3 / 28
第2話
しおりを挟む
名前を呼んでもらえるようになった翌日のことです。
私が使っていた部屋はそのまま私の部屋としていいとのことで、ありがたく使わせてもらうことになりました。
クリスタさんはいつも優しく声をかけながら身支度を手伝ってくださいます。
最初は自分で自分のことはしなければと思ったのですが、環境が違いすぎて何に使うものか、どうしていいものかわからない時が多いんです。
普通ならば声を出して聞きたいところですが、自分から言葉を発せないのでやはり思ったようには伝わりません。
それでもクリスタさんは嫌な顔一つせず、私に声をかけてくれます。
「ローゼマリー様、痛かったらいってくださいね?」
「(ふんふん)」
私の髪を結ってくれながらそう言ってくれます。
「ローゼマリー様の髪は真っすぐで綺麗ですね」
私は少し照れてうつむいたあと、少し首をふります。
特に珍しくもない薄い茶色い髪の私からすれば、クリスタさんのほうが綺麗で羨ましいなと思ってしまいます。
それをなんとか伝えたくて、クリスタさんの髪をそっと指さしてみました。
「え? 私の髪がどうかしましたか?」
私は好意的な意味を伝えたくて失礼にあたらないように、そっとクリスタさんの腕をぎゅっと抱え込むように抱きしめてみました。
「どうかなさいましたか?!」
クリスタさんの髪を指さして、腕を抱きしめてみてもあまりよく伝わりません。
でも何か思いは伝わったようで、クリスタさんは私を抱きしめ返してくれてこう言いました。
「大丈夫ですよ、私はどこにもいきませんよ。そうだ、今日は私とお揃いの髪型にしてみましょうか?」
「(はい!)」
私は自分が持てる最大限の笑みを浮かべました。
そのあとラルスさまとのお勉強の時間がやってきました。
なんとありがたいことにラルスさまが読み書きを教えてくださることになって、少しずつ勉強しています。
最初は文字の発音、読むことを教えてもらいます。
教えてもらいながら口を開いたり閉じたりして声を発してみようとしますが、声は出ません。
「ローゼマリー、急がなくていいから。ゆっくりで無理はしないように」
何日かすると読むことはだいぶできるようになりました。
たまに間違ってしまうけれど。
カードのようなものを使って言葉を作って机に並べたりします。
そして今日はペンを持って文字を書いてみることに挑戦しました。
「ローゼマリーはこう書くんだ」
すらすらと書かれる文字はとても綺麗でなんだか心を奪われる、そんな感じでした。
自分の名前を練習しているときに、ふとあることが頭をよぎりました。
『ラルスさまのお名前を書いてみたい』
私はその思いを伝えるために、私の名前が書かれた紙を指さしたあとに私自身をさしました。
そしてその次に首をかしげながら、私はラルスさまのことを指さしました。
「ん? ローゼマリー? ん?」
私は必死に名前の文字をさして、私をさします。
そのあと今度はペンをラルスさまに差し出してみました。
「ペン? 私が書くのかい? もしかして私の名前かい?」
「──っ!! (はいっ!)」
私は何度も何度も頷き紙をラルスさまの前に差し出します。
「私の名前は、こう書くんだ」
さらさらと書かれた文字。
私は嬉しくてその紙を抱きしめました。
「ふふ、そんなに喜んでもらえてうれしいよ。よかった」
私は何度か自分の名前とラルスさまの名前を書いて綺麗にかけるように頑張りました。
そうして少しずつ言葉を書けるようになっていったのです──
◇◆◇
ある日の午後。
他の言葉もいくつか練習して書けるようになったことをラルスさまにお伝えしたいと思いますが、やはりいきなり行っても迷惑でしょうか。
公爵さまのお仕事の手伝いをなさっているようで、毎日お忙しそうにしていらっしゃいます。
そんな中でいつも読み書きを教えていただけるのは本当にありがたいことです……。
そう思いながら廊下を歩いていて、気づけばそこはラルスさまのお部屋の前。
ノックをしようかと手をあげては下ろし、あげては下ろしの繰り返しです。
「────修道院の──スターの行方──つかったのか?」
ん?
中からラルスさまのお声が聞こえてきます。
どなたかとお話されているので、お仕事中でしょうか。
「やはり支援金は全て横領していたようです。子供たちもかなりひどい環境下で生活をしていたかと」
「わかった、引き続き調査にあたってほしい」
「かしこまりました」
お部屋のドアが突然開いて出てきたラルスさまとばっちり目があってしまいました。
「ローゼマリーっ!?」
私はごめんなさいという気持ちを込めて必死に何度もお辞儀をします。
何度かしたところでラルスさまに止められました。
「大丈夫だよ、何かあったかい?」
私はお邪魔じゃないかと思いながらも少しかけた文字を見せました。
『らるすさま、ありがとうございます』
私の書いた文字を見てラルスさまはとても喜んでくださいました──
私が使っていた部屋はそのまま私の部屋としていいとのことで、ありがたく使わせてもらうことになりました。
クリスタさんはいつも優しく声をかけながら身支度を手伝ってくださいます。
最初は自分で自分のことはしなければと思ったのですが、環境が違いすぎて何に使うものか、どうしていいものかわからない時が多いんです。
普通ならば声を出して聞きたいところですが、自分から言葉を発せないのでやはり思ったようには伝わりません。
それでもクリスタさんは嫌な顔一つせず、私に声をかけてくれます。
「ローゼマリー様、痛かったらいってくださいね?」
「(ふんふん)」
私の髪を結ってくれながらそう言ってくれます。
「ローゼマリー様の髪は真っすぐで綺麗ですね」
私は少し照れてうつむいたあと、少し首をふります。
特に珍しくもない薄い茶色い髪の私からすれば、クリスタさんのほうが綺麗で羨ましいなと思ってしまいます。
それをなんとか伝えたくて、クリスタさんの髪をそっと指さしてみました。
「え? 私の髪がどうかしましたか?」
私は好意的な意味を伝えたくて失礼にあたらないように、そっとクリスタさんの腕をぎゅっと抱え込むように抱きしめてみました。
「どうかなさいましたか?!」
クリスタさんの髪を指さして、腕を抱きしめてみてもあまりよく伝わりません。
でも何か思いは伝わったようで、クリスタさんは私を抱きしめ返してくれてこう言いました。
「大丈夫ですよ、私はどこにもいきませんよ。そうだ、今日は私とお揃いの髪型にしてみましょうか?」
「(はい!)」
私は自分が持てる最大限の笑みを浮かべました。
そのあとラルスさまとのお勉強の時間がやってきました。
なんとありがたいことにラルスさまが読み書きを教えてくださることになって、少しずつ勉強しています。
最初は文字の発音、読むことを教えてもらいます。
教えてもらいながら口を開いたり閉じたりして声を発してみようとしますが、声は出ません。
「ローゼマリー、急がなくていいから。ゆっくりで無理はしないように」
何日かすると読むことはだいぶできるようになりました。
たまに間違ってしまうけれど。
カードのようなものを使って言葉を作って机に並べたりします。
そして今日はペンを持って文字を書いてみることに挑戦しました。
「ローゼマリーはこう書くんだ」
すらすらと書かれる文字はとても綺麗でなんだか心を奪われる、そんな感じでした。
自分の名前を練習しているときに、ふとあることが頭をよぎりました。
『ラルスさまのお名前を書いてみたい』
私はその思いを伝えるために、私の名前が書かれた紙を指さしたあとに私自身をさしました。
そしてその次に首をかしげながら、私はラルスさまのことを指さしました。
「ん? ローゼマリー? ん?」
私は必死に名前の文字をさして、私をさします。
そのあと今度はペンをラルスさまに差し出してみました。
「ペン? 私が書くのかい? もしかして私の名前かい?」
「──っ!! (はいっ!)」
私は何度も何度も頷き紙をラルスさまの前に差し出します。
「私の名前は、こう書くんだ」
さらさらと書かれた文字。
私は嬉しくてその紙を抱きしめました。
「ふふ、そんなに喜んでもらえてうれしいよ。よかった」
私は何度か自分の名前とラルスさまの名前を書いて綺麗にかけるように頑張りました。
そうして少しずつ言葉を書けるようになっていったのです──
◇◆◇
ある日の午後。
他の言葉もいくつか練習して書けるようになったことをラルスさまにお伝えしたいと思いますが、やはりいきなり行っても迷惑でしょうか。
公爵さまのお仕事の手伝いをなさっているようで、毎日お忙しそうにしていらっしゃいます。
そんな中でいつも読み書きを教えていただけるのは本当にありがたいことです……。
そう思いながら廊下を歩いていて、気づけばそこはラルスさまのお部屋の前。
ノックをしようかと手をあげては下ろし、あげては下ろしの繰り返しです。
「────修道院の──スターの行方──つかったのか?」
ん?
中からラルスさまのお声が聞こえてきます。
どなたかとお話されているので、お仕事中でしょうか。
「やはり支援金は全て横領していたようです。子供たちもかなりひどい環境下で生活をしていたかと」
「わかった、引き続き調査にあたってほしい」
「かしこまりました」
お部屋のドアが突然開いて出てきたラルスさまとばっちり目があってしまいました。
「ローゼマリーっ!?」
私はごめんなさいという気持ちを込めて必死に何度もお辞儀をします。
何度かしたところでラルスさまに止められました。
「大丈夫だよ、何かあったかい?」
私はお邪魔じゃないかと思いながらも少しかけた文字を見せました。
『らるすさま、ありがとうございます』
私の書いた文字を見てラルスさまはとても喜んでくださいました──
280
あなたにおすすめの小説
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
【完結】身代わりに病弱だった令嬢が隣国の冷酷王子と政略結婚したら、薬師の知識が役に立ちました。
朝日みらい
恋愛
リリスは内気な性格の貴族令嬢。幼い頃に患った大病の影響で、薬師顔負けの知識を持ち、自ら薬を調合する日々を送っている。家族の愛情を一身に受ける妹セシリアとは対照的に、彼女は控えめで存在感が薄い。
ある日、リリスは両親から突然「妹の代わりに隣国の王子と政略結婚をするように」と命じられる。結婚相手であるエドアルド王子は、かつて幼馴染でありながら、今では冷たく距離を置かれる存在。リリスは幼い頃から密かにエドアルドに憧れていたが、病弱だった過去もあって自分に自信が持てず、彼の真意がわからないまま結婚の日を迎えてしまい――
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。10~15話前後の短編五編+番外編のお話です。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非!
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。 ※R7.10/13お気に入り登録700を超えておりました(泣)多大なる感謝を込めて一話お届けいたします。 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.10/30に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。 ※R7.12/8お気に入り登録800超えです!ありがとうございます(泣)一話書いてみましたので、ぜひ!
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。
甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。
だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。
それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。
後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース…
身体から始まる恋愛模様◎
※タイトル一部変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる