ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航

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第9話 地続きの異変

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<三人称視点>

「もうすぐだよね」
「ええ、気を付けるのよ」

 エアルとリザが草木を分けながら進む。

 ここはダンジョンとダンジョンの間。
 いわば、ダンジョンのつなぎ目・・・・だ。

「あ、光が見えたよ」

 二人は難なく『はじまりの平原』を抜けたようだ。
 最後にはボスもいたが、エアルの「ていっ」でワンパンした。
 今さらそんな程度で苦戦はしない。

 そして、いよいよ草木が途切れているのが見えてくる。
 ここまでくればもう一息だ。

「リザ、最後は一緒に踏み超えようよ」
「ふふっ、私は何度もあるのに」
「いいからさ。せーのっ!」

 そうして、二人は同時に最後の一歩を踏み出した。

「おおおー!」

 すると、雄大な景色と共に陽射しが差し込でくる。

 エアルが立っているのは崖際。
 視界に広がったのは一面の密林だ。

「次のダンジョンだ!」

 ──『カナル密林』。

 中央には一本の大きな運河が流れ、それを囲うよう左右に密林が広がっている。
 基本は運河を辿れば良いが、目印として分かりやすい分、魔物が群がりやすい。

 危険を冒して一本道を進むか。
 迷いながらも回り道を進むか。

 探索者の性格が現れるダンジョンだろう。

「よーし、早速──」
「ちょいちょいちょい!」

 だが、エアルは圧倒的前者。
 それどころか、何十メートルあるか分からない崖から、いきなり運河へ飛び降りようとした。
 リザがギリギリで引き止めてくれた形だ。

「一応階段あるから! ほら!」
「あ、ほんとだー」

 リザがビシっと左側を指差す。
 下の運河へ続く階段のようだ。

「野生すぎるわよ、まったく」
「あはは、ごめんごめん」

 ひともんちゃくありながらも、二人は早速ダンジョンを進み始めた。




「そういえば、あなたの武器はそれでいいの?」

 密林に入って少し。
 エアルの腰元に目を向けたリザがたずねる。

「この剣のこと?」
「ええ」

 そこに差してあったのは“古びた剣”だ。

 今までも、ジャイアントコングとの戦闘ですら抜いたのは見ていない。
 というより、どう見ても買い替え時だ。

 それでも、エアルはこくりとうなずいた。

「これは僕の相棒・・だから」
「相棒?」
「うん。おじいちゃんから授かったんだ」
「へえ……」

 エアルにとっては大切な武器のようだ。
 それから情報を付け加える。

「あと、疲れちゃうんだよね」
「……え?」

 その言葉にはぴくりと反応を見せるリザ。
 何か思い当たることがあるのかもしれない。

「切れ味はズバァンって気持ち良いんだけど」
「……ええ」
「なんか使った後は体力を持っていかれちゃう気がして」
「……ッ!」
 
 リザは目を見開く。
 彼女の中で何かがつながったのかもしれない。

「エアル、その剣の名前とかってあるのかしら」
「ううん。知らない」
「……そ、そう」
「この剣がどうかしたの?」

 だが、確証は得られなかったことで、リザはふっと笑って返す。

「いえ。変な事を聞いて悪かったわ」
「ううん! いいよ!」

 会話を終え、エアルはまた辺りをきょろきょろとしながら進む。
 新たなダンジョンにウキウキしているようだ。

 だが対象的に、リザは口元に手を当てている。

「……まさかね」

 何かを考え込んでいるようだ。
 しかし、そんな二人の元に魔物が接近してくる。

「「「ウキャキャー!」」」
「……!」

 サル型魔物──『サーベルモンキー』だ。
 剣のように鋭い尻尾を武器に、群れで探索者をおそう。
 森などに生息する魔物である。

「なっ!?」

 その姿に、リザは思わず声を上げる。

 サーベルモンキーはDランク。
 彼女の記憶では、こんな場所に生息していない。
 本来ならば、もっと奥地で遭遇そうぐうするはずだ。

「リザ、やっちゃっていい?」
「え、ええ。私もサポートするわ」

 Aランクのジャイアントコングを倒したエアルだ。
 負けるとは思っていない。

「てりゃー!」
「「「ウギャー!」」」

 予想通り、群れは瞬殺する。

「……」

 それでも、リザは気になって仕方がない。
 エアルへ情報を教える身としては、錯誤さくごがあってはいけないのだ。

(密林で何かが起こってる……?)

 『はじまりの平原』のジャイアントコング。
 『ガラル密林』のサーベルモンキー。

 それなりに長くラビリンスへ潜るリザでも、かつてない事が起きていた。

「リザ、行こうよ」
「……ええ」

 決して思い違いではない。
 勘の鋭いリザは、すでにあらゆる事を想定している。

 だが、そんな彼女の想定を大きく上回る・・・・・・ことがこの先で起こるとは、思いもよらないのであった──。







 同時刻、『ガラル密林』を半分を過ぎた辺り。

「半分超えたぜ!」
「ああ、やっとだな!」

 エアル達が進む先に、何人かの探索者がいた。
 強さや装備から、中級探索者といったところだろう。

 若干余裕も出てきたのか、彼らは話を始める。

「そういや昨日、『はじまりの平原』にジャイアントコングが出たらしいぜ」
「は? そんなの嘘だろ」
「まじだって」

 話題は昨日の一件。

「Aランクだっけか。いま遭遇すればひとたまりもねえな」
「だな。それに、この密林も以前よりずっと強え」

 彼らは自分達の実力をわきまえているようだ。

「たしかに。一週間前はそんなことがなかったのに」
「何か起きてんのか?」
「やめろよそういうの……って!」

 そんな中、一人の男が何かに気づく。
 男は、自らと共にパーティーメンバーの頭を下げ、小声で話し始めた。

「おい、あれを見ろ!」
「え? ……んなっ!?」

 彼らの視界に入ってきたのは、ジャイアントコングと同等レベルの魔物たち。
 それが次々と・・・奥へ向かっていく。

 逆に、そんな大物達から逃げるよう、元々密林にいた魔物たちは、序盤の方へ追いやられていた。
 これがエアルが序盤で『サーベルモンキー』と遭遇した理由のようだ。

「奥地に一体何があるんだ……?」
「分からねえ……」

 だが、そんな彼らの疑問を晴らすような音が聞こえてきた。

「クォ~~~~~~~~~~~ン!!」
「「「……!?」」」

 それは、まるで“警告”。
 これ以上『近づくな』と本能的に刺激する遠吠えのようだった。
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