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第一部 出会い編
第11話 綻びつつあるもの~SIDEフルーリー伯爵家~
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「どうなっているんだっ!!!」
フルーリー邸に怒号が響き渡る。
何事かといった様子で伯爵夫人は夫の執務室を覗くと、そこには自分の部下に書類を叩きつける夫の姿があった。
フルーリー伯爵は癇癪持ちで部下を怒鳴ることはそう珍しくはないが、どうやら今回は様子が違うらしい。
「なぜ不作なんだっ!」
「ですから、その……天候不順とブドウの病気が流行り、昨年比の20%ほどしか取れない見込みで……」
「御託はいい!! 早くなんとかしろ!! じゃなけりゃ、お前の給金もなしだ」
「ひいいいー!! これ以上の減給はご勘弁を……! 家族を養えなくなってしまいます……!」
「ふんっ! 自分たちでなんとかしろ」
突き放すような言葉に伯爵の部下は意気消沈して、その場にへたり込む。
その様子を見た伯爵夫人も助けようとするどころか、扇子で仰ぎながら「まあ、見苦しいこと」と言って去っていく。
フルーリー伯爵家の領地は国内でも有数のブドウ畑の名産地であった。
そのブドウを生かしてワインを作って国内外問わず流通させていたのだが、今年は事情が違った。
天候不順の影響に加えて、ブドウの病気が流行ってしまい、うまく育たなかったのだ。
しかも今年だけではなく、去年もそのまた前の年も不作であり、影響は大きくなっていた。
「やっぱりジーニーさんの言った通りに対策をしていれば……」
「ジーニーの話はするなっ! あいつは私に逆らった挙句に辞めたいと抜かしてきおった。あいつなんか知るか」
ジーニーは優秀な人材であり、ブドウの病気が流行った際に来年のために対策をうつように進言したのだが、それをフルーリー伯爵は撥ねつけた。
何度も根気強く説得しようとするも、聞く耳を持たなかったため、ジーニーはついに伯爵家に仕えることを辞めた。
「そうだ、今年も例の帳簿の書き換えをしておけ」
「そんなっ! いくらなんでもこれ以上しては王国に見つかってしまいます!!」
「税金なんてどーせきちんと見てやしない。いいから言う通りにやれっ!」
先程から癇癪を起こして部下にきつく当たっているため、伯爵の息もあがっている。
はあはあと言い、顔を真っ赤にしながら命令する。
書類を再び投げつけるように部下に渡すと、伯爵はさらに自分の机にあった紅茶を部下の顔にかける。
「いいかっ!? お前のせいでこうなったんだ。ワインがお得意様に届けられない状況になってみろ? お前を獣の餌にしてくれるわ!!」
「……ひくっ」
部下はあまりの恐怖でガタガタを震えており、その場から動けなくなっていた。
そんな様子を気にも留めずに、伯爵はそのまま部屋を後にした。
部屋を出て少し歩いたところで、「あ、そうそう」と言って戻って来る。
「ブレスには言うなよ? あいつは変な正義感かざしてうるさいからな。嗅ぎまわれたらめんどくさい」
「か、かしこまりました……」
そう言って扉を乱暴に閉めると、そのままダイニングのほうへと向かって行った。
部屋に残された彼がその後、不正書類を内密に持ち出していたことを、まだ伯爵は知らない──
フルーリー邸に怒号が響き渡る。
何事かといった様子で伯爵夫人は夫の執務室を覗くと、そこには自分の部下に書類を叩きつける夫の姿があった。
フルーリー伯爵は癇癪持ちで部下を怒鳴ることはそう珍しくはないが、どうやら今回は様子が違うらしい。
「なぜ不作なんだっ!」
「ですから、その……天候不順とブドウの病気が流行り、昨年比の20%ほどしか取れない見込みで……」
「御託はいい!! 早くなんとかしろ!! じゃなけりゃ、お前の給金もなしだ」
「ひいいいー!! これ以上の減給はご勘弁を……! 家族を養えなくなってしまいます……!」
「ふんっ! 自分たちでなんとかしろ」
突き放すような言葉に伯爵の部下は意気消沈して、その場にへたり込む。
その様子を見た伯爵夫人も助けようとするどころか、扇子で仰ぎながら「まあ、見苦しいこと」と言って去っていく。
フルーリー伯爵家の領地は国内でも有数のブドウ畑の名産地であった。
そのブドウを生かしてワインを作って国内外問わず流通させていたのだが、今年は事情が違った。
天候不順の影響に加えて、ブドウの病気が流行ってしまい、うまく育たなかったのだ。
しかも今年だけではなく、去年もそのまた前の年も不作であり、影響は大きくなっていた。
「やっぱりジーニーさんの言った通りに対策をしていれば……」
「ジーニーの話はするなっ! あいつは私に逆らった挙句に辞めたいと抜かしてきおった。あいつなんか知るか」
ジーニーは優秀な人材であり、ブドウの病気が流行った際に来年のために対策をうつように進言したのだが、それをフルーリー伯爵は撥ねつけた。
何度も根気強く説得しようとするも、聞く耳を持たなかったため、ジーニーはついに伯爵家に仕えることを辞めた。
「そうだ、今年も例の帳簿の書き換えをしておけ」
「そんなっ! いくらなんでもこれ以上しては王国に見つかってしまいます!!」
「税金なんてどーせきちんと見てやしない。いいから言う通りにやれっ!」
先程から癇癪を起こして部下にきつく当たっているため、伯爵の息もあがっている。
はあはあと言い、顔を真っ赤にしながら命令する。
書類を再び投げつけるように部下に渡すと、伯爵はさらに自分の机にあった紅茶を部下の顔にかける。
「いいかっ!? お前のせいでこうなったんだ。ワインがお得意様に届けられない状況になってみろ? お前を獣の餌にしてくれるわ!!」
「……ひくっ」
部下はあまりの恐怖でガタガタを震えており、その場から動けなくなっていた。
そんな様子を気にも留めずに、伯爵はそのまま部屋を後にした。
部屋を出て少し歩いたところで、「あ、そうそう」と言って戻って来る。
「ブレスには言うなよ? あいつは変な正義感かざしてうるさいからな。嗅ぎまわれたらめんどくさい」
「か、かしこまりました……」
そう言って扉を乱暴に閉めると、そのままダイニングのほうへと向かって行った。
部屋に残された彼がその後、不正書類を内密に持ち出していたことを、まだ伯爵は知らない──
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