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下剋上
下剋上 2
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「外って言ったって、この部屋には鍵が掛かってるし、もし見つかったら……」
「大丈夫だよ、少し見るだけだから」
ナツヤは悩んだが、フユミトにそう言われると、不思議と外を見たくなった。
「わかった」
他の労働者を起こさないように扉の前へ行くと、フユミトがドアノブを握る。
「解錠せよ」
ガチャンと音がなり、鍵が開く。こっそりと外へ抜け出し、次の瞬間には空に目が移っていた。
夜空には流星群が飛び交っている。しかし、どうにも距離が近い気がした。
そして、その星だと思っていた何かが1つこちらへ近付いてくる。
何が起こったのか分からないナツヤは「え、えっ!?」と声を出してあたふたとした。
だが、こちらへやって来る頃には、その何かは速度を落とし、ゆっくりと降って落ちる。
ナツヤの足元には1本の杖が転がっていた。
「ナツヤ、それ拾ってみたら?」
「な、何だよこれ、何が起きてんだよ!!」
パニックになるナツヤと対象的に、フユミトは笑顔で涼しい顔をしている。
「これ、触って大丈夫なのか?」
ナツヤは恐る恐る杖を手に持つ。その瞬間、後ろから声がした。
「何事かと思って来てみたら、テメーら抜け出しやがったな!!」
ナツヤはその聞き覚えのある声にビクリとした。この現場の監督と、護衛の元冒険者が数人、剣を構えてこちらに向かって来ている。
「こ、殺される!! フユミト……」
すがるような顔でフユミトを見た。
「お、お前のせいでこうなったんだぞ!! お前強いんだからどうにかしろよ!!」
「相手は剣を持ってる。魔法も使えるみたいだ、僕じゃ勝てないよ」
「そんな!!」
そう言っている間にもずんずんとこちらへ向かってきている。そんな時、フユミトが言った。
「祈ってみたら? その杖を握ってさ」
祈る? 馬鹿かと思った、神なんて居ない。神が居たら自分のような人生を歩む人間なんて居ない。
「ぐ、くそ!! 誰か助けてくれ!!!」
ナツヤが叫ぶと、杖が光り、屈強そうな熊型の魔物、カマキリの魔物、その他にも魔物たちが現れた。
「なっ!!」
ナツヤと敵は同じ反応をした。どういう事だと。魔物達はナツヤを背にして取り囲んだ。
絶体絶命かと思っていたが、どういう事か、熊型の魔物が突進し、いともたやすく監督を鋭い爪で引き裂いた。
「な、何だこれ!! 何だ!!」
護衛達はその光景を見て慌てふためく。カマキリ型の魔物も羽ばたいて護衛の元へと向かった。
「っく、この!!」
剣を構えて対峙するが、大鎌で袈裟斬りに真っ二つにされる護衛。それを見て他の護衛は逃げ出そうとするが、狼型の魔物に追いかけられ、食い散らかされた。
「ふ、フユミト、これ、コレ何なんだ!?」
「分からないけど、僕が思うに、その杖のせいじゃないかな?」
「この杖……?」
訳が分からない、空から降ってきた杖を握ったら、魔物が現れた。そして、それらは現場監督や護衛を殲滅してしまう。
「殺しちゃったね、監督も護衛も」
フユミトはクスクスと笑う。
「お、お前、フユミト!! 何か知ってるのか?」
「いや、空から魔力の塊が落ちてくるから見に行こうとしただけで、その杖のことは何も知らないよ」
この時、ナツヤは、何故かフユミトは嘘をつかない人間だと信じていた。
「で、でもこれどーすんだよ!! どうすれば……」
「この状況は、そうだね、チャンスかな?」
ナツヤは最悪の状況を考えていたので、フユミトの言葉に疑問符が浮かぶ。
「ねぇ、その杖を握って魔物のことを考えてみてよ。出来るだけ強いやつ」
「え、あ、おう……」
頭が回っていないナツヤはそう返事をして言われるがままにやってみる。
光が現れ、その中から馬に乗り、黒い鎧を身にまとった騎士が現れた。驚いてナツヤは目を見開く。
「お呼びですか、我が主」
しかも、言葉を話す。どういうことかとナツヤはフユミトを見た。
「主だってさ」
相変わらずフユミトは笑顔だった。ナツヤはまた騎士を見る。
「え、えっと」
「騎士さん、ナツヤも僕も状況が分からないんだ。説明してくれないかい?」
フユミトが言うと、頭の兜を脱がずに騎士は話し始める。
「その杖を初めてお持ちになり、願いを込めた方が我らの主となります。お名前はナツヤ様でお間違えございませんか?」
「あ、えっと、はい」
「ナツヤ様は我ら魔物の主となりました。何なりとご命令をお願い致します」
「凄いねナツヤ。魔物の王様だよ」
軽い口調でフユミトが言うが、ナツヤは必死に考えていた。魔物の王様という言葉に。
「ねぇ、ナツヤ。その杖でここから逃げようよ」
逃げる。ナツヤが今まで何度も考えた選択肢だ。だが、現実は非情であり、何も出来なかった。
今の話が本当であれば、今、手にあるのは僅かな希望だ。
「逃げたい、逃げたいよ俺も!! でもどうすれば良いのか」
「魔物に頼んでみたら?」
フユミトは目線を騎士に移して言う。ナツヤは心臓がバクバクとし、意識も遠のきそうだったが、言った。
「俺を、俺をここから逃して下さい!!!」
「かしこまりました」
その言葉を聞いて、ナツヤは涙が流れた。やっと、やっと自由になれるかもしれないと。
「大丈夫だよ、少し見るだけだから」
ナツヤは悩んだが、フユミトにそう言われると、不思議と外を見たくなった。
「わかった」
他の労働者を起こさないように扉の前へ行くと、フユミトがドアノブを握る。
「解錠せよ」
ガチャンと音がなり、鍵が開く。こっそりと外へ抜け出し、次の瞬間には空に目が移っていた。
夜空には流星群が飛び交っている。しかし、どうにも距離が近い気がした。
そして、その星だと思っていた何かが1つこちらへ近付いてくる。
何が起こったのか分からないナツヤは「え、えっ!?」と声を出してあたふたとした。
だが、こちらへやって来る頃には、その何かは速度を落とし、ゆっくりと降って落ちる。
ナツヤの足元には1本の杖が転がっていた。
「ナツヤ、それ拾ってみたら?」
「な、何だよこれ、何が起きてんだよ!!」
パニックになるナツヤと対象的に、フユミトは笑顔で涼しい顔をしている。
「これ、触って大丈夫なのか?」
ナツヤは恐る恐る杖を手に持つ。その瞬間、後ろから声がした。
「何事かと思って来てみたら、テメーら抜け出しやがったな!!」
ナツヤはその聞き覚えのある声にビクリとした。この現場の監督と、護衛の元冒険者が数人、剣を構えてこちらに向かって来ている。
「こ、殺される!! フユミト……」
すがるような顔でフユミトを見た。
「お、お前のせいでこうなったんだぞ!! お前強いんだからどうにかしろよ!!」
「相手は剣を持ってる。魔法も使えるみたいだ、僕じゃ勝てないよ」
「そんな!!」
そう言っている間にもずんずんとこちらへ向かってきている。そんな時、フユミトが言った。
「祈ってみたら? その杖を握ってさ」
祈る? 馬鹿かと思った、神なんて居ない。神が居たら自分のような人生を歩む人間なんて居ない。
「ぐ、くそ!! 誰か助けてくれ!!!」
ナツヤが叫ぶと、杖が光り、屈強そうな熊型の魔物、カマキリの魔物、その他にも魔物たちが現れた。
「なっ!!」
ナツヤと敵は同じ反応をした。どういう事だと。魔物達はナツヤを背にして取り囲んだ。
絶体絶命かと思っていたが、どういう事か、熊型の魔物が突進し、いともたやすく監督を鋭い爪で引き裂いた。
「な、何だこれ!! 何だ!!」
護衛達はその光景を見て慌てふためく。カマキリ型の魔物も羽ばたいて護衛の元へと向かった。
「っく、この!!」
剣を構えて対峙するが、大鎌で袈裟斬りに真っ二つにされる護衛。それを見て他の護衛は逃げ出そうとするが、狼型の魔物に追いかけられ、食い散らかされた。
「ふ、フユミト、これ、コレ何なんだ!?」
「分からないけど、僕が思うに、その杖のせいじゃないかな?」
「この杖……?」
訳が分からない、空から降ってきた杖を握ったら、魔物が現れた。そして、それらは現場監督や護衛を殲滅してしまう。
「殺しちゃったね、監督も護衛も」
フユミトはクスクスと笑う。
「お、お前、フユミト!! 何か知ってるのか?」
「いや、空から魔力の塊が落ちてくるから見に行こうとしただけで、その杖のことは何も知らないよ」
この時、ナツヤは、何故かフユミトは嘘をつかない人間だと信じていた。
「で、でもこれどーすんだよ!! どうすれば……」
「この状況は、そうだね、チャンスかな?」
ナツヤは最悪の状況を考えていたので、フユミトの言葉に疑問符が浮かぶ。
「ねぇ、その杖を握って魔物のことを考えてみてよ。出来るだけ強いやつ」
「え、あ、おう……」
頭が回っていないナツヤはそう返事をして言われるがままにやってみる。
光が現れ、その中から馬に乗り、黒い鎧を身にまとった騎士が現れた。驚いてナツヤは目を見開く。
「お呼びですか、我が主」
しかも、言葉を話す。どういうことかとナツヤはフユミトを見た。
「主だってさ」
相変わらずフユミトは笑顔だった。ナツヤはまた騎士を見る。
「え、えっと」
「騎士さん、ナツヤも僕も状況が分からないんだ。説明してくれないかい?」
フユミトが言うと、頭の兜を脱がずに騎士は話し始める。
「その杖を初めてお持ちになり、願いを込めた方が我らの主となります。お名前はナツヤ様でお間違えございませんか?」
「あ、えっと、はい」
「ナツヤ様は我ら魔物の主となりました。何なりとご命令をお願い致します」
「凄いねナツヤ。魔物の王様だよ」
軽い口調でフユミトが言うが、ナツヤは必死に考えていた。魔物の王様という言葉に。
「ねぇ、ナツヤ。その杖でここから逃げようよ」
逃げる。ナツヤが今まで何度も考えた選択肢だ。だが、現実は非情であり、何も出来なかった。
今の話が本当であれば、今、手にあるのは僅かな希望だ。
「逃げたい、逃げたいよ俺も!! でもどうすれば良いのか」
「魔物に頼んでみたら?」
フユミトは目線を騎士に移して言う。ナツヤは心臓がバクバクとし、意識も遠のきそうだったが、言った。
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その言葉を聞いて、ナツヤは涙が流れた。やっと、やっと自由になれるかもしれないと。
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今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
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