高塚くんの愛はとっても重いらしい

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
74 / 81
3-Love doesn't stop-

73止まらない高塚くん①

 
 覆いかぶさるようにすっぽりと高塚くんに包まれて、りのはばくばくする心臓を持て余していた。

「ほら、りの」

 コップにご丁寧にストローまで刺して、それを口元に持ってこられる。
 横から顔を覗き込むように見つめられ、その口角はずっと嬉しそうに上がっているのに対して、莉乃は困ったように眉根を下げた。

「自分で飲めるから」
「でも、りのの手は動かせないでしょ?」
「だったら、離れてくれたら」

 さっきからずっとこの調子。何度、離れる、離れないのやりとりをしたことか。
 高塚くんが離れられなかった理由はわかった。そこまで追い込んでしまった責任も感じてはいる。
 でも、ある程度は誤解も解けたし、一緒にいるって言ったし、精神的にも落ち着いていいころだと思う。

 なのに、飲み物を出すときはしぶしぶ離れたけど、戻ってきた高塚くんにまたぴたっとくっつかれ、この家に来て高塚くんと離れていた時間は1分にみたないってどんな状況か。

 高塚くんに背後から腕まで閉じ込めるように回された手のせいで飲めないのは事実ではあるのだが、それは離してくれたらいい話で当初のやりとりに戻る。

「だーめ。まだりのを堪能できてない」
「……堪能って」
「まあ、とにかく喉乾いたでしょ? 飲んで」

 つんつんとストローで唇を押され、今までの流れから譲らないのだろうなと早々に諦め、莉乃は仕方なく唇を開いた。
 すかさず差し込まれたストローを口に挟み吸い込むと、爽やかなレモンの味が広がり、一口飲めば喉がからからだったことに気づく。あっという間に半分ほど飲んでしまった。
 
「……おいしっ」

 ほっと息をついている間に、莉乃の飲みかけを当たり前のように飲む高塚くん。
 高塚くんも喉が渇いていたのか、じゅっと音を立てて最後まで飲み終わると、コップを置いてまた両手でホールドしてきた。

「良かった。で、話の続きなのだけど」
「続き?」
「そう。言ったと思うけど俺にはりのだけだから、好きとかで表せないくらいそれでは足りないくらいだけど、そういうことだから。言葉にしたからにはもう抑えきれないし、りのを逃がすつもりもないから覚悟して」

 なんだか、好きだと宣言されてから糖度が増しになって、隠さなくなった高塚くんは甘いを通り越して重い。
 全力で矢印を向けられ、莉乃はこくりと息を飲んだ。

「それって、」

 どう言ったらいいのだろうか。好かれていることはわかったのだけど、その後はどうするとかわからない。
 逃がさないと言われたからにはそういうことだと思うのだけど、まだこちらから好きも言っていないしやっぱり恋愛初心者にはハードルが高くて、ここまで話したら普通はどう捉えてどのような返答をするのが正解なのか。

 恋愛ドラマでも本でも、付き合おうっと言ってから必ずしもお付き合いがスタートするものでもなかった。
 両思いだとわかって自然に付き合う形だったり、身体から始まる関係だとか、熟練者だと態度と日常でそうあるものとしていたりとか。両思いでも付き合えない話があったりとか、もういろいろだ。
 そういうものかと読んでいたけれど、実際自分が察せれるかと言われれば、自分の気持ちで精一杯なのに相手の気持ちまで推測するなんて高度すぎて無理だ。
 
 また、うやむやになるのかな。
 それは嫌だしとか考えていると、両手を脇の下に差し入れられ軽々と莉乃を抱き上げた高塚くんに方向転換をされる。

「ぅわっ」
「りの」

 ひょいっとあまりにも簡単に持ち上げられたので、思わず声が出た。
 そんなに見た目がっちりしているように見えないのに、力強さに男の人なんだなと思う。

 高塚くんの膝の上に座らされ、これはさすがにやばいのではなかろうかと足が開く形になってぴらりと広がるスカートが気になっていると、真剣な声で名を呼ばれ莉乃はそろそろと顔を上げた。
 それでも意識はスカートの方。
 下着が見えないだろうかとか、すでに太ももとか見えてるし、座っている位置とか生足が直接高塚くんのズボンの生地に当たっている部分もある。

「これはさすがに……」

 くっついていなければならないのなら、せめて元の形に戻してもらおうとして、口をつぐんだ。

「りの」

 愛おしげに名を呼ばれ、そっと指先で頬に触れられる。
 その指は少し震えている。莉乃が逃げないか確認するように、すすすっと皮膚を触れるか触れないか程度のそれに、慣れていたとしても高塚くんも緊張しているのだと思うと、ふと肩の力が抜けた。

「千歳くん」

 大丈夫だよ、逃げないよ、とそっと自ら顔をすりっと寄せる。自らの意思でここにいることを示したくなった。
 あれこれ考えずに、気持ちのままに向き合って受け入れたかった。そうすることが正解だと思え、じっと高塚くんの次の動作を待つ。 

感想 9

あなたにおすすめの小説

《完結》王太子妃、毒薬飲まされ人生変わりました。

ぜらちん黒糖
恋愛
【第一章】ヘレンはトムス王太子と結婚して王太子妃となった。だが毒入りワインを誰かに飲まされ意識不明になってしまう。  意識不明の中、幽体離脱をして幽霊となりメイドのマリーに憑依して犯人を探し始める。 【第二章】ローズの息子ゼオドアを軸に物語は進む。 【第三章】ローズの父を軸に話が進む。 【第四章】マラオとマリーの恋愛を軸に話が進んでいきます。 そして第五章よりもうひとりの主役が登場します。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

悪役令嬢は二度婚約を破棄される

くきの助
恋愛
「エリザベス=ルトフェルト=ビバリースカイ!!お前との婚約を破棄する!」 学園の卒業パーティで高らかに宣言したのはアウリス=ヴィ=バールキャピタル  この国の第一王子であり、私エリザベス公爵令嬢の婚約者である。 「ここにいるジョージィ男爵令嬢に対する暴言や嫌がらせ!もはや看過できん!」 と言いながら横にいるピンクブロンドの髪にピンクアイのかわいらしい女性を抱き寄せた。 うーん、何度考えても身に覚えがない罪ばかりだわねぇ。 王子の命令で北の辺境伯に嫁ぐことになるも、 北の大地でもエリザベスの悪役令嬢っぷりは噂になっており‥‥

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

【完結】そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして

Rohdea
恋愛
──ある日、婚約者が記憶喪失になりました。 伯爵令嬢のアリーチェには、幼い頃からの想い人でもある婚約者のエドワードがいる。 幼馴染でもある彼は、ある日を境に無口で無愛想な人に変わってしまっていた。 素っ気無い態度を取られても一途にエドワードを想ってきたアリーチェだったけど、 ある日、つい心にも無い言葉……婚約破棄を口走ってしまう。 だけど、その事を謝る前にエドワードが事故にあってしまい、目を覚ました彼はこれまでの記憶を全て失っていた。 記憶を失ったエドワードは、まるで昔の彼に戻ったかのように優しく、 また婚約者のアリーチェを一途に愛してくれるようになったけど──…… そしてある日、一人の女性がエドワードを訪ねて来る。 ※婚約者をざまぁする話ではありません ※2022.1.1 “謎の女”が登場したのでタグ追加しました

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。