裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる

文字の大きさ
421 / 574
ルマでの戦い

ルマでの戦い 9

しおりを挟む
「ちょ、待ってくれよアシノさん!! 青い鎧の冒険者は飛んでいったっていうか、何かに連れ去られたって感じだったぜ?」

 イタヤが言うと、それに対しアシノは意見を言う。

「その連れ去った者が、青い鎧の冒険者の仲間である可能性もあります。どちらにせよ、彼、または彼女は、敵か味方かまだわかりませんね」

 イタヤは思わずしまったと思った。余計なことを言ったなと。アシノの話を聞いてギルドマスターが口を開く。

「連れ去った者が魔の者だとしたら、魔人同士の縄張り争い……。まさか、青い鎧の冒険者も魔人の可能性が……」

「その可能性は否定しきれませんね。魔人か、あるいは別の魔人の配下か……」

 アシノがそう言うと、部屋は静まり返ってしまった。

「どちらにせよ、青い鎧の冒険者を捜索そうさくせねばなりませんね」

「えぇ、アシノ様の仰ることに私も同意です」

 ギルドマスターは頷いて言った。そして、軍の幹部も口を開く。

「私もこの一件は国に、国王に報告をします」

「私達は青い鎧の冒険者の捜索にあたることもお伝え下さい。彼を探すことが魔人へ近付く近道である事は間違いないでしょうから」

「承りました、それでは私は戦いの後処理をしますので、これにて失礼します」

 軍の幹部はそう言い残し、部下とともに部屋を出ていった。

「私も同じく、まだ街は混乱状態にありますので……」

「はい、かしこまりました」

 アシノが返事をすると治安維持部隊の隊長も、部屋を離れる。

「報告は以上です。我々も戦いの消耗がありますので少し休みを頂きたいのですが」

「えぇ、この度は本当に感謝します。勇者イタヤ様、アシノ様、お仲間の皆様」

 街の議長、その他お偉いさんが頭を下げる。こちらも一礼を返して部屋を出た。

 そして、街の中心にある仮設の救護所まで向かう。ここには怪我人や、戦死者が運ばれてきていた。

 回復魔法を使えるサワが治療に当たっていたので、その様子を見に来たのだ。

 正直、モモやユモトは今すぐにでもムツヤを助けたい気持ちでいっぱいだったが、外でそれを話すわけにもいかない。

 アシノには何か考えがあるのだろうと思い、ここはグッと堪えた。

 イタヤは布を掛けられた犠牲者の前で黙祷をする。皆もそれに習って目を瞑った。

「犠牲者が出るってことは、俺が勇者として未熟だってことだ。俺が強ければこの人達も……」

「イタヤ、1人で背負いすぎだ」

 ウリハに言われて、力なくハハッとイタヤは笑う。

「そんな考え方では勇者とはいえ、心が壊れてしまいますよ」

 アシノにも言われてイタヤは頭をかいた。妹のサワを探すと、それと共にとある光景が飛び込んでくる。

 戦いの前に、イタヤに声を掛けてきた冒険者パーティ、そのリーダーが包帯を真っ赤に染めて虫の息だったのだ。

「お、お前!!!」

「兄さん…… この方は……」

 誰が見ても助からない状況だった。イタヤはハッとしポケットにしまっていた回復薬に手をかけるが、アシノに止められてしまう。

「イタヤさん、少し良いですか」

「いや、少しって言ったって、このままじゃこいつが死んじまう!! アシノさん止めないでくれ!!」

 その時、ウリハが無言でイタヤの胸ぐらを掴んだ。

「冷静になれ、勇者イタヤ」

「ぐっ…… これが冷静で居られるかよ!!」

「ほんの2分時間を下さい」

 アシノが言うと、ウリハも手を離す。

 イタヤは大人しく路地裏へ消えるアシノの後を着いていく。

「ユモト、空間に音の妨害魔法を張ってくれ」

「はい!」

 ユモトは練習の甲斐もあり、空間に音の妨害魔法を張ることが出来るようになっていた。

「ムツヤが居ない今、回復薬は貴重です。今後私達が瀕死になるかもしれない」

 淡々と言うアシノにイタヤは感情を表に出して言う。

「それじゃ、あいつを見捨てろって事ですか!? 助けられるのに!!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...