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1-something quite unexpected-
30私の知らない高塚くん⑤
しおりを挟む「センさん、来てくれてありがとうございます!!」
「あざっす」
「久しぶりっすね」
と男性の声がしたと思ったら、最後に「会いたかった~」と甘ったるい女性の声がする。
柱ごしでも結構はっきり聞こえる騒がしさに、ぎょっとして思わず振り向きそうになった。
「セ~ン~。寂しかった。最近どうしてたの~? やっぱいつ見ても格好いい~」
「…………」
「今日暇なんでしょ? ならさ、私も相手してほしいな。このままホテル行こ」
「行かない。離せ」
わぁ、女性が積極的だなと思っていたら、返す男の声にんんっと固まった。ここ最近毎日聞く声。
呼ばれた名前は違うけど、人違いにしては似すぎていて、聞き慣れ過ぎていて、莉乃は思わず相手に見えないように柱にしっかり身体を隠した。それでいて声の主が気になって、聞き耳を立ててしまう。
女性の誘うような甘い声が聞こえる。
「最近、誰ともしてないって聞くよ~。ね~、いいでしょ。私、うまいよ?」
「しない。触るな」
男の端的な拒絶。圧倒的に優位性を疑わない、選ぶのは俺のほうだとばかりの高圧的な声。
こんな公衆の場で恥ずかしげもなくなされる会話。「相変わらずモテモテっすね」と男の声がするので、彼ら二人だけになったわけではないようだ。なら、なおさら莉乃にはわからない男女の関係だ。
「え~。ねえ、いいでしょ? せっかく会えると思って来たのに。最近顔出さないからずっと心配してたんだよ」
「…………」
「もう。センってば~」
「しつこい」
パシッと払われる音がする。……気まずい。後ろに人がいる可能性考えて欲しい。
今さら場所を変えようにもあからさまだし、近くに人がいたって気づくと気まずいだろうし。いや、こういう人たちは気にしないのかな。
とにかく、莉乃は相手がどうであれ気まずい。
莉乃はますます身を縮める。もうデバガメはいやなので聞かないようにと通行人へと意識を向けるが、すぐそこなので声はしっかり入ってくる。
「かなさん。その辺にして。センさん気分じゃないって」
周囲の男が女性を宥めている。
「だってー、センってすっごいって聞くし。せっかく会えたのにー。今フリーならさ、他に誰かいるんじゃなかったらさ、気分じゃないならその気にさせるから、ねっ」
「…………おい、なんで女がいるんだ?」
「その、会いたいって言われたので」
「はっ。俺は一言でもそんな話したか? 言ってないよな。何でこんな勝手なことをした?」
「すみませんっ!!」
数人が一斉に謝る声。すっごい焦っている感じが伝わって来る。センって人が怖いんだ。機嫌を損ねたくないくらい。
はぁー、めっちゃ嫌だ。
聞いてて気分良いものでもないし、なんで私はこの柱を選んだのだろう。めっちゃ気まずいんですけど。
「俺はお前らが久しぶりに遊びたいっていう話だったから、ここまで出てきた。あっちは足抜けたはずだが、そこは関係ないというからだ。言ったよな、暇じゃないって」
「わかってます。ちゃんとそっちとは関係ありません。俺らがお会いしたくて頼みました」
「はぁー、なのにこれ? 気分が悪い」
「「「すみません」」」
「とにかく、今日はもう帰れ」
「はいっ!! もうしません。かなさんももう諦めて。……センさん、本当にすみません。すみません。連れて行くんで勘弁してください」
「……はぁ。二度と勝手なことはするな。次はない」
「はい。わかってます。ありがとうございます!! かなさん、行くよ」
「あー、もうっ!! センってば」
「ほんとう、黙ってかなさん」
女性は他の男に引き剥がされて連れて行かれる。その時にこちら側を通って行ったが、美人だった。
男性三人に女性一人。男のほうは茶髪、金髪、耳のピアスは当たり前で鼻ピアスだったり腕にタトゥしている人もいる。ヤンチャな人たちという感じで、女性も髪を茶色に染めた年上の派手な感じの美女。
一番大きな男に腕を掴まれている女性は、ちろちろと名残惜しそうに莉乃の柱の背後にいるだろう男の方を見ている。
あんな美女の誘いを断るって、よっぽど後ろにいる人は男前なのか。
同性にも一目置かれているようだし、人気者なんだな。なんか、高塚くんの声に似ているから、さっきから胸がもやもやする。
知らない世界。大人な世界。
今度は背後で電話が鳴って、一度目は無視したけど二度目は面倒くさそうにして通話しだした。忙しい人だ。みんなが放っておかないっていう感じなのかな。
電話の会話まではさすがにと思って、莉乃もスマホに意識を向ける。そろそろ連絡もくるころだろう。
だけど、どうしてもそんなに大きな声ではないのに、後ろの男の声はよく通り耳に入ってくる。
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