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第19話 ヒンヌー教
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週明けの月曜日、二限目から一般教養の講義を受ける事になっていた。
一限目からとなると9時から開始なので通勤時間帯に巻き込まれる。
週明け早々、通勤ラッシュを避けられるのは有難かった。
しかも、八王子は始発なので座って明大前まで行ける。
私は座席に座り、バイトで請け負っているライティングの下書きを書いていた。
スマホで軽く下書きし、学校の図書館のパソコンで清書して納品するのだ。
通学時間もお金を稼ぐための貴重な時間として私は活用している。
しかし、今日は集中できないでいた。
昨日、千佳と話した事で誰が早川君の好きな人なのか、凡その見当がついてしまったからだ。今日の講義も彼女と一緒になる。
どんな顔をして彼女と接すれば良いのだろうか?
まだ早川君は彼女に告白していない。だから私が余計な事を口にすれば、彼女が変に意識してしまい、早川君の恋を邪魔する事にもなりかねないのだ。
(絶対にやらかさないようにするんだ、花音!)
スマホに落としていた視線を上げ、私は口を一文字に結んだ。
闘魂注入だ!
一限目と二限目の講義の間に礼拝の時間があるため、早めに教室に着くと学生はまだまばらだった。
大学の教室は、教壇を扇の要にすり鉢状の机が並んでいる。
席は決まっていないから早い者勝ちの自由に選択できる仕組みとなっている。
私は何時も教壇を中央に捕らえた中央付近に座るようにしている。近眼でメガネをしている事もあり、なるべく良く見える位置に座りたいのだ。
「おはよう~カノン」
私を見つけて、蜂矢美鈴が声をかけてきた。
彼女は私と同じ文学部の二年生で、やはり同じく文藝サークルの仲間でもある。
大学でできた数少ない友達の一人である彼女は、早川君の好きな人として心当たりとなる人物の筆頭だ。
彼女はショートカットのボーイッシュな髪形に切れ長の少し釣り目、シャープな顔立ちをしている。さらには身長170cmのスレンダーなモデル体型の持ち主でもある。
「あ、おはよう。ミリン」
「どうしたの、今日は?」
「え、何が?」
「だって、スカート履いてるじゃない。なんだか女の子みたい」
今日は土曜日と同じようにスカートにブラウスという女の子らしい服装で登校していた。
「ちょっ、わたし女の子なんですけど 笑」
美鈴が冷やかすのも不思議ではない、普段の私は高校生の時から愛用しているジーンズにトレーナーという野暮ったい格好で登校しているのだから。
東京でもお洒落な大学として有名なのに、似つかわしくない女子学生なのだ。
一方の美鈴は、今日も細めのデニムに白基調のロンTと薄手のカーディガンといういで立ちだ。スレンダーな体形を意識してボーイッシュな雰囲気を醸し出している。
一見、ファッションに無頓着なようだが、シンプルで彼女に似合った格好を何時もしている。
「そうね、カノンって女の子よね……。
それに比べて、ワタシなんて」
「あわわ、そういう意味で言ったんじゃないよ~~
ミリンはカッコ良いよ~」
美鈴は、千佳に負けないくらいの貧乳で、その事をコンプレックスに感じているのは、やはり千佳と同じだ。
「ワタシを褒める時は皆、『カッコ良い』とか『スタイル良い』とか、そんなのばかり。
そうよね、だってワタシはいくら盛っても盛れないくらい持ってない女なんだもん」
このネタになると、美鈴もヒンヌー教になってしまう。
どうやら、これは貧乳女子の世界共通のリアクションなのかもしれないと思ってしまう。
「もう~、ヒンヌー教は止めて。
美鈴の事を好きだって男子はいっぱいいると思うよ。
わたしなんか、そんな気配すらないもの」
早川君が美鈴を好きだと知っているので、つい口に出してしまったが、(しまった!)と後悔する。今はまだ公にはできないのだ。
早川君が美鈴に告白するまでは……。
「それで?
今日のイメチェンは、誰か気になる人ができたとか?」
「うっ」
あまりにも直球過ぎて声に詰まってしまう。それと同時に自分のあざとさに後ろめたさを感じずにはいられなかった。
早川君に可愛く見られたいと思って女の子らしい格好をしてきたのは、隠しようのない事実だ。その一方で早川君と美鈴の恋のお手伝いをしたいと思っている。
なんと矛盾しているのだろうか。
「そういう訳じゃないけど、ミリンも遥ちゃんもお洒落だし、いつまでもわたしだけ野暮ったい格好で居るのも気が引けるというか……、それに、バイトも増やそうと思うから少しお洒落に気を使いたくなって」
「ふ~~ん、ハルカはともかく、ワタシってお洒落だっけ?」
「なに、なに~、わたしがどうしたって~?
あ、おはよう~」
私たちの会話に割って入ってきたのは永井遥、経済学部の二年生だが一般教養の講義なので私たちと一緒に受講しているのだ。
長身の美鈴とは正反対で身長は私よりも低く150cmないのではと思えるくらい小さい。美鈴が狐顔なら遥かは狸顔といったところか。
初めて二人に出会った時の印象は狐と狸のコンビだった。
「来たわね、貧乳の敵」
「どうしたの~ミリンちゃん、朝から卑屈になって 笑」
遥かは、身体は小さいのだが、そのミニマムなボディに似つかわしくない巨乳の持ち主だ。
目も大きく可愛らしい顔をしている。服装もその体形に合わせてガーリーな装いをしている。
(もしかしたら、遥ちゃんの方が早川君のターゲットなのでは?)
遥ちゃんには彼氏がいる。
そのため美鈴が早川君の好きな人とばかり決めつけていたが、早川君は『片思い』とい言っていた。
もしかしたら遥ちゃんの事が好きなのではないか?
いや、違う。
だったら、オオカミが子羊を食べない理由としては弱い。
やっぱり、早川君が好きなのは美鈴だ。
「あれ?
カノンちゃんも、今日は女の子らしい服装にしてるね。
もしかして、好きな人ができたとか?」
すっかり早川君の好きな人に気を取られていたところ、遥ちゃんからも同じ質問で攻められる。
どうしてこうも、揃いも揃って同じ発想になるのだろうか。
美鈴にしたのと同じ説明を遥ちゃんにしようとした時だった。
「綾瀬さん、おはよう」
一限目からとなると9時から開始なので通勤時間帯に巻き込まれる。
週明け早々、通勤ラッシュを避けられるのは有難かった。
しかも、八王子は始発なので座って明大前まで行ける。
私は座席に座り、バイトで請け負っているライティングの下書きを書いていた。
スマホで軽く下書きし、学校の図書館のパソコンで清書して納品するのだ。
通学時間もお金を稼ぐための貴重な時間として私は活用している。
しかし、今日は集中できないでいた。
昨日、千佳と話した事で誰が早川君の好きな人なのか、凡その見当がついてしまったからだ。今日の講義も彼女と一緒になる。
どんな顔をして彼女と接すれば良いのだろうか?
まだ早川君は彼女に告白していない。だから私が余計な事を口にすれば、彼女が変に意識してしまい、早川君の恋を邪魔する事にもなりかねないのだ。
(絶対にやらかさないようにするんだ、花音!)
スマホに落としていた視線を上げ、私は口を一文字に結んだ。
闘魂注入だ!
一限目と二限目の講義の間に礼拝の時間があるため、早めに教室に着くと学生はまだまばらだった。
大学の教室は、教壇を扇の要にすり鉢状の机が並んでいる。
席は決まっていないから早い者勝ちの自由に選択できる仕組みとなっている。
私は何時も教壇を中央に捕らえた中央付近に座るようにしている。近眼でメガネをしている事もあり、なるべく良く見える位置に座りたいのだ。
「おはよう~カノン」
私を見つけて、蜂矢美鈴が声をかけてきた。
彼女は私と同じ文学部の二年生で、やはり同じく文藝サークルの仲間でもある。
大学でできた数少ない友達の一人である彼女は、早川君の好きな人として心当たりとなる人物の筆頭だ。
彼女はショートカットのボーイッシュな髪形に切れ長の少し釣り目、シャープな顔立ちをしている。さらには身長170cmのスレンダーなモデル体型の持ち主でもある。
「あ、おはよう。ミリン」
「どうしたの、今日は?」
「え、何が?」
「だって、スカート履いてるじゃない。なんだか女の子みたい」
今日は土曜日と同じようにスカートにブラウスという女の子らしい服装で登校していた。
「ちょっ、わたし女の子なんですけど 笑」
美鈴が冷やかすのも不思議ではない、普段の私は高校生の時から愛用しているジーンズにトレーナーという野暮ったい格好で登校しているのだから。
東京でもお洒落な大学として有名なのに、似つかわしくない女子学生なのだ。
一方の美鈴は、今日も細めのデニムに白基調のロンTと薄手のカーディガンといういで立ちだ。スレンダーな体形を意識してボーイッシュな雰囲気を醸し出している。
一見、ファッションに無頓着なようだが、シンプルで彼女に似合った格好を何時もしている。
「そうね、カノンって女の子よね……。
それに比べて、ワタシなんて」
「あわわ、そういう意味で言ったんじゃないよ~~
ミリンはカッコ良いよ~」
美鈴は、千佳に負けないくらいの貧乳で、その事をコンプレックスに感じているのは、やはり千佳と同じだ。
「ワタシを褒める時は皆、『カッコ良い』とか『スタイル良い』とか、そんなのばかり。
そうよね、だってワタシはいくら盛っても盛れないくらい持ってない女なんだもん」
このネタになると、美鈴もヒンヌー教になってしまう。
どうやら、これは貧乳女子の世界共通のリアクションなのかもしれないと思ってしまう。
「もう~、ヒンヌー教は止めて。
美鈴の事を好きだって男子はいっぱいいると思うよ。
わたしなんか、そんな気配すらないもの」
早川君が美鈴を好きだと知っているので、つい口に出してしまったが、(しまった!)と後悔する。今はまだ公にはできないのだ。
早川君が美鈴に告白するまでは……。
「それで?
今日のイメチェンは、誰か気になる人ができたとか?」
「うっ」
あまりにも直球過ぎて声に詰まってしまう。それと同時に自分のあざとさに後ろめたさを感じずにはいられなかった。
早川君に可愛く見られたいと思って女の子らしい格好をしてきたのは、隠しようのない事実だ。その一方で早川君と美鈴の恋のお手伝いをしたいと思っている。
なんと矛盾しているのだろうか。
「そういう訳じゃないけど、ミリンも遥ちゃんもお洒落だし、いつまでもわたしだけ野暮ったい格好で居るのも気が引けるというか……、それに、バイトも増やそうと思うから少しお洒落に気を使いたくなって」
「ふ~~ん、ハルカはともかく、ワタシってお洒落だっけ?」
「なに、なに~、わたしがどうしたって~?
あ、おはよう~」
私たちの会話に割って入ってきたのは永井遥、経済学部の二年生だが一般教養の講義なので私たちと一緒に受講しているのだ。
長身の美鈴とは正反対で身長は私よりも低く150cmないのではと思えるくらい小さい。美鈴が狐顔なら遥かは狸顔といったところか。
初めて二人に出会った時の印象は狐と狸のコンビだった。
「来たわね、貧乳の敵」
「どうしたの~ミリンちゃん、朝から卑屈になって 笑」
遥かは、身体は小さいのだが、そのミニマムなボディに似つかわしくない巨乳の持ち主だ。
目も大きく可愛らしい顔をしている。服装もその体形に合わせてガーリーな装いをしている。
(もしかしたら、遥ちゃんの方が早川君のターゲットなのでは?)
遥ちゃんには彼氏がいる。
そのため美鈴が早川君の好きな人とばかり決めつけていたが、早川君は『片思い』とい言っていた。
もしかしたら遥ちゃんの事が好きなのではないか?
いや、違う。
だったら、オオカミが子羊を食べない理由としては弱い。
やっぱり、早川君が好きなのは美鈴だ。
「あれ?
カノンちゃんも、今日は女の子らしい服装にしてるね。
もしかして、好きな人ができたとか?」
すっかり早川君の好きな人に気を取られていたところ、遥ちゃんからも同じ質問で攻められる。
どうしてこうも、揃いも揃って同じ発想になるのだろうか。
美鈴にしたのと同じ説明を遥ちゃんにしようとした時だった。
「綾瀬さん、おはよう」
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