高塚くんの愛はとっても重いらしい

橋本彩里(Ayari)

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3-Love doesn't stop-

67高塚くんを信じても②

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「ああ、りの。りのだ。りのがいる」

 なに、それ?

 感極まったように鼻を埋め、唇を落とし、まるで細胞にりのを覚えさせるようにと丁寧なじっくりとした動作に、胸が苦しくなる。
 まるで何年も離れていた恋人を求めるかのように、熱い吐息がかかり、同じように熱が伝わる身体から、ぶわっと内側から何かがあふれ出したように肌が粟立った。
 ちゅっ、ちゅっと可愛らしい音に、恥ずかしさと満たされる思いで顔に熱が溜まる。

 今までも、高塚くんの対応に精一杯と思っていたけれど、そんなの比じゃないくらいに恥ずかしい。
 信じられないくらい、甘い空気が流れている。
 勘違いではないくらい、全身で莉乃の存在を確かめようとされている。

「高塚、くん」
「りの。ちがう。ちとせ」

 幼児返りでもしたのかってくらい、可愛らしく拗ねた言い方にきゅんと胸が高鳴る。

「……千歳くん」

 じぃっと期待の籠った眼差しで見つめられおずおずと名を呼ぶと、ぷわぁーっと花が綻ぶかのような笑顔が返ってくる。
 すっごくキラキラしていて、それでいで柔らかな雰囲気がそのまま莉乃を包み込むしで、胸の奥がきゅんとまた甘く軋んだ。
 やばい。かっこいいのに可愛すぎる。

「んっ。りの。好き。……りの。りの。りの」

 また好きと言われ、何度も名を呼ばれる。
 好き好きと全身で表わされ、たまらないとばかりに頬を擦り付けて来る。まるで大きな犬みたいだなと、そういう姿は可愛いなって思わず笑ってしまうと、高塚くんの瞳が鋭くなった。

 頭から首、肩、そして正面へと顔を寄せてきて、目尻、頬へと唇を寄せその都度反応を窺い、とろんとした莉乃を見た高塚くんが唇の端へとちゅっと音を立ててキスを落とした。
 そして、またじっと見つめ今度はその横へとさらに顔を寄せてきたところで、莉乃ははっとする。
 全身で求めてくる高塚くんの態度に莉乃も流されそうになるが、ここには話し合いをしにきたのだ。

「待って」
「なんで?」

 このままではだめだと隙間に手を入れて押すと、納得いかないと言葉とともに首をかしげたが、もう一度、手に力を入れると、案外あっけなく高塚くんが身体を離した。
 ただ、離したと言っても隙間ができただけど、それだけでも莉乃の意思を聞き入れる気はあるのだとわかって、少しばかり安心する。

「ちょっと、いろいろ急すぎてっ。話、そう先に話がしたい」

 告白を信じたい。この態度も嘘だとは思えない。
 だったら、互いに好きというわけで、両思いなのだからいいのではとは思うのだけど。
 まだ圧倒的に会話が足りなくて、そこを許すには莉乃の気持ちが追いついていない。 
 このまま信用してもいいとまではまだ思えなくて、どうしても形がはっきりするまでは流されてしまえない。

 こんな自分は面倒くさいかもしれない。
 でも、そこをあやふやにしては、付き合えない。このままいい雰囲気に流されてしまったら、またこのことで悩んでしまう。

 高塚くんと莉乃では、どうしても恋愛偏差値の差は開いている。
 初心者の莉乃に上級者を相手にはわからないことだらけで、相手の一手が早いと余計に慎重にならざるを得ない。好きだと自覚したからこそ、いろんなことが気になって臆病になってしまう。

 確かめずには、はっきりさせずには、前に進めない。
 相手を信用するには足りなくて、もしこの先お付き合いするのなら、そこははっきりさせておきたい。

「話。そう…、そうだね。話はしたい。けど、ちょっと待って。今、りのから離れられる気がしない」
「……えっ?」

 なのに、わけのわからないことを言われて。
 すりすりと顔を預けてくる。まるで飼い主から離れたくない犬みたいに、くっついてくる。

「あー、情けないけど、昨夜のことが響いてるみたいで一度触れたら身体が勝手にりのを求めてしまう的な。こうして触れていてもりのが逃げないし、このままいたいっていうか。実感したいっていうか」

 一体、何を言っているのだろうか。
 多少強引だけど、それさえも魅力的なほど女性の扱いに長けスマートだと思っていた高塚くんはどこにいった?
 強引さをそのままに、今まで何を考えているのかわからないと思っていた彼の本音は、想像をしたことがなかったけれどその外見から似つかわしくないほど雄弁で、そして熱烈だった。

「……ああ、かっこわるっ。りのを前にするとうまくいかないな。……こんな俺はいや?」

 心配そうに顔を覗き込まれ、反射的に首を振る。
 驚いてはいるし、ものすごく戸惑ってはいるが、それが莉乃への好意だというのなら、莉乃が言ったことから考えて伝えようとしてくれているのなら、嫌だと思うはずがない。

「いやじゃないけど」

 むしろ、嬉しくて。それを表現するには、戸惑いが大きいだけ。

「そう。よかった。自分でも想定外だけど無理そうだから、許してほしい。不足を補充しないと落ち着いて話せなさそうだから、このままくっついて話すでいい?」

 いや、よくない。
 主に自分の心臓がもたない気がする。

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