不倫研究サークル ~大学生編~

むかいぬこ

文字の大きさ
40 / 66

第40話 不機嫌な女社長

しおりを挟む
夕方。

僕は、一緒についてくると言う美栞を振り切って、原宿駅で愛莉と待ち合わせていた。

それにしても、美栞の行動の元になっている『参考書』には、どんなことが書かれているのか。今日も『カレシの浮気阻止には最初が肝心』と、一緒についてきて相手の女にくぎを刺すのだと言ってきかなかった。

僕は、最初から核実験はしない、理科の実験はリトマス紙からでしょ、徐々に実験のレベルを上げていきましょう、となだめたのだった。


美栞の事もあったが、今日は綾乃だ。
綾乃になんと申し開きをしようかと僕は考えを巡らせていた。
「きっと怒っているだろうな……」綾乃の時折見せる厳しい表情を思い出し、少し怖い気がした。

「森岡君」

思いを巡らせていたところに不意に声がかかり、僕はハッとする。

「あ、川本さん」と振り返って、僕は驚いた。

今日は綺麗に化粧をして、冷たい印象の目元も明るく色付けているため、元からの綺麗さが際立っていた。

「また、見つめてる 笑」

愛莉は、可笑しそうに笑うが、僕は彼女の笑顔が好きだ。つい、見とれる時間が長くなる。

「もう~、なに?」
「す、すみません。 今日は雰囲気が違うな……て」

僕は頭をかきながら、照れ笑いした。

「面接があるから、お化粧してきたの。普段はやらないんだけど……、変じゃない?」

「いえ、とても綺麗です。見違えちゃいました」

「森岡君って、ホント、お世辞をスラスラと言うよね 笑」

「(お世辞じゃなく、本当に綺麗だと思ったんだけどな)
僕も都会に慣れて、口が上手になったのかもしれません 笑」

「あーー、やっぱり、お世辞なんじゃない」

愛莉は少しむくれて見せるのだが、冷から温の変化が絶妙に可愛く見える。僕は胸がドキドキする思いがした。

「あの、カテマッチの事務所は、ここから歩いて少しの所なんです。行きましょうか」

僕が向かう方向を指さして歩き始めると、愛莉が腕を絡めてきた。

「せっかくだから、腕組んで行こうよ」

思いがけないサプライズに、僕は頬をフルフルさせながら歩く。

(最近、女性と仲良くする機会が増えた気がする……、これって)


  人生初の、『モテ期』到来か!?




~・~・~




「え……と、たしか、この辺だったような……」

岸本に連れられて一度来ただけなので、場所があやふやだった。
愛莉の前でカッコ悪いところを見せたくないのだが、東京の土地に慣れていないのは如何ともしがたい。

不味いな……と思い綾乃に電話をかけると、迎えに来てくれると言うので、その場で待つことにした。

「カテマッチって、女の社長が一人で経営してるって聞いたんだけど、本当なの?」
「ええ、それも若くて美人で、まさに完璧な女性と言った感じです」

「へ~」と愛莉の目が冷たくなる。

「え? どうかしました?」
「なんか、わたしへのお世辞と言い方が違う。森岡君って、もしかしてその人の事が好きなの?」
「ええーー、そんなことある訳ないじゃないですか。全然、世界が違いますよ」

「住む世界じゃなくて、森岡君の気持ちを聞いてるんだけど、その反応で分かったわ。
でも、どんな人なのか、興味が湧いてきた 笑」

愛莉は、そう言って笑って見せたが……、目が笑ってない。
やはり、リケジョの行動はよく分からない、と僕は再認識した。


「森岡君」

声をかけてきたのは綾乃だった。

「あ、宮下さん。 すみません、面倒をかけてしまったて」

「いいのよ、事務所も分かり辛い場所にあるし」と言いながら、僕の腕に絡めている愛莉の手に視線をやった。

「彼女が、今日、紹介したい子?」

「はい、川本愛莉さん」と、僕が紹介するまでもなく、愛莉が前へ出て自ら自己紹介した。

「川本愛莉です。今日は、お時間を取っていただき、ありがとうございます」

「宮下綾乃です。あ、お話は事務所で、こちらです」と僕たちを連れ立つ。

綾乃が現れたと言うのに、愛莉は僕の腕に手を絡めたまま、綾乃についていく。

時折、綾乃が振り返って僕たちがついてきているのか、確認する。その時、心なしか僕の事を睨んでいるような気がした。

やはり、デートの約束を反故にした事を怒っているのだろうか?


少し、不安がよぎった。

(これは、素直にあやるしかないな……)

「ねえ、宮下社長、ちょっと怖い顔になってない?」

「う、うん……そうですね……」

「わたし、なにか怒らせたかな?」


「いや……たぶん、原因は僕です」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...