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田舎町
なそてこ
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マルクエンとラミッタは重い武器と防具を外して、やっとの解放感を感じる。
ラミッタは背中からベッドに倒れて目を閉じていた。
「はー、もう疲れたわ」
マルクエンも器用に鎧を外してベッドに横たわる。
「私も、疲れたな。だが、腹も減った」
「アンタいつもお腹空かせているわね。まぁいいわ。近くにご飯屋さんが無いか聞いてみようかしら」
体を起こし、靴を履いてラミッタは部屋を出ようとする。
その後ろをマルクエンも追いかけた。
先に出ていたラミッタは宿屋のおかみと話をしている。
「食堂でしたら、ちょうど向かって斜め右二軒先にあります」
「だって、宿敵」
後ろを振り返ったラミッタはマルクエンに言う。
「そうか、念のため、一度部屋に戻って武器を……」
「おおげさね。近くだし、魔人の襲撃が来ても大丈夫でしょ」
「……、それもそうだな」
マルクエンはラミッタの言う通り、武器を置いて宿屋を後にした。
本当に目と鼻の先にあった食堂に二人は入る。
「いらっしゃいませー!」
店員に席に案内され、二人はメニューを見た。
「なにこれ? な、なそてこ?」
『なそてこのパスタ』やら『なそてこのシチュー』といった、聞き覚えの無い単語を見て顔を見つめ合わせる二人。
マルクエンは考えていても仕方が無いので、店員に尋ねる事にした。
「ちょっと聞いてみるか、すみませーん!」
「はーい、お決まりですか?」
「この『なそてこ』って何ですか?」
聞かれ、店員はニコッと笑って答える。
「はい! 『なそてこ』はこの街の名産のナスの一種で、笑った顔みたいな模様が浮かんでいるのが特徴ですよ」
ますます分からなくなる二人。
「ちょっと待ってくださいね!」
そう言って厨房に消えた店員は、手のひらサイズのナスを持ってきた。
「こちらです!」
そのナスを見てマルクエンは驚く。
「ほ、本当だ……。何か笑ったような模様が……」
ナスの身の部分には目と口を閉じて笑顔を作ったときのような黒い模様が浮かんでいた。
ラミッタはそれを見て食欲をなくす。
「何か不気味ね……」
「そうか? かわいいじゃないか!」
「アンタ正気!?」
ラミッタはジト目で見ていたが、店員はマルクエンの言葉に機嫌をよくした。
「なそてこの可愛さが分かるとは、お客さんわかっていますね! あぁ、もちろん食べても絶品ですよ!」
「それじゃ、なそてこのオススメ料理で!」
マルクエンはいつになくノリノリだ。
「おススメですね! なそてこのシチューランチです! 牛肉となそてこ、その他野菜を煮込んだシチューです!」
「それじゃ、それを二つ!」
「ちょっと! 何で私の分まで勝手に決めてんのよ!?」
ラミッタは怒りよりも、普段と違うマルクエンに困惑していた。
「食べず嫌いはダメなんじゃなかったのか?」
「いや、そうだけど……」
ラミッタは下を向いてもじもじとする。
「もしかして、怖いのか? なそてこ」
「こ、怖いわけないじゃない! 食べるわよ!!」
「それじゃなそてこのシチューランチ二つですねー!」
ラミッタは意地を張った事を少し後悔しつつも、冷静さを見せて料理を待つ。
ラミッタは背中からベッドに倒れて目を閉じていた。
「はー、もう疲れたわ」
マルクエンも器用に鎧を外してベッドに横たわる。
「私も、疲れたな。だが、腹も減った」
「アンタいつもお腹空かせているわね。まぁいいわ。近くにご飯屋さんが無いか聞いてみようかしら」
体を起こし、靴を履いてラミッタは部屋を出ようとする。
その後ろをマルクエンも追いかけた。
先に出ていたラミッタは宿屋のおかみと話をしている。
「食堂でしたら、ちょうど向かって斜め右二軒先にあります」
「だって、宿敵」
後ろを振り返ったラミッタはマルクエンに言う。
「そうか、念のため、一度部屋に戻って武器を……」
「おおげさね。近くだし、魔人の襲撃が来ても大丈夫でしょ」
「……、それもそうだな」
マルクエンはラミッタの言う通り、武器を置いて宿屋を後にした。
本当に目と鼻の先にあった食堂に二人は入る。
「いらっしゃいませー!」
店員に席に案内され、二人はメニューを見た。
「なにこれ? な、なそてこ?」
『なそてこのパスタ』やら『なそてこのシチュー』といった、聞き覚えの無い単語を見て顔を見つめ合わせる二人。
マルクエンは考えていても仕方が無いので、店員に尋ねる事にした。
「ちょっと聞いてみるか、すみませーん!」
「はーい、お決まりですか?」
「この『なそてこ』って何ですか?」
聞かれ、店員はニコッと笑って答える。
「はい! 『なそてこ』はこの街の名産のナスの一種で、笑った顔みたいな模様が浮かんでいるのが特徴ですよ」
ますます分からなくなる二人。
「ちょっと待ってくださいね!」
そう言って厨房に消えた店員は、手のひらサイズのナスを持ってきた。
「こちらです!」
そのナスを見てマルクエンは驚く。
「ほ、本当だ……。何か笑ったような模様が……」
ナスの身の部分には目と口を閉じて笑顔を作ったときのような黒い模様が浮かんでいた。
ラミッタはそれを見て食欲をなくす。
「何か不気味ね……」
「そうか? かわいいじゃないか!」
「アンタ正気!?」
ラミッタはジト目で見ていたが、店員はマルクエンの言葉に機嫌をよくした。
「なそてこの可愛さが分かるとは、お客さんわかっていますね! あぁ、もちろん食べても絶品ですよ!」
「それじゃ、なそてこのオススメ料理で!」
マルクエンはいつになくノリノリだ。
「おススメですね! なそてこのシチューランチです! 牛肉となそてこ、その他野菜を煮込んだシチューです!」
「それじゃ、それを二つ!」
「ちょっと! 何で私の分まで勝手に決めてんのよ!?」
ラミッタは怒りよりも、普段と違うマルクエンに困惑していた。
「食べず嫌いはダメなんじゃなかったのか?」
「いや、そうだけど……」
ラミッタは下を向いてもじもじとする。
「もしかして、怖いのか? なそてこ」
「こ、怖いわけないじゃない! 食べるわよ!!」
「それじゃなそてこのシチューランチ二つですねー!」
ラミッタは意地を張った事を少し後悔しつつも、冷静さを見せて料理を待つ。
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