68 / 81
3-Love doesn't stop-
67高塚くんを信じても②
しおりを挟む「ああ、りの。りのだ。りのがいる」
なに、それ?
感極まったように鼻を埋め、唇を落とし、まるで細胞にりのを覚えさせるようにと丁寧なじっくりとした動作に、胸が苦しくなる。
まるで何年も離れていた恋人を求めるかのように、熱い吐息がかかり、同じように熱が伝わる身体から、ぶわっと内側から何かがあふれ出したように肌が粟立った。
ちゅっ、ちゅっと可愛らしい音に、恥ずかしさと満たされる思いで顔に熱が溜まる。
今までも、高塚くんの対応に精一杯と思っていたけれど、そんなの比じゃないくらいに恥ずかしい。
信じられないくらい、甘い空気が流れている。
勘違いではないくらい、全身で莉乃の存在を確かめようとされている。
「高塚、くん」
「りの。ちがう。ちとせ」
幼児返りでもしたのかってくらい、可愛らしく拗ねた言い方にきゅんと胸が高鳴る。
「……千歳くん」
じぃっと期待の籠った眼差しで見つめられおずおずと名を呼ぶと、ぷわぁーっと花が綻ぶかのような笑顔が返ってくる。
すっごくキラキラしていて、それでいで柔らかな雰囲気がそのまま莉乃を包み込むしで、胸の奥がきゅんとまた甘く軋んだ。
やばい。かっこいいのに可愛すぎる。
「んっ。りの。好き。……りの。りの。りの」
また好きと言われ、何度も名を呼ばれる。
好き好きと全身で表わされ、たまらないとばかりに頬を擦り付けて来る。まるで大きな犬みたいだなと、そういう姿は可愛いなって思わず笑ってしまうと、高塚くんの瞳が鋭くなった。
頭から首、肩、そして正面へと顔を寄せてきて、目尻、頬へと唇を寄せその都度反応を窺い、とろんとした莉乃を見た高塚くんが唇の端へとちゅっと音を立ててキスを落とした。
そして、またじっと見つめ今度はその横へとさらに顔を寄せてきたところで、莉乃ははっとする。
全身で求めてくる高塚くんの態度に莉乃も流されそうになるが、ここには話し合いをしにきたのだ。
「待って」
「なんで?」
このままではだめだと隙間に手を入れて押すと、納得いかないと言葉とともに首をかしげたが、もう一度、手に力を入れると、案外あっけなく高塚くんが身体を離した。
ただ、離したと言っても隙間ができただけど、それだけでも莉乃の意思を聞き入れる気はあるのだとわかって、少しばかり安心する。
「ちょっと、いろいろ急すぎてっ。話、そう先に話がしたい」
告白を信じたい。この態度も嘘だとは思えない。
だったら、互いに好きというわけで、両思いなのだからいいのではとは思うのだけど。
まだ圧倒的に会話が足りなくて、唇を許すには莉乃の気持ちが追いついていない。
このまま信用してもいいとまではまだ思えなくて、どうしても形がはっきりするまでは流されてしまえない。
こんな自分は面倒くさいかもしれない。
でも、そこをあやふやにしては、付き合えない。このままいい雰囲気に流されてしまったら、またこのことで悩んでしまう。
高塚くんと莉乃では、どうしても恋愛偏差値の差は開いている。
初心者の莉乃に上級者を相手にはわからないことだらけで、相手の一手が早いと余計に慎重にならざるを得ない。好きだと自覚したからこそ、いろんなことが気になって臆病になってしまう。
確かめずには、はっきりさせずには、前に進めない。
相手を信用するには足りなくて、もしこの先お付き合いするのなら、そこははっきりさせておきたい。
「話。そう…、そうだね。話はしたい。けど、ちょっと待って。今、りのから離れられる気がしない」
「……えっ?」
なのに、わけのわからないことを言われて。
すりすりと顔を預けてくる。まるで飼い主から離れたくない犬みたいに、くっついてくる。
「あー、情けないけど、昨夜のことが響いてるみたいで一度触れたら身体が勝手にりのを求めてしまう的な。こうして触れていてもりのが逃げないし、このままいたいっていうか。実感したいっていうか」
一体、何を言っているのだろうか。
多少強引だけど、それさえも魅力的なほど女性の扱いに長けスマートだと思っていた高塚くんはどこにいった?
強引さをそのままに、今まで何を考えているのかわからないと思っていた彼の本音は、想像をしたことがなかったけれどその外見から似つかわしくないほど雄弁で、そして熱烈だった。
「……ああ、かっこわるっ。りのを前にするとうまくいかないな。……こんな俺はいや?」
心配そうに顔を覗き込まれ、反射的に首を振る。
驚いてはいるし、ものすごく戸惑ってはいるが、それが莉乃への好意だというのなら、莉乃が言ったことから考えて伝えようとしてくれているのなら、嫌だと思うはずがない。
「いやじゃないけど」
むしろ、嬉しくて。それを表現するには、戸惑いが大きいだけ。
「そう。よかった。自分でも想定外だけど無理そうだから、許してほしい。不足を補充しないと落ち着いて話せなさそうだから、このままくっついて話すでいい?」
いや、よくない。
主に自分の心臓がもたない気がする。
10
あなたにおすすめの小説
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。
待鳥園子
恋愛
オブライエン侯爵令嬢レティシアは城中にある洋服箪笥の中で、悲しみに暮れて隠れるように泣いていた。
箪笥の扉をいきなり開けたのは、冒険者のパーティの三人。彼らはレティシアが自分たちの『セーブポイント』に設定されているため、自分たちがSSランクへ昇級するまでは夜に一度会いに行きたいと頼む。
落ち込むしかない状況の気晴らしにと、戸惑いながらも彼らの要望を受け入れることにしたレティシアは、やがて三人の中の一人で心優しい聖騎士イーサンに惹かれるようになる。
侯爵家の血を繋ぐためには冒険者の彼とは結婚出来ないために遠ざけて諦めようとすると、イーサンはレティシアへの執着心を剥き出しにするようになって!?
幼い頃から幸が薄い人生を歩んできた貴族令嬢が、スパダリ過ぎる聖騎士に溺愛されて幸せになる話。
※完結まで毎日投稿です。
【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~
遠野エン
恋愛
王太子から理不尽な婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢ルティア。聖女であるライバルの策略で「悪女」の烙印を押され、すべてを奪われた彼女が追放された先は荒れ果てた「廃墟の街」。人生のどん底――かと思いきや、ルティアは不敵に微笑んだ。
「問題が山積み? つまり、改善の余地(チャンス)しかありませんわ!」
彼女には前世で凄腕【経営コンサルタント】だった知識が眠っていた。
瓦礫を資材に変えてインフラ整備、ゴロツキたちを警備隊として雇用、嫌われ者のキノコや雑草(?)を名物料理「キノコスープ」や「うどん」に変えて大ヒット!
彼女の手腕によって、死んだ街は瞬く間に大陸随一の活気あふれる自由交易都市へと変貌を遂げる!
その姿に、当初彼女を蔑んでいた冷酷伯爵シオンの心も次第に溶かされていき…。
一方、ルティアを追放した王国は経済が破綻し、崩壊寸前。焦った元婚約者の王太子がやってくるが、幸せな市民と最愛の伯爵に守られた彼女にもう死角なんてない――――。
知恵と才覚で運命を切り拓く、痛快逆転サクセス&シンデレラストーリー、ここに開幕!
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】
藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。
そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。
記憶を抱えたまま、幼い頃に――。
どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、
結末は変わらない。
何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。
それでも私は今日も微笑む。
過去を知るのは、私だけ。
もう一度、大切な人たちと過ごすために。
もう一度、恋をするために。
「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」
十一度目の人生。
これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)
元大魔導師、前世の教え子と歳の差婚をする 〜歳上になった元教え子が私への初恋を拗らせていた〜
岡崎マサムネ
恋愛
アイシャがかつて赤の大魔導師と呼ばれていた前世を思い出したのは、結婚式の当日だった。
まだ6歳ながら、神託に従い結婚することになったアイシャ。その結婚相手は、当代の大魔導師でありながら禁術に手を出して謹慎中の男、ノア。
彼は前世のアイシャの教え子でもあったのだが、どうやら初恋を拗らせまくって禁忌の蘇生術にまで手を出したようで…?
え? 生き返らせようとしたのは前世の私?
これは前世がバレたら、マズいことになるのでは……?
元教え子を更生させようと奮闘するちょっぴりズレた少女アイシャと、初恋相手をもはや神格化し始めた執着男ノアとの、歳の差あり、ほのぼのありのファンタジーラブコメ!
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる