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冷徹からの熱愛①
しおりを挟む帰宅後、改めてまた話し合いをすることになり、現在今まで避けていたクリフォードの部屋にいた。
今度は部屋のドアは閉められず、隙間が空けられている。
それでも放つ空気が重くて、私は慣れない場所であることもあっていつも以上にかしこまって座っていた。
「それで憂いはなくなっただろうか? 話の続きをしても?」
退路を断った人がとは思うけれど、私的にはタイラーたちに迷惑をかけなかったことは本当に良かった。
私も押し切ってまで出て行きたいと思えなくなっていたし、結果的におじさんたちにとっては良い話となったようなので、おじさんのほくほく顔に安堵もした。
父が亡くなって途方にくれた私たちに手を差し伸べてくれた人だ。
そして、おじさんとの話で発覚した父のお墓のこと。
母が侯爵のもとへと嫁ぐことを決めたのは、父のお墓を作ってくれたこともひとつの大きな要因となっているはずである。
平民は共同墓地になることが多いけれど、元貴族である母はどうしてもそれは嫌だと遺骨を持っていた。
駆け落ちするくらい好きだった相手と一緒にいたいと思う気持ちもあったし、静かに父だけを思い偲びたかったのだろう。
ただ、やはりお墓をたてるのにはお金がかかる。生活するので精一杯だったので私たちに当然そのような余裕はなかった。
侯爵と出会い、侯爵が気を配って手配してくれたととても穏やかな表情で語っていたことは今でも覚えているし、私もそこに行けば父に語りかけることができるのだと、ようやく父がゆっくり眠れるのだと思うとほっとしたし嬉しかった。
「はい。その前に、父のお墓のことをありがとうございます」
「父がしたことだ」
「ですが、クリフォードお義兄様が侯爵様に進言してくださったのですよね?」
「必要なことだと判断しただけだ」
義務的な突き放すような言い方だけど、前ほど冷たいとは思わない。
嫌われていると思っていたから敏感になっていただけで、これは通常モードのクリフォードだ。
どうも口説こうとするとおかしくなるらしい。とても残念すぎる人だ。
情緒不安定というか、正直そこものすごく引っかかっているけれど、嫌われるよりはやはりいいし何よりこの件は私たち親子にとって頭を下げるべきことである。
「それでも母はそのことで随分と肩の荷を下ろせたと思います。私もです。感謝します。ありがとうございます」
「……いや」
深く頭を下げゆっくりと戻す際に顔を見ると、ふいっと視線を逸らされた。
一瞬、今までの光景が浮かびちくっと胸が痛んだが、そこでクリフォードの耳が赤くなっているのに気づく。
ああ、なるほど。ぽんと手を打ちたいくらいの気持ちになった。
正面から見ると感情が表に出るから視線をすぐ外されていたということなのかと、耳だけ赤くなっている姿を見ながら納得する。
冷たい視線の理由がわかりさらに気持ちが解れていく。
義兄が素っ気ないのを最初は苦言していた義父が申し訳なさそうにし、母が苦笑していたのはこういうことなのかとようやく理解した。
――なんでも淡々とこなしていく人だと思っていたけれど、結構不器用なのかな?
それでも襲いそうという発言はまた不器用とは別ものだし、正直なにがどうなってそうなっているのかと気になる。
というか、その対象である私としてはそのことを無視できない。
「出てはいきません」
「なら……」
「ですが、その襲うとかやっぱり怖いですし、結婚もやはり急ですのでお受けできません」
やっぱり今まで冷たくしておいた後にそれはないだろうという気持ちが強い。
日々の気遣いや過去の感謝もあり好ましいなとは思う。顔も正直好きだし。やっぱり悪いよりは良いほうがいいし、この二年間ずっと気になっていた相手ではある。
だけど、切れた糸がまだふらふらし彷徨いなく寂しげに揺れたままだ。
なんていうのだろう。
好きだったら証明してほしい? 上から目線かもしれないけれど、二年間をしっかり埋めてからちゃんと告白してほしい。
その時に響いたら考えてもいいなというくらいの好感?
そう好きではあるけれど、今の気持ちはそんなものかもしれない。
「どうしたら俺の手を取ろうと思える?」
「そうですね。私が家族になりたかった二年、手を出さずに優しく接してくださるなら。ですが気持ちが伴うかどうかはわかりません」
ほかに好きな人がいるわけでもないし、二年というのならその二年はクリフォード以外は見ないとするならお互い様?
その間、触れられもしない女性は嫌だと気持ちが離れるならそれはそれだし。
そして何より、極端な義兄の暴走の仕方は想像がつかないので先に釘をさして暴走は遠慮したいのが一番なところ。今は落ち着いているけれど、その辺りを見極める期間は必要だと思う。
嫌われていると思った二年間もあるし、拗らせない程度に『待て』をしてもらってもいいんじゃないかなって。
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