異世界オークションハウス ~ハズレスキル【魔力探知】で魔道具集め!美少女たちと楽しく競売のお店をはじめます~

秋間辺

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36話

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 飛竜の爪が石台を掴んだ瞬間、砦じゅうに重い振動が走った。
 降り立つやいなや、背後から低く響く声。

「ジェキル。大きくなったな。まさかお前が――っと」
 言い終える前に、ジェキルは大剣を放り出して父親に抱きついた。
「パパ……! どうして出ていったんだよ。ずっと会いたかったんだ!」
 鎧が軋むほど力いっぱいだ。
 ジェキルが人目を気にせず涙を流すのを、俺は初めて見る。
 かたわらのリントを見ると、まん丸の目が今にも決壊しそうだ。
「あれっ、リント――」
「な、なんや! 何見てるんアオイちゃん。ウチは泣いてへんで!」
「まだ何も言ってないって」思わず苦笑いがもれる。


 俺たちは砦の会議室へ案内された。
 厚い石で組まれた壁、真ん中に長いテーブルと椅子。
 窓の外から時折、獣のような叫び声が聞こえる。
 ここが魔王軍と戦う最前線の真っただ中だと、改めて思い知らされた。

「嬉しい再会だが、ここが危険地帯だということはわかっているだろう。毎日のように魔王軍が襲来している」
 ドランは椅子に腰を落ち着けると、眼光を鋭くして言った。
 木のイスに座ってるだけでも背筋は弓のように伸び、厚い胸板が鎧を押し広げている。
 片手に添えた大剣は並の兵が両手でも持てぬ重さなのだそうだ。
 なのにドランは微動だにしない。
 視線を合わせた瞬間、部屋の空気が一歩分縮んだように感じた。

「しかも“灰滅剣帝”グレイムまで出張って来やがった」
 隣の席で椅子を軋ませた大男が続く。
 こちらもドランに負けず劣らずド迫力だ。
 肩幅は俺の二倍はあるんじゃないだろうか。
 副将バルナード。名を聞くだけで周囲の兵が背筋を伸ばすほどの実力者らしい。
 分厚い胸と背中、短い茶髪あごヒゲ、古い傷の残る鉄の鎧を着て、猛獣みたいな鋭い目をしている。

「悪いことは言わねえ。ケガしねえうちに街へ帰りな」
 バルナードの忠告に、リントが鼻で笑った。
「そうはいかへんでぇ! あの魔王軍を片づけて金貨五十枚、回収せなアカンのや。あれだけ魔物がおるんやから、魔石でガッポガポ稼ぐ大チャンスやん」
「金の問題かよ」俺は思わず突っ込む。

 バルナードが眉をひそめると、ドランが手で制した。
「まあいい。あの軍勢を前にして笑えるのはたいした胆力だ。よほど腕に自信があるとみえる。どうだ。お前たちの力を俺に見せてみろ。俺が認めれば、砦への滞在を許す。ジェキル、お前も強くなったんだろう?」
 ドランの視線はジェキルだけでなく、テーブルを挟んで座る俺や仲間全員へと走った。
「パパでも容赦しない。あたしはもう、子どもじゃないんだから」
 ジェキルは赤い目のまま、大剣の柄を握り直す。

「んっふっふ、ジェキルちゃんのパパでも手加減はせえへんで!」
 リントが俺の背中をどんと叩く。
「アオイちゃん、やっておしまい!」
「えっ? 俺ぇ!?」
「お父様に安心してもらいましょ」
 アマリアが立ち上がり、杖を軽く回した。
 青白い雷光が杖頭を走り、乾いた空気を焦がす。
 メルテは静かに瞼を閉じ、胸元で魔導書のページをぱらりとめくった。
 言葉はないが、彼女の周囲に暖かな魔力の鼓動が波紋のように広がっている。

「よし、そこの中庭で勝負だ。期待しているぞ」
 ドランは口端を上げ、俺に真っすぐ視線を突き立てた。
 挑発でも畏圧でもない。
 戦士同士のまっとうな“確認”の眼だ。
 俺は胸が高鳴るのと同時に、妙に落ち着いてもいた。
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