星空に恋するハッピーゴースト

meishino

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72 イオリの真価

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 その倉庫の入り口にはオリオンカンパニーの人間と思われるスーツ姿でライフルを持っている人物が数名立っていた。

 私とイオリが車から降りると、彼らは我々に向かってお辞儀をした。そうされる度に、なんか本当に幹部っぽくなったなと、いつも思う。

 車は去っていき、イオリと私は倉庫内に入った。ドラム缶や段ボールの積まれた倉庫で、奥には地下への階段があった。そこをイオリと降りた。

 イオリの革靴と私のヒールの音が鉄製の階段に当たる音が響いている。土と埃の匂いの中、我々は何も話さなかった。

 地下に降りると通路が薄暗く、黄色い照明で照らされていた。奥から人の話す声が聞こえていて、その中にオリオン様の声も混じっている。

 通路には鉄製の棚と、ペンキの塗料の缶が積まれていた。塗装系の倉庫なのかなと思った。

 ふとイオリが立ち止まった。

「アリシア、銃を持っているか?」

 私は背中のリュックを手で探って、中にイオリの銃が入っているのを確かめた。

「あるよ、ちゃんと持ってる。でも今日は使わないと思うけど。」

「……念のためだ。何が起こるか分からない。パルムシティの時のように誰かが責め込んでくる可能性もある。魔法が強力であれば良かったが。」

「魔法はもう使えないかも、」私は残念な声を出した。「銃の方が少ないエネルギーで高威力だもん。魔法で防御壁作っても、すぐに壊される。」

「そうだな。俺の闇魔法もくだらない威力だ。」

「私の氷も、ジュース冷やすにはちょうどいい。」

 はは、ふふ、と二人で笑いながら奥の方へと歩いた。突き当たりを曲がるとオリオン様ともう一人見かけないサングラスの男が、パイプ椅子に座っていて、二人がこちらを見た。

「よく来たイオリ。おはよう。昨日は眠れたか?」

 オリオン様は深く座ったままイオリに聞いた。イオリは一度頭を下げて、それから答えた。

「おはようございます。少し眠れました。……シードロヴァの秘書はどちらに?」

 オリオン様が顎で隣を示した。見ると、ワイヤーが入った防弾ガラスの部屋があって、その中は天井からの白いライトで明るく照らされていた。

 その真ん中にポツンと、手と足をロープで縛られた男性が、他には何もない部屋でパイプ椅子に座って、じっとどこかを睨んでいた。

 ……なんかすごい状態だ。坊主頭で、目が大きい中肉中背の人で、肩幅が広いせいで着てる黄色いTシャツがぴっちりしてる男の人だった。

 すぐそこにはドアもあって、そこから中に入れる。オリオン様が説明をした。

「それはマジックミラーになっていて、向こうからこちらは見れない。彼とは是非ともカジノ島の話をしたい。ノアズからこちらに移れば、それなりの地位を保証すると提案したが、彼は一言も話そうとしない。まだ痛めつけはしていない。それはお前の出方次第だ。」

「承知しました。一応、彼と話をします……。」

 イオリは首を回してコキコキ鳴らしてから、部屋のドアを開けて中に入った。内部にはマイクが設置されているようで、オリオン様が持っている子機のスピーカーからバタンと扉の閉まる音が聞こえた。

 イオリを見て、捕虜の人物が目を丸くした。イオリは『あ、そうだ。』と言って、一度こちらに戻ってくると、壁に立てかけられているパイプ椅子を持って、再び中に急ぎ足で戻って行った。

「ヘヘッ、カウンセリングでもするんですかね?」

 サングラスの男が面白そうに言うと、オリオン様が「まあ見ておけ。」と言った。

 イオリは縛られた男性の正面ではなく、彼の隣に椅子を置いて座った。話しにくそうなのに、どうしてなんだろう。

『久しぶりだな、レイモンド。俺を覚えているか?』

 イオリの問いかけに、レイモンドという人物はじっとイオリを見ているだけだった。でもイオリは微笑んだ。

『なるほど、覚えていてくれて嬉しい。さて聞きたいのだが、『久しぶり、アルバレス捜査官。俺はノアズに帰りたい。……あとはもう話さない。』

 レイモンドの声がスピーカーから響いた。イオリは一瞬驚いた顔をしてから微笑んだ。

『それでもいい、話さなくても結構だが、折角なので使わせてもらう。シードロヴァが持っているカジノ島の権利書をFOCは必要としている。そしてそれは現在ノアズの銀行にある。そうだったな?』

『……。』

 レイモンドは話さない。しかしイオリは彼の顔を横から真剣に見つめて、小さく頷いた。

『そうか。ここから先は俺も知らない。ノアズの銀行はたくさんあるが、シードロヴァの口座があるのはどこだ?ヴィノクールの本店か?それとも本社か?』

『……。』

『本社の方か。意外だ。』

 レイモンドは目をカッと見開いた。図星を言われて驚いたみたいだった。オリオン様とサングラス男も、身を乗り出して夢中になって二人を見つめている。

『パスコードを知っているだろう?……うん、なるほど、知っているんだな。』

『アルバレス!』急にレイモンドが叫んだ。汗が額からだらだら流れている。『俺を殺す気か!?この場で殺されなくても、戻った途端にシードロヴァ様に殺される!お前はなんなんだ!?何故オリオンカンパニーに手を貸している!?ノアズに入った時の正義の心は、どこに行った!?』

 イオリは黙って、レイモンドをじっと見つめた。レイモンドは続けた。

『お前のその力は噂で聞いていたよりもすごいと思ってる。お前には能力がある。だから事情を話せばすぐにノアズに戻れるはずだ!指名手配されたからとは言え、どうしてこの組織の方がいいんだ?事情を話せばきっと上官だって……!』

『彼は俺の家を燃やした、俺の容疑を否定した後でな。今のパートナーがいなければ、俺はとっくにノアズに捕まり、実験台にでもされていただろう。普通の罪ではない。アリシア殺人の罪と、彼の発明品の盗難の両方がある。』

『えっ!?上官の発明品の盗難をしたのか……どの発明だ?』

『……俺のパートナーがやった。しかし俺も加担していた。止めなかった。どの発明?それ以上はいいだろう。兎に角、俺はここが居場所だと思っている。綱渡りのような毎日だが、陽だまりもある。さて、話を戻そう。』イオリが座り直した。『権利書を、レイモンドが持ち出すことは可能か?』

『なっ……!』レイモンドは首を振った。激しく振った。わざとらしかったけど、イオリはうーんと唸った。

『それでは、権利書の口座のパスコードを知っているか?』

『知らない……本当に知らない!』

『俺に関する文字か?』

『……知らないんだって!』

『違うな。では、シードロヴァ本人や、例えば家族に関する文字か?』

『アルバレス!』

『違うときたか。』

 イオリは思案顔になった。さっきからイオリはすごい。どうして相手の本心が分かるんだろう。オリオン様も同じことを思ってるのか、イオリとレイモンドを交互に真剣に見入っている。

 イオリはパンと手を叩いた。
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