30 / 79
第30話 モフモフパークで乾杯!
しおりを挟む「『やすひろのモフモフパーク』を作りたい!」
俺は声高らかに宣言した。
「「やすひろのモフモフパーク!?」」
目銅佐オーナーとえりとは期待通りのリアクションをしてくれる。
それだよそれ!
それが聞きたくてそれっぽい名前を即興で付けたんだよ!
「一応聞くぞ? なんだそれは」
「これは──」
俺は意気揚々と説明する。
『やすひろのモフモフパーク』。
一言で言えば、モフモフ達と遊ぶところだ。
木をまるごと商業化……なんて考えてもいいけど、一先ずは、うちのペット達と元気に遊べるところを作れたらなあと思う。
その為のミニコテージだったり、巨大ブランコや巨大滑り台、あとは安全を確保しながら走り回ったり、寝転がったりする場を作りたい。
「とにかく、あの木でモフモフ達と目一杯遊べないかなあと思って!」
俺は思い付いたままに話した。
「やすひろ……」
「やすひろさん……」
二人は途中から静かだったな。
イマイチ伝わらなかったかな?
「いや、まあ出来たらなってだけで──」
「すげえよ!」
「すごいです!」
「へ?」
急いで訂正しようとしたけど、それを遮って二人が声を上げた。
どっちも目がキラキラして見える。
「それは面白いぞ!」
「そう?」
「ああ、バカっぽくて良いというか、バカゆえの発想というか!」
「……」
って、おいおい。
「そうですよ!」
「本当ですか?」
「はい! 何も考えてないやすひろさんだからこそというか、やすひろさんにしか出せないアイデアだと思います!」
「……」
二人とも、それって褒めてるの?
俺にはそうは受け取れないんだけど。
「とにかく、これは俺も手伝うぜ」
「えりと!」
「私も! 出来ることなら手伝います!」
「目銅佐オーナー!」
それでも、俺の話は二人を焚きつけたよう。
年甲斐にもなく、食卓の上で三人、手を重ねた。
「やるぞー!」
「「「おー!」」」
なんか青春してる。
そう思った二十七歳の三人でした。
★
「で、こうなったんだよ」
「へえ、なるほど~……とはなりませんよ!!」
夕焼けで空が赤く染まった頃。
学校帰りに美月ちゃんが家に来て、ちょうどここまでの経緯を簡単に説明した。
今盛大にノリツッコミしたのも彼女だ。
まあ、そう言いたくなるのも分かる。
だって……と思いながら、俺は木を見上げた。
「フクマロ君! あはは~!」
「ワフッ!」
「モンブラン! 手伝ってくれ!」
「ムニャッ!」
なんかもう「空中庭園」みたいになってるしな。
ちなみに我らがこの木は『世界樹』と名付けた。
はしゃいだ二十七歳達による、叡智の結晶ネーミングだ。
木の上にいるのは、目銅佐オーナーとえりと。
オーナーは、フクマロと巨大ブランコに。
えりとは、引き続きモンブランと作業をしている。
今日だけで「安全を確保するための階段・柵」、「ペット達や人が寝転がれるミニコテージ」、「巨大ブランコ」、「巨大滑り台」までが完成した。
気分は『自然で出来たスカイツリー』とか、そんなイメージだ。
巨大ブランコのすぐ下には安全を考慮したマットが敷いてあるし、落ちたりしても全然平気。
「すごいよなあ……」
改めて、半日でよくここまで出来たものだ。
最強ペット達が働きっぷりはすごくて、人の何十倍・何百倍ものスピードで作業が進むからな。
フクマロは魔物界最速のフットワークを生かして釘を打っていくし、モンブランは華麗な“かまいたち”で一瞬で施設を作り上げる。
ココアは意外性というか、二匹とは違った感性で工夫をしてくれた。
「本当に頼りになるよ」
けど、それもこれも、三匹と一緒に頑張るあの子がいてこそだ。
「ぽよー!」
あの子というのは、ぽよちゃんのこと。
昼休みに美月ちゃんから許可が返ってきたので、彼女の事務所に預けられたぽよちゃんの力を借りた。
ぽよちゃんの「栄養のある水を放出する」能力を使うためだ。
能力の効果は覿面で、ぽよちゃんが水をぶっ掛けたところからは強靭な枝がにょきにょきと生えてくる。
その枝を結集させて、その上に施設を作る。
今日は安全確保とそれをひたすらやってきた。
その結果がこれだ。
「美月ちゃんも登る?」
「わたしは……」
安全対策はバッチリとはいえ、高い場所が怖い人もいる。
その為に、マンション二階ぐらいの高さにもミニコテージを設置したり、そういった人向けの場所も作ってみた。
「てっぺんまで登りたいです!」
「おおっ!」
だけど心配は無かったよう。
考えてみれば、ダンジョンにも挑戦するような子だもんな。
「桜井さん!」
「ワフッ!」
「オーナーさん! フクマロ君!」
それを聞いたのか、フクマロと一緒に階段を下りてくる目銅佐オーナー。
「一緒に行きましょう!」
「ワッフー!」
「はい!」
みんなが集まり出して、すでに趣味の領域に入っていたえりとも声を上げた。
「俺たちも行くか」
「ニャフッ!」
「ぽよよっ!」
「キュルッ!」
作業を続けていたえりと・モンブラン、相変わらず仲良しのぽよちゃん・ココアも俺たちに合流。
四人に四匹という大所帯で、作り上げた木の階段を登っていく。
「すごいです……」
「それは照れるなあ」
「幻想的が過ぎますよ!」
上へと登りながら、横を見渡せば、綺麗な夕焼けとすっかり遠くなった地面。
今日も木は成長を続け、頂点はすでに30メートルに及ぶ。
ビル8階相当の高さだ。
実際に『世界樹』で作業をする自分たちでも、まだ現実なのかはっきりしない。
それほどに非現実的な現象だった。
ダンジョンがあるという、ファンタジーな世界のシンボルみたいにすら思える。
「ここだよ」
「わあ……!」
横の景色に見惚れていると、やがて頂上に辿り着く。
「こんな素敵な場所が!」
「ここは特に気合を入れたよ」
頂上にあるのは「展望台」。
この高さ・この場所ならではの雰囲気を作りたいと思って作った施設だ。
一面ガラスに囲まれたテラスのような四方は、地上の景色を鮮明に映し出す。
また中心部には、京風の大きな赤い傘と長椅子。
団子屋みたいなイメージだ。
和洋折衷ってやつ? 違うかな。
膨大なガラスは、気合いの入りまくった目銅佐オーナーが子会社から持ってこさせた。
中心部の茶室みたいなのはえりとの趣味だ。
「というか目銅佐オーナー」
「どうしました?」
「今日は本当に良かったんです?」
「……」
俺の質問にふいっと目を逸らしたオーナーはすたすたと歩いて行き、近くの冷蔵ボックスからビール缶を取り出した。
「まさか……」
プシュッ!
オーナーは勢いよくビールを開け、ごくっごくっといった。
「ぷはー! たまにはこんなことしないと、会社なんてやってられませんよ!」
「でも社員は働いて……」
「じゃあ明日、社員全員休みぃ!」
今のですぐに酔っ払ってるオーナーを見て、俺たちも笑いがこみ上げてきた。
「はははっ!」
「そりゃあいい!」
「オーナーさん!?」
この人も良い意味で狂ってるよなあ。
これで雑誌の「ホワイト企業50社」にも複数選ばれてるわけだから、よっぽど効率が良いんだろう。
「やすひろ」
「ああ!」
彼女に続いて、抑えられなくなったえりとと共にビール缶をプシュッと開けた。
「美月ちゃんはこっちでお願いします」
「……分かってますよーだ」
美月ちゃんにはオレンジジュースを渡した。
ちょっと寂しそうにしたが、さすがに勢いだけで飲ませるわけにはいかない。
「みんなも飲むか?」
「ワフッ!」
「ニャフッ!」
「キュルッ!」
「ぽよっ!」
四匹にはそれぞれ好きな物を取ってもらう。
これで全員、四人四匹が飲み物を持った。
ならばやることは一つだろう!
「「「かんぱーい!」」」
「「「ニャンパーイ!」」」
今ペット達がしゃべった!?
いや、久しぶりのビールですでに酔っているだけだな!
こうして、目銅佐オーナーの勢いから急遽打ち上げが始まった。
作業の後の気持ち良いビール!
これがもう堪らない!
勢いのままに会は進んでいった。
「めどさんは途中から遊んでたよな」
「えりとすぁん? 何言ってるんれすかもう~」
「オーナーさん酔うのはっや!」
えりと、目銅佐オーナー、美月ちゃん、
「ワフフ~♪」
「ムニャニャニャ~♪」
「キュルルッ!」
「ぽよ!」
フクマロ、モンブラン、ココア、ぽよちゃん。
みんなを見渡してみて、改めて思う。
俺は本当に周りに恵まれたなあ。
ブラック企業の社畜だった俺が、今はこんなに良い仲間たちを持つなんて思いもしなかったよ。
「ワフッ!」
「お、遊んで欲しいのかフクマロ」
「クゥン!」
「お~よしよし」
こうしてフクマロと戯れると思い出してしまうな。
今の俺があるのは全部、あの時フクマロと出会ったおかげだ。
「ニャフッ!」
「キュル!」
「ははっ、お前たちもか。よし来い!」
そしてモンブランにココア。
癒しのモフモフは増えていった。
三匹のおかげで、俺は今とっても充実したスローライフを送っている。
「やすひろ?」
「「やすひろさん?」」
「え?」
そんなことをふと考えていると、みんなの視線が集まっていた。
「どうした? ニヤニヤして気持ちわりい」
「気持ち悪い!?」
そしていきなり悪口が飛んできた。
「ちょっと、えりとすぁん」
「言い過ぎですよ」
「じゃあ二人も思ってたってこと!?」
あれ、みんなひどい!
仲間だと思ってたのに!
「ま、それもやすひろっぽいけどな」
「どういう意味だよ!」
「あっはっは!」
「ふふっ」
まったくみんなしてさ~。
まあ、なんとなく意味は伝わるけど。
モフモフ達と戯れている時は、ついニヤニヤしてしまう。
それだけ可愛がっているし、こいつらも懐いてくれている。
俺はこの先もみんなをずっと大切にするだろう。
その為にも、この『やすひろのモフモフパーク』にはもっと手を加えたい。
「スローライフを送りながらね」
俺たちの打ち上げは夜まで続いた。
47
あなたにおすすめの小説
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。
平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。
どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
追放された荷物持ち、【分解】と【再構築】で万物創造師になる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーから「足手まとい」と捨てられた荷物持ちのベルク。しかし、彼が持つ外れスキル【分解】と【再構築】は、万物を意のままに創り変える「神の御業」だった!
覚醒した彼は、虐げられていた聖女ルナを救い、辺境で悠々自適なスローライフを開始する。壊れた伝説の剣を直し、ゴミから最強装備を量産し、やがて彼は世界を救う英雄へ。
一方、彼を捨てた勇者たちは没落の一途を辿り……。
最強の職人が送る、痛快な大逆転&ざまぁファンタジー!
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる