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本気の証明
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恋に理屈はない。
古い映画で、そんなセリフを聞いた気がする。
会った瞬間に激しい恋に落ちたり、相手にパートナーがいても諦めなかったりする事もある。
前野誠二にとって、その相手は男子中学生だった。本当に、恋は理屈ではないのだという事を思い知った。
(我ながら、マズイよな…)
柔らかな唇を堪能しながら、誠二はなんとか自身にブレーキをかけた。でなければ、腕の中の恋人を壊してしまいそうで…。以前の自分なら、そんな風に相手を気遣った事などなかった。
「ん…」
唇の隙間から、微かに甘い吐息が聞こえる。首に回された細い腕に、ギュッと力がこもった。これ以上は、本当にマズイ。身体が反応する前に、誠二は名残惜し気に唇を離した。枕元のティッシュを一枚とって、恋人の唾液で濡れた頬を拭ってやる。
「休憩、終わったよ」
「え?もう?」
誠二が言うと、パチッと大きな瞳が開いた。その眼差しは、かなり不満そうだ。薄い茶色の瞳は、間近で見るとカンロ飴みたいだななどと思いながら、誠二は額の汗も拭ってやる。
「テスト近いんだろ?ほら、起きて」
ベッドから身体を起こすと、潤も渋々起き上がった。サラサラの髪はやや茶系で、少し長めの前髪が繊細な印象を強くする。マシュマロのような柔らかい頬はうっすら薔薇色で、唇は誠二の唾液で濡れていた。
(高校生になって、ますます色っぽくなってきたな)
誠二は腕を伸ばすと、乱れた髪を直した。まさか自分が男子高校生と恋に落ちるなんて思ってもみなかった。
誠二が潤と初めて会ったのは、去年の春だった。大学に入学したばかりの誠二は、ちょっとしたお小遣い稼ぎに家庭教師のバイトをしていた。潤はその生徒の一人だった。
「野川潤です。よろしくお願いします」
中学三年生だった潤は、男の子とは思えないぐらい綺麗な顔立ちをしていた。
「よろしく」
手を差し出せば、おずおずというように握ってくる。性格も素直で好感が持てた。
最初は、単なる家庭教師と生徒という関係だった。だが、会う度に胸が高鳴る。もっと長く一緒にいたいと思ってしまう。誠二には、その気持ちの正体はわかっていた。男子中学生相手にという考えが、誠二を臆病にさせていた。だが、潤が高校に入学した日。2人の関係は変わった。
「僕。先生の事が好きです。僕の、恋人になってください」
それは、とても純粋でまっすぐな告白だった。
精一杯の背伸びをしてキスされた時、誠二は常識とかモラルとかどうでもよくなった。ただ、腕の中の少年が愛しくて、愛しくて、離したくなかった。
「いつになったら、僕を恋人にしてくれるんですか?」
シャープペンを指先で回しながら、潤が不満そうに聞いてくる。潤は、誠二とキス以上の関係に発展したいと望んでいる。それは誠二もわかっていた。わかっていたが、頷く事はできなかった。
「俺達は恋人同士だろ?何を今更…」
いつものように話をはぐらかそうとしたが、今日はそうはいかなかった。
「はぐらかさないでよっ」
潤の苛立った声に、誠二は冷静なトーンで聞き返した。
「潤が言う恋人同士っていうのは、キスやセックスをするだけの関係か?」
「そ、それは…」
誠二は潤を後ろから抱き締めると、宥めるように頬へキスをした。
「男同士のセックスというのは、簡単じゃないだ。受け入れる器官があるわけじゃない。わかるな?」
コクンッと潤が小さく頷く。
「お前の身体がもっと成長して、俺を受け入れられるまでなったら何度でも抱いてやる」
露骨な言い方をすれば、潤の頬や首筋が赤くなった。
「テストが終わったらデートしよう。どこがいい?」
「えっ」
デートという単語に、潤の表情がパッと輝く。クルッと椅子を回転させると、誠二に抱きついた。
「ありがとうっ、先生っ」
「ほら、早く問題を解け」
「はーい」
すっかり上機嫌になって勉強を始めた潤に、誠二は複雑な笑みを浮かべた。
(俺の本音を知ったら、どんな顔するかな)
これまで、誠二は本気の恋愛をした事がない。遊びのような恋は、欲望を満たすためのものとしか考えてなかった。だが、潤は違う。汚れのない心と身体を、一時の快楽のために汚したくはなかった。身体を求めない事が、本気の証明だと誠二はずっと思っていた。
(俺が考えている事を知ったら、軽蔑されるな)
妄想の中で、誠二は何度も潤を抱いた。逃げようとする裸体を押さえつけ、欲望のまま細い腰を穿ったのだ。止めてくれと潤が泣いても、腰を押し付けて欲望を注いだ。愛していると囁きながら、逃げようとする潤を…。
(最低だな。俺は…)
物わかりのいい大人の恋人を演じているだけなのだ。
だから、誠二は時を待った。もう少し潤が成長し、自身を受け入れられるようになるまで…。
テストは無事に終了し、約束通り誠二は潤をデートに誘った。デートといっても、映画を見て食事を楽しむという健全を絵に描いたようなコースだった。
「先生っ。ゲーセン行こうっ」
潤の笑顔に、誠二は破顔しないように頬を引き締める。こういう時に、普段の潤がかなり背伸びをしている事がわかる。少しでも大人に見せようと、服装もシックな色やデザインが多い。
(無理、させてるんだな)
潤の家庭は、決して円満というわけではなさそうだった。両親は互いに仕事が忙しいと口癖のように言うらしい。家にいる事も少なく、誠二が潤の母親に会ったのは、この半年でたった3回ほどだ。潤は寂しかっただけなのかもしれない。親に甘える事ができない反動から、誠二に惹かれただけという可能性もある。高校生の頃の恋愛というのは、憧れと錯覚する事もある。
「先生?」
「あ、ああ。なぁ、その先生ってのやめないか?デートなんだから」
誠二が言えば、潤が顔を真っ赤にする。
「せ、誠二さん」
「それで良い」
誠二は、自分がこんなにも潤にのめり込むとは思わなかった。潤の側にいるためなら、おそらく誠二はどんな事でもするだろう。潤を繋ぎ止めておくためなら、みっともない事も躊躇いなくする自信がある。
「夕食はどこにする?今日もご両親遅いんだろ?」
「せ、誠二さんがいつも行く店がいいです」
「了解」
誠二は潤の肩を抱き寄せると、そのまま歩き始めた。年齢差があるため、端から見たら兄弟に見えるだろう。
「潤。この間の話だけど…」
「はい」
「俺がお前に手を出さないのは…」
誠二が真摯な気持ちを潤に伝えようとした瞬間。
「誠二?」
近くのカフェから出てきた女性が声を上げた。振り向いた誠二は、相手を確かめるとあっと声を上げた。
「真悠子?」
「久しぶりねぇ」
相沢真悠子は、誠二が高校時代に交際していた女性だ。見た目はおしとやかな美人だが、中身はかなりの肉食系。卒業と同時に自然消滅した。久しぶりに会った真悠子は、以前よりも美しさに磨きをかけていて生き生きとしていた。
「相変わらずイケメンね」
「どーも」
誠二にとって真悠子は、ちょうど良い相手だった。気楽に話せて、セックスの相性も悪くない。それだけだった。
「あら?そのかわいい子は?」
真悠子の言葉にハッとなった誠二は、とっさに彼女の腕を掴んでカフェの裏手に連れていった。好奇心旺盛でお喋りな彼女の事だ。潤に余計な事を吹き込まれては困る。だが、誠二は気付かなかった。そんな自身の行動が潤に大きな不安を与えてしまった事に…。
「へぇ。家庭教師してるんだ」
「まぁな。そっちは?」
「私は、友達とネイルサロン開いてる。ね、久しぶりにホテルでも行かない?」
真悠子の指が誠二の唇をなぞる。きっと、昔の誠二だったら喜んで彼女とホテルへ行っただろう。だが、今は違う。
「悪い。本命一筋なんだ」
「…あ、そう」
真悠子は不満そうに唇を尖らせると、肩をいからせて去っていった。誠二はやれやれとため息をつくと、潤が待っている場所へと急いだ。
「潤っ」
小走りに駆け寄ると、潤は泣き腫らした瞳をしていた。誠二の胸がドキッと高鳴る。
「どうした?なにかあったのか?」
潤は何も言わずに首を横に振った。誠二は、潤がなぜ泣いているのかわからずにオロオロと落ち着かなかった。
「俺、なにかしたか?泣くなよ」
幼い子供にするように、優しく背中を叩く。すると、潤がものすごい力でしがみついてきた。誠二は何がなんだかわからないまま、ただ潤を抱き締めた。
「落ち着いたか?」
ホットミルクを入れたマグカップを渡せば、潤が恥ずかしそうに頷く。潤が泣き止まないため、とりあえずデートは中止となった。
「俺のマンション。久しぶりだろ?」
ベッドに並んで座り、誠二が優しく肩を抱く。不謹慎かもしれないが、潤の泣き顔は壮絶に可愛かった。他の誰にも見せたくなくて、誠二は自宅へと潤を連れていった。1LDKのマンションは見晴らしも良く、以前招待した時にはかなりはしゃいでいた。
「外でも見る…」
潤の方を振り向いた瞬間。小さく細い指が誠二の頬を包んだ。そして、唇がそっと触れる。いつもと違うのは、潤の方から舌を差し込んできた事だ。
「んっ、ん?」
ソファに押し倒されるような形になって、誠二は潤の唇を貪られる。華奢な潤を押し退ける事は簡単だが、ケガでもしたら大変だ。それに、潤の様子がいつもと違う。
「落ち着け、潤っ」
やっとの事で唇を離すと、今度は服を脱ぎ出す。いや、剥ぎ取るという表現が合っているかもしれない。初めて見る潤の裸体は、誠二の想像以上に綺麗だった。中央には自分と同じ形をしたものがぶら下がっていたが、それさえ気にならなかった。
「潤っ。どうしたんだっ」
怒鳴ると、潤がビクッと動きを止める。ポロッと大粒の涙が溢れた。
「僕を抱いてくれないのは、やっぱり男の身体をしているからですか?」
「は?」
誠二には何がなんだかわからなかった。なぜいきなりそんな話が出てくるのだろうか。だが、そんな誠二の反応の悪さが更に潤を追い詰める。
「さっきの人、誠二さんの恋人なんでしょ?だから、慌てて僕から離れたんでしょ?」
不安や焦り、そういった潤の感情が一気に溢れだしたようだった。誠二が宥めようとしても、全く言葉が入っていないようだ。
「僕が子供だから?好きって言ってくれたのも、キスしてくれたのも、嘘だったの?」
「違うっ」
誠二は潤の両肩を掴むと、大声で否定した。あまりの大きさに驚いたのか、潤の涙も引っ込んだようだ。
「俺は潤の事を本気で好きだと思ってる。キスだって、したいからしてるんだ」
まっすぐ目を見て言えば、再び涙が溢れた。細く白い指が、誠二のシャツを掴む。
「だったら、僕を抱いてよ。本気だって証明してみせてよっ」
泣きながら顔を埋めてくる潤に、誠二は自分が間違っていた事を知った。まだ潤が高校生だからと、勝手に子供扱いしていたのだ。なんだかんだ言い訳をしていたのは、潤に嫌われたくなかったからだ。身体を求めた事で、この関係を崩したくなかったからなのだ。
誠二は潤の唇を奪うと、貪るような激しいキスをした。潤の舌を絡めとりながら、そのしなやかな裸体をベッドまで運ぶ。
「…ごめん」
誠二の言葉に、潤が嬉しそうに微笑む。誠二は服を脱ぐと、ゆっくり覆い被さった。
「ん…っ、あっ、や…っ」
ピチャッという音がする度に、潤が恥ずかしそうに身を捩る。鎖骨の辺りから胸元まで、キスマークでびっしりになった潤の身体は徐々に変化してきた。誠二は大きな掌で中心部に触れると、そっと包み擦り上げる。
「あ、あぁっ」
他人の指など知らないソコは、あっという間に硬くしなり、透明な雫を溢れさせた。首筋を強く吸いながら、誠二は強弱をつけながら終わりへと導く。
「はぁ…っ、あっ」
大の字になり胸を上下させている潤を確認しながら、誠二は指の滑りを使い潤の蕾を解した。
「えっ。だ、駄目だよっ。そんなところ、汚い…っ」
慌てて止めようとする潤に、誠二がクスッと笑う。
「こうしないと、潤が辛いんだぞ?」
「そ、そうだけど…、でも…」
「自分でするか?」
「えっ」
ギョッとしたように目を見開く潤に、誠二が声を上げて笑う。
「冗談だよ。力を抜いてろ」
「う、うん」
熱心に潤の奥を解しながら、誠二は自身の性器を擦った。少しでも滑りが多い方が、潤の負担も少ないと感じたのだ。おそらく、この後の行為で潤は泣き出すだろう。だが、もう止めてやれない。潤を欲しいという気持ちを抑えられない。
「力、抜いてろよ」
「え?うぁ…っ、あっ」
誠二が狭い奥に自身を埋め、潤の声に甘さが混じるまでは意外と時間はかからなかった。
誠二の本気は証明されたらしい。
「ええ。はい。勉強している間に眠ってしまったみたいで…。すみません」
寝ている潤を起こさないように、誠二はベランダで電話していた。室内に戻れば、シーツの中から潤が出てくる。この1時間たらずで、かなり大人っぽくなった印象に変わった。
「動かない方がいい。辛くないか?」
頬を撫でれば、嬉しそうに潤が笑う。
「僕、とても幸せです」
「俺もだよ」
誠二は身を屈めると、可愛くてならない恋人にキスをした。
古い映画で、そんなセリフを聞いた気がする。
会った瞬間に激しい恋に落ちたり、相手にパートナーがいても諦めなかったりする事もある。
前野誠二にとって、その相手は男子中学生だった。本当に、恋は理屈ではないのだという事を思い知った。
(我ながら、マズイよな…)
柔らかな唇を堪能しながら、誠二はなんとか自身にブレーキをかけた。でなければ、腕の中の恋人を壊してしまいそうで…。以前の自分なら、そんな風に相手を気遣った事などなかった。
「ん…」
唇の隙間から、微かに甘い吐息が聞こえる。首に回された細い腕に、ギュッと力がこもった。これ以上は、本当にマズイ。身体が反応する前に、誠二は名残惜し気に唇を離した。枕元のティッシュを一枚とって、恋人の唾液で濡れた頬を拭ってやる。
「休憩、終わったよ」
「え?もう?」
誠二が言うと、パチッと大きな瞳が開いた。その眼差しは、かなり不満そうだ。薄い茶色の瞳は、間近で見るとカンロ飴みたいだななどと思いながら、誠二は額の汗も拭ってやる。
「テスト近いんだろ?ほら、起きて」
ベッドから身体を起こすと、潤も渋々起き上がった。サラサラの髪はやや茶系で、少し長めの前髪が繊細な印象を強くする。マシュマロのような柔らかい頬はうっすら薔薇色で、唇は誠二の唾液で濡れていた。
(高校生になって、ますます色っぽくなってきたな)
誠二は腕を伸ばすと、乱れた髪を直した。まさか自分が男子高校生と恋に落ちるなんて思ってもみなかった。
誠二が潤と初めて会ったのは、去年の春だった。大学に入学したばかりの誠二は、ちょっとしたお小遣い稼ぎに家庭教師のバイトをしていた。潤はその生徒の一人だった。
「野川潤です。よろしくお願いします」
中学三年生だった潤は、男の子とは思えないぐらい綺麗な顔立ちをしていた。
「よろしく」
手を差し出せば、おずおずというように握ってくる。性格も素直で好感が持てた。
最初は、単なる家庭教師と生徒という関係だった。だが、会う度に胸が高鳴る。もっと長く一緒にいたいと思ってしまう。誠二には、その気持ちの正体はわかっていた。男子中学生相手にという考えが、誠二を臆病にさせていた。だが、潤が高校に入学した日。2人の関係は変わった。
「僕。先生の事が好きです。僕の、恋人になってください」
それは、とても純粋でまっすぐな告白だった。
精一杯の背伸びをしてキスされた時、誠二は常識とかモラルとかどうでもよくなった。ただ、腕の中の少年が愛しくて、愛しくて、離したくなかった。
「いつになったら、僕を恋人にしてくれるんですか?」
シャープペンを指先で回しながら、潤が不満そうに聞いてくる。潤は、誠二とキス以上の関係に発展したいと望んでいる。それは誠二もわかっていた。わかっていたが、頷く事はできなかった。
「俺達は恋人同士だろ?何を今更…」
いつものように話をはぐらかそうとしたが、今日はそうはいかなかった。
「はぐらかさないでよっ」
潤の苛立った声に、誠二は冷静なトーンで聞き返した。
「潤が言う恋人同士っていうのは、キスやセックスをするだけの関係か?」
「そ、それは…」
誠二は潤を後ろから抱き締めると、宥めるように頬へキスをした。
「男同士のセックスというのは、簡単じゃないだ。受け入れる器官があるわけじゃない。わかるな?」
コクンッと潤が小さく頷く。
「お前の身体がもっと成長して、俺を受け入れられるまでなったら何度でも抱いてやる」
露骨な言い方をすれば、潤の頬や首筋が赤くなった。
「テストが終わったらデートしよう。どこがいい?」
「えっ」
デートという単語に、潤の表情がパッと輝く。クルッと椅子を回転させると、誠二に抱きついた。
「ありがとうっ、先生っ」
「ほら、早く問題を解け」
「はーい」
すっかり上機嫌になって勉強を始めた潤に、誠二は複雑な笑みを浮かべた。
(俺の本音を知ったら、どんな顔するかな)
これまで、誠二は本気の恋愛をした事がない。遊びのような恋は、欲望を満たすためのものとしか考えてなかった。だが、潤は違う。汚れのない心と身体を、一時の快楽のために汚したくはなかった。身体を求めない事が、本気の証明だと誠二はずっと思っていた。
(俺が考えている事を知ったら、軽蔑されるな)
妄想の中で、誠二は何度も潤を抱いた。逃げようとする裸体を押さえつけ、欲望のまま細い腰を穿ったのだ。止めてくれと潤が泣いても、腰を押し付けて欲望を注いだ。愛していると囁きながら、逃げようとする潤を…。
(最低だな。俺は…)
物わかりのいい大人の恋人を演じているだけなのだ。
だから、誠二は時を待った。もう少し潤が成長し、自身を受け入れられるようになるまで…。
テストは無事に終了し、約束通り誠二は潤をデートに誘った。デートといっても、映画を見て食事を楽しむという健全を絵に描いたようなコースだった。
「先生っ。ゲーセン行こうっ」
潤の笑顔に、誠二は破顔しないように頬を引き締める。こういう時に、普段の潤がかなり背伸びをしている事がわかる。少しでも大人に見せようと、服装もシックな色やデザインが多い。
(無理、させてるんだな)
潤の家庭は、決して円満というわけではなさそうだった。両親は互いに仕事が忙しいと口癖のように言うらしい。家にいる事も少なく、誠二が潤の母親に会ったのは、この半年でたった3回ほどだ。潤は寂しかっただけなのかもしれない。親に甘える事ができない反動から、誠二に惹かれただけという可能性もある。高校生の頃の恋愛というのは、憧れと錯覚する事もある。
「先生?」
「あ、ああ。なぁ、その先生ってのやめないか?デートなんだから」
誠二が言えば、潤が顔を真っ赤にする。
「せ、誠二さん」
「それで良い」
誠二は、自分がこんなにも潤にのめり込むとは思わなかった。潤の側にいるためなら、おそらく誠二はどんな事でもするだろう。潤を繋ぎ止めておくためなら、みっともない事も躊躇いなくする自信がある。
「夕食はどこにする?今日もご両親遅いんだろ?」
「せ、誠二さんがいつも行く店がいいです」
「了解」
誠二は潤の肩を抱き寄せると、そのまま歩き始めた。年齢差があるため、端から見たら兄弟に見えるだろう。
「潤。この間の話だけど…」
「はい」
「俺がお前に手を出さないのは…」
誠二が真摯な気持ちを潤に伝えようとした瞬間。
「誠二?」
近くのカフェから出てきた女性が声を上げた。振り向いた誠二は、相手を確かめるとあっと声を上げた。
「真悠子?」
「久しぶりねぇ」
相沢真悠子は、誠二が高校時代に交際していた女性だ。見た目はおしとやかな美人だが、中身はかなりの肉食系。卒業と同時に自然消滅した。久しぶりに会った真悠子は、以前よりも美しさに磨きをかけていて生き生きとしていた。
「相変わらずイケメンね」
「どーも」
誠二にとって真悠子は、ちょうど良い相手だった。気楽に話せて、セックスの相性も悪くない。それだけだった。
「あら?そのかわいい子は?」
真悠子の言葉にハッとなった誠二は、とっさに彼女の腕を掴んでカフェの裏手に連れていった。好奇心旺盛でお喋りな彼女の事だ。潤に余計な事を吹き込まれては困る。だが、誠二は気付かなかった。そんな自身の行動が潤に大きな不安を与えてしまった事に…。
「へぇ。家庭教師してるんだ」
「まぁな。そっちは?」
「私は、友達とネイルサロン開いてる。ね、久しぶりにホテルでも行かない?」
真悠子の指が誠二の唇をなぞる。きっと、昔の誠二だったら喜んで彼女とホテルへ行っただろう。だが、今は違う。
「悪い。本命一筋なんだ」
「…あ、そう」
真悠子は不満そうに唇を尖らせると、肩をいからせて去っていった。誠二はやれやれとため息をつくと、潤が待っている場所へと急いだ。
「潤っ」
小走りに駆け寄ると、潤は泣き腫らした瞳をしていた。誠二の胸がドキッと高鳴る。
「どうした?なにかあったのか?」
潤は何も言わずに首を横に振った。誠二は、潤がなぜ泣いているのかわからずにオロオロと落ち着かなかった。
「俺、なにかしたか?泣くなよ」
幼い子供にするように、優しく背中を叩く。すると、潤がものすごい力でしがみついてきた。誠二は何がなんだかわからないまま、ただ潤を抱き締めた。
「落ち着いたか?」
ホットミルクを入れたマグカップを渡せば、潤が恥ずかしそうに頷く。潤が泣き止まないため、とりあえずデートは中止となった。
「俺のマンション。久しぶりだろ?」
ベッドに並んで座り、誠二が優しく肩を抱く。不謹慎かもしれないが、潤の泣き顔は壮絶に可愛かった。他の誰にも見せたくなくて、誠二は自宅へと潤を連れていった。1LDKのマンションは見晴らしも良く、以前招待した時にはかなりはしゃいでいた。
「外でも見る…」
潤の方を振り向いた瞬間。小さく細い指が誠二の頬を包んだ。そして、唇がそっと触れる。いつもと違うのは、潤の方から舌を差し込んできた事だ。
「んっ、ん?」
ソファに押し倒されるような形になって、誠二は潤の唇を貪られる。華奢な潤を押し退ける事は簡単だが、ケガでもしたら大変だ。それに、潤の様子がいつもと違う。
「落ち着け、潤っ」
やっとの事で唇を離すと、今度は服を脱ぎ出す。いや、剥ぎ取るという表現が合っているかもしれない。初めて見る潤の裸体は、誠二の想像以上に綺麗だった。中央には自分と同じ形をしたものがぶら下がっていたが、それさえ気にならなかった。
「潤っ。どうしたんだっ」
怒鳴ると、潤がビクッと動きを止める。ポロッと大粒の涙が溢れた。
「僕を抱いてくれないのは、やっぱり男の身体をしているからですか?」
「は?」
誠二には何がなんだかわからなかった。なぜいきなりそんな話が出てくるのだろうか。だが、そんな誠二の反応の悪さが更に潤を追い詰める。
「さっきの人、誠二さんの恋人なんでしょ?だから、慌てて僕から離れたんでしょ?」
不安や焦り、そういった潤の感情が一気に溢れだしたようだった。誠二が宥めようとしても、全く言葉が入っていないようだ。
「僕が子供だから?好きって言ってくれたのも、キスしてくれたのも、嘘だったの?」
「違うっ」
誠二は潤の両肩を掴むと、大声で否定した。あまりの大きさに驚いたのか、潤の涙も引っ込んだようだ。
「俺は潤の事を本気で好きだと思ってる。キスだって、したいからしてるんだ」
まっすぐ目を見て言えば、再び涙が溢れた。細く白い指が、誠二のシャツを掴む。
「だったら、僕を抱いてよ。本気だって証明してみせてよっ」
泣きながら顔を埋めてくる潤に、誠二は自分が間違っていた事を知った。まだ潤が高校生だからと、勝手に子供扱いしていたのだ。なんだかんだ言い訳をしていたのは、潤に嫌われたくなかったからだ。身体を求めた事で、この関係を崩したくなかったからなのだ。
誠二は潤の唇を奪うと、貪るような激しいキスをした。潤の舌を絡めとりながら、そのしなやかな裸体をベッドまで運ぶ。
「…ごめん」
誠二の言葉に、潤が嬉しそうに微笑む。誠二は服を脱ぐと、ゆっくり覆い被さった。
「ん…っ、あっ、や…っ」
ピチャッという音がする度に、潤が恥ずかしそうに身を捩る。鎖骨の辺りから胸元まで、キスマークでびっしりになった潤の身体は徐々に変化してきた。誠二は大きな掌で中心部に触れると、そっと包み擦り上げる。
「あ、あぁっ」
他人の指など知らないソコは、あっという間に硬くしなり、透明な雫を溢れさせた。首筋を強く吸いながら、誠二は強弱をつけながら終わりへと導く。
「はぁ…っ、あっ」
大の字になり胸を上下させている潤を確認しながら、誠二は指の滑りを使い潤の蕾を解した。
「えっ。だ、駄目だよっ。そんなところ、汚い…っ」
慌てて止めようとする潤に、誠二がクスッと笑う。
「こうしないと、潤が辛いんだぞ?」
「そ、そうだけど…、でも…」
「自分でするか?」
「えっ」
ギョッとしたように目を見開く潤に、誠二が声を上げて笑う。
「冗談だよ。力を抜いてろ」
「う、うん」
熱心に潤の奥を解しながら、誠二は自身の性器を擦った。少しでも滑りが多い方が、潤の負担も少ないと感じたのだ。おそらく、この後の行為で潤は泣き出すだろう。だが、もう止めてやれない。潤を欲しいという気持ちを抑えられない。
「力、抜いてろよ」
「え?うぁ…っ、あっ」
誠二が狭い奥に自身を埋め、潤の声に甘さが混じるまでは意外と時間はかからなかった。
誠二の本気は証明されたらしい。
「ええ。はい。勉強している間に眠ってしまったみたいで…。すみません」
寝ている潤を起こさないように、誠二はベランダで電話していた。室内に戻れば、シーツの中から潤が出てくる。この1時間たらずで、かなり大人っぽくなった印象に変わった。
「動かない方がいい。辛くないか?」
頬を撫でれば、嬉しそうに潤が笑う。
「僕、とても幸せです」
「俺もだよ」
誠二は身を屈めると、可愛くてならない恋人にキスをした。
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西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
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