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第42話 超お金持ち学校の文化祭にゲスト参戦ー4

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<三人称視点>

 えりとの提案より十分後。
 突然、金英高校上空・・に何かが現れる。

「お、おい見ろ!」
「なんだ!?」
「え、あれって!」

 人々が目を向ける先、空を飛んでいるのは……

「プクー!」
「みなさーん! これを見てくださーい!」

 タンポポだ。
 その上に乗っているのはメガホンを持ったやすひろ。
 さらに、タンポポは首から大きな紙を引っかけている。

「QRコード?」
「カメラが反応するぞ!」
「『癒しカフェ』再開してるって!」
「しかもクーポンまで!」

 巨大なQRコードを確認すれば、三年A組『癒しカフェ』のクーポンが出てくる。
 えりとが言っていた巨大な広告塔とは、QRコードを持ったタンポポの事。

 しかし、そんな大きなプリントをすぐ作れるはずもない。
 そこで活躍したのがモンブランだった。
 
「ムニャニャニャ!」

 モンブランによるかまいたちで、えりとが作ったQRコードを直接・・紙に書き写していたのだ。
 その正確無比なかまいたちによるQRコードは、しっかりと機能する。

 それを見た首謀者たち。

「なんだと!?」
「そんなのアリかよ!?」

 QRコードをかざせばしっかりと「営業再開」と出てくる。
 あまりに奇想天外すぎるやり方に、思わず偉そうな腰を上げた。

「いや、まだ大丈夫! 封鎖はしたままなんだ! 人が集まれば集まるほど、封鎖エリアの人目は多くなる。強制退去なんてできないはずだ!」

 動揺するリーダー格の男だが、言っていることは正しい。
 現在進行形で人目が集まっている食堂前の通路にて、荒事を起こせば炎上なりが起こる可能性はある。
 それが普通のペット達・・・・・・・ならば、の話だが。




 同時刻、食堂前の通路。

「まだなんですか!」
「営業再開って書いてありますよ!」
「あなたたち誰なんですか!」

 集まって来ているのは、QRコードや美月たちのSNSを見て集まってきたお客さん達。
 だが、黒服たちは一切動かないまま。

「ダメだ。通せない」
「無理やりは困りますね」
「力づくでも良いんですよ」

 黒服たちの怖さに怯えるお客さん。
 その時だった。

「ちょっと待って! ぽよちゃん!」
「ぽよー!」

 封鎖されていたはずの道から、ぽよちゃんとそれを追いかける美月が現れる。
 さらに、

「キュルー!」

 ぽよちゃんの上にはココアが乗っている。

 仲良しの二匹は、こうしてぽよちゃんの上にココアが乗る姿がちょくちょく配信に映っている。
 いわゆる「ぽよココ」である。

 ぽよココは黒服たちの間をすり抜け、客側に現れ出た。
 途端、お客さんの視線が一気に集まる。

「きゃー!」
「生ぽよココやば!」
「写真写真!」

 さらに、二匹も存在をもうアピール。

「ぽよっ!」
「キュルー!」

 これが作戦の一環だからだ。
 突然の登場に、今まで毅然きぜんとした態度だった黒服は動揺する。

「おい!」
「どこから入ってきた!」
「とにかくあれを止め──んんっ!?」

 しかし、それはほんの一瞬。
 お客さんがぽよココに夢中になっている隙に、狩り・・は行われた。

「ワフ」
「「「むぐっ……!」」」

 魔物界でも随一の「速さ」を持つフクマロだ。
 一瞬にして遠くまで運ばれていく黒服を横目に、美月は配信者スマイルを生かしてお客さんに声をかけた。

「大変お待たせいたしました。ただいまより開店となります!」

 これには歓声が上がった。

「おおー!」
「待ってた!」
「ありがとう!」

 ただし、厄介な客というものも存在する。
 正義を振りかざす面倒なお客さんだ。

「遅いんだよ! 俺たちはどれだけ待っ──」
「ごめんなさい。お詫びのクーポンだけじゃ……ダメだったでしょうか?」

 だが美月、ここで渾身の上目遣い。

「し、しかたねえな……」

 このやり取りに他の客も冷めた目だ。

「照れてる」
「だっさ」
「あんなのほっといて早く行こ」

 アイドル配信者をこれでもかと発揮する美月であった。
 
 タンポポとモンブランのQRコードから始まり、ぽよココの可愛さ、フクマロの狩り、そして美月のアイドル配信力という一連の流れ。
 こうして、『癒しカフェ』への客足は見事に戻り、話題が話題を呼んで客足は午前より伸びていくのであった。




 一方、首謀者たちの部屋。

「なんでだ!?」
「空は卑怯だろ!」
「黒服はどこ行った!?」

 自分たちの行いは棚に上げ、やすひろ側のやり方が気に入らない首謀者たち。
 そうして、このイライラが撤退を遅らせ、辿り着かれてしまった。

「ったく、こんなゴミセキュリティで俺に喧嘩を売ったのかよ」 
「「「!?」」」

 教室の扉が強制的にガラっと開かれ、姿を現したのはえりと。

「誰だお前は!」
「俺か? 俺は通りすがりのエンジニアだよ」

 えりともノリノリである。

「どうやってここを!」
「はあ、逆探知も知らないとか素人か? 邪魔をするならそれなりのセキュリティを張ってなきゃなあ、お子ちゃまさんよお」
「こんのっ!」

 そっちでは勝てないと判断した首謀者たちは武器を持ち出す。
 
「こうなったらもう知らねえ。逃げねえなら本気でヤるぞ?」
「ほー」

 首謀者の勝ち誇った顔に対し、えりとは方向転換。

「じゃ、逃げるわ。そっちは専門外なんで」
「はあ!?」
「てことで、よろしくー」

 えりとは廊下へすたこらさっさと逃げた。
 代わりに入ってきたのは警備隊。

「全員手を挙げろ!」
「「「!!」」」

 やってきたのは、目銅佐めどうさオーナーお抱えの警備会社職員達だ。
 中には探索者も混ざり、首謀者たちには勿体ないほどの戦力である。

「武器を下ろせ! 地に手を付くんだ!」
「ぐっ……!」

 これで終わりかと思いや……最後にひょっこり顔を出したえりとが伝えた。

「えー、金英高校三年F組、脛梶すねかじ君、小悪こわる君に、あと小太こぶと君だね」
「「「……!」」」

 えりとは嫌味たっぷりな言い方で三人を覗き見る。

「ちゃーんと学校に報告しておくからね~。んじゃ!」
「こんのっ!」
「確保!」

 リーダー格の脛梶すねかじが動いたことで、警備隊は一気に動いた。
 あっという間に三人は取り押さえられる。

「ちくしょおがああ!」

 後日、首謀者の三人は卒業を半年後に控えた中で強制退学。
 脛梶すねかじの父は、ギルドの立場を追われるか、子との縁を切るかの選択で、脛梶との縁を切ることを選んだそうだ。
 






<やすひろ視点>

「お」

 えりとからメッセージが届く。

『こっちは終わったぜ。後は安心して営業しな』

「ははっ!」

 相変わらず仕事が早いな。

「じゃ、タンポポ。そろそろ戻るか」
「プク!」

 QRコード配布兼、いざという時の制空権保持だったけど、えりとが無事解決してくれたらしい。
 これで食堂に戻れるな。

 タンポポが方向転換をすると、下から声がかかる。

「食堂戻るんですかー?」
「はいー! ぜひ来てくださいね!」
「「「わあああっ!」」」

 手を振ってくれるお客さんや、てってってとタンポポを追いかける子供たち。
 俺はやっぱりファンの人に支えられているんだなあ。
  
 文化祭Day1終了まではあと少し。
 最後の頑張りだ!
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