裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる

文字の大きさ
469 / 574
下剋上

下剋上 2

しおりを挟む
「外って言ったって、この部屋には鍵が掛かってるし、もし見つかったら……」

「大丈夫だよ、少し見るだけだから」

 ナツヤは悩んだが、フユミトにそう言われると、不思議と外を見たくなった。

「わかった」

 他の労働者を起こさないように扉の前へ行くと、フユミトがドアノブを握る。

「解錠せよ」

 ガチャンと音がなり、鍵が開く。こっそりと外へ抜け出し、次の瞬間には空に目が移っていた。

 夜空には流星群が飛び交っている。しかし、どうにも距離が近い気がした。

 そして、その星だと思っていた何かが1つこちらへ近付いてくる。

 何が起こったのか分からないナツヤは「え、えっ!?」と声を出してあたふたとした。

 だが、こちらへやって来る頃には、その何かは速度を落とし、ゆっくりと降って落ちる。

 ナツヤの足元には1本の杖が転がっていた。

「ナツヤ、それ拾ってみたら?」

「な、何だよこれ、何が起きてんだよ!!」

 パニックになるナツヤと対象的に、フユミトは笑顔で涼しい顔をしている。

「これ、触って大丈夫なのか?」

 ナツヤは恐る恐る杖を手に持つ。その瞬間、後ろから声がした。

「何事かと思って来てみたら、テメーら抜け出しやがったな!!」

 ナツヤはその聞き覚えのある声にビクリとした。この現場の監督と、護衛の元冒険者が数人、剣を構えてこちらに向かって来ている。

「こ、殺される!! フユミト……」

 すがるような顔でフユミトを見た。

「お、お前のせいでこうなったんだぞ!! お前強いんだからどうにかしろよ!!」

「相手は剣を持ってる。魔法も使えるみたいだ、僕じゃ勝てないよ」

「そんな!!」

 そう言っている間にもずんずんとこちらへ向かってきている。そんな時、フユミトが言った。

「祈ってみたら? その杖を握ってさ」

 祈る? 馬鹿かと思った、神なんて居ない。神が居たら自分のような人生を歩む人間なんて居ない。

「ぐ、くそ!! 誰か助けてくれ!!!」

 ナツヤが叫ぶと、杖が光り、屈強そうな熊型の魔物、カマキリの魔物、その他にも魔物たちが現れた。

「なっ!!」

 ナツヤと敵は同じ反応をした。どういう事だと。魔物達はナツヤを背にして取り囲んだ。

 絶体絶命かと思っていたが、どういう事か、熊型の魔物が突進し、いともたやすく監督を鋭い爪で引き裂いた。

「な、何だこれ!! 何だ!!」

 護衛達はその光景を見て慌てふためく。カマキリ型の魔物も羽ばたいて護衛の元へと向かった。

「っく、この!!」

 剣を構えて対峙するが、大鎌で袈裟斬りに真っ二つにされる護衛。それを見て他の護衛は逃げ出そうとするが、狼型の魔物に追いかけられ、食い散らかされた。

「ふ、フユミト、これ、コレ何なんだ!?」

「分からないけど、僕が思うに、その杖のせいじゃないかな?」

「この杖……?」

 訳が分からない、空から降ってきた杖を握ったら、魔物が現れた。そして、それらは現場監督や護衛を殲滅してしまう。

「殺しちゃったね、監督も護衛も」

 フユミトはクスクスと笑う。

「お、お前、フユミト!! 何か知ってるのか?」

「いや、空から魔力の塊が落ちてくるから見に行こうとしただけで、その杖のことは何も知らないよ」

 この時、ナツヤは、何故かフユミトは嘘をつかない人間だと信じていた。

「で、でもこれどーすんだよ!! どうすれば……」

「この状況は、そうだね、チャンスかな?」

 ナツヤは最悪の状況を考えていたので、フユミトの言葉に疑問符が浮かぶ。

「ねぇ、その杖を握って魔物のことを考えてみてよ。出来るだけ強いやつ」

「え、あ、おう……」

 頭が回っていないナツヤはそう返事をして言われるがままにやってみる。

 光が現れ、その中から馬に乗り、黒い鎧を身にまとった騎士が現れた。驚いてナツヤは目を見開く。

「お呼びですか、我があるじ

 しかも、言葉を話す。どういうことかとナツヤはフユミトを見た。

「主だってさ」

 相変わらずフユミトは笑顔だった。ナツヤはまた騎士を見る。

「え、えっと」

「騎士さん、ナツヤも僕も状況が分からないんだ。説明してくれないかい?」

 フユミトが言うと、頭の兜を脱がずに騎士は話し始める。

「その杖を初めてお持ちになり、願いを込めた方が我らの主となります。お名前はナツヤ様でお間違えございませんか?」

「あ、えっと、はい」

「ナツヤ様は我ら魔物の主となりました。何なりとご命令をお願い致します」

「凄いねナツヤ。魔物の王様だよ」

 軽い口調でフユミトが言うが、ナツヤは必死に考えていた。魔物の王様という言葉に。

「ねぇ、ナツヤ。その杖でここから逃げようよ」

 逃げる。ナツヤが今まで何度も考えた選択肢だ。だが、現実は非情であり、何も出来なかった。

 今の話が本当であれば、今、手にあるのは僅かな希望だ。

「逃げたい、逃げたいよ俺も!! でもどうすれば良いのか」

「魔物に頼んでみたら?」

 フユミトは目線を騎士に移して言う。ナツヤは心臓がバクバクとし、意識も遠のきそうだったが、言った。

「俺を、俺をここから逃して下さい!!!」

「かしこまりました」

 その言葉を聞いて、ナツヤは涙が流れた。やっと、やっと自由になれるかもしれないと。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...