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02 最強の剣を入手する
入門、カルキエ道場(前)
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ロメリアは言った。
俺自身が強くならなければ、意味がないと。
俺は強くならなければいけない。
しかし、どうやって?
「強くなる方法と言ったら、まずはスキルですね」
壁の上を、階段に向かって歩きながら、ヘレナは言う。
俺はヘレナの隣に並ぶ。ヴァネスは無言で後をついて来る。
「つまり、スキルガチャを回せばいいのか?」
「領地の予算をつぎ込めば、いくらでも回せますよ。怪しまれないように、中洲島の教会は使わない方がいいでしょう」
「いくらでも、ってわけにはいかないだろ?」
「ピックアップの時に、銀貨一万枚分ぐらい回せば……うーん……」
あんまり現実的じゃないな。
というか、一万回も回すのに、何日かかるのやら。
スキルは無理だな。
「じゃあ、アイテムの方か」
強いアイテムを持てば強くなるんだろうか?
どうもピンとこない。
「強いアイテムは、どこで手に入るんでしょうね」
「カジノの高額賞品は?」
「ダメです」
「だよな。俺はクヤクアみたいになりたくはない。領地の予算を使い込むのはなしにしよう」
「そうですね。だけど、スキルやアイテム以外で強くなる方法なんて、あるんでしょうか?」
考えてもわからない。
そういう時は、どこにいけばいい?
答えは、図書館にある。
***
ヴァネスは中洲島に帰らせて、兵士の対応をさせる。
そして俺とヘレナは図書館にやって来た。
図書館は、都市の東側にある。
この辺りは商人の集まる場所だ。
本は貴重で高価な物だ。
よほどの金持ちでもなければ個人所有はできない。
だから図書館が必要になる。
図書館の利用は有料だ。
といっても、小銅貨一枚払えば、一日中利用できる。
俺は、たまにスキル辞典を読みに来るぐらいしかないし、それもしばらくご無沙汰だった。
ヘレナは、始めて来たのか少しきょろきょろしていた。
「ヘレナは、こういう所には来ないの?」
「それは……スキル関連なら、だいたいの本は領主の館に揃っていますからね」
「それもそうか……」
「逆に言うと、館にも置いていない様な、レアな本を探しあてなければいけません。何かアテはありますか」
「司書の人に聞いてみるしかないかな」
受付のカウンターには、ミロスがいた。
俺より少し年上ぐらいの男、猫人で頭から猫耳が生えている。
「いらっしゃい……」
「本を探してるんだ。今、相談してもいい?」
「いいけど……スキル辞典は、全部貸し出し中だったと思うよ」
いつも読む本を覚えられていた。
一時期は、二週間おきぐらいに通って、いろいろ教えてもらったからな。
最初の頃は文字が読めなかったから、その教材を教えてもらう所から始めたのだ。
一年前、「図書館って文字が読めないと使えないのか?」と質問した時の驚き顔と言ったら……まあ、それはいいか。
「ああ、それはいいんだ。今日は、別のを探していて」
「うん。今度は何?」
「ガチャ以外でスキルを入手する方法、あるいは、強いアイテムを入手する方法……どの本に書いてあると思う?」
「アイテム……いろいろあると思うけど」
「カジノの賞品になってる剣が手に入れば一番いいけど……強ければなんでもいいよ」
「カジノの賞品の剣……、強い武器が欲しいってことか? それなら……」
ミロスは、何か思い当たることがあったようだが、首を振った。
「強い武器は金が要るだろ。」
「……」
「ガラクタみたいなので良ければ、モンスターのドロップを調べて狩りに行けば……あ、強いスキルが要るか……」
「結局そこなんだよ」
「どうにもならんな」
結局、簡単には強くなれないということだ。
「スキルについては、どうですか?」
ヘレナが口を挟む。
「スキル辞典に乗っていないような特別なスキルについて、伝承みたいな曖昧な話でもいいと思うんですけど……」
これは多分、《死者蘇生》についての調査の方もあるだろう。
「ああ、それは……ちょっと待ってくださいね。おい、ソリス、こっちに来い」
ミロスは俺の腕をつかむと、部屋の隅に引っ張って行って、小声で尋ねてくる。
「おい、あの女の子は誰だ?」
「ヘレナのこと? まあ、友達みたいな……」
ふと、キスした時のことを思い出す。
恋人と言ってしまってもいいんだろうか? 今はやめて置こう。
ミロスは俺をつつく。
「誰だか知らないけど、なんかいい服着てるし金持ちっぽいな。貴族か?」
「中洲島の領主……の義理の妹」
「おまえ……、意外とやるもんだなぁ。スナホリは卒業か?」
「まあね」
あまり深く考えていなかったけど、スナホリの仕事はもうしないだろう。
今の俺は、そんなことをしている場合じゃない。
強くなる必要があるし……強くなったら、やらないといけないことが増える。
「小領地とは言え、金はあるだろ。予算はいくらあるんだ?」
「それは……領地の予算を使うのは良くないって話になってて……」
「そうだな。使い込みはよくないか。……スナホリはやめたんだよな?」
「そ、それが?」
「時間はあるんだな? 一日中……いや、一週間とか一ヶ月とか、特訓してても許される立場なんだな?」
「まあ、それは……そうかも」
「よし……強くなりたいから図書館に来るのは、間違ってる。けど、俺の所に来たのは正解かもな」
ミロスの中では、何かが決まったらしい。
俺たちはヘレナの所に戻る。
「どうも、ヘレナさん? 俺はミロス・カルキエ。ソリスの友人です」
「そうなんですか。ヘレナ・ハーネカルです。よろしくお願いします」
ヘレナは挨拶してから、あっ、と声を漏らす。
「……もしかして、カルキエ道場の関係者の方ですか?」
「え? 何それ?」
名前を聞いただけでわかるような何かがあったらしい
知らないのは俺だけか?
俺自身が強くならなければ、意味がないと。
俺は強くならなければいけない。
しかし、どうやって?
「強くなる方法と言ったら、まずはスキルですね」
壁の上を、階段に向かって歩きながら、ヘレナは言う。
俺はヘレナの隣に並ぶ。ヴァネスは無言で後をついて来る。
「つまり、スキルガチャを回せばいいのか?」
「領地の予算をつぎ込めば、いくらでも回せますよ。怪しまれないように、中洲島の教会は使わない方がいいでしょう」
「いくらでも、ってわけにはいかないだろ?」
「ピックアップの時に、銀貨一万枚分ぐらい回せば……うーん……」
あんまり現実的じゃないな。
というか、一万回も回すのに、何日かかるのやら。
スキルは無理だな。
「じゃあ、アイテムの方か」
強いアイテムを持てば強くなるんだろうか?
どうもピンとこない。
「強いアイテムは、どこで手に入るんでしょうね」
「カジノの高額賞品は?」
「ダメです」
「だよな。俺はクヤクアみたいになりたくはない。領地の予算を使い込むのはなしにしよう」
「そうですね。だけど、スキルやアイテム以外で強くなる方法なんて、あるんでしょうか?」
考えてもわからない。
そういう時は、どこにいけばいい?
答えは、図書館にある。
***
ヴァネスは中洲島に帰らせて、兵士の対応をさせる。
そして俺とヘレナは図書館にやって来た。
図書館は、都市の東側にある。
この辺りは商人の集まる場所だ。
本は貴重で高価な物だ。
よほどの金持ちでもなければ個人所有はできない。
だから図書館が必要になる。
図書館の利用は有料だ。
といっても、小銅貨一枚払えば、一日中利用できる。
俺は、たまにスキル辞典を読みに来るぐらいしかないし、それもしばらくご無沙汰だった。
ヘレナは、始めて来たのか少しきょろきょろしていた。
「ヘレナは、こういう所には来ないの?」
「それは……スキル関連なら、だいたいの本は領主の館に揃っていますからね」
「それもそうか……」
「逆に言うと、館にも置いていない様な、レアな本を探しあてなければいけません。何かアテはありますか」
「司書の人に聞いてみるしかないかな」
受付のカウンターには、ミロスがいた。
俺より少し年上ぐらいの男、猫人で頭から猫耳が生えている。
「いらっしゃい……」
「本を探してるんだ。今、相談してもいい?」
「いいけど……スキル辞典は、全部貸し出し中だったと思うよ」
いつも読む本を覚えられていた。
一時期は、二週間おきぐらいに通って、いろいろ教えてもらったからな。
最初の頃は文字が読めなかったから、その教材を教えてもらう所から始めたのだ。
一年前、「図書館って文字が読めないと使えないのか?」と質問した時の驚き顔と言ったら……まあ、それはいいか。
「ああ、それはいいんだ。今日は、別のを探していて」
「うん。今度は何?」
「ガチャ以外でスキルを入手する方法、あるいは、強いアイテムを入手する方法……どの本に書いてあると思う?」
「アイテム……いろいろあると思うけど」
「カジノの賞品になってる剣が手に入れば一番いいけど……強ければなんでもいいよ」
「カジノの賞品の剣……、強い武器が欲しいってことか? それなら……」
ミロスは、何か思い当たることがあったようだが、首を振った。
「強い武器は金が要るだろ。」
「……」
「ガラクタみたいなので良ければ、モンスターのドロップを調べて狩りに行けば……あ、強いスキルが要るか……」
「結局そこなんだよ」
「どうにもならんな」
結局、簡単には強くなれないということだ。
「スキルについては、どうですか?」
ヘレナが口を挟む。
「スキル辞典に乗っていないような特別なスキルについて、伝承みたいな曖昧な話でもいいと思うんですけど……」
これは多分、《死者蘇生》についての調査の方もあるだろう。
「ああ、それは……ちょっと待ってくださいね。おい、ソリス、こっちに来い」
ミロスは俺の腕をつかむと、部屋の隅に引っ張って行って、小声で尋ねてくる。
「おい、あの女の子は誰だ?」
「ヘレナのこと? まあ、友達みたいな……」
ふと、キスした時のことを思い出す。
恋人と言ってしまってもいいんだろうか? 今はやめて置こう。
ミロスは俺をつつく。
「誰だか知らないけど、なんかいい服着てるし金持ちっぽいな。貴族か?」
「中洲島の領主……の義理の妹」
「おまえ……、意外とやるもんだなぁ。スナホリは卒業か?」
「まあね」
あまり深く考えていなかったけど、スナホリの仕事はもうしないだろう。
今の俺は、そんなことをしている場合じゃない。
強くなる必要があるし……強くなったら、やらないといけないことが増える。
「小領地とは言え、金はあるだろ。予算はいくらあるんだ?」
「それは……領地の予算を使うのは良くないって話になってて……」
「そうだな。使い込みはよくないか。……スナホリはやめたんだよな?」
「そ、それが?」
「時間はあるんだな? 一日中……いや、一週間とか一ヶ月とか、特訓してても許される立場なんだな?」
「まあ、それは……そうかも」
「よし……強くなりたいから図書館に来るのは、間違ってる。けど、俺の所に来たのは正解かもな」
ミロスの中では、何かが決まったらしい。
俺たちはヘレナの所に戻る。
「どうも、ヘレナさん? 俺はミロス・カルキエ。ソリスの友人です」
「そうなんですか。ヘレナ・ハーネカルです。よろしくお願いします」
ヘレナは挨拶してから、あっ、と声を漏らす。
「……もしかして、カルキエ道場の関係者の方ですか?」
「え? 何それ?」
名前を聞いただけでわかるような何かがあったらしい
知らないのは俺だけか?
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