魔境の森に捨てられたけど、最強のテイマーになって生還した~外れギフト【スライムテイム】でスライムを無限に仲間にして成り上がり無双~

むらくも航

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第37話 絶望的な差と

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 「剣聖とやら。もう終わりか?」
「……っ!」

 魔族は、空からマルムを見下すように尋ねた。

 今の攻防だけでマルムは自覚しそうになる。
 自分と魔族の間にある絶望的な差を。
 同世代でも飛びぬけて強かったはずが、自分では決して敵わないと。

(これが、魔族だと言うのか……?)

 もてはやされてきた分、崩れた時のメンタルは弱い。
 恐怖で足がすくみ、魔族がコオオと溜める魔力の前に動けないでいる。

「散れ。愚かな人間よ──【悪魔球デーモン・ボール】」
「あぶない!」

 魔族が攻撃を放った時、誰かがマルムを庇うように飛び出した。
 間一髪マルムを救ったのは、フィルだった。

「お、女!?」
「これで、回復を……」

 そして、自分の方がダメージを受けているにもかかわらず、マルムを回復させる。
 MPが少ないフィルには、自分を回復させる分は残っていない。

「この場で戦えるのはマルム様だけです。だから、お願いします……」

 フィルはマルムの印象が最悪である。
 罵詈ばり雑言ぞうごんは許していないし、今でもマルムは嫌いだ。
 それでも、自らを犠牲にして最善を取ったのだ。

 ……しかし、マルムは救えなかった。

「フッ、よくやった」
「え? きゃっ!」

 回復で状態が戻ったマルムは、フィルをドカっと蹴る。
 すると、そのまま魔族とは反対へ駆け出す。

「役立たずのせいでこうなったんだ! せめて囮になりやがれ!」
「そ、そんな……」

 マルムは恩を仇で返した。
 護衛たちを全員見捨て、戦場から逃げ出したのだ。

「仲間割れか。くだらん終幕だな」
「……っ!」

 さすがに呆れた魔族は、戦場を包むほどの魔力を込める。
 対して、マルムの護衛たちはすでに立ち上がれない。

「うぐっ……」
「ここまでか……」
「こんな仕事、受けなきゃよかった……」

 当然、致命傷を受けているフィルもだ。

(私の力じゃ……不遇職テイマーじゃ……)

 心は折れていないが、体が言う事を聞かない。
 こんな時にマルムが羨ましく思ってしまった。

(私が【剣聖】だったらな……)

 もはやマルムを恨む気にもならない。
 諦めと、怒りを通り越した呆れから、フィルは最後に口にした。

「ごめんなさい、お母さん……」
「散れ」

 そうして、魔族が戦場を焼き尽くす魔力を放つ。
 対して、フィルが目をつぶろうとした時──小さな魔物が目の前に現れる。

「ぷよーっ!」(バリアー!)
「……!?」

 スライムが小さな体を広げて、魔力結界を張ったのだ。

 だが、姿に似合わず結界は強力。
 魔族の攻撃をいとも簡単に耐えてみせた。

「ス、スライム?」
「ぷよっ!」
「テイムされてる……?」

 すると、続けて主らしき声が聞こえてくる。

「【上級治癒ハイ・ヒーリング】」
「き、傷が……!」

 傷はみるみるうちに消え、体も楽になる。
 次々に起こる不思議な現象に、フィルの理解が追いつかない。
 それから、目の前で少年がひょいっとスライムを拾い上げた。

「ごめんね、遅れてしまって」
「え?」
「一応、作戦外の場所にもスライムを配置しておいて良かった」
 
 少年の名はアケア。

「あとは僕に任せて」

 不遇職の救世主だ。
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