巻き込まれモブは静かに学園を卒業したい【後日談追加】

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
46 / 63

アリスの被害者 *sideラシェル②

 
 そんなトラブルメーカーはオズワルドでなくても、考えるだけで辟易する存在だ。ラシェルはふぅっと疲れた息を吐き出した。

「ああ。オズワルドはシルヴィア嬢に被害がいかないように接触をなるべく避けてきたんだったよね。健気なのか強引なのかよくわからないな」
「大事な人ですからね。必ず守ると同時に誰にも彼女を渡したくありませんので。最優先を考えて動いてきたまでです」

 ぶれることのない意思を持って断言したオズワルドの姿を、ラシェルはじっと見つめた。
 絶対だと信じて疑わず突き進める気持ちの強さは、ラシェルには眩しくも歪にも、そして重くも感じる。しかもクラスメイトというだけで、よく知りもしない相手をそこまで思えるということが理解できなかった。
 胸の辺りがなんだかすうすうする。

「へぇー。それほど大事ってことなのだろうけれど、俺にはわからないな。とにかく、オズワルドが言うようにアリスの言動が最近ひどくなってきてるいのは確かだよね」
「今日も私といると楽しいでしょって、あなたの刺激のない日常は私がいれば大丈夫とかなんとか言ってましたね。確かに悪い意味で邪魔なので刺激にはなりえるのでしょうが」

 オズワルドがうっすらと笑みを浮かべ、その時の不愉快な気分を思い出したのかゆっくりと目を細めた。
 周囲を凍りつかせるような表情をオズワルドにさせるって、アリスの心臓は鋼でできているのではないかと思うほどずぶとい。

「どこからそんな自信が出てくるのか不思議だよねぇ。身体に触れてこようとするのも露骨だし、なぜかやけに過去を聞きたがろうとするし。その上やたらと上から目線で同情するぞ、私はわかってあげられる感を出されるし。何をしたいのか理解できない行動ばかりでついていけないよ。それにこの前もとばっちりで、女の子にアリスがいいんでしょって振られたし」

 ラシェルは右前側だけ長めに伸ばした髪の毛先をくるくる回しながら、軽く口を尖らせ大きく溜め息をついた。
 少しでも側近としてアンドリューへの被害を減らしたくてアリスに話かけるようにはしているが、彼女の相手はなかなか気を遣う。

 なにせ、言動が理解できないことが多すぎる。常識が通じない。元平民だからと言い訳が通じないレベルで意味がわからない。
 男爵の動きや光魔法保持者であることや、彼女が使う妙な魔法の正体が最近わかった魅了魔法のこともあり、様々なことを配慮しながら機嫌を取らないといけないからだ。
 むしろ、異性として意識するよりはおかしな生物として映っているので、その辺は過去のトラウマを思うとありがたいのだが、精神的にはかなりしんどい相手だ。

「ラシェルが女性との付き合いをどうするかは相手も同意している関係なのだから多くは言わないが、後悔するようなことだけはするな」
「やだなぁ。俺は楽しんでいるし相手も同じだよ? それに彼女たちから出る情報は結構役立つこともあるしね」
「……はぁ。無茶はするなよ」

 アンドリューは懐に入れた者は大切にするタイプで、あの件のこともあり気を配ってくれているのは感じる。
 女性好きと公言しているのを、まったく信じてくれていない。女性と遊ぶことを快く思っているわけではないようでこうしてときおり触れてくるが、否定も肯定もせずにそっとしておいてくれている。

 汚したいと思う衝動が抑えきれないとき、相手が寄ってくるのならもういいだろうと、あっさりと楽なほうに流されている自覚はあった。
 相手から寄ってくるのなら、少しでも殿下たちの役に立ちたい。女性に対して隙のない者がちばかりなので、自分が隙を作って情報をと思う気持ちもあった。

 それがあの時に助けてくれた彼らに報いること、自分にはこういう生き方が合っていると思っていた。
 それに後悔する日がくるとは考えていなかったし、オズワルドの言う、守りたいけれど強引な手を使ってでもどうしても手に入れたいと思う気持ちを理解する日が自分にも訪れるとは考えもしなかった。

感想 44

あなたにおすすめの小説

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

転生したら乙女ゲームのヒロインの幼馴染で溺愛されてるんだけど…(短編版)

凪ルナ
恋愛
 転生したら乙女ゲームの世界でした。 って、何、そのあるある。  しかも生まれ変わったら美少女って本当に、何、そのあるあるな設定。 美形に転生とか面倒事な予感しかしないよね。  そして、何故か私、三咲はな(みさきはな)は乙女ゲームヒロイン、真中千夏(まなかちなつ)の幼馴染になってました。  (いやいや、何で、そうなるんだよ。私は地味に生きていきたいんだよ!だから、千夏、頼むから攻略対象者引き連れて私のところに来ないで!)  と、主人公が、内心荒ぶりながらも、乙女ゲームヒロイン千夏から溺愛され、そして、攻略対象者となんだかんだで関わっちゃう話、になる予定。 ーーーーー  とりあえず短編で、高校生になってからの話だけ書いてみましたが、小学生くらいからの長編を、短編の評価、まあ、つまりはウケ次第で書いてみようかなっと考え中…  長編を書くなら、主人公のはなちゃんと千夏の出会いくらいから、はなちゃんと千夏の幼馴染(攻略対象者)との出会い、そして、はなちゃんのお兄ちゃん(イケメンだけどシスコンなので残念)とはなちゃんのイチャイチャ(これ需要あるのかな…)とか、中学生になって、はなちゃんがモテ始めて、千夏、攻略対象者な幼馴染、お兄ちゃんが焦って…とかを書きたいな、と思ってます。  もし、読んでみたい!と、思ってくれた方がいるなら、よかったら、感想とか書いてもらって、そこに書いてくれたら…壁|ω・`)チラッ

モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで

ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。 だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。 「私は観る側。恋はヒロインのもの」 そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。 筋肉とビンタと回復の日々。 それなのに―― 「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」 野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。 彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。 幼馴染ヴィルの揺れる視線。 家族の温かな歓迎。 辺境伯領と学園という“日常の戦場”。 「……好き」 「これは恋だ。もう、モブではいたくない」 守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、 現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。 これは―― モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。 ※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。 ※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。 ※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!! ※本編は完結しました。後日談をのんびり不定期でUPしてます。

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。