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アリスの被害者 *sideラシェル③
*
ようやく、アリス関係で進展する日がやってきた。
アリスの自作自演が思いがけぬ形でバレた。それを見破ったというか、指摘したのがオズワルドの想い人であるシルヴィア嬢だった。
オズワルドが待てないと様々なことを推し進めるなか、きっかけを作ったというのが彼女だというのも縁があるように思う。
どうせオズワルドから逃げられないだろうし、時が来たら諦めて受け入れるほうが彼女にとってはいいのだろうとこの頃には達観していた。
その後、アリスが魅了魔法を発動しようとしたところを、しっかりアンドリューが抑え無力化した。
これで今後の被害は抑えられることになったのはいいものの、オズワルドはさっそくとばかりにシルヴィア嬢に求婚して周囲に衝撃を与えたまま教室を抜け出すわ、癇癪を起こしたアリスは花瓶を割るわと、教室内はいつも以上に騒がしかった。
その日の放課後、しつこい女子にそろそろ潮時かと思いながら誘われるまま相手をしようかどうしようかと考えながら、アリスが片付けたと言っていた教室の様子が気になったので扉を開けた。
そこには案の上というか、片付けられていない花瓶が散らかったままで、そのそばにはいつもアリスの横に静かに佇む子爵令嬢、ルーシー・マレットがモップを持って立っていた。
いつもルーシーは何かを主張することもなく、アリスが自由行動を取るとき以外は静かに彼女の相手をしている。
アリスのお願いを嬉しそうに聞いており、アリスの唯一の友人? というか取り巻きみたいな令嬢である。
ラシェルからすれば、都合よく使われているのではないかと思うけれど、アリスといるときのルーシーはとても嬉しそうだ。なので、そういう関係もあるのかとお人好しな部類なのだろうと認知していた人物であった。
結局、面倒くさくなって誘ってきた女子をもう二度と関わることはないと帰し、見てしまっては放っておけないと片付けを手伝うことにする。
それに、普段ただただ大人しくお人好しな彼女にしては、今日は控えめながら溜め息をつき関わりたくないオーラを漂わせたりと、いつもと違う反応を見せるのが気になった。
それからの会話で、どうやらアリスが好む男性にしか発動しないと思われていた魅了魔法に、なぜか女性であるルーシーがかかっていたことを知る。
そのためか、アンドリューの魔法で解けたばかりの彼女は比較的落ちついてはいるが、少し混乱しているようだった。
驚きと申し訳なさで余計なことを口に出してしまったが、魅了魔法のことは完全に決着がつくまでは話せない。
わずかに揺れる瞳となるべく毅然であろうとすればするほどその華奢さが目に入り、ラシェルはうろたえる。
実際に被害が出ていたこともあり、アリスが美形好きということもあって、まさか女性まで魅了魔法が発動しているとは思わなかった。
しっかり見ていたらわかったかもしれないこと、気づいてあげられなかったことに罪悪感を募らせながら、誤魔化すようにいつもの自分らしくあろうと声をかけた。
「まあ、もう少しの辛抱と思ってくれたらいいよ。それよりも、マレット嬢が俺の相手する?」
ひょいっと肩を竦め笑いながら、むっと眉を寄せているルーシーを誘う。
どうにかしてあげたい気持ちもあるけれど、今は何も言えない。女性とろくな付き合いをしてこなかった自分は、こんな風にしか接することができない。
話に乗るとは思ってはいなかったけれど、怒るよりも呆れられる。
「嫌です」
きっぱりと断られ、ラシェルはふはっと笑った。
清々しい。
アリスのおまけで害のない存在であったルーシーは、意外性に溢れていた。
見た目はどこにでもいる平均的な女性といった感じであるが、意思の強そうな瞳だとか発言も含め、ラシェルが知る彼女の印象ががらりと変わり新鮮に映った。
意外と楽しいかもしれないと思いながらも、結局、不安定な彼女に下手な絡み方をしたため、ルーシーをプチ切れさせてしまった。
「知ってます。誰でもいいのではなくて、誰もが嫌なんですよね?」
「…………はっ?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
どこにでもあるこげ茶色の瞳に見据えられ、続けられる言葉に今までにない感情の渦が抑えきれない。
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