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おっさん勇者
おっさん勇者 4
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それは突然だった。
空に暗雲が立ち込め、人影が見える。
「なっ!?」
空を見上げてイタヤが声を出す。
「何だ、向こうからおいでなさったか」
アシノが言うと同時に馬車を止めて、皆が外に飛び出た。
「皆さん、私をお探しのようで」
「ドエロスミス将軍!!」
「ギュウドーだ!! このバカ娘が!!」
魔人に対してルーが名前を間違えると、激昂する。
ムツヤが飛び上がってギュウドーを斬りつけようとするが、軽々と躱されてしまう。
「まぁまぁ、そう慌てずに。皆さんゲームをしましょう」
「そんなもんに付き合う義理は無いね」
イタヤは聖剣ロネーゼを振り、光の刃を飛ばす。
「ほう、聖剣ですか。ですが、まだまだですね」
軽くそれを手で弾いてギュウドーは話し続ける。
「私は皆さんが抗い、絶望する様が見たい。明日、私の部下がこの近くの街を襲います」
「何だと!?」
アシノが言うとニヤリと相手は笑う。
「あの時のように上手く行くとは思わないで下さい。私は一つ一つ街を潰し、最後に王都を潰します」
それだけ言ってギュウドーは高笑いをしながら飛び去ってしまった。
「まずいな、あの魔人の野郎……」
ムツヤ達はイタヤが怒りを顕にしている顔を初めて見る。
「急ぐぞ、まだ王都へ連絡石の届く距離だ。私が信号を送っておく」
一行は急ぎ近くの街『ルマ』へ向かった。
ルマは王都から近いこともあり、そこそこ発展している街で、人口も数千人は居る。
1時間と少し、馬車を走らせ、やっとたどり着いた。街の外の衛兵を捕まえてアシノは言う。
「勇者アシノです。単刀直入に言います。明日、魔人がこの街を攻めると言っていました。周辺の治安維持部隊や冒険者ギルドへの連絡。住民への避難をお願いします」
伝えられた衛兵は驚くも、直ぐに街の中へと駆けて消えてゆく。
「私達もこの街の冒険者ギルドへ向かうぞ」
「はい!!」
アシノの言葉に皆で返事をした。そしてゾロゾロと向かうと、勇者アシノとイタヤだという事に気付いた一部の住民が、何事かとこちらを見ていた。
立派な赤いレンガの冒険者ギルドへ入ると受付嬢がすっ飛んできた。
「アシノ様、イタヤ様ですね!? お待ちしておりました!! 応接室へご案内します!!」
「えぇ、お願いします」
イタヤが言うと、受付嬢は急ぎ足でギルドの奥へと向かう。その後をムツヤ達は着いて行った。
「お待ちしておりました。どうぞお掛け下さい」
この街のギルドマスターが浮かない顔をして待っていた。
「まさか、この街が魔人に狙われるとは……」
「心中お察しいたします」
アシノが言うと、ギルドマスターはふぅーっと息を吐いてからこちらを見据えた。
「治安維持部隊とは非常事態の訓練をしてきました。明日はその通り動こうと思っておりますが……」
「相手が魔人ではイレギュラーな事が多いですね」
「まずは住民の安全が最優先だ。住民に避難勧告を……」
イタヤが言うと、アシノが待ったをかけた。
「いえ、逃げている住民を守りながら闘うのは、はっきり言って無理でしょう」
「確かにそうだが……」
「それに、魔人が明日必ず襲うという保証はありません。もしかしたらこの街に注意を引きつけて、他の街を攻めるかもしれないです」
「そ、そうですね……」
イタヤは正義感から住民を第一に考えて、浅い考えを言ってしまった事を恥じる。
「アシノ様の言う通りだよ。あんた、しっかりしなよ」
「わ、悪い」
ウリハにも言われてイタヤは少し落ち込んだようになってしまう。
「ですから、まずはこの街を守り、早急に魔人の根城を探すことが最優先なのです」
冒険者のギルドマスターや幹部、そして治安維持部隊との話し合いで、住民は魔人が去るまで家の中でジッとしていること、戦いは街の外で食い止める事が決まった。
アシノ達は近くの宿屋を紹介され、そこで戦いまで身を休めることになる。
「何か、今日も俺ダメダメだったな」
隣の部屋ではイタヤが力なく笑っていた。
「兄さん……」
妹のサワは心配そうに兄を見ている。
「やっぱ、俺みたいにおっさんになってから勇者になった奴じゃ、ホントの勇者には勝てないわ」
「なに弱気になってんだい!!」
ウリハが立ち上がってイタヤを見た。
「おっさんだろうが何だろうが、あんたは勇者だ」
「いやー、そうなんだけど、やっぱ若くて才能ある子を見ちゃうとね……」
「待ってな、ビンタして気合い入れてやる」
「ちょっ、ちょっとウリハ待って!!!」
空に暗雲が立ち込め、人影が見える。
「なっ!?」
空を見上げてイタヤが声を出す。
「何だ、向こうからおいでなさったか」
アシノが言うと同時に馬車を止めて、皆が外に飛び出た。
「皆さん、私をお探しのようで」
「ドエロスミス将軍!!」
「ギュウドーだ!! このバカ娘が!!」
魔人に対してルーが名前を間違えると、激昂する。
ムツヤが飛び上がってギュウドーを斬りつけようとするが、軽々と躱されてしまう。
「まぁまぁ、そう慌てずに。皆さんゲームをしましょう」
「そんなもんに付き合う義理は無いね」
イタヤは聖剣ロネーゼを振り、光の刃を飛ばす。
「ほう、聖剣ですか。ですが、まだまだですね」
軽くそれを手で弾いてギュウドーは話し続ける。
「私は皆さんが抗い、絶望する様が見たい。明日、私の部下がこの近くの街を襲います」
「何だと!?」
アシノが言うとニヤリと相手は笑う。
「あの時のように上手く行くとは思わないで下さい。私は一つ一つ街を潰し、最後に王都を潰します」
それだけ言ってギュウドーは高笑いをしながら飛び去ってしまった。
「まずいな、あの魔人の野郎……」
ムツヤ達はイタヤが怒りを顕にしている顔を初めて見る。
「急ぐぞ、まだ王都へ連絡石の届く距離だ。私が信号を送っておく」
一行は急ぎ近くの街『ルマ』へ向かった。
ルマは王都から近いこともあり、そこそこ発展している街で、人口も数千人は居る。
1時間と少し、馬車を走らせ、やっとたどり着いた。街の外の衛兵を捕まえてアシノは言う。
「勇者アシノです。単刀直入に言います。明日、魔人がこの街を攻めると言っていました。周辺の治安維持部隊や冒険者ギルドへの連絡。住民への避難をお願いします」
伝えられた衛兵は驚くも、直ぐに街の中へと駆けて消えてゆく。
「私達もこの街の冒険者ギルドへ向かうぞ」
「はい!!」
アシノの言葉に皆で返事をした。そしてゾロゾロと向かうと、勇者アシノとイタヤだという事に気付いた一部の住民が、何事かとこちらを見ていた。
立派な赤いレンガの冒険者ギルドへ入ると受付嬢がすっ飛んできた。
「アシノ様、イタヤ様ですね!? お待ちしておりました!! 応接室へご案内します!!」
「えぇ、お願いします」
イタヤが言うと、受付嬢は急ぎ足でギルドの奥へと向かう。その後をムツヤ達は着いて行った。
「お待ちしておりました。どうぞお掛け下さい」
この街のギルドマスターが浮かない顔をして待っていた。
「まさか、この街が魔人に狙われるとは……」
「心中お察しいたします」
アシノが言うと、ギルドマスターはふぅーっと息を吐いてからこちらを見据えた。
「治安維持部隊とは非常事態の訓練をしてきました。明日はその通り動こうと思っておりますが……」
「相手が魔人ではイレギュラーな事が多いですね」
「まずは住民の安全が最優先だ。住民に避難勧告を……」
イタヤが言うと、アシノが待ったをかけた。
「いえ、逃げている住民を守りながら闘うのは、はっきり言って無理でしょう」
「確かにそうだが……」
「それに、魔人が明日必ず襲うという保証はありません。もしかしたらこの街に注意を引きつけて、他の街を攻めるかもしれないです」
「そ、そうですね……」
イタヤは正義感から住民を第一に考えて、浅い考えを言ってしまった事を恥じる。
「アシノ様の言う通りだよ。あんた、しっかりしなよ」
「わ、悪い」
ウリハにも言われてイタヤは少し落ち込んだようになってしまう。
「ですから、まずはこの街を守り、早急に魔人の根城を探すことが最優先なのです」
冒険者のギルドマスターや幹部、そして治安維持部隊との話し合いで、住民は魔人が去るまで家の中でジッとしていること、戦いは街の外で食い止める事が決まった。
アシノ達は近くの宿屋を紹介され、そこで戦いまで身を休めることになる。
「何か、今日も俺ダメダメだったな」
隣の部屋ではイタヤが力なく笑っていた。
「兄さん……」
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「やっぱ、俺みたいにおっさんになってから勇者になった奴じゃ、ホントの勇者には勝てないわ」
「なに弱気になってんだい!!」
ウリハが立ち上がってイタヤを見た。
「おっさんだろうが何だろうが、あんたは勇者だ」
「いやー、そうなんだけど、やっぱ若くて才能ある子を見ちゃうとね……」
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「ちょっ、ちょっとウリハ待って!!!」
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追記:2025/09/20
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