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第64話 仲良しの証
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<やすひろ視点>
ぽよちゃんが同じ種族である『インフィニティスライム』の説得に失敗。
まあ、これだけで戦いが止まれば苦労はしないよな。
てことで!
「行ってこい、フクマロ」
「ワフ!」
俺は森の茂みに隠れたまま、フクマロを向かわせた。
今まさに争っている『フェンリル』という種族であるフクマロに。
「ワフ」
「ポヨオオオォォ!」
フクマロが目の前に現れ、インフィニティスライムの親玉が低い呻き声を上げた。
フクマロに対して威嚇をしているようにも見える。
親玉インフィニティスライムの体長は見上げるほどに大きい。
それこそ、覚醒したフクマロなんて比較にならないレベルだ。
その上、図鑑にも戦闘力はEX(規格外)と記されるほどの魔物。
とんでもない迫力の威嚇だった。
それでも、フクマロは引かない。
「ワフ」
「ぽよっ!」
フクマロとぽよちゃんが向かい合う。
そして行ったのは……
「ワフ」
「ぽよー!」
にぎっと熱い握手。
ぽよちゃんから伸びた細長い手が、フクマロの前脚と交わされた。
誰にでも分かる仲良しの証だ。
「ポヨォ……!?」
動揺するインフィニティスライム。
まさか同族がフェンリルと仲良くするとは思わなかったのだろう。
『やすひろ』
「おう」
そのタイミングでえりとから通信が届く。
動揺から一先ず進行は止まったので、ここで俺が出て行く。
進軍中にただの人間である俺が出て行っても、何もできない可能性が大だからな。
「スライムさん!」
「ポヨオオォ……」
俺は木々と同じ高さまで巨大化した親玉インフィニティスライムに話しかけた。
ついでに、“親玉インフィニティスライム”は長いので『スライムさん』と呼ぶことにする。
これから話し合って仲直りしたいわけだしな。
「どうしてフェンリルと争っているんだ?」
「ポヨォ……」
返ってくるのは低い呻き声のみ。
それでも俺は続ける。
「フェンリル達は優しい。争う必要なんてないはずなんだ!」
「ポヨ……」
「それに、俺はみんなが本当は良い種族だってことも知ってる!」
俺は隣のフクマロとぽよちゃんと指差す。
「ここにいるのは君たちと同じ種族。それでも、こんなにフェンリルと仲良くできるんだ。それに──」
俺は裏へ合図を送った。
出てくるのはうちのペット達。
「ムニャ!」
「キュル!」
「プクー!」
三匹もフクマロ同様にぽよちゃんに駆け寄った。
「他の魔物も、こんな風に仲良くできるはずなんだ!」
「ぽよよっ!」
ココアがいつも通りぽよちゃんの上に乗り、モンブランとタンポポもそっとぽよちゃんに触れた。
これで仲良く見えないものはいないだろう。
「だから一度、話し合おう!」
「ポヨォ……」
スライムさんは動かない。
だが、やがて。
「ポヨオオォォ!」
「……!」
スライムさんが声を上げた。
そしてそのまま、前進を開始する。
『ちっ。交渉決裂か。下がれやすひろ!』
えりとの焦った声が耳に入ってくる。
たしかに普通ならそう聞こえるのかも。
でも、俺は一歩前に出た。
「いや」
『!? おい待て、何やってんだ!』
さっきの声色。
俺の勘違いじゃなければ……。
「ポヨオオオォォ!」
スライムさんから触手のような手が伸びてきて、前に進む俺を捉える。
『やすひろー!!』
「やすひろさん……!!」
耳からはえりとの声、後方からは美月ちゃんの声が聞こえる中、俺の視界は暗転した──。
ぽよちゃんが同じ種族である『インフィニティスライム』の説得に失敗。
まあ、これだけで戦いが止まれば苦労はしないよな。
てことで!
「行ってこい、フクマロ」
「ワフ!」
俺は森の茂みに隠れたまま、フクマロを向かわせた。
今まさに争っている『フェンリル』という種族であるフクマロに。
「ワフ」
「ポヨオオオォォ!」
フクマロが目の前に現れ、インフィニティスライムの親玉が低い呻き声を上げた。
フクマロに対して威嚇をしているようにも見える。
親玉インフィニティスライムの体長は見上げるほどに大きい。
それこそ、覚醒したフクマロなんて比較にならないレベルだ。
その上、図鑑にも戦闘力はEX(規格外)と記されるほどの魔物。
とんでもない迫力の威嚇だった。
それでも、フクマロは引かない。
「ワフ」
「ぽよっ!」
フクマロとぽよちゃんが向かい合う。
そして行ったのは……
「ワフ」
「ぽよー!」
にぎっと熱い握手。
ぽよちゃんから伸びた細長い手が、フクマロの前脚と交わされた。
誰にでも分かる仲良しの証だ。
「ポヨォ……!?」
動揺するインフィニティスライム。
まさか同族がフェンリルと仲良くするとは思わなかったのだろう。
『やすひろ』
「おう」
そのタイミングでえりとから通信が届く。
動揺から一先ず進行は止まったので、ここで俺が出て行く。
進軍中にただの人間である俺が出て行っても、何もできない可能性が大だからな。
「スライムさん!」
「ポヨオオォ……」
俺は木々と同じ高さまで巨大化した親玉インフィニティスライムに話しかけた。
ついでに、“親玉インフィニティスライム”は長いので『スライムさん』と呼ぶことにする。
これから話し合って仲直りしたいわけだしな。
「どうしてフェンリルと争っているんだ?」
「ポヨォ……」
返ってくるのは低い呻き声のみ。
それでも俺は続ける。
「フェンリル達は優しい。争う必要なんてないはずなんだ!」
「ポヨ……」
「それに、俺はみんなが本当は良い種族だってことも知ってる!」
俺は隣のフクマロとぽよちゃんと指差す。
「ここにいるのは君たちと同じ種族。それでも、こんなにフェンリルと仲良くできるんだ。それに──」
俺は裏へ合図を送った。
出てくるのはうちのペット達。
「ムニャ!」
「キュル!」
「プクー!」
三匹もフクマロ同様にぽよちゃんに駆け寄った。
「他の魔物も、こんな風に仲良くできるはずなんだ!」
「ぽよよっ!」
ココアがいつも通りぽよちゃんの上に乗り、モンブランとタンポポもそっとぽよちゃんに触れた。
これで仲良く見えないものはいないだろう。
「だから一度、話し合おう!」
「ポヨォ……」
スライムさんは動かない。
だが、やがて。
「ポヨオオォォ!」
「……!」
スライムさんが声を上げた。
そしてそのまま、前進を開始する。
『ちっ。交渉決裂か。下がれやすひろ!』
えりとの焦った声が耳に入ってくる。
たしかに普通ならそう聞こえるのかも。
でも、俺は一歩前に出た。
「いや」
『!? おい待て、何やってんだ!』
さっきの声色。
俺の勘違いじゃなければ……。
「ポヨオオオォォ!」
スライムさんから触手のような手が伸びてきて、前に進む俺を捉える。
『やすひろー!!』
「やすひろさん……!!」
耳からはえりとの声、後方からは美月ちゃんの声が聞こえる中、俺の視界は暗転した──。
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