19 / 83
18 あの物質が必要だ
しおりを挟む
シンフォニウムの件を皆に話した。ロビーにはこの研究所の職員が全員と、それからルーがいた。皆は驚きながら私とジェーンの話を聞いてくれた。
特にケイト先生は、メモを取りながら聞いていた。全てを話し終えて静まりかえったロビーだったが、リンが手をあげて私に聞いた。
「じゃあじゃあ……昨日残業してたのとか、キリーとジェーンがずっと手を繋いで歩いているのとか、トイレまで一緒に行ってたのは、マテオ団長のことを調べるのと、ヴァレンタイン教官を警戒しての行動だったの?じゃあキリーとジェーンのフェイクラブラブだったの?」
「あんた……」私はがっくり肩を落として、呆れた声を出した。「この話を聞いて、一番最初の感想がそれなのね……。」
「え?そうでしょ?だよね、アリス。」
アリスは違う違うと、無言で首を振った。「え?」と、とぼけた様子のリンが首を傾げると、察したラブ博士が彼女のことをべしんと叩いてくれた。「そうね、」と次に言葉を発したのはケイト先生だ。
「セレスティウムの情報が必要だわ。出来ればそのもの自体があるといいのだけれど、現物が無くてもレシピだけでもあれば再現出来る可能性がある。キリーが完全に回復しているのならマテオも考えている通りに、ヴァレンタインは開発に成功しているわ。キリー、副作用は?」
「と、特に無い……。」
「ならいいじゃないか!」と景気のいい声を出したのは、クラースさんだ。「そのセクターってのが帝国研究所から行けるのなら、研究所をひっくり返す勢いで隅々まで探して、通路を見つけてしまえばいい!俺は行く気満々だぞ!」
すごいやる気満々だ……。彼と同じくらいに、やる気満々な人間がもう一人いる。それはルーだった。彼は会ったばかりのクラースの肩を掴んで、笑顔で言った。
「俺だって、そのセレスティウムを見つければベルンハルト様も、他に魔力の暴走を抱えているインジアビスの人間だって、みんな救えるんだ!俺だって絶対に行くからな!こんなヒョロヒョロした兄ちゃんに、負けてられるか!」
「なんだお前、俺のことを知らないのか?どっちが先に見つけられるか勝負をしようじゃないか?」
「なにぃ!「お待ちを!お二人とも、お待ちを……!」
二人を宥めようと頑張っているのはジェーンだ。さっきからセレスティウムに対してやる気を出している職員たちに囲まれて、彼は一人ネガティブな発言をしている。
「キルディアがヴァレンタインに狙われています。それに帝国研究所が通路を探すのを許可してくれるとも思いません。セレスティウムだって、まだ情報が不足しております!タージュはどうお考えですか?」
「えっ!?」
急に話を振られたタージュ博士は今まで和やかな顔でカウンターに寄り掛かりながら我々を見守っていたが、その姿勢をやめて、頭をぽりぽりと掻き始めた。
「そうですね……僕としてはセレスティウム……の発見は大事ですけれど……その、部長の意見に賛成です。はい、とっても。」
私からではジェーンの顔が見えないが、彼の背中からはひしひしと私に同意をしろタージュと言うオーラが漏れ出ていた。タージュ博士は蛇に睨まれたカエルの如く、ジェーンから目を逸らしてしまった。
「タージュの意見を聞きましたか?キルディア。もう少し、調査が必要です。」
「でも調査はもうやれるだけやったんじゃないの?」リンが言った。「もうこうなったら適当な理由をつけて、帝国研究所に乗り込むしか……おーこわ!」
今度はジェーンの威圧的な背中の向こうが、リンに向いていた。彼女はラブ博士の背後に隠れていて、ラブ博士はと言うと、タージュ博士のように苦笑いしながら頭を掻き始めた。
私はジェーンの肩を叩いて振り向かせた。彼は……眉間に皺を寄せて眼光鋭くなっていた。怖かったけど、言った。
「ジェーンやるしかない。セレスティウムを手に入れたいよ。」
「……それは、」ジェーンが険しい顔を消していった。「重々承知しております。今回魔力が暴走してしまっているのは、あのベルンハルト。私も、彼には度々お世話になっておりますし、彼はキルディアを本当の娘のように愛している。あなたもまた、彼を父のように想っている。さすれば彼は私の義理の父でもあります。ですから」
「え?待って待って。」リンが慌てふためきながら、ラブ博士の背後から出てきた。「どどどどどういうこと?二人は婚約してるの?」
「え!?」私の声がロビーに響いた。「してないよ!してない!ジェーン、いきなり紛らわしいことを言わないでよ……。何にせよセレスティウムを取りに行こう。教官のことはあるけど、セクターに行ったら全てがわかる。その為に、一応ヴァルガと陛下にはお話しようよ。その方が帝国研究所も力になってくれるはず。」
「そうだね。」「そうだ!」「そうそう!」と、皆が賛成しくれている中、ジェーンは一人浮かない顔だった。私が彼の背中をさすると、彼は漸く少し笑ってくれた。
特にケイト先生は、メモを取りながら聞いていた。全てを話し終えて静まりかえったロビーだったが、リンが手をあげて私に聞いた。
「じゃあじゃあ……昨日残業してたのとか、キリーとジェーンがずっと手を繋いで歩いているのとか、トイレまで一緒に行ってたのは、マテオ団長のことを調べるのと、ヴァレンタイン教官を警戒しての行動だったの?じゃあキリーとジェーンのフェイクラブラブだったの?」
「あんた……」私はがっくり肩を落として、呆れた声を出した。「この話を聞いて、一番最初の感想がそれなのね……。」
「え?そうでしょ?だよね、アリス。」
アリスは違う違うと、無言で首を振った。「え?」と、とぼけた様子のリンが首を傾げると、察したラブ博士が彼女のことをべしんと叩いてくれた。「そうね、」と次に言葉を発したのはケイト先生だ。
「セレスティウムの情報が必要だわ。出来ればそのもの自体があるといいのだけれど、現物が無くてもレシピだけでもあれば再現出来る可能性がある。キリーが完全に回復しているのならマテオも考えている通りに、ヴァレンタインは開発に成功しているわ。キリー、副作用は?」
「と、特に無い……。」
「ならいいじゃないか!」と景気のいい声を出したのは、クラースさんだ。「そのセクターってのが帝国研究所から行けるのなら、研究所をひっくり返す勢いで隅々まで探して、通路を見つけてしまえばいい!俺は行く気満々だぞ!」
すごいやる気満々だ……。彼と同じくらいに、やる気満々な人間がもう一人いる。それはルーだった。彼は会ったばかりのクラースの肩を掴んで、笑顔で言った。
「俺だって、そのセレスティウムを見つければベルンハルト様も、他に魔力の暴走を抱えているインジアビスの人間だって、みんな救えるんだ!俺だって絶対に行くからな!こんなヒョロヒョロした兄ちゃんに、負けてられるか!」
「なんだお前、俺のことを知らないのか?どっちが先に見つけられるか勝負をしようじゃないか?」
「なにぃ!「お待ちを!お二人とも、お待ちを……!」
二人を宥めようと頑張っているのはジェーンだ。さっきからセレスティウムに対してやる気を出している職員たちに囲まれて、彼は一人ネガティブな発言をしている。
「キルディアがヴァレンタインに狙われています。それに帝国研究所が通路を探すのを許可してくれるとも思いません。セレスティウムだって、まだ情報が不足しております!タージュはどうお考えですか?」
「えっ!?」
急に話を振られたタージュ博士は今まで和やかな顔でカウンターに寄り掛かりながら我々を見守っていたが、その姿勢をやめて、頭をぽりぽりと掻き始めた。
「そうですね……僕としてはセレスティウム……の発見は大事ですけれど……その、部長の意見に賛成です。はい、とっても。」
私からではジェーンの顔が見えないが、彼の背中からはひしひしと私に同意をしろタージュと言うオーラが漏れ出ていた。タージュ博士は蛇に睨まれたカエルの如く、ジェーンから目を逸らしてしまった。
「タージュの意見を聞きましたか?キルディア。もう少し、調査が必要です。」
「でも調査はもうやれるだけやったんじゃないの?」リンが言った。「もうこうなったら適当な理由をつけて、帝国研究所に乗り込むしか……おーこわ!」
今度はジェーンの威圧的な背中の向こうが、リンに向いていた。彼女はラブ博士の背後に隠れていて、ラブ博士はと言うと、タージュ博士のように苦笑いしながら頭を掻き始めた。
私はジェーンの肩を叩いて振り向かせた。彼は……眉間に皺を寄せて眼光鋭くなっていた。怖かったけど、言った。
「ジェーンやるしかない。セレスティウムを手に入れたいよ。」
「……それは、」ジェーンが険しい顔を消していった。「重々承知しております。今回魔力が暴走してしまっているのは、あのベルンハルト。私も、彼には度々お世話になっておりますし、彼はキルディアを本当の娘のように愛している。あなたもまた、彼を父のように想っている。さすれば彼は私の義理の父でもあります。ですから」
「え?待って待って。」リンが慌てふためきながら、ラブ博士の背後から出てきた。「どどどどどういうこと?二人は婚約してるの?」
「え!?」私の声がロビーに響いた。「してないよ!してない!ジェーン、いきなり紛らわしいことを言わないでよ……。何にせよセレスティウムを取りに行こう。教官のことはあるけど、セクターに行ったら全てがわかる。その為に、一応ヴァルガと陛下にはお話しようよ。その方が帝国研究所も力になってくれるはず。」
「そうだね。」「そうだ!」「そうそう!」と、皆が賛成しくれている中、ジェーンは一人浮かない顔だった。私が彼の背中をさすると、彼は漸く少し笑ってくれた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる