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3-Love doesn't stop-
73止まらない高塚くん①
覆いかぶさるようにすっぽりと高塚くんに包まれて、りのはばくばくする心臓を持て余していた。
「ほら、りの」
コップにご丁寧にストローまで刺して、それを口元に持ってこられる。
横から顔を覗き込むように見つめられ、その口角はずっと嬉しそうに上がっているのに対して、莉乃は困ったように眉根を下げた。
「自分で飲めるから」
「でも、りのの手は動かせないでしょ?」
「だったら、離れてくれたら」
さっきからずっとこの調子。何度、離れる、離れないのやりとりをしたことか。
高塚くんが離れられなかった理由はわかった。そこまで追い込んでしまった責任も感じてはいる。
でも、ある程度は誤解も解けたし、一緒にいるって言ったし、精神的にも落ち着いていいころだと思う。
なのに、飲み物を出すときはしぶしぶ離れたけど、戻ってきた高塚くんにまたぴたっとくっつかれ、この家に来て高塚くんと離れていた時間は1分にみたないってどんな状況か。
高塚くんに背後から腕まで閉じ込めるように回された手のせいで飲めないのは事実ではあるのだが、それは離してくれたらいい話で当初のやりとりに戻る。
「だーめ。まだりのを堪能できてない」
「……堪能って」
「まあ、とにかく喉乾いたでしょ? 飲んで」
つんつんとストローで唇を押され、今までの流れから譲らないのだろうなと早々に諦め、莉乃は仕方なく唇を開いた。
すかさず差し込まれたストローを口に挟み吸い込むと、爽やかなレモンの味が広がり、一口飲めば喉がからからだったことに気づく。あっという間に半分ほど飲んでしまった。
「……おいしっ」
ほっと息をついている間に、莉乃の飲みかけを当たり前のように飲む高塚くん。
高塚くんも喉が渇いていたのか、じゅっと音を立てて最後まで飲み終わると、コップを置いてまた両手でホールドしてきた。
「良かった。で、話の続きなのだけど」
「続き?」
「そう。言ったと思うけど俺にはりのだけだから、好きとかで表せないくらいそれでは足りないくらいだけど、そういうことだから。言葉にしたからにはもう抑えきれないし、りのを逃がすつもりもないから覚悟して」
なんだか、好きだと宣言されてから糖度が増しになって、隠さなくなった高塚くんは甘いを通り越して重い。
全力で矢印を向けられ、莉乃はこくりと息を飲んだ。
「それって、」
どう言ったらいいのだろうか。好かれていることはわかったのだけど、その後はどうするとかわからない。
逃がさないと言われたからにはそういうことだと思うのだけど、まだこちらから好きも言っていないしやっぱり恋愛初心者にはハードルが高くて、ここまで話したら普通はどう捉えてどのような返答をするのが正解なのか。
恋愛ドラマでも本でも、付き合おうっと言ってから必ずしもお付き合いがスタートするものでもなかった。
両思いだとわかって自然に付き合う形だったり、身体から始まる関係だとか、熟練者だと態度と日常でそうあるものとしていたりとか。両思いでも付き合えない話があったりとか、もういろいろだ。
そういうものかと読んでいたけれど、実際自分が察せれるかと言われれば、自分の気持ちで精一杯なのに相手の気持ちまで推測するなんて高度すぎて無理だ。
また、うやむやになるのかな。
それは嫌だしとか考えていると、両手を脇の下に差し入れられ軽々と莉乃を抱き上げた高塚くんに方向転換をされる。
「ぅわっ」
「りの」
ひょいっとあまりにも簡単に持ち上げられたので、思わず声が出た。
そんなに見た目がっちりしているように見えないのに、力強さに男の人なんだなと思う。
高塚くんの膝の上に座らされ、これはさすがにやばいのではなかろうかと足が開く形になってぴらりと広がるスカートが気になっていると、真剣な声で名を呼ばれ莉乃はそろそろと顔を上げた。
それでも意識はスカートの方。
下着が見えないだろうかとか、すでに太ももとか見えてるし、座っている位置とか生足が直接高塚くんのズボンの生地に当たっている部分もある。
「これはさすがに……」
くっついていなければならないのなら、せめて元の形に戻してもらおうとして、口をつぐんだ。
「りの」
愛おしげに名を呼ばれ、そっと指先で頬に触れられる。
その指は少し震えている。莉乃が逃げないか確認するように、すすすっと皮膚を触れるか触れないか程度のそれに、慣れていたとしても高塚くんも緊張しているのだと思うと、ふと肩の力が抜けた。
「千歳くん」
大丈夫だよ、逃げないよ、とそっと自ら顔をすりっと寄せる。自らの意思でここにいることを示したくなった。
あれこれ考えずに、気持ちのままに向き合って受け入れたかった。そうすることが正解だと思え、じっと高塚くんの次の動作を待つ。
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