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ガラスの王冠
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ある国に、それはそれはワガママな王様がいました。
どれぐらいワガママなのかというと、1度着た服は2度と着なかったり、靴は外出する度に使い捨て。歩く事が嫌いなので、庭でさえ馬に乗っているという有り様です。使用人達は王様の前ではニコニコしていましたが、陰では王様を悪く言っていたのです。そんな事とは露知らず、王様は今日もワガママ全快。
「今日のランチは山のてっぺんで食べたい。馬車を用意せよ」
使用人達は、馬車に必要な荷物を詰め込んで山へと向かいました。国一番のシェフが、ゼェゼェ言いながらついて行きます。ところが、山頂に着く直前。王様を乗せた馬車が崖から落ちてしまいました。
あまりにもあっという間の出来事で、皆見ているしかありませんでした。王様が崖から落ちた事は、国民に知られる訳にはいきません。だって、ワガママで山頂へ行った事がバレでしまいます。そこで、使用人達は手分けして王様を探しに行きました。
「どこだ、ここは?」
王様は気がつくと、小さな家にいました。
「なんだ、この粗末なベッドは?」
いつもはマシュマロみたくフカフカなベッドで寝ている王様は、硬いベッドに不満顔です。
「おまけに何だこれは!」
いつも着ているシルクの服はどこかに行っていて、王様は肌着1枚です。王様は、寒さに震えながら側にあった新聞紙を身体に巻き付けました。
「ふぅ。助かった」
ですが、悩みは解決していません。
「どこだ、ここは?」
王様は、ここはもしかして敵の国で自分は捕虜になったのかと思いました。そこで、ソッと隣の部屋に入ってみました。
そこには暖炉があり、炎が灯されています。鍋からは美味しい匂いがしてきて、王様は自分がとても空腹な事を思い出しました。
「気がついたかい、王様」
声の方を向けば、腰が曲がった小柄な老人が木を削っていました。
「貴様は誰だ?名を名乗れ」
王様の偉そうな態度に、老人がやれやれと首を左右に振ります。
「王様のくせに、なんて言葉遣いだ。仮にもわしは国民だぞ」
「国民なら、国王をもっと敬え!無礼者っ」
「無礼なのはお前さんの方じゃないのか?」
老人が、静かに語りかけます。王様には意味がわかりません。
「お前さんは、自分が一番偉いと本当に思っているのか?」
「当たり前だっ。わしは国王だぞっ」
老人が、缶切りと缶詰を渡します。
「では、この缶詰を開けてみなさい。あんたが本当に偉いならできるはずだ」
王様はこれぐらい簡単だと思いました。ところが、いっこうに開けられません。
「貸してみなさい」
老人が手を伸ばします。王様は思いました。自分にできない事が、この老人にできるはずがないと。しかし、老人はものの数秒で缶詰を開けてみせました。
「お前さんは、大きな勘違いをしている。国民は国王がいなくても生きていける。だが、国王は国民がいなくては生きていけないんだぞ?」
王様には、老人が言っている事がサッパリわかりません。一番偉い自分が、なぜ生きてはいけないのでしょう?
「お前さんが豪華な食事を食べたり、豪華な服や宝石を身につけられるのはなぜだ?国民が農作物や税を納めているからだ」
王様はハッとしました。これまで、自分が食べている食材や着ている服などを考えてもいなかったのです。
「国民だって、あんたみたいに美味い物を食ったり、豪華な服を着たいと思ってるんだ。でも、それができない者もたくさんいる」
老人が、鍋からシチューをよそいます。中には、ジャガイモと人参、そして僅かな干し肉が入っているだけでした。
「なんだこれは。残飯か?」
「これは、わしの夕食だ。わしだけではない。ここら辺の者はみんなこういった料理しか食べられないんだ」
王様はショックを受けました。
王様は、しばらく老人の家で厄介になる事にしました。国民の生活を知りたいと、初めて思ったのです。そして、王様は現実を知りました。
フカフカのベッドで眠る事も、柔らかくて大きなパンを買う事もできない国民が大勢いたのです。
朝から晩まで働いて、やっと次の日の食費を稼ぐ。王様は、自分が恥ずかしくなりました。何も知らずに、ワガママばかり言っていた自分は王失格だと。
王様は、老人の家で薪を割ったり魚を釣って暮らす事にしました。働いた後の食事は、これまで食べたどの豪華な食事より美味しく感じたのです。
いつしか王様の髭は伸びて、ポッチャリした体型はスリムになりました。王様は、美しい夕陽を見ながら考えました。
(私は、なんのために国王になった?この国を良くするためではなかったか?国民の笑顔のためではなかったか?)
国王は、城に戻る事を決めました。
「世話になったな」
「王様。またいつでも遊びに来てください」
老人は、初めて王様に一礼しました。
「この王冠をどうぞ」
老人がガラスでできた王冠を差し出す。
「ガラス?なぜ、ガラスなのだ?」
「金の王冠は、きっと王様を再び自惚れさせるでしょう。ガラスは、いつ割れるかわかりません。それぐらい、王座を守るには緊張感が大切なのです」
王様と老人は、固い固い握手を交わし別れました。
ガラスの王冠を被った王様は、国民のために尽くしました。
そして、国民に長く愛される王となったのです。
どれぐらいワガママなのかというと、1度着た服は2度と着なかったり、靴は外出する度に使い捨て。歩く事が嫌いなので、庭でさえ馬に乗っているという有り様です。使用人達は王様の前ではニコニコしていましたが、陰では王様を悪く言っていたのです。そんな事とは露知らず、王様は今日もワガママ全快。
「今日のランチは山のてっぺんで食べたい。馬車を用意せよ」
使用人達は、馬車に必要な荷物を詰め込んで山へと向かいました。国一番のシェフが、ゼェゼェ言いながらついて行きます。ところが、山頂に着く直前。王様を乗せた馬車が崖から落ちてしまいました。
あまりにもあっという間の出来事で、皆見ているしかありませんでした。王様が崖から落ちた事は、国民に知られる訳にはいきません。だって、ワガママで山頂へ行った事がバレでしまいます。そこで、使用人達は手分けして王様を探しに行きました。
「どこだ、ここは?」
王様は気がつくと、小さな家にいました。
「なんだ、この粗末なベッドは?」
いつもはマシュマロみたくフカフカなベッドで寝ている王様は、硬いベッドに不満顔です。
「おまけに何だこれは!」
いつも着ているシルクの服はどこかに行っていて、王様は肌着1枚です。王様は、寒さに震えながら側にあった新聞紙を身体に巻き付けました。
「ふぅ。助かった」
ですが、悩みは解決していません。
「どこだ、ここは?」
王様は、ここはもしかして敵の国で自分は捕虜になったのかと思いました。そこで、ソッと隣の部屋に入ってみました。
そこには暖炉があり、炎が灯されています。鍋からは美味しい匂いがしてきて、王様は自分がとても空腹な事を思い出しました。
「気がついたかい、王様」
声の方を向けば、腰が曲がった小柄な老人が木を削っていました。
「貴様は誰だ?名を名乗れ」
王様の偉そうな態度に、老人がやれやれと首を左右に振ります。
「王様のくせに、なんて言葉遣いだ。仮にもわしは国民だぞ」
「国民なら、国王をもっと敬え!無礼者っ」
「無礼なのはお前さんの方じゃないのか?」
老人が、静かに語りかけます。王様には意味がわかりません。
「お前さんは、自分が一番偉いと本当に思っているのか?」
「当たり前だっ。わしは国王だぞっ」
老人が、缶切りと缶詰を渡します。
「では、この缶詰を開けてみなさい。あんたが本当に偉いならできるはずだ」
王様はこれぐらい簡単だと思いました。ところが、いっこうに開けられません。
「貸してみなさい」
老人が手を伸ばします。王様は思いました。自分にできない事が、この老人にできるはずがないと。しかし、老人はものの数秒で缶詰を開けてみせました。
「お前さんは、大きな勘違いをしている。国民は国王がいなくても生きていける。だが、国王は国民がいなくては生きていけないんだぞ?」
王様には、老人が言っている事がサッパリわかりません。一番偉い自分が、なぜ生きてはいけないのでしょう?
「お前さんが豪華な食事を食べたり、豪華な服や宝石を身につけられるのはなぜだ?国民が農作物や税を納めているからだ」
王様はハッとしました。これまで、自分が食べている食材や着ている服などを考えてもいなかったのです。
「国民だって、あんたみたいに美味い物を食ったり、豪華な服を着たいと思ってるんだ。でも、それができない者もたくさんいる」
老人が、鍋からシチューをよそいます。中には、ジャガイモと人参、そして僅かな干し肉が入っているだけでした。
「なんだこれは。残飯か?」
「これは、わしの夕食だ。わしだけではない。ここら辺の者はみんなこういった料理しか食べられないんだ」
王様はショックを受けました。
王様は、しばらく老人の家で厄介になる事にしました。国民の生活を知りたいと、初めて思ったのです。そして、王様は現実を知りました。
フカフカのベッドで眠る事も、柔らかくて大きなパンを買う事もできない国民が大勢いたのです。
朝から晩まで働いて、やっと次の日の食費を稼ぐ。王様は、自分が恥ずかしくなりました。何も知らずに、ワガママばかり言っていた自分は王失格だと。
王様は、老人の家で薪を割ったり魚を釣って暮らす事にしました。働いた後の食事は、これまで食べたどの豪華な食事より美味しく感じたのです。
いつしか王様の髭は伸びて、ポッチャリした体型はスリムになりました。王様は、美しい夕陽を見ながら考えました。
(私は、なんのために国王になった?この国を良くするためではなかったか?国民の笑顔のためではなかったか?)
国王は、城に戻る事を決めました。
「世話になったな」
「王様。またいつでも遊びに来てください」
老人は、初めて王様に一礼しました。
「この王冠をどうぞ」
老人がガラスでできた王冠を差し出す。
「ガラス?なぜ、ガラスなのだ?」
「金の王冠は、きっと王様を再び自惚れさせるでしょう。ガラスは、いつ割れるかわかりません。それぐらい、王座を守るには緊張感が大切なのです」
王様と老人は、固い固い握手を交わし別れました。
ガラスの王冠を被った王様は、国民のために尽くしました。
そして、国民に長く愛される王となったのです。
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