと毒入りの水を見た時に強く思った。
「魔力なしのまま成人を迎え、使えないとわかったから本格的に邪魔になったので追い出したか。追加で毒も入れるとは根性が腐りきっているな」
「ミザリア自身は成人とともに出て行くことはずっと決まっていたと信じていたようだし、伯爵夫人やその息子はそう扱ってきたようだけど伯爵は違う。それだけ彼女の母の能力は特殊で未練はあったから一応置いていたが正解でしょうね」
もともと伯爵家周辺を調べるためにあの町にいた。ミザリアの話を聞いて違和感を覚え、残してきた騎士に調べさせた。
「その母親とやらの特殊な能力とは?」
「それは調べても出てこない。ただ、伯爵が深くそう信じていたというのは事実のようです」
「ふーん。信じていた、ね。やはりきな臭いな」
「ムカつくほどに」
今まで以上に太いパイプを求め這い上がろうと欲深い伯爵だ。
何も根拠もなく動くとは思えない。だけど、ただ美しかったから手に入れたという可能性もあり、その辺りは全て憶測になる。
わかるのはミザリアが完全に伯爵の被害者だということだ。
生まれた娘が特別な魔力がある(と信じている)母の血を引き継いでいる可能性を考え、自分の利益となるように籍を入れ育てようとしていたようだが、大々的には公表していなかった。
おそらく、王都での魔力判定でと思っていたのだろう。
そのほうが周知の効果も出るし、魔力がなかった今となっては周囲にほとんど知られないまま生まれたはずの娘は母親と同じ病弱で伏せっていることにした。
そしてある程度時間が経てば、療養先で命を落としたとでも公表するのだろう。
並べ立てると、人でなしのクズである。ミザリアは十年間姿を見ることはあっても話すことはなかったと言っていた。
『私の管理は伯爵夫人と兄であるベンジャミンが任されていたようなので』と管理と自分で言ってしまうことのおかしささえも気づかないほど、伯爵家で使われることに慣れていた。
そして、特に伯爵夫人のほうはミザリア母娘に恨みを抱いているような印象を受けた。そうなった一因は伯爵本人であることは明確である。
自分の欲望に忠実で、厚遇したり冷遇したりと周囲を振り回した。後継者を生んで安泰のはずの伯爵夫人はミザリア母娘が現れて悔しい思いをしてきたのだろう。
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