「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
12 / 23

見合い③

しおりを挟む
 
「それでミラが知りたかったことだけど」
「うん」

 そう。家ではなくアダムの意向であることがはっきりしたけれど、そしたら今度はなぜメリットもないことをするのかということだ。
 同じクラスメイトで困っていたからで動くようなタイプではないことはわかっている。だから、疎いと言われたけれど、さすがにもしかしてと思う気持ちはあった。

「俺さ、入学してからミラがずっと気になってて」
「えっ、彼女いたよね?」
「ああ。さっき話したようにイーサンの存在に俺は一度諦めた組だった。だけど、やっぱりミラが気になって、好きなんだと意識するようになって彼女とは別れた。それからずっと見てても相変わらず仲が良いし、それでもミラは義姉というスタンスは変わらないし、あいつはあいつで威嚇凄いし。だけど、家督もどちらが継ぐかまだ定まっていないというし、イーサンとなんでもないなら俺が立候補してもいいんじゃないかって」

 軽い口調ながらもその瞳は真剣で茶化す空気ではなく、私は頷くに留めた。

「ミラ。俺は本気だ。今回のこと強制するつもりはない。俺はあくまで気持ちを伝えておきたかっただけと言えば聞こえはいいけど、正直、あわよくば多少は恩を感じて好感度上げればというのはある」
「それ、自分で言う?」

 軽く肩を竦めてなんでもないことのように告げるアダムだけど、その瞳はずっと真剣だ。

「やっぱり弱みにつけ込んだような罪悪感はあるし」
「でも、申し出てくれて私たちは助かったよ。伯爵様も今回の話もまず見合いだけという話で後は私たちに任せるっておっしゃってくださったし。時間に猶予を持てるのは本当にありがたいわ」

 あれから私を娶りたいと言ってきた商家の男のことを調べた。
 四十代で今まで三人と結婚、離婚を繰り返し、その他にも立場の弱い女性を無理矢理金で関係を持っては捨てているらしく、典型的なクズな男だった。
 そんな男のところに嫁ぐなんて嫌すぎる。それを知りアダムの申し出に心底感謝したのだ。

「まあ、伯爵家の家督や金策のことはこれからだしまだ考えられないかもしれないけれど、俺はそういう意味でミラが好きだ。今日はそれを伝えたくて。ミラも不幸になるようなところに嫁ぐくらいなら俺のほうが絶対いい、だろ?」
「ふふっ。そうね」

 普段通りのフランクな話し方にアダムの気遣いが感じられる。
 本来は貴族同士の見合いは家同士の繋がりにもなるので、本当ならばもっと形式張ったもので私に選択権なんてないようなものだ。

 感謝していると、アダムが周囲に視線を走らせ気懸かりがあるかのように低く探るような口調で尋ねてくる。

「で、今日も邪魔が入らなかったってことはあいつには伝えてないんだろ?」
「ええ」

 アダムの放つ空気とその内容に、私はぴくりと肩を揺らした。

「ミラ、実際あいつのことどう思ってるんだ?」
「どう思ってるって?」
「家族といえども、血は繋がっていない。あれだけ懐かれて、二人で伯爵家をと思わないのか?」
「つまり、私とイーサンが結婚するってこと? それはないわ」
「なぜ言い切れる?」
「だって、イーサンのは刷り込みだもの」

 そして、私は家族。一度失ったことのある家族を、やっと安心できるようになったイーサンの家族の形を崩すことは本意ではない。

「ふーん? なら……」
「なら?」
「ああ、これはいいや。とにかく俺は気持ちを伝えたし、ミラは一度俺とのことを真剣に考えてほしい」
「ええ。何から何まで本当にありがとう。今日は両親も心配していると思うから帰るね」

 気持ちがあっての申し出だと知れて、気持ちは随分アダムに傾いている。
 だけど、やはりどこかでイーサンのことが気にかかって、この中途半端なままではアダムに失礼であるし、アダム自身も気にしているのが節々に感じられてこのままでは駄目だと思った。

「そうか。送っていこう」
「ううん。考えたいこともあるし散歩しながらゆっくり帰ろうと思って。ちゃんとアダムのことも考える」
「……そうか。商家のこともあるから気を付けろよ」
「うん。ありがとう」

 最後にそっと頬を親指で優しく触れられ、どこか寂しそうな瞳で見送られる。
 その視線の意図は気になったけれど、まず私の中で答えを出さなければと笑顔で手を振りその場を後にした。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。 ……。 …………。 「レオくぅーん!いま会いに行きます!」

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

逆ハーレムの構成員になった後最終的に選ばれなかった男と結婚したら、人生薔薇色になりました。

下菊みこと
恋愛
逆ハーレム構成員のその後に寄り添う女性のお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

退役騎士の居候生活

夏菜しの
恋愛
 戦の功績で騎士爵を賜ったオレーシャは辺境を警備する職に就いていた。  東方で三年、南方で二年。新たに赴任した南方で不覚を取り、怪我をしたオレーシャは騎士団を退役することに決めた。  彼女は騎士団を退役し暮らしていた兵舎を出ることになる。  新たな家を探してみるが幼い頃から兵士として暮らしてきた彼女にはそう言った常識が無く、家を見つけることなく退去期間を向かえてしまう。  事情を知った団長フェリックスは彼女を仮の宿として自らの家に招いた。  何も知らないオレーシャはそこで過ごすうちに、色々な事を知っていく。  ※オレーシャとフェリックスのお話です。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

処理中です...