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第二部 第五章 これから
閑話 sideマリア 愛しのエリー⑥
しおりを挟む八歳になったマリアは幸運の加護持ちであることを知り、絶対エリザベスと離れるもんかとさらに気持ちを固くした。
この力は、エリザベスを守るためにあるのだとマリアは思った。
五歳の池に落ちたあの日から、エリザベスが時おり少し年相応ではない仕草をするようにはなった。
小さな愛しの妹が、まるで年上の大人のようにはぁっと溜め息とつく姿とか、すっごくちぐはぐででも可愛い。
思わずぐりぐりしたくなったが我慢していると、どうしたのっとくりくりした瞳が心配で覗き込んでくるものだから、マリアは堪らず鼻血が出てしまった。
今日も我が妹は可愛いと日々のたうち回る。
だが、うっかりいろいろやらかすのは変わらないので、マリアは心配でエリザベスのそばからできるだけ離れないようにするのに躍起になった。
夢の中では構い過ぎて、逆に去っていく姿もあったので程よくとは心がけているが、可愛らしいエリザベスの姿についつい手も足も、ついでに頬へのキッスも止められない。
ますます可愛らしいエリザベスに夢中なマリアは、今日もいそいそとエリザベスのところに向かった。
バーンといつものように扉を豪快に開けて、エリザベスのもとに駆け寄る。
「エリー」
「マリアねえさま、マナー講座の時間だったのではなかったのですか?」
「もう終わったわ」
すりすりとほっぺに顔を寄せ、離れていた時間は苦痛だったわとはぁっと溜め息をつくと、嫌そうに手で肩を押していたエリザベスは心配そうにマリアを見上げる。
エリーの上目遣い、尊い!! とマリアはちゅっちゅとぷにぷにほっぺにキスをする。
「ねえさま。いい加減にやめてください」
「だってぇ、とっても気持ちいいんだもの」
「なら、ケーキのスポンジにでもしていてください」
頬にキスされるのはもう大きくなって恥ずかしいから嫌だと言われているが、止められない。
それでもやってくるマリアに対して、ただ嫌だと頭ごなしに言うだけでなくて提案してくれるところなんて天使だ。
私のエリーは可愛くて優しいんだからと感激しながら、マリアはまた頬にキスをした。
そこで提案するものもなんだか可愛らしいもので、もうマリアはエリザベスにメロメロだった。
「どうしてスポンジ?」
「だって、甘い匂いもして気持ちよさそうでしょう?」
マリアは大興奮した。
――ああ~、可愛いっ!!!!!
そこに私への愛がある。
匂いまで気にしてくれるなんて、なんて優しくて可愛いエリーなんでしょう。
「そうね。でもエリーのほうが癒やされる~。エリーは私のオアシスなのよ。だからダメよ。たとえエリー本人が言おうとも、エリーを取り上げられたら頑張れないわ」
「わたしが言ったら、聞き入れてほしいです」
「無理よ。わたしの99、9パーセントはエリーでできてるから」
「残りの0、01パーセントは?」
「それは人間にある食欲とか、普段の生活に必要な活動よ」
何を当たり前のことをと告げると、エリザベスががくりと肩を落とした。
「割合がおかしすぎる……」
「そう? 当たり前のことよ。私にとってそれだけ何をするにもエリーがいてこそだから」
「……いつにも増して言動がおかしい。これはお疲れですね」
「ええ。だから、エリーに癒やされにきたの」
「そうですか」
ふっ、と小さく苦笑をこぼすエリザベスに、マリアはにこにこと微笑む。
こういう笑い方が少し以前と変わったけれど、困ったなと思いながらも話を聞いて愛情を受け止めてくれるエリザベスはやはり私のマイスイート。
年頃になったからか、最近ちょっと避けられている気がしないでもないけれど、嫌われていないことはわかっているから、おっせっせとエリザベスに絡みにいく。
「愛しているわ」
「はい。わたしも姉様が大好きです」
伝えると、ちょっと照れたようにふにゃりと笑うエリザベスが可愛らしい。
夢のこととエリザベスの態度を見てマリアはいつも自重はしようとはちらりと思うのだが、思うだけでエリザベスへの愛は止まらなかった。
✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.
エリザベスが大好きで、そこに心配と加護のことで余計にべったり過保護こみでマリアのシスコンが増したというお話でした♪
-NEXT 閑話 公爵家の魔法の鍋事件(←マリアがルイがいる時に言いかけてやめた、三年前の珍事件のお話)
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