裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる

文字の大きさ
53 / 574
飲みに行こう

飲みに行こう 5

しおりを挟む
「い、イチャつくってぼ、ぼぼ、僕は男です!」

「うるさくしてずみまぜんでじだ!」

 2人のその態度は女を更に激昂させる。ガタッと椅子から立ち上がり声を上げた。

「とにかくうるさいって言ってんだ!! 静かに酒も飲めないのお前らは!!」

「申し訳ありません、ムツヤ殿、ユモト、流石に騒ぎすぎです。もう帰りましょうか」

 ムツヤとユモトの代わりにモモが謝罪をするが相手の勢いは止まらない。

「そんで、そこのお前。ハーレムがどうとか言ってたけど冒険者舐めてんの?」

「え、入りたいんでずか?」

「誰がっ!!」

 ムツヤの言葉に対して赤髪の女が怒鳴ると、ギルド中の全員がこちらの様子を伺っており、視線を独り占めしていた。

「ムツヤ殿!! も、申し訳ない! 帰りますのでどうかお許しを……」

「そうかそうか、ハーレムをねぇ…… それじゃあ私と喧嘩して勝ったらハーレムだろうがなんだろうが入ってやるよ。負けたら二度とこのギルドに来るんじゃないよ?」

 まずい事になったとモモは思った。相手の力は未知数だが、酔っ払ったムツヤは何をしでかすか分からない。

 あの桁違いな強さで圧倒してしまったらそれはそれで問題になるし、負けても冒険者ギルドに来られなくなってしまうかもしれないのだ。

 それ以前に問題を起こすこと自体が一番してはいけない事だ。

「騒がしくしたこと、無礼なことを言ってしまった事は謝りますのでどうか見逃していただけませんか?」

 モモがそう言って頭を下げるも。

「やったー!! 夢に一歩近づけまずよー!!」

「やりましたね、ムツヤさん」

 2人は火に油を注ぎ続ける。しかしそこでムツヤはハッとして言う。

「いや、でも喧嘩はダメだってじいちゃんが言っでましだ、だからやっぱり駄目です」

「安心しな、闘技場で素手で戦ってやるよ、新米のあんたが私を傷付けるなんて出来ないし、あんたの事も半殺しで勘弁してやるよ」

 女はニヤリと笑ってそう言った。

「でも喧嘩はダメですよ!」

「じゃあ言い方を変えよう、試合だ試合。それなら良いだろう?」

「それならオッケーでず!!」

 アホのムツヤはあっさりと親指を立てて言った。その瞬間今度はユモトがあっと驚いて話し始める。

「あの人『赤髪の勇者アシノ』ですよ!」

 赤髪の勇者と言えばモモも聞いたことがある。かつて魔人を倒せるのではないかと言われていた有名な冒険者出身の勇者だ。

 それが何故こんな所に居るのか謎だし、本当に本人か分からないが、この戦いは絶対に止めなくてはいけない。

「数々の無礼をどうかお許しください。ムツヤ殿、帰りますよ」

「でもあんたのお仲間、やる気満々みたいだけど」

「えっ、ってムツヤ殿おぉぉ!?」

 アシノの指を差す先には腕と足を伸ばして準備運動をしているムツヤの姿があった、ギルド内からもいいぞやれやれとヤジが飛んでいる。

「試合なら良いじゃないですかモモさん」

 酒が入っていることによってムツヤは冷静さを失っていた。モモは引っ張ってでも帰ろうと決意をしたその時だ。

 酒場の奥からぬらりと現れたのは、あの忌々しい仮面をつけた人間だ。

 そいつは走り出し、ギルドの人間を押しのけてあっという間にムツヤのカバンをひったくった。

 騒然となるギルド内、仮面の人間はギルドの窓ガラスを割って外に逃げる。

「おい、今の仮面ってキエーウのじゃ……」

 誰かがそう言った。間違いない。

 モモも忘れはしない、あの仮面は亜人を滅ぼそうとしているキエーウのメンバーが付ける仮面だった。一瞬出遅れたがムツヤは走り出してその後を追いかけた。

「ユモト、ヨーリィ、ムツヤ殿を追うぞ!」

「は、はい!」

「了解しました」

 更に出遅れてモモ達も後を追う、そして1人残されたアシノだが、彼女の取った行動は。

「ちょうどムカムカして暴れたかったんだ、アイツは気に入らないがギルドで泥棒するなんていい度胸じゃねーか」

 未開封のワインボトルを1本持って走り出した。

 ムツヤは信じられない速さで走り、街の外へと向かう泥棒に追いつこうとしていたが、その目の前に2人仮面をつけた人間が剣を抜いて立ちふさがる。

 ムツヤは右側の敵を裏拳で殴り飛ばし、そのままの勢いでもう1人の敵を蹴り飛ばす。

 相手は加速の魔法を使っているのか、人混みを縫って街の外へ出てしまった。

 だが、ムツヤは逃がすことはしない。街はどんどん遠ざかっていく。そして敵は森の中に逃げ込んだ。

 どこまで逃げるつもりかムツヤは考えていたが、意外にも泥棒はパタリと止まり、振り返って言ってきた。

「お前、裏世界の住人だろう」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...