裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる

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レッツゴー拷問師

レッツゴー拷問師 4

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 音の妨害魔法は使用者が外にいる場合、使用者にだけは音が聞こえる。

 ムツヤが何かの気配を察知したらしくハッとした顔をした。それを見逃さずアシノは尋ねる。

「何かあったのかムツヤ?」

「いえ、中で何か倒れる物音がして」

 それを聞いて迷わずアシノは小屋の扉を開けた。

「ルー、どうした…… って何してんだ!?」

 扉の先ではリースが椅子に縛られたまま泡を吹いて倒れている。

「な、何もしていないわよ!!! 私の愛情たっぷり手作りクッキーを食べさせただけで」

「とんでもないことしてんじゃねーかよ!!!」

 悪い勇者と良い召喚術師作戦は『料理の腕の悪い召喚術師』によって見事に失敗した。




 リースは夢を見ていた。今はなき母親の体温を頭に感じて眠る夢だ。

「おっかあさん!!」

 そう言ってリースが飛び起きると、上半身を抱きかかえて居たモモはビクッと驚く。

「……って、オーグ!! 触んな!! オーグになんて触られたくねぇだ!!」

 リースの自由になっている右手がモモの頬をピシャリと叩いた。だが、モモは怒るでも悲しむでもなく、表情を変えずにいた。

「お前の身の上は聞いた。私の同族が本当に済まない」

 それを聞いてバタバタ暴れるのをリースは辞めた。

「謝って済む問題じゃねぇべ!!!」

「すまない、それでも謝ることしか私にはできない」

 リースは脱力してモモにもたれ掛かかる。

「もしかしたら……」

 モモはポツリという。

「もしかしたら、私もお前みたいに人間を憎んでいたかもしれない…… いや、正確には一時だが恨んでいた」

「私の村に、キエーウの1人が来て村人を無差別に斬り殺していった。私の妹も深手を負い、ムツヤ殿が居なければ危なかったかもしれない」

 それを聞いてリースはモモの顔を思わず見る。

「私は、私は出来れば人と憎み合いたくない。綺麗事だろうが、キエーウのメンバーも…… できれば殺すことはしたくない」

 リースはルー特製の愛情たっぷり毒クッキーのせいで体が痺れているのもあるが、完全にモモに体を預けていた。

「沢山の犠牲を出したくはない。裏の道具をむやみに使えば不幸になる」

「だども!!」

 何かを言いかけてリースは黙った。その後、言葉を出す。

「何が言いてえだ……」

「リース、キエーウの本拠地を教えてくれ。ムツヤ殿が入れば犠牲は少なく…… いや、犠牲無くしてキエーウを壊滅できるかもしれない」

「わだしに裏切れっでのが?」

 モモは目を閉じて、そしてまたリースを見つめて言う。

「私は人と亜人の憎しみの連鎖を断ち切りたいんだ」

「それなら……」

 さっき出しかけた言葉をリースは吐き出す。

「わたすの…… お母ちゃんとお父ちゃんを返せ!!! そしたらキエーウでも何でも…… やめてやるだ……」

 最後は感情が噴き出して涙声になっていた。それに対してモモは残念そうに首を横に振ることしか出来ない。

「すまない、死んだ人間はどうやっても生き返らないんだ……」

 モモは腰の剣を取り外して地面に置いた。リースを含めみんな何事かとそれを黙ってみている。

「どうしても、どうしてもオークが憎いのならば。この剣で私を斬ってくれ。その代わりもうオークも他の亜人も手にかけないと誓ってくれ」

「モモちゃん!!」

 ルーが近付こうとするが、アシノが手で遮って制止する。

 リースはモモから離れて地面に置かれた剣へ、いったん躊躇するも、手を伸ばす。モモは座ったまま目を閉じていた。
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