2 / 14
嫌われているようなので出て行きます②
しおりを挟むああ、この人は私が気にくわないのだなとわかる視線に私は落胆した。その双眸を前にすぅっと心が冷えていく。
緊張しながらも、家族が増えるということに、熱心に家族になろうと誘ってくれた侯爵に似た優しい義兄を想像し会えるのを楽しみにしていたのだ。
ショックを受けながらも、それも仕方がないことかと思った。
義兄からしたら、二十二歳にもなってできた十六歳の義妹なんて愛着が沸くわけもなく、むしろ煩わしい存在でしかないのだろう。
資産目当て、贅沢したいがためについてきたと思われても仕方がない。
私自身が負担になるのは嫌だともともと離れるつもりでいたのだから、そう思われることもある意味当然だ。
しかもこれだけの美貌だと、言い寄られることが多くて今更身内だなんだと言いながら女性に言い寄られる可能性にげんなりしている可能性もある。
そんなつもりはなかったけれど呆けて見惚れてしまったし、ドキドキもしてしまった私はとても後悔し後ろめたくなった。
ちくちくと胸が痛み、ずどーんと気が重くなる。
家族に憧れもあったし、兄ができることにどこかで家族という無条件で甘えさせてくれる男性を期待はしていたのかも知れない。そのことに、冷たくされて気づくとなんだかいたたまれなかった。
それを表に出さないように、一度口を引き結び口角を上げ笑顔を作る。
「今日から二年間だけお世話になります。侯爵様ともそういうお約束なので」
冷ややかな視線を向けられることに耐えられなくて、私はこれ以上傷つかないように先に宣言した。
この関係は期間限定ですよと宣言することで相手は安心するだろうし、自分自身を奮い立たせる。
「そうか」
目を眇めその一言だけ告げると、興味はないとばかりにクリフォードは「仕事があるから」と部屋を出て行った。
それからは顔を合わせても似たような反応の繰り返しだった。
できることなら母や受け入れてくれた侯爵のためにも義兄と仲良くなりたいと思うけれど、私が距離を詰めようとするとすっと離れて冷ややかな視線を向けられる。
なので、次第に私は距離を詰めることも諦め、今では義兄の視界になるべく入らないように過ごすことに徹していた。
今日は私の十八歳の誕生日。そして、一か月後が約束の二年。
二年だけ。母と義父の優しさに応えたらもう出て行くのだと、そう言い聞かせて過ごしてきた。
そんななか、最後に義兄の瞳を思わせるエメラルドのネックレスを使用人伝で誕生日プレゼントとして渡された。
そのことに家族の情は持ってくれていたのかなとなるべく期待しないようにしながらも浮き立ち、逸る気持ちが抑えきれずすぐにお礼を伝えようなんて考えなければ良かった。
いつものように、出会った時にお礼を告げるだけにしておけばここまで後悔することもなかった。
この二年間、クリフォードはとても冷たく会えば冷ややかに見据えられながらも、どうしても出なければならない催しの衣装や作法を習う手配などさりげなくフォローしてくれた。
今日みたいに誕生日に義務的だとしても素敵なプレゼントをもらえば、義兄には複雑な感情を抱くのをやめられない。
クリフォードにとって期間限定でも家族のマナーがなっていなければ侯爵家としての恥だと思ってのそれでも、家族の義務としての形ばかりのプレゼントだったとしても、無視をされるよりはやはり嬉しかった。
だから、話しかけてもいいのかなと思ってしまった。期待してしまった。
「ああー、この二年なんだったのかなぁ」
知らなければ、もう少しいい思い出のままでこの家から出ていけたのにと思う。
現実を突きつけられ、私のぎりぎりで保たれていた糸がぷつりと切れた。
ささやかな喜びさえもただの一人よがりだと知らされ、そんな小さなことでも喜びを感じていたことに空しさを感じる。
――二年前、意地でもここに来ることを拒んでいたら……。
そう思わずにはいられない。
本気で後悔するほど、胸がざらついて今すぐにでも飛び出してしまいたい衝動に駆られる。視界に入らないでほしいらしいので、お望み通り今すぐどろんと消えられればと思う。
「はぁぁぁぁ~。もう、成人したしあと一か月待たなくてもいいよね?」
わだかまりを思い切り溜め息に乗せ私は身体を起こした。じっとしていられず部屋を見回し、必要なものをピックアップすることにする。
約束の二年まで後少しだけれど、母も侯爵家に馴染んだし私がいなくてももう大丈夫だろう。
侯爵には恩はあるし、義兄と仲良くできなかったのは申し訳ないが、合わないものは合わないのだ。
これ以上私が嫌われて、せっかく侯爵家の一員として頑張っている母の存在を認めてもらえないことのほうが困ると私は屋敷を出て行く決意をした。
286
あなたにおすすめの小説
本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。
四季
恋愛
本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。
毒味役の私がうっかり皇帝陛下の『呪い』を解いてしまった結果、異常な執着(物理)で迫られています
白桃
恋愛
「触れるな」――それが冷酷と噂される皇帝レオルの絶対の掟。
呪いにより誰にも触れられない孤独な彼に仕える毒味役のアリアは、ある日うっかりその呪いを解いてしまう。
初めて人の温もりを知った皇帝は、アリアに異常な執着を見せ始める。
「私のそばから離れるな」――物理的な距離感ゼロの溺愛(?)に戸惑うアリア。しかし、孤独な皇帝の心に触れるうち、二人の関係は思わぬ方向へ…? 呪いが繋いだ、凸凹主従(?)ラブファンタジー!
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~
星森
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。
王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。
そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。
これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。
⚠️本作はAIとの共同製作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる