巻き込まれモブは静かに学園を卒業したい【後日談追加】

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
63 / 63

後日談 縁談騒動③

しおりを挟む
 
「私もごめん。勝手に判断して」
「俺がいろいろ足りなくて頼りないのは事実だから」
「そんな風に思ったことはないよ」

 守りたいと思うことはあるけれど、頼りないなんて思ったことはない。

「でも、気を遣わせてしまってる。そもそも、ルーは勘違いしている。過去を押しのけるほど、かすんでしまうほど、俺はルーに夢中なんだってことをわかってない。ルーの縁談話があるって知って俺がどれだけ焦ったかわかる?」
「…………」
「ルーが好きだ。知らない間にルーが手の届かないところにいるのは嫌だ。ずっとルーを俺に縛りつけたいって思ってた」

 ラシェルはそこでルーシーと向き合うように座り直すと、両手を握りこつんと額をくっつけてくる。

「そんな風に感じたことはなかったけど」

 ルーシーが毎月仕事で王都に行くので定期的に会えている。それは自分たちにとって頻度が多いのか少ないのか判断はつかないけれど、束縛するような発言は今まで受けたことはなかった。
 いつでもラシェルはルーシーを歓迎し、とても甘やかし、そしてものすごく求めてきた。そして、ルーシーが帰る時は爽やかに見送ってくれていた。
 だから、ルーシーも自分たちの付き合いはそういうものとして、会うときに恋人らしいことをしてそれぞれの時間を過ごしていくものと思っていた。

「できるなら毎日顔を見ていたい。結婚したい」
「ほんとに?」

 ラシェルの口から結婚の二文字が出てくるとは思わず、大事な話なのに思わず聞き返してしまう。
 驚きでまじまじとラシェルを見つめると、生気に溢れんばかりの綺麗な瞳が自分に向けられていた。

 自分に向けられる思慕と、溢れんばかりの優しさにとろりと滲む甘さ。
 そしてその奥には飢えたような獰猛さも覗かせており、正直な感情が乗ったその双眸に捕われて、驚きでいっぱいであったルーシーの心に嬉しさがこみ上げてくる。

 緩んだ表情になっているだろうと何とか取り繕うおうとしてみるが、それに気づいたラシェルも表情を緩めた。
 ラシェルのその顔を見て、すりすりと額をすりつけるように熱っぽくささやかれて、ゆるゆると表情が崩れるのが自分でもわかった。

「今でも、こんな俺がルーに触れていいのか悩むときはある。ルーはなにもかも眩しくて、俺には勿体なくて。それでもルーを手放せなくて。縛りつけたいのにそんな資格はないって思うこともあったけど、誰かとの可能性が微塵でもあるのは嫌だ。ルーを大切にする資格を俺にください」
「ふふっ」

 急にやって来てべったり張り付いて離れないと思ったら、今度は真剣な顔で求婚されている。しかも、おでこをすりすりと甘えた仕草で。それがとっても可愛くて、愛おしい。
 情緒不安定というか、格好がつかないというか。でも、そんなラシェルだからルーシーは好きだと思う。
 隠されないむき出しの感情をぶつけられ、なんの抵抗もなくすとんとルーシーの内側に入ってきて染みわたる。

「俺と結婚してくれますか?」
「はい。私で良ければ」
「ありがとう。絶対、大事にする。愛してる!」

 喜色を前面に押し出したラシェルは、興奮した声で叫ぶと立ち上がった。そのまま引き寄せられ腰を抱かれると唇が重なる。あっという間であった。
 こういうことは行動が早いなと呆れるとともに、胸の奥が軽くなっているのを意識する。

 毎日顔を見ていたい、大事にしたいと言ってくれたことの嬉しさがじわじわと全身に広がっていき、多幸感に包まれる。
 一緒にいたいと思ってくれていたことが嬉しい。
 ずっと一緒にいられる未来を思い描いてもいいのだと、想像以上の喜びが吹き荒れた。

 ――嬉しい。好き。

 その気持ちでいっぱいになる。喜びとともに幸せな気持ちが沈殿していく。
 ルーシーは自らラシェルの背中にぎゅっとしがみつくように腕を回した。



✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.

無事、婚約です。
このカップルの場合、どの場面を書いてもラシェルよりはルーシーの方が引っ張ってくれます(ノω`●)ノ
お付き合いありがとうございます。
ラシェルがルーシーを押せ押せのときもあるのですが、大事な場面はやっぱりこうなります。

近況にも書いておりますが、モブシリーズ第一弾と第二弾、書籍化されることになりました。
温かく見守ってくださっているみな様のおかげです。ありがとうございます!
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

2023.11.5.橋本彩里/Ayari

しおりを挟む
感想 44

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(44件)

とまとさん
2023.11.06 とまとさん

🥰無事に婚約できてよかった☺️
(´。•ω(•ω•。`)ギュゥゥゥゥゥ❤

2023.11.06 橋本彩里(Ayari)

後日談にもお付き合い、ありがとうございます(*ゝω・)ノ ♡✨

解除
nobuyo1965
2023.11.05 nobuyo1965

後日談が読めると思ってませんでした。うれし〜♥お気に入りのままにしておいて良かったです。また、はじめから読み直しました。

2023.11.05 橋本彩里(Ayari)

そう言っていただけて、私も嬉しいです♡
お気に入りのままにしていただき、読み直しまで!? ありがとうございます(人∀≦+))♪

解除
botan
2023.11.04 botan

後日談、待っていました

ほんとうに
ほんとうに
ほんとうに
有難うございます❤︎❤︎❤︎╰(*´︶`*)╯

こちらの書籍化も待ってます🎵

2023.11.05 橋本彩里(Ayari)

わぁ、ありがとうございます。゚(゚ノ∀`*゚)゚。
前回も『自由気ままな』からこのシーンを気にかけていただいて、伝えいただき本当に嬉しいです♡
短いですが二人ならではの話をのぞいていただけたら♪

解除

あなたにおすすめの小説

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。