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後日談 縁談騒動③
しおりを挟む「私もごめん。勝手に判断して」
「俺がいろいろ足りなくて頼りないのは事実だから」
「そんな風に思ったことはないよ」
守りたいと思うことはあるけれど、頼りないなんて思ったことはない。
「でも、気を遣わせてしまってる。そもそも、ルーは勘違いしている。過去を押しのけるほど、かすんでしまうほど、俺はルーに夢中なんだってことをわかってない。ルーの縁談話があるって知って俺がどれだけ焦ったかわかる?」
「…………」
「ルーが好きだ。知らない間にルーが手の届かないところにいるのは嫌だ。ずっとルーを俺に縛りつけたいって思ってた」
ラシェルはそこでルーシーと向き合うように座り直すと、両手を握りこつんと額をくっつけてくる。
「そんな風に感じたことはなかったけど」
ルーシーが毎月仕事で王都に行くので定期的に会えている。それは自分たちにとって頻度が多いのか少ないのか判断はつかないけれど、束縛するような発言は今まで受けたことはなかった。
いつでもラシェルはルーシーを歓迎し、とても甘やかし、そしてものすごく求めてきた。そして、ルーシーが帰る時は爽やかに見送ってくれていた。
だから、ルーシーも自分たちの付き合いはそういうものとして、会うときに恋人らしいことをしてそれぞれの時間を過ごしていくものと思っていた。
「できるなら毎日顔を見ていたい。結婚したい」
「ほんとに?」
ラシェルの口から結婚の二文字が出てくるとは思わず、大事な話なのに思わず聞き返してしまう。
驚きでまじまじとラシェルを見つめると、生気に溢れんばかりの綺麗な瞳が自分に向けられていた。
自分に向けられる思慕と、溢れんばかりの優しさにとろりと滲む甘さ。
そしてその奥には飢えたような獰猛さも覗かせており、正直な感情が乗ったその双眸に捕われて、驚きでいっぱいであったルーシーの心に嬉しさがこみ上げてくる。
緩んだ表情になっているだろうと何とか取り繕うおうとしてみるが、それに気づいたラシェルも表情を緩めた。
ラシェルのその顔を見て、すりすりと額をすりつけるように熱っぽくささやかれて、ゆるゆると表情が崩れるのが自分でもわかった。
「今でも、こんな俺がルーに触れていいのか悩むときはある。ルーはなにもかも眩しくて、俺には勿体なくて。それでもルーを手放せなくて。縛りつけたいのにそんな資格はないって思うこともあったけど、誰かとの可能性が微塵でもあるのは嫌だ。ルーを大切にする資格を俺にください」
「ふふっ」
急にやって来てべったり張り付いて離れないと思ったら、今度は真剣な顔で求婚されている。しかも、おでこをすりすりと甘えた仕草で。それがとっても可愛くて、愛おしい。
情緒不安定というか、格好がつかないというか。でも、そんなラシェルだからルーシーは好きだと思う。
隠されないむき出しの感情をぶつけられ、なんの抵抗もなくすとんとルーシーの内側に入ってきて染みわたる。
「俺と結婚してくれますか?」
「はい。私で良ければ」
「ありがとう。絶対、大事にする。愛してる!」
喜色を前面に押し出したラシェルは、興奮した声で叫ぶと立ち上がった。そのまま引き寄せられ腰を抱かれると唇が重なる。あっという間であった。
こういうことは行動が早いなと呆れるとともに、胸の奥が軽くなっているのを意識する。
毎日顔を見ていたい、大事にしたいと言ってくれたことの嬉しさがじわじわと全身に広がっていき、多幸感に包まれる。
一緒にいたいと思ってくれていたことが嬉しい。
ずっと一緒にいられる未来を思い描いてもいいのだと、想像以上の喜びが吹き荒れた。
――嬉しい。好き。
その気持ちでいっぱいになる。喜びとともに幸せな気持ちが沈殿していく。
ルーシーは自らラシェルの背中にぎゅっとしがみつくように腕を回した。
✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.
無事、婚約です。
このカップルの場合、どの場面を書いてもラシェルよりはルーシーの方が引っ張ってくれます(ノω`●)ノ
お付き合いありがとうございます。
ラシェルがルーシーを押せ押せのときもあるのですが、大事な場面はやっぱりこうなります。
近況にも書いておりますが、モブシリーズ第一弾と第二弾、書籍化されることになりました。
温かく見守ってくださっているみな様のおかげです。ありがとうございます!
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
2023.11.5.橋本彩里/Ayari
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