裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる

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オークの村の救世主になろう

オークの村の救世主になろう 1

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(イラスト:まっど↑きみはる)

「信じるな! そいつは嘘を付いている! そんな薬が存在しているはずがない!」

 声のする方をモモとムツヤは同時に見た。

 茂みに殴り飛ばされたオークの一人が顔を抑えながら立ち上がり、モモに警告を入れる。

「バラ…… しかしもう何も手が……」

 バラと呼ばれたオークの男は脳震盪のうしんとうから回復し、その間は体が動かせなかったが、数分前からぼんやりとした意識はあった。

 そして、二人のやり取りを聞いていて思った。自分は一瞬で治せるが他人は治せない魔法だと? 傷が一瞬で治る薬だと?

 嘘に決まっている。

 そんな輩を村に引き入れるなど正気の沙汰でないと力を振り絞り立ち上がり叫んだ。

「どう聞いてもおかしいだろ、その薬なんてはどうせ毒だ!」

「いや、違う俺は……」

 弁明をしようとしたムツヤをモモが手で軽く制し、その後一歩前へ歩み出て言う。

「私はムツヤ殿を信じてみたい。どうせ何もしなければみんな死んでしまうかもしれない。」

 バラの言うことも分かる。

 しかし、モモは今、僅かな可能性にも賭けたかった。

 それ以上に、この男は不思議と信用しても良いと思えたのだ。

 その後も何度かお互いに声を荒げて話をし合っていたが、最終的にはバラと呼ばれるオークの男が折れる形でムツヤは村に連れて行かれる事になった。

 ムツヤはモモと殴り飛ばしてしまった二人のオーク達に連れられてオークの村にまで来た。

 村のオーク達は敵意の目を持ってムツヤを見つめる。

「モモ!! どうした、その人間が犯人なのか!?」

 武器を手にして睨みを利かすオーク達、30人以上は居るだろうか。

 その後ろから騒ぎを聞きつけた一際体格の大きいオークが声を荒げた。

 真っ白でボサボサの髪と、それと同じ色の立派なひげを顎下に蓄えている。

「いえ、違います村長。この方は薬を分けてくださるそうで」

 村長ということはこのオークが一番この村で偉いのだろうかとムツヤは考えていた。

「信用ならんな」

 倍以上の体格差がある相手にモモは一歩も引かず、毅然きぜんとした態度で話を続ける。

「ではまず私の身内であるヒレーに薬を与えます。私はこの方、ムツヤ殿にそういった悪意があるとは到底思えないのです!」

 そうモモが言うと村長と呼ばれたオークは不機嫌そうな顔をして黙り、じっとムツヤを睨みつけた。

 ムツヤが愛想笑いをしていると、こちらへとモモに促されて一軒の家へ連れられる。

 その家のベッドの上には一人のオークが寝ていた。

「私と違って美しく優しい自慢の妹なのだ」

 一瞬美しい? と頭に疑問符が浮かんだ、顔はどうしても豚にしか見えない。

 だが、また失礼な考えをしてしまったとムツヤは首を振る。

「ムツヤ殿。金は無いが、その他の礼は何でもする、どんな事だってする何でもする! 私を労働用の奴隷にして貰っても構わない。だからどうかその薬を……」

「い、いや、別にそこまでしてもらわなぐでも良いですから! これ塔に行けばメッチャ落ぢでるし!」

 ムツヤはカバンから赤く光る液体の入ったガラス瓶を取り出すとモモに渡した。

 改めて軽く一礼をしてモモはそれを受け取ると妹の背に手を回して起こそうとする。

 ムツヤは信用すると決めたが見たこともない薬だ、やはりどうしても一抹の不安は拭いきれない。

 傷がうずくのか小さい悲鳴を上げ、苦しそうな呼吸をしてヒレーと呼ばれているその妹は上体を起こした。

「ヒレー、頑張ってこの薬を飲んでくれ」

 そのヒレーの上体を見てムツヤはゾッとした。

 ぐるぐるに巻かれた包帯からは血が滲んでいる。

 確かにムツヤも初めて実物を見た印象では、オークは豚みたいな怪物に見えた。

 しかし、相手は言葉も通じ合うし、斬られれば赤い血が流れて弱々しく、苦しそうにする。

 そう考えると犯人に対して怒りを覚えた。

 手渡された薬をヒレーはゆっくりと飲んだ、ゆっくりゆっくりと、そして飲み干した瞬間。

「ピイイイエエエエエエ!!!!! ポッポポイポッポポイ!!!!」

 奇声を上げてベッドの上でダンスをし始めた。

 望んだはずの妹の元気な姿だったのにモモは完全に固まってしまう。

「あー、ごの薬っでー飲むとテンション上がっちゃうんでずよねー。俺も最近は慣れたんですけんども、初めて飲んだ時はこんな感じですた」

 その後我に帰ったヒレーはベッドの上で自分の胸から始まり足の先までゆっくりと視線を移す。

 次に自分の傷口があった部分をペタペタと触る、痛みはない。

 そして、信じられないといった顔をして姉の顔を見た。

「ヒレー? 治ったのか? どこも痛くないのか?」

「お姉ちゃんこれは?」

「ヒレー!」

 そう叫んでモモはヒレーを引き寄せて抱きしめる。
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