高塚くんの愛はとっても重いらしい

橋本彩里(Ayari)

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1-something quite unexpected-

20高塚くんの距離が近い④

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 高塚くんにしたら、こんな額のキスでアワアワするようなお子様な自分はお呼びではないだろう。
 子どもをあやすような、そんな感じなのかもしれない。きっと。
 つまり、抱きしめられて過剰反応して、額のキスごときで固まるような精神の幼さはやめろってことかな?

 そういうことをもっと考えたらっていいたいの?

「……さっきから、離してって言ってるのだけど」

 なんか、しんどい。自分のこの思考にもうんざりする。
 だから、もういいやと事実のみを伝える。
 それにこれはずっと言ってるし、ちゃんと主張していた。

 聞いてくれないのは高塚くんだ。

「そういうことじゃないし。それにまだダメ。俺の充電が終わってない」

 まだ、って。

「な、長くないっ?」
「そう? 全然長くない。まだまだ足りないから。もう、足りなさすぎてどうしたらいいのかわからない」

 苛立ったような口調で言われ、身がすくむ。勝手に抱きしめてくるくせに、イラつくってどういうこと?
 自分の反応はそんなにおかしいのだろうか?
 だから、小言を言いたくなるとか?

 高塚くんからしたら大したことではないのだろうけど、こっちとしては男の人にこんな絡み方をされるのは初めてなのだ。
 初心者に高レベルの対応を要求する方がどうかしていると思う。
 そんな高塚くんが腹立たしくもあって、莉乃は唇を噛み締める。

「怒ってるなら離して」

 その勢いのまま、ぎゅうっと高塚くんの腰を押した。本当は胸を押したかったのだけど、体勢的に無理だった。
 小さな抵抗になってしまったが、莉乃の意思は伝わったみたいで平坦だった高塚くんの声が急にしおらしくなる。

「違う。りのごめん。怒ってるわけじゃないから」
「でも、少しイライラしてる」
「してない。少なくともりのにじゃない。ああー、ごめん。離れようとしないで。俺の問題。りのは俺と一緒にいてくれるだけでいいから」

 そうなんだ?

 本気で逃れようとしたのだけど、すぐさま閉じ込められて莉乃は抵抗をやめる。それでも、気持ちはざわついていて落ち着かないままだ。

 仲良くって一緒にいるってこと?
 なら、これでいいってことだよね?
 なのに、言いたいことって? 考えてって?

 高塚くんが何を求めているのかやっぱりわからない。

 こんなの友だちでするものじゃないっ!! って思う。少なくとも莉乃のなかではそうだ。
 でも、高塚くんの常識ではそうじゃないってことなんだろう。
 だからこそ、高塚くんにとって普通のことに意識しているって思われたくない。

 拒否するほどのことをされているわけでもなくて、嫌って思うよりは戸惑いが強いだけで、どこまで高塚くんに合わせていいのかわからない。
 だって、男の人とこうして二人で出かけること自体が初めてで、その相手は格好いいときた。
 エスコートもうまくて、特別みたいな扱いをされて、意識しないでいられる方が無理ってものだと思う。

「もう、一緒にいるだけでいいならこうする必要ないと思う」
「俺にはある」
「でも、私にはないよね。それにこういうスキンシップは友だちですることじゃないと思うし」
「…………」

 よし。ちゃんと主張できた。
 やっと通じた、かな?
 そこで高塚くんも黙るってことは、私の考えはやっぱり間違ってないんだ。……よかった。

 あまりにも高塚くんが当たり前のようにいろんな行動をするので、たまにわからなくなる。
 止める間もなく、考える間もなく、するりと誘導される。

 でも、莉乃にもちょっとした意地はある。ずっと振り回されたままになるはやっぱり嫌だ。
 しょうもない虚栄心だとわかっている。それでも、それを守ることは莉乃にとってとっても大事だ。

 だって、わからない。知らない。
 変に期待して、やっぱりってなるのは嫌だ。高塚くんがこういうことに慣れた相手だからこそ、余計に気持ちが頑なになっていく。
 引きずられて最後に辛い思いするのは自分だってわかっているのに、簡単に心を渡すことはできない。

 高塚くんのこと。
 友だちと恋人の違い。
 自分たちの認識の違い。

 少し聞けばいいことがたくさんあるのはわかってる。
 でも、高塚くんが何も言わないなら莉乃からは聞かない。
 モテる男子にそんなこと聞くのって、自意識過剰だってことぐらいはわかるから。
 この意味も、他の意味も、ただそうされたという事実だけ受け止めて、深く考えることはしない。

「俺は莉乃と仲良くなりたい」

 高塚くんはそればっかり。

「それは聞いてるよ。だから、こうして放課後一緒にいるんだよね?」
「……手強いな」

 手強いってなんだ? 知らない。
 
 いまだに抱きしめられたまま、高塚くんの匂いを胸いっぱいに感じたまま、莉乃は困ったように眉根を寄せた。


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