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meishino

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52 お怒りなのですが

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 それから三日が過ぎた。私は帝都中央病院へと移されて、個室に入院をした。毎日松葉杖を使いつつ、無くした右足代わりのツールフットのリハビリを繰り返した。今日は病室の手すりを使って、ツールフットで歩く練習だ。


 この病院に来てからすぐに、元気を取り戻したクラースさんが新しいナイトアームを届けてくれた。


 あれからジェーンはそのまま帝国研究所に留まり、サイモン所長やアイリーンに懇願して研究室を借りて、ナイトアームを作成してくれたのだとクラースさんから聞いた。その間ソーライはタージュ博士が頑張って仕切ってくれたらしい。


 ジェーンの頑張りも有り難いし、帝国研究所にも感謝しているけど、主にタージュ博士に迷惑をかけてしまったなぁと痛感した。


 クラースさんは「それじゃあ俺はユークに戻る」と行ってしまって以来、この病室には誰も来ていない。


 毎日のようにリンがビデオ通話してくれるので、それで私の社交欲求は満たされている。……毎日彼女の背景が、我が家のリビングなのが気になるけれども。


 そしてこれも、果たして私の社交欲求を満たしているのか知らないけど、ジェーンが毎日頻繁にメッセージをくれる。


 私は最初の方にジェーンにユークに帰るように頼んで、それからソーライをどうにか切り盛りしてと伝えただけで、その後彼には返事をしていない。


 リンの話によるとジェーンは確かにユークには帰ってきたけど、研究所以外では会わない事の方が多いとのことだ。


 一体どこに出かけるの、毎日毎晩。夜に出歩いたら危ないのにさ。あんな美貌の持ち主なんだから。


 ……ダメだ!何を心配してるんだ!確かに恋人だけど、あの件は許せない。あの時、私の大剣さえあれば……!何度そう思ったことか!


 あれからヴァルガが目を覚ましたという情報は入ってこない。多分彼はまだ帝国研究所で治療を受けているはずだ。魔力のトゲの作用の関係で、研究所でないと治療は無理らしい。


 もし彼が目を覚さなかったらと思うと、居た堪れない。いやいや、彼はきっと戻ってくる!そう思うしかない。


 私は私で頑張らなくては。また歩き始めて、それに慣れると今度は小走りで行ったり来たりを続けた。


 するとまたブーっとウォッフォンが震えた。立ち止まった私は、ウォッフォンのホログラムを操作して、メッセージ画面を開いた。ジェーンだった。


『こんばんは。どうも返事を頂けませんが、きっとあなたは私に対して憤慨ふんがいしているのでしょう。毎度申し上げますが、私のしたことは確かに、過ちでありました。大変、申し訳ございません。    ところでお夕飯は何を召し上がりましたか?私は味噌汁です。 A.Jane.S』


 ところでじゃないよ。それに夕飯が味噌汁って、もしかしてそれだけなの?それじゃあ足りないよ……じゃないじゃない!何を返事しようとしてるんだ私は、全く!


 私は無意識に打ち込んでしまった文章を全消しした。彼は全く、策士だ。その彼を選んだのは私。彼もまた私を選んでいる。


 許すべきか、揺れた。毎日同じように謝罪を繰り返している。彼が剣を盾に変えたのは、私を守りたかったから。私を失いたくなかったから。それも理解している。


 心が揺れた。ベッドに座り、少しだけ返事をしてみようかと、私は二日ぶりに彼に返事をした。


『お疲れ様です。ジェーンはいつも出かけてるってリンから聞きました。どこに行ってるの?あまり夜出歩くのは、心配ですよ。お寿司屋さんの時みたいに、また変なのに絡まれる可能性が高い。 Kildia.G.K』


 送ってから後悔した。あーあ、怒ってるのに彼のことを心配して、私は変な生き物だ。すぐに返事が来たので、私はそれを開いた。ジェーンから……だ。


『やっと返事をくれた。キルディア私をハグしてください。A.Jane.S』


 ……。


 き、急にきたなぁと思いながら固まっていると、またメッセージがきた。


『明日は研究所がお休みなので、そちらに伺う予定でした。どうかその時に私を抱きしめてください。確かに私の罪は大きいものですが、私はこの数日間、張り裂けそうな心持ちでした。したこと、その結果起きた出来事を、真摯に受け止めております。心より深くお詫び申し上げます。夜の外出は、ソーライ研究所で開発をしておりました。リンと二人きりの自宅に耐えられず、更には製作したいものがございましたので、研究所に。道中は確かに危険なのでしょうが、私には銃剣があります。そんな私のことよりも、どうしても成したいことが研究所にありました。明日また、詳細を説明致します。A.Jane.S』


 拳を口に当てながら返事を考えて、それを送った。


『ジェーン、私は、もしあの時大剣を持っていたらと今でも強く考えている。でもジェーンの気持ちも理解した。夜に街を歩くのはやはり危険なので、誰か護衛をつけてください。明日待っています。   あと味噌汁以外も食べてね。Kildia.G.K』


『キルディア、ビデオ通話をしますか?少し恥ずかしいですが、あなたに直接謝罪をしたい。それから、愛していると伝えたいのです。A.Jane.S』


 しないよ全く。久しぶりに頬が熱くなったと思ったら、そのまま全身まで伝わるように熱くなって、胸がバクバク鳴った。


 何だか、まだ私はジェーンのことがとっても好きらしい。


 ……苦笑いしていると、私の病室のドアがノックされた。ホログラムを消して、私は「はい?」と答えた。


「入ってもいいかな?僕です。」


 その声は陛下だった。私は軽くパジャマを整えてから、「どうぞ」と答えた。


 すると貴公子姿の、所々キラキラの宝石が散りばめられた金色ジャケットをお召しになっている陛下が病室内へと入ってきた。


 彼は心配げな顔で、私のそばまでやってくると、床に大きなバッグを置いてから、その場に片膝を立てて、ひざまずいてしまった。


「ちょ、ちょっと!?その格好は一般市民にしないでください……!」


「いいや、君は一般市民ではないもの。名誉市民だ。それに僕がしたくてこうしてる。」


「でも……私はヴァルガを守れなかった。」


「キルディア。」


 チェイスは立ち上がり、私の隣に座ると私の左手を握ってくれた。


「君のせいではない。あれには理由があったんだ。」


「理由?ジェーンが実は私に盾を与えていたという理由?」


「ううん、そこではない。……どうしてヴァルガが、君を庇い続けたのかということだ。」


 それに理由なんであるのか?彼はきっと騎士だから普通に民間人である私を庇いたかったんだと思っていたけど、チェイスの至って真剣な瞳が私を少し不安にさせた。


 その時にウォッフォンからピピピと着信音が響いた。きっとビデオ通話を提案してきたジェーンからだ。


 急にかけてきたのは私が返事するのが遅れたからだろう。でもよく考えてみればジェーンとビデオ通話したことが今まで一度も無かったから、私は一気に緊張した。


「チェイス、ジェーンから着信きてる。出ていい?」


 私がホログラム画面を出すと、ジェーンのアイコンの奥に半透明のジェーンが恥ずかしそうに両手で顔を覆った状態で、指の隙間からじっとこちらを見ていた。


 何その恥ずかしがりな仕草は。仕方ないなぁ……。


 私が応答しないとこちらの映像は見れないので応答しようとすると、サッと横から手を伸ばしたチェイスが、その通話を切ってしまった。


「あ、ちょっと!」


「僕の話を先にしたい。それからジェーンとゆっくり話してくれ。」


「話って何……?理由の話?」


 私は怠そうにチェイスを見た。彼はそれがちょっと不満だったのか、少しムッとしてから、床に置いてあったバッグを彼の膝の上に乗せた。


 そしてチャックを開けて、中から出てきたのは……なんと、折り畳まれた、グレー色の人間の足の形をしたロボットだった。


「これは?」


「ジェーンの作成したツールアーム程ではないかもしれない。でも僕だって役に立ちたくて、君の足に合うツールフットを作ってみたかったんだ。これも君のアームのようにくっつけるだけだから簡単だし、きっと思うように動くはず。装着してみて!」


「あ、ああ。」


 私は早速今までのツールフットを外して、チェイスが作ってくれたグレーのフットをつけてみた。彼が太腿部分にあるカバーを開けてからボタン操作すると、ボタン横の小さいランプが緑に光った。


「電源が入った。さあさあ!歩いてみてよ!」


「うん!」


 私はゆっくりと立ち上がった。両手を広げてバランスをとっていると、同じく立ち上がったチェイスが私の左手を握って、支えてくれた。


「ごめんね、手を借りちゃって。」


「いいえ。さあ、少しづつ動こうか。」


 頷いて、私は右足を一歩前に動かして、それに体重を乗せた。すると膝の部分がガクッと不安定な動きをしてツルンと滑り、咄嗟に左足をついたけどそれも遅く、そのまま床に尻餅をついてしまった。


 背中を打って転ばなかったのはチェイスが私の手を握ってくれていたからだ。チェイスが酷く心配した顔で私を見つめていた。


「ご、ごめん!まだ今の段階で使用するのは無理があったか……!」


「いや、大丈夫!お医者さんも足は体を支えることもあって技術化が難しいって言っていた。でもチェイスのは今まで使っていたツールフットよりも、私の思った通りに動いてくれる。本当にありがとう!」


 チェイスの手を借りて立ち上がった私は、彼とまたベッドに座った。グレーの右足を伸ばして指先まで動くのかやってみると、細やかに動いたので、驚いた。


「すごい、指先まで動くんだ。本物の足みたいに。」


「まあね。でも膝の関節が不安定ってことが分かったから、今度はもっと改良したものを持ってくるよ。次の課題が見えたから、それはしっかり改善する。」


「え?」私はチェイスを見た。「いいよ、そんな、今のままでも十分に使える。」


 チェイスは首を振った。


「いや、僕の気が済まない。外で足元がぐらついてキルディアが転んで怪我をしたら大変だ。」


「そんなにしてもらって悪いよ。忙しいのに。」


「君が思っている程、僕は忙しくないよ。大臣もいるしね。ふふ、君はいつもとても優しいね。」


 チェイスが柔らかく微笑んだ。あなたの方が優しいのにと思いつつ、グレーのフットの太腿部分を深緑の右手で撫でた。


 この全ての行いに感覚が存在しないのが不思議だった。そしてそれを撫でた私の腕にはスッと彼の光が通った。


 ジェーンが命を削って作ってくれたナイトアーム一号は教官の中で爆発した。


 今度私に送ってくれたアームは光の大剣の機能が無いものだと思っていたが、彼は『もう一度コピーをしました。私の魔力が足りず、当初のものよりも魔力が与えられない為、ダガー程度の小さき剣となりました。それはいつでも、あなたの手に出現可能です。今後、改良を加えて大きくしていきます。』とメールをくれた。


 トロッコの時は怒りの気持ちが激しくて、ナイトアームなんか教官にくれてやると思っていた。


 でも……今思えば、こうして光のダガーを出せる新しいアームを送ってくれたことも含めて、今まで彼が私にしてくれたことは計り知れないと思えた。反省すべきは私なのかもしれない。


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