23 / 127
23 森の小川のほとり
しおりを挟む
森のトレーラーに着いた頃には、私もイオリもべちゃべちゃだった。彼の服も色んなもので汚れていたので、全部脱がせて、地面に捨てた。勿論私の服も脱いでそこに捨てた。ウィッグはそこまでだったので、そのまま被り続けた。
下着だけになった彼をトレーラーの床に置いた私は、急いで運転席に移動して、更に森の深くへとトレーラーを走らせた。
時折ダークホースが現れてトレーラーを追いかけてきたけど、助手席に置いてあったお気に入りのショットガンで運転席の窓から片手撃ちをして撃退した。
またまた便利なことに私は眠らなくてもいいので、一晩中森の中を走らせることが出来た。ヴィノクールからだいぶ離れて、森の中に小川を見つけると、その近くに車を停めた。
はあ、とハンドルにおでこをつけて深呼吸をした。それでも私の額からは汗一つ流れていなかった。それもおかしいし、この事態もおかしい。一体どうなっているんだろ、と精神的に疲れていると、すっと窓から朝日が差し込んだ。
そうだ、しかも全裸だった。そのままショットガンを手に持って運転席から降りて、銃を構えながら辺りを警戒した。モンスター、衛兵、誰もいなかった。虫や小鳥はいた。それだけなら問題ない。
ほっと一息ついて、私はトレーラーの後部ドアを開けた。イオリが床に倒れたまま、目を開けていた。
「イオリ!大丈夫!?」
「……少し、気分が悪い。」
「分かった。」
私は彼を抱きかかえて、このソファの部屋の隣、トレーラーの一番奥にあるベッドルームへと彼を運んで、彼を寝かせた。赤いチェックのボロボロのマットがギッと音を立てた。
このままだとちょっと恥ずかしいので、ソファの部屋に戻って、急いで自分の服に着替えた。黒いワンピースだ。それに着替え終わると、すぐにベッドルームに戻った。
彼は背を向けて寝ている。マットの隅に置いてあった、これまたボロボロの水色のタオルケットをかけてあげた。イオリが何かを探し始めた。虚な彼の目が私を捉えると、彼が掠れた声で私に聞いた。
「俺の服は、汚れたか?」
「うん。下水を通ったから、ごめん。ノアフォンも足がつくから捨てた。」
「やはり……俺は、ノアズに犯人だと思われたのか?レモン飴窃盗、もしくはアリシア殺害の。」
「まだ情報がない。わからない。ラジオつける。」
「待て。」
私がソファの部屋に戻ろうとすると、イオリが私の手を、力なく掴んだ。
「この車だって、お前の夫の容疑で……ノアズがマークしてる物だろう?」
「してない。夫のトレーラーと私のは別。私のは足がつかないように脱獄してる。夫のトレーラーで一緒に暮らしてるとノアズは思ってる。大丈夫だよ、イオリ。エミリもきっと大丈夫。」
「……。」
私は汗びっしょりの彼の額に手を置いた。
「今は休んで。ここには誰もいない。」
「そうか……。ラジオを聞かせてくれ……。」
私は頷いて、ソファの部屋にある戸棚から赤い小さなラジオを持ってくると、それをベッドに置いて、そのそばに私も座った。
イオリの顔が引きつっていた。原因はベッドルームの壁にかけられていたライフルの数々だった。
「お前……。」
「だって、仕事だもん。」
「それにお前、その手に持っているピンクの銃は何なんだ?」
「これは一番のお気に入り。こんなにコンパクトでもフルオートのショットガンで、辺りを一瞬で蹴散らす。」
「ラジオをつけてくれ……。」
はいはい。私はイオリの胸の筋肉をチラッと見つつ、ラジオをつけた。ヴィノクールニュースの音声がすぐに聞こえた。ニュースの途中のようで、住人のインタビューっぽかった。
『びっくりしたよ、夕飯食べてたらいきなりバーンって爆発音が聞こえてよぉ!』
『それはどれくらいの大きさでしたか?』
『いやもう驚いたね、しかも地響きを感じたし!』
「火災の原因は爆発だったのか……!?」
驚いたイオリが急に身体を起こした。何かに気付いたようだった。
「どうしたの?イオリ。」
「……シードロヴァの得意とする発明は、爆弾だ。それも自然を装って痕跡を残さない、ステルス爆弾。物によっては火炎効果もある。」
「え。」
まさか、レモン飴の復讐……?だとすると、シードロヴァ……思ったよりもハードな人間だと思った。
「じゃあ、」私は言った。「これは単なるレモン飴の復讐で、イオリは別に犯人扱いされてないってことかな……。」
「いや、まだ彼がやったとは断言出来ない。」
『速報です。ノアズから情報が届きました。』
私とイオリは赤いラジオに目を向けた。
『昨夜の爆発は住人のイオリ・アルバレスの銃の保管庫が爆発源のようです。さらにアルバレスにはアリシア・ルイーズ・メリアン殺害の容疑がかけられています。……アルバレスの母親であるメアリがノアズに連行されており、VRNの記者がその際に彼女の音声を入手しています。』
『分からない……』とメアリの声と、涙を啜る音が聞こえた。『ポストを覗いたら家からドンと音がして、その場でしゃがんだわ……。』
『ポストには何が?』
『請求書だけでした……そんな、こんなことになるなんて。』
『以上です。ここからは専門家に話を伺いましょう。保管していた銃が勝手に爆発する事ってあり得るのでしょうか?』『うーん、無いとも言えないが』
イオリがラジオを消した。そして悲しげに空を見つめた。
「ポスト……。」
「ああ……少し気にはなっていた。どうしてリアのIDを俺の自宅に届けると言ったのか。本当は……彼はIDを作っていなかったんだ。レモン飴にも気付いていた。ポストが起爆トリガーだったのだろう。本当は帰宅して、俺が開けて、メアリが巻き込まれていたかもしれない。あいつは……本当に、やってくれた。」
「ごめんねイオリ。私がいけなかった。」
イオリは微かに首を振った。
「いや、リアは気にするな。……少し、疲れが……ああ、寝たい。」
「うん、横になって。何か飲む?」
「いい。」
イオリが横になったので、私は乱れたタオルケットを掛け直してあげた。窓から眩しい光が差し込んで彼に当たっていた。私は窓のサンシェードを下ろした。
その木製の日除けに朝日が当たり、ベッドルームに温かいブラウンの空間が広がった。イオリは目を閉じている。
ベッドルームはマットで床が見えないほどの狭さで、マットは真四角だ。イオリにとっては少し幅が足りないようで、彼は足を曲げて寝ている。
ラジオを持って、私はベッドルームから出て、扉変わりのカーテンを閉めた。ラジオは元の棚に戻した。
下着だけになった彼をトレーラーの床に置いた私は、急いで運転席に移動して、更に森の深くへとトレーラーを走らせた。
時折ダークホースが現れてトレーラーを追いかけてきたけど、助手席に置いてあったお気に入りのショットガンで運転席の窓から片手撃ちをして撃退した。
またまた便利なことに私は眠らなくてもいいので、一晩中森の中を走らせることが出来た。ヴィノクールからだいぶ離れて、森の中に小川を見つけると、その近くに車を停めた。
はあ、とハンドルにおでこをつけて深呼吸をした。それでも私の額からは汗一つ流れていなかった。それもおかしいし、この事態もおかしい。一体どうなっているんだろ、と精神的に疲れていると、すっと窓から朝日が差し込んだ。
そうだ、しかも全裸だった。そのままショットガンを手に持って運転席から降りて、銃を構えながら辺りを警戒した。モンスター、衛兵、誰もいなかった。虫や小鳥はいた。それだけなら問題ない。
ほっと一息ついて、私はトレーラーの後部ドアを開けた。イオリが床に倒れたまま、目を開けていた。
「イオリ!大丈夫!?」
「……少し、気分が悪い。」
「分かった。」
私は彼を抱きかかえて、このソファの部屋の隣、トレーラーの一番奥にあるベッドルームへと彼を運んで、彼を寝かせた。赤いチェックのボロボロのマットがギッと音を立てた。
このままだとちょっと恥ずかしいので、ソファの部屋に戻って、急いで自分の服に着替えた。黒いワンピースだ。それに着替え終わると、すぐにベッドルームに戻った。
彼は背を向けて寝ている。マットの隅に置いてあった、これまたボロボロの水色のタオルケットをかけてあげた。イオリが何かを探し始めた。虚な彼の目が私を捉えると、彼が掠れた声で私に聞いた。
「俺の服は、汚れたか?」
「うん。下水を通ったから、ごめん。ノアフォンも足がつくから捨てた。」
「やはり……俺は、ノアズに犯人だと思われたのか?レモン飴窃盗、もしくはアリシア殺害の。」
「まだ情報がない。わからない。ラジオつける。」
「待て。」
私がソファの部屋に戻ろうとすると、イオリが私の手を、力なく掴んだ。
「この車だって、お前の夫の容疑で……ノアズがマークしてる物だろう?」
「してない。夫のトレーラーと私のは別。私のは足がつかないように脱獄してる。夫のトレーラーで一緒に暮らしてるとノアズは思ってる。大丈夫だよ、イオリ。エミリもきっと大丈夫。」
「……。」
私は汗びっしょりの彼の額に手を置いた。
「今は休んで。ここには誰もいない。」
「そうか……。ラジオを聞かせてくれ……。」
私は頷いて、ソファの部屋にある戸棚から赤い小さなラジオを持ってくると、それをベッドに置いて、そのそばに私も座った。
イオリの顔が引きつっていた。原因はベッドルームの壁にかけられていたライフルの数々だった。
「お前……。」
「だって、仕事だもん。」
「それにお前、その手に持っているピンクの銃は何なんだ?」
「これは一番のお気に入り。こんなにコンパクトでもフルオートのショットガンで、辺りを一瞬で蹴散らす。」
「ラジオをつけてくれ……。」
はいはい。私はイオリの胸の筋肉をチラッと見つつ、ラジオをつけた。ヴィノクールニュースの音声がすぐに聞こえた。ニュースの途中のようで、住人のインタビューっぽかった。
『びっくりしたよ、夕飯食べてたらいきなりバーンって爆発音が聞こえてよぉ!』
『それはどれくらいの大きさでしたか?』
『いやもう驚いたね、しかも地響きを感じたし!』
「火災の原因は爆発だったのか……!?」
驚いたイオリが急に身体を起こした。何かに気付いたようだった。
「どうしたの?イオリ。」
「……シードロヴァの得意とする発明は、爆弾だ。それも自然を装って痕跡を残さない、ステルス爆弾。物によっては火炎効果もある。」
「え。」
まさか、レモン飴の復讐……?だとすると、シードロヴァ……思ったよりもハードな人間だと思った。
「じゃあ、」私は言った。「これは単なるレモン飴の復讐で、イオリは別に犯人扱いされてないってことかな……。」
「いや、まだ彼がやったとは断言出来ない。」
『速報です。ノアズから情報が届きました。』
私とイオリは赤いラジオに目を向けた。
『昨夜の爆発は住人のイオリ・アルバレスの銃の保管庫が爆発源のようです。さらにアルバレスにはアリシア・ルイーズ・メリアン殺害の容疑がかけられています。……アルバレスの母親であるメアリがノアズに連行されており、VRNの記者がその際に彼女の音声を入手しています。』
『分からない……』とメアリの声と、涙を啜る音が聞こえた。『ポストを覗いたら家からドンと音がして、その場でしゃがんだわ……。』
『ポストには何が?』
『請求書だけでした……そんな、こんなことになるなんて。』
『以上です。ここからは専門家に話を伺いましょう。保管していた銃が勝手に爆発する事ってあり得るのでしょうか?』『うーん、無いとも言えないが』
イオリがラジオを消した。そして悲しげに空を見つめた。
「ポスト……。」
「ああ……少し気にはなっていた。どうしてリアのIDを俺の自宅に届けると言ったのか。本当は……彼はIDを作っていなかったんだ。レモン飴にも気付いていた。ポストが起爆トリガーだったのだろう。本当は帰宅して、俺が開けて、メアリが巻き込まれていたかもしれない。あいつは……本当に、やってくれた。」
「ごめんねイオリ。私がいけなかった。」
イオリは微かに首を振った。
「いや、リアは気にするな。……少し、疲れが……ああ、寝たい。」
「うん、横になって。何か飲む?」
「いい。」
イオリが横になったので、私は乱れたタオルケットを掛け直してあげた。窓から眩しい光が差し込んで彼に当たっていた。私は窓のサンシェードを下ろした。
その木製の日除けに朝日が当たり、ベッドルームに温かいブラウンの空間が広がった。イオリは目を閉じている。
ベッドルームはマットで床が見えないほどの狭さで、マットは真四角だ。イオリにとっては少し幅が足りないようで、彼は足を曲げて寝ている。
ラジオを持って、私はベッドルームから出て、扉変わりのカーテンを閉めた。ラジオは元の棚に戻した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる