大和妖〜ひとひら〜《短編連作》

橋本彩里(Ayari)

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ほこほこ日和

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 緑茂る樹木と石燈籠に囲まれた空間。空を飛でしまえそうなくらいここに来て軽やかな体で、神様を見つける。神様が待っている。
 そう思うと、うずうずしてきた。

「カワジなら大丈夫だろうっとおっしゃっておられた。探しておいで。見つけたらご褒美があると言っていたよ」

「わぁ。ご褒美まで!! 頑張ります。コンはどうする?」

 神様のご褒美ってなにかなっ、とウキウキしながらコンを振り仰ぐ。コンはそれはそれは優しい眼差しでカワジを見た。

「その間、懐かしい友に会いに行ってくるよ。時間を気にせず遊んでおいで。その後、何か食べにいこう」

「うん。なら、また後で」

 カワジは元気よく頷くと、くるりと周囲を見回した。「あっちの方かなぁ」っと上っていく。
 枯葉や枯れ枝、苔むした石燈籠に白い光が降り注ぐ。歩くとたまに見える朱色の神社は鮮やかだ。

 スキップせんばかりのカワジの軽やかな足取りに、コンはくすりと笑う。
 カワジはやはりカワジだ。
 コンが畏まっていたためか、何やら思うことがあったようだが、あっという間に気持ちは楽しいことに支配されたらしい。

 神様との遊びを楽しいと思えること、神様のそばにいるだけで恐れ多く感じるコンにとっては不思議ではあるがそれがカワジなのだろう。敬う気持ちはあっても気負いはない。向けられる感情、言葉を素直に受け取る。
 先ほどの白鹿さまが言うように、素直なところは変わらないでいてほしい。カワジの着物の桜の花びらが増えるたびに、コンは思う。

「目星はついてるのかな?」

 迷いのないカワジの足取りにコンが独り言を言うと、同じように見送っていた白鹿さまが首をこちらに向ける。
夫婦大國社めおとだいこくしゃの方まで続くため広範囲になるが、カワジに悩むということはないらしい。それにしても贅沢な遊び場だ。

「なんとなくだろう。ただ、春日大明神様が気に入っただから、わりと早く見つけるかもしれないとは思う。ただし、大明神様も遊ばれたいようであったから、最初の方は苦戦するだろうが」

「簡単に見つかっても楽しめませんもんね。見つけても見つからなくても、カワジとの遊びは楽しそうです」

 コンもなんとなくカワジがいく方向に大明神様がいるような気がした。カワジの向ける足先が明るく見える。
 さっきまでの悩んでいたカワジなら神様を見つけるのも迷っていただろうが、本当に神様とのかくれんぼを楽しそうに始めたカワジならすぐに見つけられるだろうと思う。

 その分、うまく神様も隠れるだろうが、どちらも楽しめるのならそれでいいことだ。
 コンは向こうの方で覗いたり屈んだりしているカワジの姿をもう一度眺め、再度くすりと笑った。とにかく元気で可愛い妖とともにいるのは、こちらも気分は晴れやかになる。

「それでは、友のところへ向かいます。お遊びが終わりになるころ、ここに参ります」

「広瀬神社の方だな」

「ええ。元気でしょうか?」

「それは自身で確かめよ。きっと喜ぶだろう」

「はい。それでは失礼いたします」

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