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第二話
シングルファーザーは、No.1ホストの腕の中で愛に包まれる
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洗い物をしながら、中村光樹はチラッチラッと時計を気にしていた。もうすぐ今日が終わろうとしている。
(今夜は遅いな)
いつもなら帰ってきている恋人が、今宵はまだだ。スマホに連絡を入れたが、留守番電話サービスの淡々とした音声だけが流れてくるだけだった。
(もしかして、お客さんと…)
恋人・玲哉の職業はホストだ。それも、売上げNo.1の。きっと、毎夜のように美しい女性に囲まれているのだろう。
(甘い言葉を囁いたり…。時には、キ、キスとかもするのかな)
テレビでたまに見かけるホストというのは、大抵女性客と仲睦まじくしている。まるで本物の恋人同士みたく。
(…モテてるんだろうな)
玲哉がどのように接客しているのか、光樹は知らない。玲哉がホストをしている事を反対する権利なんて、光樹にはないのだ。だが、時々胸の中がモヤモヤする。特に、こうして帰りが遅い時などは…。自分が見た事もない女性達に嫉妬している事に気が付き、光樹は苦笑する。
(…いつからこんなに心が狭くなったんだろう)
愛されているだけで幸せなのに、これ以上を求める事はワガママだと光樹は自分を叱咤した。
(まさか、怜哉とこんな関係になるなんて…)
高校時代。怜哉はなんでも話せる友達だった。卒業後、何も言わずに姿を消した彼に憤った事もあった。それが、今や心も身体も愛する生涯のパートナーになったのだ。人生とは、本当にわからないものだと光樹は思った。不意に小さな足音が聞こえてきて、光樹を現実へと引き戻した。
「パパ。れーやは帰ってきた?」
光樹の1人息子である陸が、お気に入りのラッコのぬいぐるみを引きずるようにして立っていた。艶々している黒髪に、あめ玉のような大きな瞳。ヒーローのイラストが描かれたパジャマを愛用している陸は、今年で3歳になる。
「玲哉はまだ帰ってないよ。早く寝なさい」
陸を抱き上げようとすると、ラッコのぬいぐるみでガードされた。
「え~っ」
「え~っじゃない」
だが、シュンとしてる陸の姿に光樹はため息を吐いた。
「仕方ないな」
まだ寝そうにない陸のために、アニメのDVDをセットする。
「今日だけだからね」
「はーい」
光樹は、我ながら陸に甘いと思った。だが、父親として精一杯の愛情を注いでやりたかったのだ。陸が生まれてすぐに、光樹は妻と離婚した。愛した女性からの一方的な離婚は、光樹の心に深い影を落とした。だが、愛が冷めたと言われたらどうする事もできない。その原因は、おそらく自分にもあるのだろう。だが、陸は違う。陸は何も悪くないのに、母親から捨てられたのだ。
親の勝手で、陸に不憫な思いをさせている。口には出さないが、きっと母親がいない事を寂しく思っているはずだ。離婚は夫婦の問題であって、子供には関係ないのに。だから、何倍も愛してあげたかった。ふと、カレンダーが目に入る。
(あれから、もう1年か…)
皿洗いを再開しながら、光樹は記憶を辿った。
1年前。光樹は、高校の同窓会に参加した。そして、その事がきっかけで光樹は新しい恋を知る事となった。
(あの頃は、本当にボロボロだった)
シングルファーザーになって、もうすぐ2年を迎えようとしていた時の事だ。懐かしい名前から、同窓会を知らせる通知が届いた。陸の事もあるし迷ったが、参加する事にした。心のどこかで玲哉に会える気がしたのだ。
(懐かしいな)
外見に多少の変化はあったものの、すぐに顔と名前が一致した。思えば、離婚をしてから初めて外出した。子育てから解放され、久しぶりにのびのびできた。が、そんな楽しさは一瞬だ。すぐに、陸への罪悪感で胸が押し潰されそうになった。きっと、今頃は光樹を恋しがって陸が泣いているに違いない。
(僕は、父親失格だ)
おまけに、一番仲が良かった玲哉の姿はどこにもない。玲哉と会えば何かが変わる気がしたのに。と、誰かが勢いよくドアから入ってきた。
「悪い、遅れた」
ゼーゼーハーハー言いながら、やたらと派手なスーツの男が入っていた。金髪にピアスと、出で立ちはかなり変わっていたが確かに玲哉だった。あの頃と変わらない笑顔に、光樹はなんだか泣きそうになった。玲哉が気が付き、駆け寄ってくる。
「光樹、だろ?どうした?顔が真っ青だぞ」
気がついたら、光樹はポロポロと大粒の涙をこぼしていた。やっと、休める場所を見つけた気がしたのだ。
「シングルファーザー?お前が?」
聞かれて、光樹は小さく頷いた。
「それで勘当って、どういう事だよ」
「うちの親は、ちょっと時代遅れなんだよ」
子供を抱えての離婚を、光樹の両親は良く思ってはいなかった。女房に逃げられて情けないとさんざん罵倒され、陸を施設に預けるように言われた。光樹は、陸と2人だけで生きていく事を決めて実家を後にした。父親からは勘当と言われたが、どうでも良かった。腕の中にすっぽりと収まる小さくて愛しい息子。離れて生きていく事など、できるはずがなかったのだ。
だが、シングルファーザーに対する風当たりは想像以上に強かった。
「僕が、甘かったんだ」
子供を抱えての仕事探しは、まるで砂漠で迷子になったような気分だった。光樹がシングルファーザーとわかると、面接の担当者はあからさまに軽蔑の眼差しを向けてきたし、ろくに話を聞いてもらえなかった。陸を背負って買い物に行けば、近所の主婦達からはこそこそと陰口を叩かれる始末だ。
自分が周囲から憐れみの眼差しを向けられていると感じ、光樹は悔しくて悲しかった。自分達は、なぜ肩身の狭い思いをしなきゃいけないのだろう。そんなに、父親が1人で子育てをする事は珍しいのだろうか。陸を抱き締めて泣いた夜は、1日や2日ではない。
「テレワークができて、本当に良かったって思ったら…」
仕事が順調にいきだした頃から、陸の夜泣きがひどくなってきた。夜間保育も断られるようになり、どんどん光樹の睡眠時間は削られていった。陸の泣き声を聞く度に、心の中にイライラが溜まっていく。光樹の精神力は、既に限界だった。
「お前。すごいなっ」
黙って話を聞いていた光樹が、唐突に叫んだ。
「え?」
思わぬ言葉に顔を上げれば、玲哉が昔と変わらないまっすぐな眼差しで見つめている。そして、1人で頑張る光樹を誉めてくれたのだ。
「俺なんて、ホストやってるけど中途半端でさ。No.1になったものの…って、おいっ、泣くなって」
それまで、ピンッと張っていた緊張感が一気に解けた気がした。オロオロする玲哉がなんだかおかしくて、光樹は気がついたら笑っていた。久しぶりの笑顔だった。
それから、度々玲哉は光樹の元を訪ねてきてくれた。他愛ない世間話をしたり、家事を手伝ってくれた。人見知りが激しい陸も玲哉にはよくなついてくれたので、光樹としてはかなり助かった。夜泣きをする陸をあやしてくれたり、離乳食を作ってくれたりして、玲哉は光樹が仕事に集中しやすい状況を作ってくれたのだ。
「俺、ここに住むよ」
光樹をサポートするために、玲哉は光樹親子と同居する事になった。最初は戸惑った光樹だが、やがて玲哉がいるのが当たり前になっていた。これまで光樹を困らせていた陸も、玲哉が来てから甘えるようになった。
「きっと陸は寂しかっただけなんだよ」
買い物で駄々をこねるのも、離乳食を食べてくれないのも、夜泣きをするのも、きっと光樹に構って欲しかったからではないかと玲哉が言った。
光樹は、 自分がこれまで陸の気持ちを考えてなかった事に改めて気がついた。シングルファーザーになったのは自分の意思だ。陸のせいではない。なのに、心のどこかで陸のせいにしていた。落ち込む光樹を玲哉が慰める。
「俺の両親、共働きだったからさ。なんとなく陸の気持ちがわかるんだよ」
玲哉と話している時間は、光樹の気持ちをとてつもなく穏やかにしてくれた。
あの夜までは。
ある夜。玲哉は光樹の知らない男になった。欲望に瞳を輝かせ、嫌がる光樹を強引に押し倒したのだ。
「ずっと好きだった」
思わぬ告白に硬直しているうちに、光樹はその全てを玲哉に奪われた。激しいキスをされ、身体中を愛撫され喘いだ。
「あっ、あぁっ」
玲哉の指や舌が、三月の身体中を支配する。離婚してから誰とも肌を合わせていなかった光樹はたちまち追い上げられ、白濁を吹き上げた。
「光樹。相当溜まってたんだな」
優しく頬や額にキスをされ、身体をひっくり返される。まさかと思った時には、既に玲哉と1つになっていた。
「あ、あぁぁっ、あっ、いやっ、あっ」
訳のわからないうちに全てを奪われた。信じられない場所に性器を挿入され、抵抗しながらも感じた。そう、確かに光樹は快楽を得ていた。男としてのプライドが、粉々に砕け散った瞬間だった。だが、それだけではなかった。
「愛してる。光樹」
玲哉は、その一言で光樹の心も奪ったのだ。愛していると言われた瞬間。心が玲哉を受け入れてしまった。激しい行為は明け方まで続き、目が覚めた時には玲哉の腕の中だった。本来なら怒るところなのに、なぜか光樹は安堵した。この腕の中にいたいと思ってしまった。
「俺、本気だから。本気で、お前と陸を幸せにするから」
そう言った玲哉は、確かに本気の目をしていた。
やがて、光樹にとっても玲哉は大切な恋人となった。
「客に嫉妬?」
帰宅した玲哉に、光樹は素直に自分の気持ちを伝えた。玲哉は驚いたように目を見開くと、プッと吹き出した。
「わ、笑わないでよっ」
「悪い、悪い。でも、嬉しい」
玲哉の腕が、光樹を抱き寄せる。そして、そのままソファに押し倒した。
「れ、玲哉っ」
焦る光樹に、玲哉は極上の微笑みを寄越した。そして、手の甲にそのまま唇を寄せる。
「安心しろ。客になんか、心はなびかない。永遠にお前のものだって、毎日言ってるだろ?ベッドの中で」
「れ、玲哉っ。ここでは、ダメ…っ、あっ」
結局、光樹は朝までソファの上で玲哉に翻弄された。
それでも、やはり玲哉を許してしまう。
(僕は、本当に甘い)
激しい律動に身を任せながら、光樹はひたすら陸が起きてこない事を祈った。
(今夜は遅いな)
いつもなら帰ってきている恋人が、今宵はまだだ。スマホに連絡を入れたが、留守番電話サービスの淡々とした音声だけが流れてくるだけだった。
(もしかして、お客さんと…)
恋人・玲哉の職業はホストだ。それも、売上げNo.1の。きっと、毎夜のように美しい女性に囲まれているのだろう。
(甘い言葉を囁いたり…。時には、キ、キスとかもするのかな)
テレビでたまに見かけるホストというのは、大抵女性客と仲睦まじくしている。まるで本物の恋人同士みたく。
(…モテてるんだろうな)
玲哉がどのように接客しているのか、光樹は知らない。玲哉がホストをしている事を反対する権利なんて、光樹にはないのだ。だが、時々胸の中がモヤモヤする。特に、こうして帰りが遅い時などは…。自分が見た事もない女性達に嫉妬している事に気が付き、光樹は苦笑する。
(…いつからこんなに心が狭くなったんだろう)
愛されているだけで幸せなのに、これ以上を求める事はワガママだと光樹は自分を叱咤した。
(まさか、怜哉とこんな関係になるなんて…)
高校時代。怜哉はなんでも話せる友達だった。卒業後、何も言わずに姿を消した彼に憤った事もあった。それが、今や心も身体も愛する生涯のパートナーになったのだ。人生とは、本当にわからないものだと光樹は思った。不意に小さな足音が聞こえてきて、光樹を現実へと引き戻した。
「パパ。れーやは帰ってきた?」
光樹の1人息子である陸が、お気に入りのラッコのぬいぐるみを引きずるようにして立っていた。艶々している黒髪に、あめ玉のような大きな瞳。ヒーローのイラストが描かれたパジャマを愛用している陸は、今年で3歳になる。
「玲哉はまだ帰ってないよ。早く寝なさい」
陸を抱き上げようとすると、ラッコのぬいぐるみでガードされた。
「え~っ」
「え~っじゃない」
だが、シュンとしてる陸の姿に光樹はため息を吐いた。
「仕方ないな」
まだ寝そうにない陸のために、アニメのDVDをセットする。
「今日だけだからね」
「はーい」
光樹は、我ながら陸に甘いと思った。だが、父親として精一杯の愛情を注いでやりたかったのだ。陸が生まれてすぐに、光樹は妻と離婚した。愛した女性からの一方的な離婚は、光樹の心に深い影を落とした。だが、愛が冷めたと言われたらどうする事もできない。その原因は、おそらく自分にもあるのだろう。だが、陸は違う。陸は何も悪くないのに、母親から捨てられたのだ。
親の勝手で、陸に不憫な思いをさせている。口には出さないが、きっと母親がいない事を寂しく思っているはずだ。離婚は夫婦の問題であって、子供には関係ないのに。だから、何倍も愛してあげたかった。ふと、カレンダーが目に入る。
(あれから、もう1年か…)
皿洗いを再開しながら、光樹は記憶を辿った。
1年前。光樹は、高校の同窓会に参加した。そして、その事がきっかけで光樹は新しい恋を知る事となった。
(あの頃は、本当にボロボロだった)
シングルファーザーになって、もうすぐ2年を迎えようとしていた時の事だ。懐かしい名前から、同窓会を知らせる通知が届いた。陸の事もあるし迷ったが、参加する事にした。心のどこかで玲哉に会える気がしたのだ。
(懐かしいな)
外見に多少の変化はあったものの、すぐに顔と名前が一致した。思えば、離婚をしてから初めて外出した。子育てから解放され、久しぶりにのびのびできた。が、そんな楽しさは一瞬だ。すぐに、陸への罪悪感で胸が押し潰されそうになった。きっと、今頃は光樹を恋しがって陸が泣いているに違いない。
(僕は、父親失格だ)
おまけに、一番仲が良かった玲哉の姿はどこにもない。玲哉と会えば何かが変わる気がしたのに。と、誰かが勢いよくドアから入ってきた。
「悪い、遅れた」
ゼーゼーハーハー言いながら、やたらと派手なスーツの男が入っていた。金髪にピアスと、出で立ちはかなり変わっていたが確かに玲哉だった。あの頃と変わらない笑顔に、光樹はなんだか泣きそうになった。玲哉が気が付き、駆け寄ってくる。
「光樹、だろ?どうした?顔が真っ青だぞ」
気がついたら、光樹はポロポロと大粒の涙をこぼしていた。やっと、休める場所を見つけた気がしたのだ。
「シングルファーザー?お前が?」
聞かれて、光樹は小さく頷いた。
「それで勘当って、どういう事だよ」
「うちの親は、ちょっと時代遅れなんだよ」
子供を抱えての離婚を、光樹の両親は良く思ってはいなかった。女房に逃げられて情けないとさんざん罵倒され、陸を施設に預けるように言われた。光樹は、陸と2人だけで生きていく事を決めて実家を後にした。父親からは勘当と言われたが、どうでも良かった。腕の中にすっぽりと収まる小さくて愛しい息子。離れて生きていく事など、できるはずがなかったのだ。
だが、シングルファーザーに対する風当たりは想像以上に強かった。
「僕が、甘かったんだ」
子供を抱えての仕事探しは、まるで砂漠で迷子になったような気分だった。光樹がシングルファーザーとわかると、面接の担当者はあからさまに軽蔑の眼差しを向けてきたし、ろくに話を聞いてもらえなかった。陸を背負って買い物に行けば、近所の主婦達からはこそこそと陰口を叩かれる始末だ。
自分が周囲から憐れみの眼差しを向けられていると感じ、光樹は悔しくて悲しかった。自分達は、なぜ肩身の狭い思いをしなきゃいけないのだろう。そんなに、父親が1人で子育てをする事は珍しいのだろうか。陸を抱き締めて泣いた夜は、1日や2日ではない。
「テレワークができて、本当に良かったって思ったら…」
仕事が順調にいきだした頃から、陸の夜泣きがひどくなってきた。夜間保育も断られるようになり、どんどん光樹の睡眠時間は削られていった。陸の泣き声を聞く度に、心の中にイライラが溜まっていく。光樹の精神力は、既に限界だった。
「お前。すごいなっ」
黙って話を聞いていた光樹が、唐突に叫んだ。
「え?」
思わぬ言葉に顔を上げれば、玲哉が昔と変わらないまっすぐな眼差しで見つめている。そして、1人で頑張る光樹を誉めてくれたのだ。
「俺なんて、ホストやってるけど中途半端でさ。No.1になったものの…って、おいっ、泣くなって」
それまで、ピンッと張っていた緊張感が一気に解けた気がした。オロオロする玲哉がなんだかおかしくて、光樹は気がついたら笑っていた。久しぶりの笑顔だった。
それから、度々玲哉は光樹の元を訪ねてきてくれた。他愛ない世間話をしたり、家事を手伝ってくれた。人見知りが激しい陸も玲哉にはよくなついてくれたので、光樹としてはかなり助かった。夜泣きをする陸をあやしてくれたり、離乳食を作ってくれたりして、玲哉は光樹が仕事に集中しやすい状況を作ってくれたのだ。
「俺、ここに住むよ」
光樹をサポートするために、玲哉は光樹親子と同居する事になった。最初は戸惑った光樹だが、やがて玲哉がいるのが当たり前になっていた。これまで光樹を困らせていた陸も、玲哉が来てから甘えるようになった。
「きっと陸は寂しかっただけなんだよ」
買い物で駄々をこねるのも、離乳食を食べてくれないのも、夜泣きをするのも、きっと光樹に構って欲しかったからではないかと玲哉が言った。
光樹は、 自分がこれまで陸の気持ちを考えてなかった事に改めて気がついた。シングルファーザーになったのは自分の意思だ。陸のせいではない。なのに、心のどこかで陸のせいにしていた。落ち込む光樹を玲哉が慰める。
「俺の両親、共働きだったからさ。なんとなく陸の気持ちがわかるんだよ」
玲哉と話している時間は、光樹の気持ちをとてつもなく穏やかにしてくれた。
あの夜までは。
ある夜。玲哉は光樹の知らない男になった。欲望に瞳を輝かせ、嫌がる光樹を強引に押し倒したのだ。
「ずっと好きだった」
思わぬ告白に硬直しているうちに、光樹はその全てを玲哉に奪われた。激しいキスをされ、身体中を愛撫され喘いだ。
「あっ、あぁっ」
玲哉の指や舌が、三月の身体中を支配する。離婚してから誰とも肌を合わせていなかった光樹はたちまち追い上げられ、白濁を吹き上げた。
「光樹。相当溜まってたんだな」
優しく頬や額にキスをされ、身体をひっくり返される。まさかと思った時には、既に玲哉と1つになっていた。
「あ、あぁぁっ、あっ、いやっ、あっ」
訳のわからないうちに全てを奪われた。信じられない場所に性器を挿入され、抵抗しながらも感じた。そう、確かに光樹は快楽を得ていた。男としてのプライドが、粉々に砕け散った瞬間だった。だが、それだけではなかった。
「愛してる。光樹」
玲哉は、その一言で光樹の心も奪ったのだ。愛していると言われた瞬間。心が玲哉を受け入れてしまった。激しい行為は明け方まで続き、目が覚めた時には玲哉の腕の中だった。本来なら怒るところなのに、なぜか光樹は安堵した。この腕の中にいたいと思ってしまった。
「俺、本気だから。本気で、お前と陸を幸せにするから」
そう言った玲哉は、確かに本気の目をしていた。
やがて、光樹にとっても玲哉は大切な恋人となった。
「客に嫉妬?」
帰宅した玲哉に、光樹は素直に自分の気持ちを伝えた。玲哉は驚いたように目を見開くと、プッと吹き出した。
「わ、笑わないでよっ」
「悪い、悪い。でも、嬉しい」
玲哉の腕が、光樹を抱き寄せる。そして、そのままソファに押し倒した。
「れ、玲哉っ」
焦る光樹に、玲哉は極上の微笑みを寄越した。そして、手の甲にそのまま唇を寄せる。
「安心しろ。客になんか、心はなびかない。永遠にお前のものだって、毎日言ってるだろ?ベッドの中で」
「れ、玲哉っ。ここでは、ダメ…っ、あっ」
結局、光樹は朝までソファの上で玲哉に翻弄された。
それでも、やはり玲哉を許してしまう。
(僕は、本当に甘い)
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