高塚くんの愛はとっても重いらしい

橋本彩里(Ayari)

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1-something quite unexpected-

25高塚くんが距離をつめてくる⑤

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 高塚くんの名を呼ぶ声が甘く聞こえてそれにちょっとドキドキするのは、きっと自分が恋愛ごとに慣れていないからだ。
 こうして抱きしめるのも深い意味はない。高塚くんがしたくなったからした。そのしたくなったの部分を深く考えるだけ無駄なのだ。

「りの。柔らかい」

 今度はなに?
 柔らかい発言に訝しんでいると、頬にキスをされる。

「えっ?」
「りのが可愛いから思わずしてしまった」

 かわいい? 今のやりとりのどこが? それにこの前からやたら距離が近い。ナチュラルキスをナチュラルにまたされてしまった。
 さっきから押され気味で、悔しいのかなんなのか自分でもわからない気持ちがこみ上げて勝手に瞳が潤んでくる。
 じとっと睨むと、「ううぅっ、やばっ」と高塚くんが上を仰いだと思ったら、にやっと緩んだ顔でまた莉乃の額にキスを落とした。

「高塚くんっ!!」
「これはりのが悪いっ」
「これも思わず?」
「そう思わず。なるべく今度からは言うようにするけど多分無理」
「言われても、ダメだから」

 付き合ってもいないのに。
 これは私的にはアウトだ。手を繋ぐだけでもいまだに納得しきれていないのに、唇が触れるなんて。

「したい」
「ダメ」

 したいってなんだ? なにを?
 高塚くん頭いいはずなのに主語が抜けてる。
 こっちはすっごく困っているのに、なんでそんな堂々としていられるのだろうか。

 するすると頬を撫でられ、触れる寸前でねだるように告げられる。ここで莉乃がオーケーすれば、すぐさましてくるだろう。

 へー、ほー。

 手が早いね。やっぱり手馴れてるよね。
 胡乱な目で見ると、気まずげに視線を一瞬反らせたが、口元緩んで嬉しそうな顔のままだ。ちっとも反省していない。莉乃の意図が伝わっていない。

「でも、りの見てると触れたいってなる」
「でもっていうのはなし」

 そういうことは、付き合っている男女がするものだ。だけど、それを口にするのはなぜか憚られた。
 それを口にして、なら、付き合おうって言われたとき、自分がどう思うのか。
 なら、って言われるのは違うと思うし、付き合うに対して嬉しいのか、ただ雰囲気に酔っているのかはわからないが、五割以上は了承してしまいそうって考えている。
 
 でも、実際そう言われたら、怖いっていう気持ちが強くて逃げたくなりそう。
 こんな妄想すること自体、すでに引き返しが利かないところまで来ているのかもしれないが、向けられるものを好意的に受け止めたいと思う気持ち以上に、言われない言葉というものがどうしても心を暗くする。

 どういうつもり?
 何を思って構うの?

 10文字以内のその言葉をずっと言い出せないまま、今日も高塚くんのスキンシップに絆される。
 高塚くんの態度に、自分は特別だと錯覚させられる。

 確かにこんなに構われるのは、学校では特別なのだろう。
 だったら、その特別って高塚くんの中にいくつあるのだろう。どれだけ段階があるのだろう。

 高塚くんと一緒にいるのは楽しいけど、楽しくない。なんだか、自分のこの思考がすっごく嫌だ。
 高塚くんはそんな莉乃の葛藤を気づいているのかいないのか、優しい手つきで莉乃の頬に触れてくる。

「りの。りの。りーの」

 さわさわと愛おしいんだとばかりに、長い指がゆっくりと撫でていき耳をきゅっと触る。
 こそばゆさに身体をよじると、少しでも逸らすことは許さないとばかりに両頬に大きな手を添えられ完璧に視線を合わされる。

「なに?」
「次は早めに誘うから絶対一緒に行こう?」
「…………」

 意思が強く、今日はいつもより熱を持った瞳が莉乃を射抜く。絶対、断ってくれるなと。
 耳の形を確かめるようにゆっくりと手が動いている。神経は高塚くんの手に、瞳は表情に釘付けになる。何も考えられなくなる。
 
 ぼんやりした莉乃の姿に、高塚くんの眉根がちょっぴり寄った。
 こんな考えられない状況にして、答えを促すなんて勝手だなっとどこかで考えながら彼を見た。

「断らないよね?」

 無表情以外はわりかた高塚くんの感情はわかりやすい。わかるようになってきたと思う。
 それだけ彼のことを見ているってことで、その分莉乃も彼に見られているってこと。

 感慨深いなって思っていると、莉乃が怒っていると勘違いした高塚くんがコツンっとおでこをくっつけてきた。

「えっ、怒ってる? りの、お願い。一緒に行きたい。行ってくれますか?」
 
 怒ってると思うならこのスキンシップどうにかしてよと思いながらも、変わらない近さにどこかほっとしてもいて。
 勘違いだけど、必死になって懇願してくる姿はやっぱり嬉しくて、可愛いって思って。

「わかった」

 気づけば莉乃は頷いていた。
 途端、喜色をあらわに笑顔になった高塚くんに頬を包み込まれる。
 美形の満面の笑みを目の前で浴び、莉乃はただただ戸惑う。迫力がやばい。ドクン、ドクンと今までの比ではないくらい心臓がうるさくなる。

「うわっ、なに!?」
「約束だから」

 嬉しくて仕方がないと、高塚くんのついが発動される。おでこ、まぶた、頬と降りてきた唇に思わず瞳を閉じる。
 柔らかな感触が、右に左に、中央と落ちていく。

「りの、りの」

 合間に名が呼ばれる。
 莉乃が耐えきれず、高塚くんの名を呼ぶまでそれらは続けられた。


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