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水の神様

あわあわのお風呂

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 シャワーを済まし、風呂へと入るマルクエン。

 泡だらけの風呂という未体験の物に機嫌が良かった。

「ふぅー……」

 湯船に沈むと、心地よさに息を吐き、顔を湯でバチャバチャと洗い直す。

 そんな時だった。ふと、この湯には先程ラミッタが入っていたんだよなと考えてしまった。

 温泉宿でチラリと見たラミッタの体が脳裏に浮かぶ。

「って、何を考えているんだ私は!!!」

 マルクエンは頭を掻きむしっていた。

 ラミッタと自分は好敵手であり、仮に元の世界へと帰れたら、また戦い合う運命だ。

 こんな事を考えているようではラミッタの言う通り自分はド変態卑猥野郎じゃないかと。

 マルクエンも風呂から上がり、部屋へと戻っていった。

「も、戻ったぞ、ラミッタ」

 何だかラミッタの顔が直視できない。

「あら、気分はどうかしら宿敵?」

 ラミッタは澄ました顔で紅茶を飲んでいた。

「ほら、一杯入れてあげたから飲みなさい」

 ティーポットからカップへと紅茶を注ぎ、テーブルの上に置く。

「あ、あぁ。ありがとうラミッタ」

 ラミッタの正面に座り、紅茶にハチミツを溶かして飲んだ。

 二人の間に会話は無かった。何だかマルクエンは落ち着かずにソワソワとしている。

「あー、そのー、いい湯だったな」

「そうね」

 会話が終わってしまった。するとラミッタがクスリと笑う。

「アンタ、本当に会話が苦手ね」

「あ、あぁ……。よく言われるよ……」

「でも、皆といる時や、街の人なんかには普通じゃない?」

 ラミッタに言われると、マルクエンはハハハと力なく笑う。

「そうだな、おおやけの場や何か要件がある場合は話せるのだが、雑談というものが苦手でな」

「それ女の子にウケ悪いわよ」

「よく言われるよ……。元の世界でお見合いをした時なんかも」

 その言葉を聞いてラミッタは紅茶を吹き出しそうになり、咳き込む。

「だ、大丈夫か!? ラミッタ!?」

「げほっ、別に大丈夫よ! それより宿敵!! アンタお見合いなんてしていたの!?」

「あぁ、貴族の娘さんでな。そろそろ結婚してはどうかと」

「ふーん。どんな子だったのよ」

 ラミッタはジト目で横を向いたまま、マルクエンを流し見していた。

「うーん。美人でおしとやかな人だった」

「そういう子が好きなのかしら? 王国騎士様は」

 うーんとマルクエンは腕を組んで考える。

「そうだな……。確かに惹かれるものはあったが、二人で居ると緊張して何を話していいのか分からなかった」

「っぷ、お子ちゃまね」

 ラミッタは笑う。

「また次に合う約束をしていたが、戦争が起きてな。それどころでは無くなってしまった」

「あら、残念ね」

「だが、私はこうしてラミッタと馬鹿な話をする方が、気楽で良いかもしれない」

 それを聞いてラミッタはまたむせる。

「本当に大丈夫かラミッタ!?」

「だ、大丈夫よ……。それより、なに言ってんのよド変態卑猥野郎!!」

「変態要素あったか!?」

「あーもう、うるさい!! それより大事な話があるわ!!」
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