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meishino

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69 プロプロロ作戦

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 これが私の本心だ。ジェーンに絶対的な安心感を与える方法はもうアレしかない。ぷ、プロっ、プロ……!?


 私は「ハアハア!」と呼吸を荒くしたままバルコニーから廊下へ戻った。そうと決まれば善は急げだから、方法を考えなくてはいけない。


 場所は?時間はどうすればいい?夜景を見ながらなのか?そして指輪……!


 そうだ、指輪。ジェーンはスノークリスタルの指輪をくれたけれど、私は彼にあげていない。


 私は廊下で立ち止まり、左手にある六角形の指輪をみた。幾何学模様、ジェーンらしくて、とても綺麗な形をしてる。


 今ならまだジュエリーショップは開いてる。買いに行こうか、そうだね、買いに行こう。彼の指の太さは何インチだ?それは後でこっそり計ろう。と、兎に角先人の知恵が必要だと思った私は、ベルンハルトさんに電話をした。


「も、もしもし!」


『おお、キルディア!そなたのおかげでもうすっかり元の我に戻ることが出来た。健康な体で、ただ呼吸をする喜びよ、それは一度失わずに知ることの出来ないものだ。』


「元気になってよかったです!……あ、あの、実は知りたいことが。」


『なんだ?』


「ぷ、プロっ……プロポーズの方法を知りたい……!」


『ふっ。……何も着飾らず、普段の生活の中で特別な言葉を最愛の存在に与えるだけでも十分だ。と、インジアビスの価値観ではある。それもそうだ、この地には綺麗な景色も無い上に、城の外へ出て谷にでも行けば、瘴気や魔物で溢れている。皆は城の中で、プロポーズするしか無いのだ。現に我もそうした。……キルディア、我にも恥じる心あり。』


「えっ!?そうですよね、それは照れる話ですね。でも今のは結構参考になりました。私の場合、夜景の綺麗なところに行けばメディアがついて来て落ち着かないし、かと言ってジェーンはまだ体力がないし、私も仕事があるから、他の街に行くことも叶わなくて。でも今がいいんです。雷に打たれたみたいに、物凄い直感で、今だと思うんです。」


『疑う余地もなく、この瞬間だと感じているのならば、実行しないなど有り得ない。指輪は用意したか?』


「してないです。今から買いに行く。」


『ならば……人間にこの良さが伝わるか不明なれど、ブラッディサクリファイスという宝石の指輪を勧める。インジアビスでしか採掘出来ない、赤黒い宝石だ。我が血肉を相手の魂に捧げると、古くからこの地で愛の証として伝わってきたものだ。帝都で販売しているか、不明だ。しかし我はそれを勧める。LOZの件より、地上との貿易を再開している。帝都でなら、きっと。』


「じゃ、じゃあそれを探します!絶対に……!」


 と、私は廊下をスタスタ歩いて、ジェーンがいる寝室へと入り、腰のポーチから棒状の測定スキャナーを出すと、寝息を立てているジェーンの指をスキャンしてサイズを測った。それから廊下に戻って、ベルンハルトさんに言った。


「ありがとうございます、ベルンハルトさん!あとは愛の言葉ですね、ちゃんと考えられるかどうか。」


『大丈夫だ、そなたは我の子なり。ただ一つ、コツはある。好きだと思っても、好きだと言わないことだ。世界を誘惑的に染めれば、直接表現せずとも、伝わる。』


 ……結構難しいこと言ってきた。こんな経験不足の私に。と、苦笑いした。しかし頑張らなくてはいけない。


「わかりました。参考にします!それじゃあ、また連絡します。」


『ああ。……また連絡するのだ。いつでもな。んほほ。』


 その笑い方久しぶりに聞いた。でもその笑いを聞けることが出来て良かった。今度まとまった休暇が取れたらインジアビスに遊びに行こう。ベルンハルトさんに感謝しつつ、私は階段を降りた。


 すると階段下にちょうどゾーイが現れた。手にはおにぎりが二つの乗ったお皿がある。ゾーイは笑顔で私に言った。


「あ!丁度来ましたね!ギル様、さっき言っていたおにぎりですよ!鮭と昆布、両方ともマヨネーズ入ってます!」


 私はゾーイが持ってるお皿からおにぎりを取って、その場で立ちながら勢いよく食べ始めた。ゾーイがびっくりしているが仕方ない。もう少しでお店が閉まっちゃう。


「ギル様、喉詰まっちゃいますよ?」


「はふはふ、うーんっ!(いいのいいの!大丈夫!)」


 素早く二つのおにぎりを食べ終えた私はゾーイの肩を掴んだ。ゾーイは何がどうしたんだと言わんばかりの顔で、不思議そうに私を見つめていた。


「い、今から指輪を買いに行ってくる!」


「どうしてですか?」


「……だ、だからアレだよ、ジェーンにさ!」


「……ん?」とゾーイが首を傾げた。「どうしてですか?」


 なんでそんなに気づかないの。


「だ、だからね……ぷ、プロッ、プロロッ!」


「ああ!分かりました!」とゾーイが閃いた。「スキャットですね!私も出来ますよ!ピーパッパッパラッパ!パッパッパラッパ!ポンポンピロンポポンポシャバラダゥゥ~!」


 いきなりゾーイが肩を得意げに揺らしてリズムをとりながらシャバダバ歌い始めてしまった……。


「違う、結構上手いけど違うんだって……どうして私がジェーンにスキャットをプレゼントするの。」


「え?違うんですか?プロプロ言うので、そうなのかと思いました。因みに私は専門学校時代、ジャズサークルに入ってました。」


「そうなんだ……道理でうまいと思った。じゃなくて、実はジェーンにあることを提案しようと思ってる。ここで一緒に暮らすことは勿論、関係性の訂正について、彼に伝えたいんだ。」


「あ、プロポーズですか?」


 やんわりと話していたのに、どうして崖から突き落とさんばかりのストレート球を私にぶつけてきたのだろう。


 改めてしようとしてることの大きさを感じて、私はその場で恥ずかしげに一瞬しゃがんでから、玄関に向かって走り始めた。すると背中からゾーイの声がした。


「え!?本当にプロポーズですか!?」


「そうなんです。でもまだ皆には言わないで!指輪買ってきます!」


「で、でもそしたら御馳走とか色々と用意しなきゃ!」


 ええ!?私は振り返らずに叫んだ。


「いいですから、バレるから普段通りでいいですから!じゃあ行ってきます!」


「えええー!?」


 とゾーイの甲高い声が聞こえた。私は玄関から外に出て、すぐにガレージへと向かって、ブレイブホースに乗って正門から出た。


 すぐに商いの広場にある宝石店で、ブラッディサクリファイスの指輪は見つかった。ただ、値段を見て仰け反ってしまった。


 あんな遠くの地から輸入してるからね、そうだよね、と暫くの間、ソーライ研究所にいた間の所長の給料が全て吹っ飛ぶ金額が書いてあるプレートを眺めていた。


 でも他のどの宝石よりも深みがある色合いで、ずっと眺めていても飽きないぐらいに綺麗だった。


 赤い宝石の奥の方で、黒い細やかな結晶が銀河のようにきらきら輝いているのを発見すると、私は思い切って震える手で、その指輪を店員さんに頼んだ。


 リング自体はシンプルなデザインで、半分がシルバーで、半分がブラッディサクリファイスの二層になっている細めのものだった。彼に似合うと思った私は、その指輪の内側に愛の言葉を刻印してもらった。


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