9 / 13
第9話 抑えきれない想いと乱れる心
しおりを挟む
もっと、もっとお役に立つ……。
零様のお役に立つことこそが私の生きる道。
「霜月隊長、ちょっと待ってください」
「待ちません。妖魔はこっちです」
「しかし……」
「私一人で行くので、あなたはそこで待っていてください」
「霜月隊長!」
部下が私を呼び止める声はどんどん小さくなっていった。
確か、妖魔はあっちにいったはず。
急がないと……!
大通りを駆け抜ける私の脳内に声が響き渡る。
『オマエハ……シアワセニナレナイ』
やめて……。
『オマエハイラナイニンゲンダ』
わかってる、そんなことは最初から。
私は元々拾われ子で本当の親にもいらないと言われた人間だ。
それをご慈悲で救っていただいたまで……。
『年が近い女の子がいてくれて嬉しいです!』
私も嬉しかったです。
綾芽様のことも大好きだから……だからっ!!
『たくっ、お前は』
いつも言葉少なくて、でも優しくて、だからこそ誤解されやすくて……。
『今日がお前の生まれた日とする。十一の月の三日』
私に誕生日をくれたことも──。
『ふははは! 俺を押し倒した上に池に落とすとはな、面白い』
池に落ちた時に髪をかきあげた時の仕草も──。
『男を誘惑するのがうまくなったな』
私を見るその鋭くも優しい瞳──。
私はこんなにも零様の事が好きでたまらないんだ。
それでも好きだからこそ、身を引いておいたほうが彼の、そして大好きな姉のように慕う彼女のためになる。
「見つけた」
私は裏道に潜んで傷を修復しようとしている妖魔を発見する。
すかさず、それの後ろから背中に勢いよく守護刀を突きたてた。
「ぐおおおおおおーーー!」
雄たけびをあげながら、妖魔はこちらを向く。
妖魔は両の腕を鋭い槍のように変化させると、私に真正面から二突き繰り出してきた。
それをすかさず後ろに飛び避けたが、それが愚策だった。
「──っ!! うっ!!」
敵の妖魔は二体に分裂しており、もう一体が私の背後に回っていたのだ。
その一体に後ろから攻撃を仕掛けられた私は、避けきれずに脇腹を負傷する。
止血している暇もなく、次の攻撃が仕掛けられてくる。
一瞬痛みで傷を負った脇腹を押さえたが、すぐに手を放して懐刀を抜き、小さいほうの妖魔へとそれを投げた。
「きやああああああーー」
少し高めの断末魔が響き渡り、小さい妖魔は消えていく。
今度は大きい妖魔に向き直って、守護刀を握り締めて、相手の懐目がけて走り込んだ。
地面を抉り取るほどの鋭い攻撃をいくつか交わして、相手との距離を詰める。
そうして、先程拾った砂を相手の大きな一つ目にかけた。
「ぐああっ!」
相手は苦しそうに声をあげると、ジタバタと暴れ出す。
その隙に相手の懐に入ると、私は両手で一気に妖魔の心臓を目がけて守護刀を突き立てた。
「ぐおおおーーーー!」
大きな叫びと共に、妖魔は煙になっていく。
完全に脅威が去ったことに安心すると、私は全身の痛みを感じてその場に膝をついた。
「ん……いたっ……」
急いで脇腹に血止め薬を塗り、腕の着物を千切って包帯代わりにする。
どうやら右足にも大きな切り傷を作ってしまっていたようで、私はその足を引きずりながら屋敷へと戻った。
屋敷へ戻ると、玄関のところに零様が立っていた。
「──っ! 零様、何かございましたでしょうか」
「……」
「零様……」
零様の傍に立っている護衛役の腕には、小さな女の子がいる。
どこかの村娘のように見えるが、膝に怪我を負っているのが見えた。
すると、今日共に巡察に出ていた部下が私に声をかける。
「隊長、あの子、妖魔に襲われていたんで、屋敷まで連れ帰りました」
「──っ! まさか……」
「はい、隊長が妖魔を追って行かれた時に助けた子供です。屋敷が近かったので、応援を呼び、池で流されているところを助けました」
その瞬間に自分の愚かさを知った。
私は妖魔に気を取られてしまい、助けるべき人を見失った。
もし、彼が屋敷へ助けを呼びに行かなかったとしたら……?
女の子はあの川の流れの速さでは、もしかしたら力尽きてしまったかもしれない。
あの流れでは大人一人でも助けられないため、応援を呼んだという彼の判断は正しい。
そしてその指示を本来しなければならなかったのは私だ……。
「凛」
「はい……」
「なぜ判断を誤った?」
「……」
「凛」
「……答えたくありません」
あなたへの想いを言うことはできない──。
すると、冷ややかな零様の声が耳に届いた。
私は彼の元に近づいて、膝をつく。
そんな私に、ただ一言零様は告げた。
「霜月凛、お前に暇を言い渡す」
「──っ!!!」
私は目を見開いた後、唇を噛みしめる。
そうして彼の事を見ることもないまま、命令を受け取った。
零様はそんな私に何も言わず、その場から去って行った──。
零様のお役に立つことこそが私の生きる道。
「霜月隊長、ちょっと待ってください」
「待ちません。妖魔はこっちです」
「しかし……」
「私一人で行くので、あなたはそこで待っていてください」
「霜月隊長!」
部下が私を呼び止める声はどんどん小さくなっていった。
確か、妖魔はあっちにいったはず。
急がないと……!
大通りを駆け抜ける私の脳内に声が響き渡る。
『オマエハ……シアワセニナレナイ』
やめて……。
『オマエハイラナイニンゲンダ』
わかってる、そんなことは最初から。
私は元々拾われ子で本当の親にもいらないと言われた人間だ。
それをご慈悲で救っていただいたまで……。
『年が近い女の子がいてくれて嬉しいです!』
私も嬉しかったです。
綾芽様のことも大好きだから……だからっ!!
『たくっ、お前は』
いつも言葉少なくて、でも優しくて、だからこそ誤解されやすくて……。
『今日がお前の生まれた日とする。十一の月の三日』
私に誕生日をくれたことも──。
『ふははは! 俺を押し倒した上に池に落とすとはな、面白い』
池に落ちた時に髪をかきあげた時の仕草も──。
『男を誘惑するのがうまくなったな』
私を見るその鋭くも優しい瞳──。
私はこんなにも零様の事が好きでたまらないんだ。
それでも好きだからこそ、身を引いておいたほうが彼の、そして大好きな姉のように慕う彼女のためになる。
「見つけた」
私は裏道に潜んで傷を修復しようとしている妖魔を発見する。
すかさず、それの後ろから背中に勢いよく守護刀を突きたてた。
「ぐおおおおおおーーー!」
雄たけびをあげながら、妖魔はこちらを向く。
妖魔は両の腕を鋭い槍のように変化させると、私に真正面から二突き繰り出してきた。
それをすかさず後ろに飛び避けたが、それが愚策だった。
「──っ!! うっ!!」
敵の妖魔は二体に分裂しており、もう一体が私の背後に回っていたのだ。
その一体に後ろから攻撃を仕掛けられた私は、避けきれずに脇腹を負傷する。
止血している暇もなく、次の攻撃が仕掛けられてくる。
一瞬痛みで傷を負った脇腹を押さえたが、すぐに手を放して懐刀を抜き、小さいほうの妖魔へとそれを投げた。
「きやああああああーー」
少し高めの断末魔が響き渡り、小さい妖魔は消えていく。
今度は大きい妖魔に向き直って、守護刀を握り締めて、相手の懐目がけて走り込んだ。
地面を抉り取るほどの鋭い攻撃をいくつか交わして、相手との距離を詰める。
そうして、先程拾った砂を相手の大きな一つ目にかけた。
「ぐああっ!」
相手は苦しそうに声をあげると、ジタバタと暴れ出す。
その隙に相手の懐に入ると、私は両手で一気に妖魔の心臓を目がけて守護刀を突き立てた。
「ぐおおおーーーー!」
大きな叫びと共に、妖魔は煙になっていく。
完全に脅威が去ったことに安心すると、私は全身の痛みを感じてその場に膝をついた。
「ん……いたっ……」
急いで脇腹に血止め薬を塗り、腕の着物を千切って包帯代わりにする。
どうやら右足にも大きな切り傷を作ってしまっていたようで、私はその足を引きずりながら屋敷へと戻った。
屋敷へ戻ると、玄関のところに零様が立っていた。
「──っ! 零様、何かございましたでしょうか」
「……」
「零様……」
零様の傍に立っている護衛役の腕には、小さな女の子がいる。
どこかの村娘のように見えるが、膝に怪我を負っているのが見えた。
すると、今日共に巡察に出ていた部下が私に声をかける。
「隊長、あの子、妖魔に襲われていたんで、屋敷まで連れ帰りました」
「──っ! まさか……」
「はい、隊長が妖魔を追って行かれた時に助けた子供です。屋敷が近かったので、応援を呼び、池で流されているところを助けました」
その瞬間に自分の愚かさを知った。
私は妖魔に気を取られてしまい、助けるべき人を見失った。
もし、彼が屋敷へ助けを呼びに行かなかったとしたら……?
女の子はあの川の流れの速さでは、もしかしたら力尽きてしまったかもしれない。
あの流れでは大人一人でも助けられないため、応援を呼んだという彼の判断は正しい。
そしてその指示を本来しなければならなかったのは私だ……。
「凛」
「はい……」
「なぜ判断を誤った?」
「……」
「凛」
「……答えたくありません」
あなたへの想いを言うことはできない──。
すると、冷ややかな零様の声が耳に届いた。
私は彼の元に近づいて、膝をつく。
そんな私に、ただ一言零様は告げた。
「霜月凛、お前に暇を言い渡す」
「──っ!!!」
私は目を見開いた後、唇を噛みしめる。
そうして彼の事を見ることもないまま、命令を受け取った。
零様はそんな私に何も言わず、その場から去って行った──。
0
あなたにおすすめの小説
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
番(つがい)はいりません
にいるず
恋愛
私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。
本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。
隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~
夏笆(なつは)
恋愛
ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。
ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。
『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』
可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。
更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。
『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』
『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』
夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。
それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。
そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。
期間は一年。
厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。
つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。
この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。
あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。
小説家になろうでも、掲載しています。
Hotランキング1位、ありがとうございます。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
〖完結〗時戻りしたので、運命を変えることにします。
藍川みいな
恋愛
愛するグレッグ様と結婚して、幸せな日々を過ごしていた。
ある日、カフェでお茶をしていると、暴走した馬車が突っ込んで来た。とっさに彼を庇った私は、視力を失ってしまう。
目が見えなくなってしまった私の目の前で、彼は使用人とキスを交わしていた。その使用人は、私の親友だった。
気付かれていないと思った二人の行為はエスカレートしていき、私の前で、私のベッドで愛し合うようになっていった。
それでもいつか、彼は戻って来てくれると信じて生きて来たのに、親友に毒を盛られて死んでしまう。
……と思ったら、なぜか事故に会う前に時が戻っていた。
絶対に同じ間違いはしない。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全四話で完結になります。
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる