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44 それの材料
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「まだ、もう一つ日記が残ってるから、それを見よう。」
私は提案をした。クラースさんとヴァルガは静かに頷いたので、私は『源となるもの』というタイトルの、最後の書類を開いた。それはなんと、今日から一週間前の日付だった。
「読みます。……『足りない。足りない、足りない!渇望しても手に入らないことがどれだけ苦しいか!セレスティウムは材料が手に入らないのが原因で生産が停止している。私は欲しがっているのに、手に入らない!
あれの材料……それは囚人だった。騎士の時は重犯罪者を収容施設から取り出して、セクターへと連行した。檻に入れて少し腹を空かせてから、スプレーを掛けて、メインダクトに入れる。
高出力の魔力を放出すれば異次元を発生させて、生きた魔力を抽出できる……ああ、想像しただけでよだれが垂れる。』ちょっと待って。呼吸を整えさせて。」
「だ、大丈夫かギルバート?」
大丈夫なわけないだろうが、セレスティウムの材料が人間だって知っちゃったんだから……!
私は胸を抑えて荒ぶる呼吸を整えた。ヴァルガが背中をさすってくれた。いえええええ……あの檻は人間を入れる為だったのか。私は続きを読んだ。
「『メインダクトの部屋で結晶化したら、それを今度はオーロラパイプに入れて、長時間温める。実はセレスティウムは残り二つあるが、それはメインダクトに置いたままだ。初期の頃にメインダクトにその二つを置いた。セレスティウムが変異しないか実験をする為だった。
メインダクトは、太陽光を再現して放出し続ける。それが今の私には耐えられなくなってしまったのだ。肉体が強化された代わりに、太陽光を浴びると身体が溶けてしまう。目だってそうだ。私はもう地上の景色を見る事は出来ない。
あれが必要だ。お腹が空いた。私は早く食べたい。しかしメインダクトには入れない。ならば、セレスティウムが染み込んだ肉体を摂取したらどうかと閃いた。セレスティウムを摂取した人間を食べてみるのはどうだろうか……?
ギルバートに連絡をする。LOZの戦い見事だった。彼女はあの戦いで更に強くなった。彼女を結晶化させるよりも、ルミネラで一番の強さを持つ彼女にセレスティウムが潜んでいるなら、丸ごと頂きたい。
彼女の勇敢さが私の体内で細胞レベルに凝縮されたときに、私の肉体を死神から解放されることを願うが……それは無理か。もう食料も底を尽きて、数年が経つのに、私は死ねない。
ギルバート、お前が欲しいよ。食べる前に、少し遊ぼうか?新しく生えた私の触手がお前を歓迎したがってる。』だそうです。ねえねえ早く帰ろ?」
「だろ?ほら言わんこっちゃない!」
そう言ったクラースさんが素早くPCを閉じてバッグに入れた。ちょっと教官に挨拶した方がいいかなと思ってたが、そんな場合じゃなかった。こりゃやばい。もう動揺しすぎて私の手のひらがベチャベチャだ。
「な、何だよ触手って……!?」
「ヴァルガ、気持ちは分かるけどそこじゃない。」
私は急いで緑ランプの灯っている扉を開けて、メインダクトと呼ばれる太陽光エリアの部屋に入った。入った瞬間に変な匂いがして、私は鼻と口をぐしゃっとくっつけた。
四方が金属の壁に囲まれた部屋で、確かに壁際には、博物館にあるような展示用の小さな柱と、その上にはガラス製の四角い箱があった。
中には士官学生の頃に見たセレスティウムと思われる七色の泡のような綺麗な物質が、赤いベロアのちっちゃい座布団の上に置いてあった。ちゃんと二つ入ってる。
しかしそれは壊れやすいのを知ってるので、セレスティウムが運んでる時に動かないようにしようと思った私は、ポケットからハンカチを取ってガラスの蓋の中に詰めて、ガラスの箱ごと手に取った。これを持ち帰れば、我々のミッションは完了だ。それ以外の展開はもう求めてない。もう嫌だ。
「クラースさん、この箱もバッグの中に入る?」
箱の蓋が外れたら大変だ。私は結んでた髪のゴムを取って、それを使って箱にゴムをかけてからクラースさんに渡した。彼もまた戸惑った顔をして、その箱を受け取った。
「ああ……バッグに入れておくよ。これでもうセクターから持ち帰るものはないな。」
「うん、早く帰ろう……教官に見つからないように、帰ろ。」
私の言葉に二人が頷いてくれて、我々はドアを閉めて、ルーの待っている場所へと戻ることにした。
ああ、こんな時にジェーンの声が聞けないなんて、不安が増すばかりだ。そうだ……!と、私は前を急いで歩くヴァルガに話しかけた。
「ねえ、ジャミング装置の場所はわかる?」
「いや、」彼はハンドガンをぎゅっと握りながら答えた。「それを見つけて停止させるよりも、城に帰った方が早いだろう。ジェーン達の方からジャミングは解除出来なかったようだし、この建物から出れば通信は出来る。兎に角、ここから安全に出ることを考えるべきだ。くそ……窓も何もありゃしない!」
そうだね、そうだそうだ。もう我々全員が結構テンパってるけど、兎に角建物から出れば彼らと通信が出来るし、持つもの持ってるから持ち帰ればいいんだ!私はヴァルガとクラースさんに続いて、廊下を急いで走った。
*********
想像していたよりも怖いことになってきてるんですけど……!
私はケイト先生と手を繋いで、キリーのカメラを観ていた。先生は真実が判明していく度に怖くなったのか、私の隣に来て、手を繋いできたのだ。クラースさんごめんね!
ジェーンはというと「まずい……まずい……!」と焦りながら口を押さえて、キリー達が施設から出るのを今か今かと待っている。そしたら通信が出来るからだ。
チェイスはというとジャミングジャマーを解除出来なかったのが悔しかったのか、キリーがかなり心配なのか、両手で顔を覆って項垂れている。
緊張感のある沈黙、私はそういうのに耐えられないので、ジェーンに話しかけた。
「触手だって!ヴァレンタイン教官はキリーを食べる時に、触手で弄ぶんだって!そんなの現実で起こり得るとはね!遊ぶって事は、やっぱり触手で色んなところを……きゃああああ!それはちょっと見てみたいかも、ねっ、ジェーン!」
「……私には本当に理解が出来ません。」
「え?何が?」
「どうして、かの優秀なスローヴェン博士が、あなたのような愚か者と恋仲にあるのか。それが本当に理解出来ずに、ただただ胃が痛い。」
「……緊張をほぐそうとしてあげたのに。ちょっとは評価してよ。」
ジェーンは鼻でため息をついて、私を無視した。映像を見る限り、キリー達は廊下を走って入り口の方へと戻っている。
中庭にいるルーは待ってるだけで暇なのか、さっきまで「あ~さの夢~♪」と一人で歌ってたけど、今は静かだ。ちょっと気になったので、私はルーに話しかけた。
「ねえねえルー、もう少しでキリー達が帰ってくる。データは鞄の中に入ってるからそれを持ち帰るだけだよ!」
『そっか……。それは良かった、はは!俺がいなくても問題無かったって訳ね、それは良かった、いや、本当!』
「なんか変じゃない?どうしたの?」
『匂いが変なのが気になっててさ、それだけ。うーん。』
「それって結局どんな匂いなの?」
『うーん……おじいちゃんのカーディガンに、ハーブの茹で汁を数滴垂らして、カレー粉を足した感じの匂い。』
意味が分からない回答を頂いてしまった。私はおしゃべりターゲットをまたジェーンに戻した。
「ねえジェーン、もしキリーが帰ってきたら折角帝都にいるんだし、そういうホテルに行ってみたらどうかな?ネットで調べたんだけど、ユークよりもユニークな感じのホテル多いよ?お城とか牢屋とか、教室テイストのもあるんだって!」
「……教室テイストですか。確かに私が先生になって「そういう話は僕の前ではやめてよね。」
チェイスの方を見ると、ヴァルガの机にぐでっと上半身を乗せながら、ジェーンを睨んでいた。そんな彼に聞いてみた。
「チェイスは、なんでそんなにキリーのことが好きなの?」
「リンは僕の話を聞いてくれるのかい?優しい子だね。じゃあ説明しよう。僕はLOZの件でキルディアの指名手配の顔写真を見て、一目惚れをしたんだ。船でたまたま彼女に遭遇して、太陽の光が反射してる小麦の肌がとても美しかった。こげ茶の瞳だって凛としてて、でもまつ毛が意外と長くて、それだって綺麗でずっと見つめていたかったし、僕は結婚したくなった。でもその時は敵だったからね、運命って意地悪だなと思ったよ。こんなに惚れても、それは敵だったから。でも今は違う。キルディアは僕を救ってくれた。そして僕は彼女の敵ではなくなった。そうだね、明確に言えるのは、今の僕の敵はジェーンだってことだ。リン、彼のどこがいいの?どうしてキルディアはジェーンを選んだんだろう?ん?」
ん?っていうのが面白かった。私は笑いつつ答えた。
「キリーはグイグイ来られると押されちゃうタイプなんだと思う!だからジェーンだって最初は拒否られてたけど、しつこく付き纏って外堀埋められて、でもジェーンも意外と優しいところあるからね……ということはやっぱり、ギャップじゃない?」
「ギャップね……。」チェイスがため息をついた。
「チェイス、」とジェーンが言った。「残念ですがキルディアのことは忘れてください。アイリーンがいるではありませんか。彼女も中々の美人ですよ?聡明で、創作意欲を刺激されます。根詰まった時の彼女のアドバイスは中々参考になりますし、それは科学者として必要なことです。彼女で宜しいではありませんか。」
「秘書として、同じ科学者としてなら、彼女は最高だよ。だけどねジェーン、僕が欲しいのは……一緒に添い寝してくれる人なの。一緒に食事して、一緒にそういうことだってしたい。それをキルディアとしたいんだ。」
「心底困り果てました。リン、彼が諦めるように、あなたからも何か仰ってください。」
ジェーンが本当に困った様子でため息をついたので、私は彼の援護をしようとチェイスの方を向いた。
チェイスはというと、口を尖らせて、体を起こして腕を組んで、私が何を言うのか警戒する態度だった。彼が諦めるようなことか、うーん!
「えっとねチェイス、キリーはジェーンが好きだよ。ずっと一緒に過ごしてきたんだもん。ジェーンが何やったって、キリーは許しちゃう。ジェーンがドSでもドMでも許しちゃうの。二人はリバだから。」
「リバって何?」
「攻めも受けもいける人だよ!チェイスは違うでしょ?多分だけど、チェイスは実はドSっぽいもん。でもそれだけじゃ、キリーは満足しないんだよ。」
「そっかぁ……。」「他に……いえ、なんでもありません。」
チェイスとジェーンが同時に反応した。私は更に続けた。
「だからチェイスはもっとドMの人を見つけた方がいいと思う!それに大丈夫だよ、今からキリーのとっておきを見納めすることができるから。」
「見納めってなんだい……?」
「だってほら、今から触手ショーが始まるんだから!ちゃんと録画しといた方がいいよチェイス。まあ教官と遭遇したらだけど。アッハッハ!」
あははははこれは面白い……って、違った?私以外の皆が、私のことを冷ややかな目で見つめている。そしてケイト先生が言った。
「あなたね、キリーの首にカメラがついているのだから、触手で好き勝手されてるのをこちらから見れる訳ないじゃないの。」
「そこじゃないよケイトさん……。」
チェイスのツッコミが面白くて私はまた笑った。
私は提案をした。クラースさんとヴァルガは静かに頷いたので、私は『源となるもの』というタイトルの、最後の書類を開いた。それはなんと、今日から一週間前の日付だった。
「読みます。……『足りない。足りない、足りない!渇望しても手に入らないことがどれだけ苦しいか!セレスティウムは材料が手に入らないのが原因で生産が停止している。私は欲しがっているのに、手に入らない!
あれの材料……それは囚人だった。騎士の時は重犯罪者を収容施設から取り出して、セクターへと連行した。檻に入れて少し腹を空かせてから、スプレーを掛けて、メインダクトに入れる。
高出力の魔力を放出すれば異次元を発生させて、生きた魔力を抽出できる……ああ、想像しただけでよだれが垂れる。』ちょっと待って。呼吸を整えさせて。」
「だ、大丈夫かギルバート?」
大丈夫なわけないだろうが、セレスティウムの材料が人間だって知っちゃったんだから……!
私は胸を抑えて荒ぶる呼吸を整えた。ヴァルガが背中をさすってくれた。いえええええ……あの檻は人間を入れる為だったのか。私は続きを読んだ。
「『メインダクトの部屋で結晶化したら、それを今度はオーロラパイプに入れて、長時間温める。実はセレスティウムは残り二つあるが、それはメインダクトに置いたままだ。初期の頃にメインダクトにその二つを置いた。セレスティウムが変異しないか実験をする為だった。
メインダクトは、太陽光を再現して放出し続ける。それが今の私には耐えられなくなってしまったのだ。肉体が強化された代わりに、太陽光を浴びると身体が溶けてしまう。目だってそうだ。私はもう地上の景色を見る事は出来ない。
あれが必要だ。お腹が空いた。私は早く食べたい。しかしメインダクトには入れない。ならば、セレスティウムが染み込んだ肉体を摂取したらどうかと閃いた。セレスティウムを摂取した人間を食べてみるのはどうだろうか……?
ギルバートに連絡をする。LOZの戦い見事だった。彼女はあの戦いで更に強くなった。彼女を結晶化させるよりも、ルミネラで一番の強さを持つ彼女にセレスティウムが潜んでいるなら、丸ごと頂きたい。
彼女の勇敢さが私の体内で細胞レベルに凝縮されたときに、私の肉体を死神から解放されることを願うが……それは無理か。もう食料も底を尽きて、数年が経つのに、私は死ねない。
ギルバート、お前が欲しいよ。食べる前に、少し遊ぼうか?新しく生えた私の触手がお前を歓迎したがってる。』だそうです。ねえねえ早く帰ろ?」
「だろ?ほら言わんこっちゃない!」
そう言ったクラースさんが素早くPCを閉じてバッグに入れた。ちょっと教官に挨拶した方がいいかなと思ってたが、そんな場合じゃなかった。こりゃやばい。もう動揺しすぎて私の手のひらがベチャベチャだ。
「な、何だよ触手って……!?」
「ヴァルガ、気持ちは分かるけどそこじゃない。」
私は急いで緑ランプの灯っている扉を開けて、メインダクトと呼ばれる太陽光エリアの部屋に入った。入った瞬間に変な匂いがして、私は鼻と口をぐしゃっとくっつけた。
四方が金属の壁に囲まれた部屋で、確かに壁際には、博物館にあるような展示用の小さな柱と、その上にはガラス製の四角い箱があった。
中には士官学生の頃に見たセレスティウムと思われる七色の泡のような綺麗な物質が、赤いベロアのちっちゃい座布団の上に置いてあった。ちゃんと二つ入ってる。
しかしそれは壊れやすいのを知ってるので、セレスティウムが運んでる時に動かないようにしようと思った私は、ポケットからハンカチを取ってガラスの蓋の中に詰めて、ガラスの箱ごと手に取った。これを持ち帰れば、我々のミッションは完了だ。それ以外の展開はもう求めてない。もう嫌だ。
「クラースさん、この箱もバッグの中に入る?」
箱の蓋が外れたら大変だ。私は結んでた髪のゴムを取って、それを使って箱にゴムをかけてからクラースさんに渡した。彼もまた戸惑った顔をして、その箱を受け取った。
「ああ……バッグに入れておくよ。これでもうセクターから持ち帰るものはないな。」
「うん、早く帰ろう……教官に見つからないように、帰ろ。」
私の言葉に二人が頷いてくれて、我々はドアを閉めて、ルーの待っている場所へと戻ることにした。
ああ、こんな時にジェーンの声が聞けないなんて、不安が増すばかりだ。そうだ……!と、私は前を急いで歩くヴァルガに話しかけた。
「ねえ、ジャミング装置の場所はわかる?」
「いや、」彼はハンドガンをぎゅっと握りながら答えた。「それを見つけて停止させるよりも、城に帰った方が早いだろう。ジェーン達の方からジャミングは解除出来なかったようだし、この建物から出れば通信は出来る。兎に角、ここから安全に出ることを考えるべきだ。くそ……窓も何もありゃしない!」
そうだね、そうだそうだ。もう我々全員が結構テンパってるけど、兎に角建物から出れば彼らと通信が出来るし、持つもの持ってるから持ち帰ればいいんだ!私はヴァルガとクラースさんに続いて、廊下を急いで走った。
*********
想像していたよりも怖いことになってきてるんですけど……!
私はケイト先生と手を繋いで、キリーのカメラを観ていた。先生は真実が判明していく度に怖くなったのか、私の隣に来て、手を繋いできたのだ。クラースさんごめんね!
ジェーンはというと「まずい……まずい……!」と焦りながら口を押さえて、キリー達が施設から出るのを今か今かと待っている。そしたら通信が出来るからだ。
チェイスはというとジャミングジャマーを解除出来なかったのが悔しかったのか、キリーがかなり心配なのか、両手で顔を覆って項垂れている。
緊張感のある沈黙、私はそういうのに耐えられないので、ジェーンに話しかけた。
「触手だって!ヴァレンタイン教官はキリーを食べる時に、触手で弄ぶんだって!そんなの現実で起こり得るとはね!遊ぶって事は、やっぱり触手で色んなところを……きゃああああ!それはちょっと見てみたいかも、ねっ、ジェーン!」
「……私には本当に理解が出来ません。」
「え?何が?」
「どうして、かの優秀なスローヴェン博士が、あなたのような愚か者と恋仲にあるのか。それが本当に理解出来ずに、ただただ胃が痛い。」
「……緊張をほぐそうとしてあげたのに。ちょっとは評価してよ。」
ジェーンは鼻でため息をついて、私を無視した。映像を見る限り、キリー達は廊下を走って入り口の方へと戻っている。
中庭にいるルーは待ってるだけで暇なのか、さっきまで「あ~さの夢~♪」と一人で歌ってたけど、今は静かだ。ちょっと気になったので、私はルーに話しかけた。
「ねえねえルー、もう少しでキリー達が帰ってくる。データは鞄の中に入ってるからそれを持ち帰るだけだよ!」
『そっか……。それは良かった、はは!俺がいなくても問題無かったって訳ね、それは良かった、いや、本当!』
「なんか変じゃない?どうしたの?」
『匂いが変なのが気になっててさ、それだけ。うーん。』
「それって結局どんな匂いなの?」
『うーん……おじいちゃんのカーディガンに、ハーブの茹で汁を数滴垂らして、カレー粉を足した感じの匂い。』
意味が分からない回答を頂いてしまった。私はおしゃべりターゲットをまたジェーンに戻した。
「ねえジェーン、もしキリーが帰ってきたら折角帝都にいるんだし、そういうホテルに行ってみたらどうかな?ネットで調べたんだけど、ユークよりもユニークな感じのホテル多いよ?お城とか牢屋とか、教室テイストのもあるんだって!」
「……教室テイストですか。確かに私が先生になって「そういう話は僕の前ではやめてよね。」
チェイスの方を見ると、ヴァルガの机にぐでっと上半身を乗せながら、ジェーンを睨んでいた。そんな彼に聞いてみた。
「チェイスは、なんでそんなにキリーのことが好きなの?」
「リンは僕の話を聞いてくれるのかい?優しい子だね。じゃあ説明しよう。僕はLOZの件でキルディアの指名手配の顔写真を見て、一目惚れをしたんだ。船でたまたま彼女に遭遇して、太陽の光が反射してる小麦の肌がとても美しかった。こげ茶の瞳だって凛としてて、でもまつ毛が意外と長くて、それだって綺麗でずっと見つめていたかったし、僕は結婚したくなった。でもその時は敵だったからね、運命って意地悪だなと思ったよ。こんなに惚れても、それは敵だったから。でも今は違う。キルディアは僕を救ってくれた。そして僕は彼女の敵ではなくなった。そうだね、明確に言えるのは、今の僕の敵はジェーンだってことだ。リン、彼のどこがいいの?どうしてキルディアはジェーンを選んだんだろう?ん?」
ん?っていうのが面白かった。私は笑いつつ答えた。
「キリーはグイグイ来られると押されちゃうタイプなんだと思う!だからジェーンだって最初は拒否られてたけど、しつこく付き纏って外堀埋められて、でもジェーンも意外と優しいところあるからね……ということはやっぱり、ギャップじゃない?」
「ギャップね……。」チェイスがため息をついた。
「チェイス、」とジェーンが言った。「残念ですがキルディアのことは忘れてください。アイリーンがいるではありませんか。彼女も中々の美人ですよ?聡明で、創作意欲を刺激されます。根詰まった時の彼女のアドバイスは中々参考になりますし、それは科学者として必要なことです。彼女で宜しいではありませんか。」
「秘書として、同じ科学者としてなら、彼女は最高だよ。だけどねジェーン、僕が欲しいのは……一緒に添い寝してくれる人なの。一緒に食事して、一緒にそういうことだってしたい。それをキルディアとしたいんだ。」
「心底困り果てました。リン、彼が諦めるように、あなたからも何か仰ってください。」
ジェーンが本当に困った様子でため息をついたので、私は彼の援護をしようとチェイスの方を向いた。
チェイスはというと、口を尖らせて、体を起こして腕を組んで、私が何を言うのか警戒する態度だった。彼が諦めるようなことか、うーん!
「えっとねチェイス、キリーはジェーンが好きだよ。ずっと一緒に過ごしてきたんだもん。ジェーンが何やったって、キリーは許しちゃう。ジェーンがドSでもドMでも許しちゃうの。二人はリバだから。」
「リバって何?」
「攻めも受けもいける人だよ!チェイスは違うでしょ?多分だけど、チェイスは実はドSっぽいもん。でもそれだけじゃ、キリーは満足しないんだよ。」
「そっかぁ……。」「他に……いえ、なんでもありません。」
チェイスとジェーンが同時に反応した。私は更に続けた。
「だからチェイスはもっとドMの人を見つけた方がいいと思う!それに大丈夫だよ、今からキリーのとっておきを見納めすることができるから。」
「見納めってなんだい……?」
「だってほら、今から触手ショーが始まるんだから!ちゃんと録画しといた方がいいよチェイス。まあ教官と遭遇したらだけど。アッハッハ!」
あははははこれは面白い……って、違った?私以外の皆が、私のことを冷ややかな目で見つめている。そしてケイト先生が言った。
「あなたね、キリーの首にカメラがついているのだから、触手で好き勝手されてるのをこちらから見れる訳ないじゃないの。」
「そこじゃないよケイトさん……。」
チェイスのツッコミが面白くて私はまた笑った。
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