星空に恋するハッピーゴースト

meishino

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88 尾行調査

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 それから二日後、夜のトレーラーハウスの中で、イオリがご機嫌で野菜スープを煮込み始めた。

 前回のミッションの件で、我々の評判はFCOの中で硬いものとなった。オリオン様は喜ぶし、バリーは発狂するし、サラは……相変わらず毎日イオリに鬼電している。

 バリーが苛立っているので流石に少し彼女が心配になってきた。イオリも同じな様で、たまに電話に出ては、サラの不安な気持ちを受け止めている。そのこと自体がバリーにバレなきゃいいけどと思う。

 ラジオのニュースでは謎の連続不審死のことで持ちきりだった。シードロヴァは絶対にレモン飴が使われたことを知っている。でもノアズは原因が分からないと言っているあたり、シードロヴァはまだ内密にしてるっぽい。

 そのことでもイオリは悩んでいる気がする。その話題になると一瞬で節目がちになるのに、私がシードロヴァのことが気になるのか聞くと、彼は違う!あんな奴!と否定する。

 そんな日々を過ごして、今日、何故伊織の機嫌がいいかと言うと、レイヴの誕生日だからだ。レイヴがここにくる予定で、久々の軽い集まりに心を踊らせている。

 ヤギさんとエミリは先約があるみたいなので、レイヴが一人で来る予定なんだけど、約束は八時。今は八時二十分なのでちょっと遅い。

 小さなテーブルには彼が作ったレイヴの好きなチキンソテーやスペアリブ、お店で買ったピザが置いてある。レイヴの到着が遅いので、ついでに野菜スープを彼が作り始めたのだ。

「それにしてもまだ来ないとは。この場所は正確に伝えたか?」

 彼が背を向けて鍋をかき回しながら私に聞いた。私はソファに座りながら、ノアフォンをポケットから取り出して、問いに答えた。

「ちゃんと伝えたよ。バイスメインストリートの海岸公園の脇の灯台の近くの岩場って。」

「ややこしい伝え方だな……。」

「じゃあ何て言えばよかった?」

「だから、バイスストリート海岸公園の脇の灯台の……近くの岩場だな、それしかないか、はは。」

「ふふ、ほらね。」

 私はスピーカーでレイヴに電話をかけた。丁度スープが出来上がったみたいで、イオリがコンロの電気をオフにして、こちらに体を向けた。

 何回か呼び出し音が鳴った後に、繋がった。

『おうおうおうお疲れちゃす!』

「今どこにいる「遅い!貴様、俺を待たせるとは大した度胸だ!」

 なんかイオリに割り込まれた……。

『違うんだよ!やばいの!あのね今、尾行してんの!』

「え?」私とイオリは目を合わせた。そしてイオリが聞いた。

「今日仕事が入ったのか?」

『違う違う、プライベートの尾行だよー。やばい、これはやばすぎるよ兄ちゃん。』

「何がやばいんだ?」

『俺がさー、今日そっち行くからって自分の部屋で洋服選んでだらさー、母ちゃんがちょっと出かけてくるって言うんだよ。出かけるのは知ってたから、軽く振り返って気をつけなよーって言ったの。で、二度見した。だっていつもトレーナーにジーンズなのに、ワンピース来てんだぜ!?いやいや何いい歳こいて生足見せてんだよ!カーディガン羽織ってたのが唯一の救いというか、違うか。いやいやいや……。』

 イオリが私のノアフォンを持って、若干表情を歪めながら聞いた。

「それで今エミリを尾行しているのか?彼女がデートに?」

『あの格好だよ?デートに決まってるだろ!唇には赤いルージュだぞ!相手も分かってる。いやこれ、イオリには言わないでって言われてたんだけど……。』

「誰だ!?言え!まさかヤギ!?」

『ヤギじゃねえよ。あいつは普通に母ちゃんと仲良いけど、それは友達として割り切ってるみたいだしなー。あいつらは植物フレンドだから、それ以上にはならないっぽい。最近さ、母ちゃんどこかに出かけること増えたんだよ。』

「しかし、エミリだけで外に出るのは危険だろう?強盗の件で、指名手配されている。」

『だからー!俺も一緒に行こうか?って聞いたの。聞く度に、大丈夫だからって断られてさー。あ……やっぱここだったか。』

 私は聞いた。

「今どこにいるの?」

『母ちゃんの相手の家の前。ついでに言うと、超気持ち悪い。』

「相手は誰だ?」イオリが聞いた。

『……あー……だからさ、いやいやいや……あーもうじゃあ言うね、もう半分そうかなって思ってたけど、言うわ。相手はオリオン様。』

「ぶーーーーー……!」

 私は吹いた。イオリは胃でも激しく痛み出したのか、腹を抑えて苦しみ悶える顔をした。

『いやー、そんな気してたんだよなー。じゃなかったら母ちゃん一人で出ていかないよねー?普通に一人でオリオン様の部屋に入って行ったもん、たった今、顔パスで。』

 イオリは白目を剥きそうになりながら言葉をこぼした。

「嘘だろ……オアアアアア!」

『いやいやいや!俺よりお前だかんな!?どんなバースデープレゼントだよオアアアア!』

 悶え方が兄弟で一緒だ。ちょっと笑った。でも彼らからしたらお母さんなのだし、そうだよね、オリオン様と、そうかぁ……私も私で、地味に衝撃がすごい。

「ああ。」私はあることを思い出した。「だから、オリオン様の部屋のキッチンにアロエがあったんだ。以前は無かった。」

『あー俺も一度お部屋に行った時にそれ見たわ、うわうわー!あれ母ちゃんのっぽい。と言うことで、もうここからは俺はやることねえし、今からそっち行くわ……なんか今のは忘れて、三人で盛り上がろ!?ね!』

「あ、ああ……気を付けてな……。」

 イオリが目を閉じたままそう呟いた。それからレイヴはここに来るまでずっと通話をオンにしたままだった。テーブルに置かれた私のノアフォンからは、ずっと彼のトークが聞こえていた。

 イオリはソファにうつ伏せになったまま、「ぬおお……ぬおお……」と呻くのを繰り返していた。私はそんな彼の背中をさすっていた。
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