星空に恋するハッピーゴースト

meishino

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90 謎の行動

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  今日はイオリが密かにサラに会いに行く日だ。この日の朝、トレーラーまで迎えに来たレイヴと一緒に、私はヴィノクールの郊外まで車で向かった。

 時刻は夜の八時。しかもヴィノクールといえば完全にノアズのテリトリーなので、ちょっと不安げに私は車から降りた。

 雨が降っていて、駐車場のレンガに綺麗な薄い水鏡を作り上げていた。街灯が綺麗だった。レイヴはパーカーのフードを被って、背中を丸くして走り始めた。

 私は姿を消して、彼について行った。時々彼は「ついて来てる?」と私に聞いたので、「一緒だよ」と答えた。駐車場には他にも人がいて、彼らはレイヴが独り言をしてると思い、怪訝な視線を彼に送っていた。

 今日は実は、犯人はティーカップの中の第十話の日だ。私の予想では彼の会いたい人はトロピカルバイスにいるとばかり思っていたので、このヴィノクールへの移動は予想外だった。

 でも大丈夫だ、放送まであと一時間ある。その間にレイヴが誰かと会って、私はその近くで姿を消して待機しながらドラマを見ればいい。

 レンガ道の商店街を彼と走った。その通りは年中人がたくさんいて、雨なのに傘もささずに露天の店員さんが声を張ってお客さんを呼んでいる。賑わいが、眩しかった。

 そして今日、イオリはサラに会っているけど、もしかしたらバリーの作戦かもしれないので、念の為ダニーも一緒だ。でもさっきイオリからこんなメッセージが来ていた。

__________________
少し食事をする。
彼女痩せたようだ。
心配ない、
食事をしたら
すぐに帰る。
伊織
__________________

 ……。

 会うだけでなく一緒に食事するのね。何が心配ないんだろう、普通元カノと食事……まあダニーがいるからいいのかもしれないけど。なんて、私は変なヤキモチを胸に発生させている。くだらない生き物だ。

 レイヴが急に進路変更をして裏路地へと入ったので、私も角を曲がって裏路地に入った。大通りの明るさが嘘だったみたいに、暗い、青白い街灯がやけに浮いている路地だった。

 ビルのドアの前に、二、三人の不良っぽい男達が屯っていた。彼らはレイヴを見てヘラヘラ笑ったが、彼らの一人がレイヴの腕のタトゥーを見ると、それを皆に伝えて、慌てて視線を逸らした。

 ああ言うやんちゃそうな人間でも、FOCの人間には関わりたくないんだなと思った。レイヴはそんなことがあったのも知らないまま、首にかけていた暗視ゴーグルを顔につけてから、奥のビルのドアを開けて中に入った。

 何も見えない闇の部屋だ。でもゴーストの視線で目を凝らすと、ロッカーがあった。錆びたロッカーで、それが床に仰向けになって倒れていて、周りには瓦礫が散らばっている。

 ロッカーは扉が二つ取れていた。まだ残ってる方にレイヴが手を伸ばして、中から黒いバッグを取り出した。

「何するの?」

「ん?会いに行く。忘れたの?」

 忘れてないけど、この行為がそれっぽくないから聞いたんだけど……と思いつつ、レイヴがバッグの中から手袋を出して嵌めたり、プロテクターを肘や膝に装着しているのを見つめていた。

 その時にブーっと私のノアフォンが鳴った。レイヴが慌てた様子で私に言った。

「それ、サイレントにしておいて。ってか、出来れば切ってほしいんだけど、電源。」

「え?じゃあちょっとこれ確認してからね。」

「うん。もうこっちは準備できてるから、早く。」

 何の準備なんだよ……と思いながら、私は急いでノアフォンを見た。イオリからだった。さっきの返事してないのに、彼がまた送ってきた。

__________________
そっちはどうだ?
俺が聞かないと
返事なしか?
少し、寂しい。
でも好きだよ。
伊織
__________________

 フヘッ、

 私はニヤッとした。そしてスクショした。このメッセージアプリはスクショすると相手に伝わるので、それはイオリに伝わっただろう。

「ねえ、もう行こう。時間がない!」

「え!え!分かった。返事したいけど……。」

「いやそれは後でいくらでも出来るから!いこいこ!」

 私は返事はせずに電源をオフにした。バッグに入っていたのか、いつの間にかレイヴがサイレンサー付きのハンドガンを腰のベルトに挟んでいた。

 ……明らかに誰かをやろうとしてない?私は苦笑いしつつ彼について行った。

 レイヴはビルの廊下に出ると、闇に包まれた階段を躊躇せずに素早く降りた。私もついて行った。同業者のいる気配がするけど、気にしないことにした。

 レイヴより怖がってどうすんの……私は階段を降り続けているレイヴの背中に飛び乗ることにした。彼にしがみついていれば後は自然に目的地に着くはず。

「ねー、俺の背中にいるだろ?寒っ」

「ごめん、だってなんか雰囲気が無理。」

「まあ確かに暗いよねーあっはっは、でも俺の背中にいるのがリアちゃんで良かった。よし一気に行くぞ!」

「どこに行くの?」

「……。」

 なんで答えないの?レイヴは一番地下に着くと錆びた鉄の扉を開けた。すると向こうから電灯の光がドアから漏れた。向こうは電気がついてる、それでも暗いけど。

 私は走っているレイヴの背中にまだしがみついている。ネズミ達が彼のせいで逃げていくのが見えた。配管、バルブ、彼がもう一度ドアを開けると、真ん中の大きな溝には濁った水が流れていた。どうやらここは下水道だ。

「オエッ!こっちからは無理か!」

 彼は今のドアを閉めた。確かに空気がちょっとね……。レイヴは方向転換をして、錆びた通路を走り始めた。

 彼はどうやら南の方へ向かってるみたいだ。南の方にあるのは高級住宅街や大通り広場、ノアズの本拠点だけど、まさか一人でノアズに乗り込むわけはないよね。

「ねえレイヴ、どこにいくの?」

「近くに行ったら話す。」

 ああそう……。どこに行くのか予想をしながら、私はずっとレイヴの背中にしがみついていた。
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