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第68話 魔境の森“最奥”
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『ついにあれが動き出した』
アケア領のスライム御殿で、長老スライムさんから念話を受け取った。
そこで、僕はもう安心の領土を飛び出し、魔境の森の家へ帰ることに。
森拠点の扉を開け、すぐさま声をかける。
「長老スライムさん! 帰ったよ!」
『早かったな』
「うん! それで状況は!」
『まだ大丈夫じゃが、じきに大きな変化があるかもしれぬ』
途中も念話で話していたが、あれが動き出したみたいだ。
僕は長老スライムさんに再確認した。
「本当に動き出したんだね。あれ──“魔族痕”が」
『おそらくな』
魔族痕とは、僕たちがつけた名前だ。
一か月ほど前。
セレティアとも出会う前に、森で奇妙な魔力の痕跡を見つけた。
まるで人と魔物の間のような、特有の魔力を放っていたんだ。
長老スライムさんの知識から、それは魔族だと断定できた。
僕がヒルナーデ邸で魔族の暗躍を推測できたのも、このことから魔族が動き出しているかもと予想していたからだ。
「じゃあいよいよ大元が動いたんだ」
『そうなるのう』
セレティアによると、魔族はここ五十年ほど見かけていなかった。
かつては人に災いをもたらす存在だったのに。
もしその理由が、五十年をかけて準備していたからだっとしたら?
魔族騒動、フォーロス家の一件。
そのどちらをも凌ぐ事態になりかねない。
「とにかく僕も確認しに行くよ」
『うむ、では行くとしよう』
そうして、僕は痕跡の元へと向かった。
「ここか」
拠点から移動してしばらく。
魔境の森を奥へと進み、僕たちは足を止める。
「久しぶりに来たな」
着いたのは、魔境の森“最奥”。
ここは未開拓地で、僕たちですら足を踏み入れたことが無い。
この先は、魔族の魔力を含んだ“瘴《しょう》気”で満たされているからだ。
「相変わらずだね……」
『うむ。これでは進めまい』
瘴気は様々な弱体化を起こす。
耐性を全力で張ればなんとか進めるかもしれないけど、この先はどこまで続くか分からない。
その上、長らく害も無かった。
結果、リスクを考えて開拓していなかったんだ。
森では他にもやることがたくさんあったし。
スライム達には交代で見張りをしてもらっていたけどね。
僕はその辺で一服をしているスライムに声をかける。
「お疲れ様、調子はどう?」
『ちょっとずつ瘴気が広がってきてるっす』
「みたいだね」
そして、今回の異変というのが、瘴気が広がってきていること。
「入ってみるしかないのかな」
『リスクは高いぞ』
「うん。でも悪影響が出始めたら放っておけないよ」
『それはそうじゃが……』
ほんの少しずつだけど、瘴気は森の中央に浸食している。
それに、浸食速度が変わらないとも限らない。
放置すれば、いずれ拠点も呑まれる可能性がある。
ならば、ここは決断すべきだ。
「一度拠点に帰ろう」
『ということは、アケア!』
「うん。編成を練って調査をする」
『……うむ、わかった』
長老スライムさんは心苦しそうだ。
これも僕を心配してくれているからだろう。
でも、スライム達を守るのは僕の役目だ。
「じゃあ、拠点に──って、これは!」
『むむっ!』
僕と同じタイミングで長老スライムさんも振り返る。
魔物の気配を感じ取ったんだろう。
場所は──瘴気の中からだ。
『アケア! こっちにくるぞ!』
「わかってる!」
長老スライムさん、周囲のスライム達と共に警戒を強める。
瘴気からの魔物は初めてだ。
何が出てくるか分からない。
「魔物の気配が掴めてきた……」
気配は近くなるほど、特徴を捉えられる。
体は小さくて丸い。
ぽよっと跳ねるように移動している。
それでいてすごく馴染み深い。
「ん?」
『『『ん?』』』
僕はスライムを、スライム達は互いを見合った。
思ったことは同じだろう。
すると、気配の正体が姿を現す。
『けほっ、けほっ』
「スライム……!」
出てきたのは、やはりスライムだった。
でも、体は瘴気の色をして弱っているみたいだ。
僕はすぐに駆け寄って回復を施す。
「だ、大丈夫!?」
『うぅ、人間さん?』
「そうだよ! スライムテイマーだ! 君の味方だよ!」
『じゃあ、お願い……』
すると、苦しそうなスライムは言葉にした。
『ぼくの仲間をたすけて』
アケア領のスライム御殿で、長老スライムさんから念話を受け取った。
そこで、僕はもう安心の領土を飛び出し、魔境の森の家へ帰ることに。
森拠点の扉を開け、すぐさま声をかける。
「長老スライムさん! 帰ったよ!」
『早かったな』
「うん! それで状況は!」
『まだ大丈夫じゃが、じきに大きな変化があるかもしれぬ』
途中も念話で話していたが、あれが動き出したみたいだ。
僕は長老スライムさんに再確認した。
「本当に動き出したんだね。あれ──“魔族痕”が」
『おそらくな』
魔族痕とは、僕たちがつけた名前だ。
一か月ほど前。
セレティアとも出会う前に、森で奇妙な魔力の痕跡を見つけた。
まるで人と魔物の間のような、特有の魔力を放っていたんだ。
長老スライムさんの知識から、それは魔族だと断定できた。
僕がヒルナーデ邸で魔族の暗躍を推測できたのも、このことから魔族が動き出しているかもと予想していたからだ。
「じゃあいよいよ大元が動いたんだ」
『そうなるのう』
セレティアによると、魔族はここ五十年ほど見かけていなかった。
かつては人に災いをもたらす存在だったのに。
もしその理由が、五十年をかけて準備していたからだっとしたら?
魔族騒動、フォーロス家の一件。
そのどちらをも凌ぐ事態になりかねない。
「とにかく僕も確認しに行くよ」
『うむ、では行くとしよう』
そうして、僕は痕跡の元へと向かった。
「ここか」
拠点から移動してしばらく。
魔境の森を奥へと進み、僕たちは足を止める。
「久しぶりに来たな」
着いたのは、魔境の森“最奥”。
ここは未開拓地で、僕たちですら足を踏み入れたことが無い。
この先は、魔族の魔力を含んだ“瘴《しょう》気”で満たされているからだ。
「相変わらずだね……」
『うむ。これでは進めまい』
瘴気は様々な弱体化を起こす。
耐性を全力で張ればなんとか進めるかもしれないけど、この先はどこまで続くか分からない。
その上、長らく害も無かった。
結果、リスクを考えて開拓していなかったんだ。
森では他にもやることがたくさんあったし。
スライム達には交代で見張りをしてもらっていたけどね。
僕はその辺で一服をしているスライムに声をかける。
「お疲れ様、調子はどう?」
『ちょっとずつ瘴気が広がってきてるっす』
「みたいだね」
そして、今回の異変というのが、瘴気が広がってきていること。
「入ってみるしかないのかな」
『リスクは高いぞ』
「うん。でも悪影響が出始めたら放っておけないよ」
『それはそうじゃが……』
ほんの少しずつだけど、瘴気は森の中央に浸食している。
それに、浸食速度が変わらないとも限らない。
放置すれば、いずれ拠点も呑まれる可能性がある。
ならば、ここは決断すべきだ。
「一度拠点に帰ろう」
『ということは、アケア!』
「うん。編成を練って調査をする」
『……うむ、わかった』
長老スライムさんは心苦しそうだ。
これも僕を心配してくれているからだろう。
でも、スライム達を守るのは僕の役目だ。
「じゃあ、拠点に──って、これは!」
『むむっ!』
僕と同じタイミングで長老スライムさんも振り返る。
魔物の気配を感じ取ったんだろう。
場所は──瘴気の中からだ。
『アケア! こっちにくるぞ!』
「わかってる!」
長老スライムさん、周囲のスライム達と共に警戒を強める。
瘴気からの魔物は初めてだ。
何が出てくるか分からない。
「魔物の気配が掴めてきた……」
気配は近くなるほど、特徴を捉えられる。
体は小さくて丸い。
ぽよっと跳ねるように移動している。
それでいてすごく馴染み深い。
「ん?」
『『『ん?』』』
僕はスライムを、スライム達は互いを見合った。
思ったことは同じだろう。
すると、気配の正体が姿を現す。
『けほっ、けほっ』
「スライム……!」
出てきたのは、やはりスライムだった。
でも、体は瘴気の色をして弱っているみたいだ。
僕はすぐに駆け寄って回復を施す。
「だ、大丈夫!?」
『うぅ、人間さん?』
「そうだよ! スライムテイマーだ! 君の味方だよ!」
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すると、苦しそうなスライムは言葉にした。
『ぼくの仲間をたすけて』
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