90 / 127
90 謎の行動
しおりを挟む
今日はイオリが密かにサラに会いに行く日だ。この日の朝、トレーラーまで迎えに来たレイヴと一緒に、私はヴィノクールの郊外まで車で向かった。
時刻は夜の八時。しかもヴィノクールといえば完全にノアズのテリトリーなので、ちょっと不安げに私は車から降りた。
雨が降っていて、駐車場のレンガに綺麗な薄い水鏡を作り上げていた。街灯が綺麗だった。レイヴはパーカーのフードを被って、背中を丸くして走り始めた。
私は姿を消して、彼について行った。時々彼は「ついて来てる?」と私に聞いたので、「一緒だよ」と答えた。駐車場には他にも人がいて、彼らはレイヴが独り言をしてると思い、怪訝な視線を彼に送っていた。
今日は実は、犯人はティーカップの中の第十話の日だ。私の予想では彼の会いたい人はトロピカルバイスにいるとばかり思っていたので、このヴィノクールへの移動は予想外だった。
でも大丈夫だ、放送まであと一時間ある。その間にレイヴが誰かと会って、私はその近くで姿を消して待機しながらドラマを見ればいい。
レンガ道の商店街を彼と走った。その通りは年中人がたくさんいて、雨なのに傘もささずに露天の店員さんが声を張ってお客さんを呼んでいる。賑わいが、眩しかった。
そして今日、イオリはサラに会っているけど、もしかしたらバリーの作戦かもしれないので、念の為ダニーも一緒だ。でもさっきイオリからこんなメッセージが来ていた。
__________________
少し食事をする。
彼女痩せたようだ。
心配ない、
食事をしたら
すぐに帰る。
伊織
__________________
……。
会うだけでなく一緒に食事するのね。何が心配ないんだろう、普通元カノと食事……まあダニーがいるからいいのかもしれないけど。なんて、私は変なヤキモチを胸に発生させている。くだらない生き物だ。
レイヴが急に進路変更をして裏路地へと入ったので、私も角を曲がって裏路地に入った。大通りの明るさが嘘だったみたいに、暗い、青白い街灯がやけに浮いている路地だった。
ビルのドアの前に、二、三人の不良っぽい男達が屯っていた。彼らはレイヴを見てヘラヘラ笑ったが、彼らの一人がレイヴの腕のタトゥーを見ると、それを皆に伝えて、慌てて視線を逸らした。
ああ言うやんちゃそうな人間でも、FOCの人間には関わりたくないんだなと思った。レイヴはそんなことがあったのも知らないまま、首にかけていた暗視ゴーグルを顔につけてから、奥のビルのドアを開けて中に入った。
何も見えない闇の部屋だ。でもゴーストの視線で目を凝らすと、ロッカーがあった。錆びたロッカーで、それが床に仰向けになって倒れていて、周りには瓦礫が散らばっている。
ロッカーは扉が二つ取れていた。まだ残ってる方にレイヴが手を伸ばして、中から黒いバッグを取り出した。
「何するの?」
「ん?会いに行く。忘れたの?」
忘れてないけど、この行為がそれっぽくないから聞いたんだけど……と思いつつ、レイヴがバッグの中から手袋を出して嵌めたり、プロテクターを肘や膝に装着しているのを見つめていた。
その時にブーっと私のノアフォンが鳴った。レイヴが慌てた様子で私に言った。
「それ、サイレントにしておいて。ってか、出来れば切ってほしいんだけど、電源。」
「え?じゃあちょっとこれ確認してからね。」
「うん。もうこっちは準備できてるから、早く。」
何の準備なんだよ……と思いながら、私は急いでノアフォンを見た。イオリからだった。さっきの返事してないのに、彼がまた送ってきた。
__________________
そっちはどうだ?
俺が聞かないと
返事なしか?
少し、寂しい。
でも好きだよ。
伊織
__________________
フヘッ、
私はニヤッとした。そしてスクショした。このメッセージアプリはスクショすると相手に伝わるので、それはイオリに伝わっただろう。
「ねえ、もう行こう。時間がない!」
「え!え!分かった。返事したいけど……。」
「いやそれは後でいくらでも出来るから!いこいこ!」
私は返事はせずに電源をオフにした。バッグに入っていたのか、いつの間にかレイヴがサイレンサー付きのハンドガンを腰のベルトに挟んでいた。
……明らかに誰かをやろうとしてない?私は苦笑いしつつ彼について行った。
レイヴはビルの廊下に出ると、闇に包まれた階段を躊躇せずに素早く降りた。私もついて行った。同業者のいる気配がするけど、気にしないことにした。
レイヴより怖がってどうすんの……私は階段を降り続けているレイヴの背中に飛び乗ることにした。彼にしがみついていれば後は自然に目的地に着くはず。
「ねー、俺の背中にいるだろ?寒っ」
「ごめん、だってなんか雰囲気が無理。」
「まあ確かに暗いよねーあっはっは、でも俺の背中にいるのがリアちゃんで良かった。よし一気に行くぞ!」
「どこに行くの?」
「……。」
なんで答えないの?レイヴは一番地下に着くと錆びた鉄の扉を開けた。すると向こうから電灯の光がドアから漏れた。向こうは電気がついてる、それでも暗いけど。
私は走っているレイヴの背中にまだしがみついている。ネズミ達が彼のせいで逃げていくのが見えた。配管、バルブ、彼がもう一度ドアを開けると、真ん中の大きな溝には濁った水が流れていた。どうやらここは下水道だ。
「オエッ!こっちからは無理か!」
彼は今のドアを閉めた。確かに空気がちょっとね……。レイヴは方向転換をして、錆びた通路を走り始めた。
彼はどうやら南の方へ向かってるみたいだ。南の方にあるのは高級住宅街や大通り広場、ノアズの本拠点だけど、まさか一人でノアズに乗り込むわけはないよね。
「ねえレイヴ、どこにいくの?」
「近くに行ったら話す。」
ああそう……。どこに行くのか予想をしながら、私はずっとレイヴの背中にしがみついていた。
時刻は夜の八時。しかもヴィノクールといえば完全にノアズのテリトリーなので、ちょっと不安げに私は車から降りた。
雨が降っていて、駐車場のレンガに綺麗な薄い水鏡を作り上げていた。街灯が綺麗だった。レイヴはパーカーのフードを被って、背中を丸くして走り始めた。
私は姿を消して、彼について行った。時々彼は「ついて来てる?」と私に聞いたので、「一緒だよ」と答えた。駐車場には他にも人がいて、彼らはレイヴが独り言をしてると思い、怪訝な視線を彼に送っていた。
今日は実は、犯人はティーカップの中の第十話の日だ。私の予想では彼の会いたい人はトロピカルバイスにいるとばかり思っていたので、このヴィノクールへの移動は予想外だった。
でも大丈夫だ、放送まであと一時間ある。その間にレイヴが誰かと会って、私はその近くで姿を消して待機しながらドラマを見ればいい。
レンガ道の商店街を彼と走った。その通りは年中人がたくさんいて、雨なのに傘もささずに露天の店員さんが声を張ってお客さんを呼んでいる。賑わいが、眩しかった。
そして今日、イオリはサラに会っているけど、もしかしたらバリーの作戦かもしれないので、念の為ダニーも一緒だ。でもさっきイオリからこんなメッセージが来ていた。
__________________
少し食事をする。
彼女痩せたようだ。
心配ない、
食事をしたら
すぐに帰る。
伊織
__________________
……。
会うだけでなく一緒に食事するのね。何が心配ないんだろう、普通元カノと食事……まあダニーがいるからいいのかもしれないけど。なんて、私は変なヤキモチを胸に発生させている。くだらない生き物だ。
レイヴが急に進路変更をして裏路地へと入ったので、私も角を曲がって裏路地に入った。大通りの明るさが嘘だったみたいに、暗い、青白い街灯がやけに浮いている路地だった。
ビルのドアの前に、二、三人の不良っぽい男達が屯っていた。彼らはレイヴを見てヘラヘラ笑ったが、彼らの一人がレイヴの腕のタトゥーを見ると、それを皆に伝えて、慌てて視線を逸らした。
ああ言うやんちゃそうな人間でも、FOCの人間には関わりたくないんだなと思った。レイヴはそんなことがあったのも知らないまま、首にかけていた暗視ゴーグルを顔につけてから、奥のビルのドアを開けて中に入った。
何も見えない闇の部屋だ。でもゴーストの視線で目を凝らすと、ロッカーがあった。錆びたロッカーで、それが床に仰向けになって倒れていて、周りには瓦礫が散らばっている。
ロッカーは扉が二つ取れていた。まだ残ってる方にレイヴが手を伸ばして、中から黒いバッグを取り出した。
「何するの?」
「ん?会いに行く。忘れたの?」
忘れてないけど、この行為がそれっぽくないから聞いたんだけど……と思いつつ、レイヴがバッグの中から手袋を出して嵌めたり、プロテクターを肘や膝に装着しているのを見つめていた。
その時にブーっと私のノアフォンが鳴った。レイヴが慌てた様子で私に言った。
「それ、サイレントにしておいて。ってか、出来れば切ってほしいんだけど、電源。」
「え?じゃあちょっとこれ確認してからね。」
「うん。もうこっちは準備できてるから、早く。」
何の準備なんだよ……と思いながら、私は急いでノアフォンを見た。イオリからだった。さっきの返事してないのに、彼がまた送ってきた。
__________________
そっちはどうだ?
俺が聞かないと
返事なしか?
少し、寂しい。
でも好きだよ。
伊織
__________________
フヘッ、
私はニヤッとした。そしてスクショした。このメッセージアプリはスクショすると相手に伝わるので、それはイオリに伝わっただろう。
「ねえ、もう行こう。時間がない!」
「え!え!分かった。返事したいけど……。」
「いやそれは後でいくらでも出来るから!いこいこ!」
私は返事はせずに電源をオフにした。バッグに入っていたのか、いつの間にかレイヴがサイレンサー付きのハンドガンを腰のベルトに挟んでいた。
……明らかに誰かをやろうとしてない?私は苦笑いしつつ彼について行った。
レイヴはビルの廊下に出ると、闇に包まれた階段を躊躇せずに素早く降りた。私もついて行った。同業者のいる気配がするけど、気にしないことにした。
レイヴより怖がってどうすんの……私は階段を降り続けているレイヴの背中に飛び乗ることにした。彼にしがみついていれば後は自然に目的地に着くはず。
「ねー、俺の背中にいるだろ?寒っ」
「ごめん、だってなんか雰囲気が無理。」
「まあ確かに暗いよねーあっはっは、でも俺の背中にいるのがリアちゃんで良かった。よし一気に行くぞ!」
「どこに行くの?」
「……。」
なんで答えないの?レイヴは一番地下に着くと錆びた鉄の扉を開けた。すると向こうから電灯の光がドアから漏れた。向こうは電気がついてる、それでも暗いけど。
私は走っているレイヴの背中にまだしがみついている。ネズミ達が彼のせいで逃げていくのが見えた。配管、バルブ、彼がもう一度ドアを開けると、真ん中の大きな溝には濁った水が流れていた。どうやらここは下水道だ。
「オエッ!こっちからは無理か!」
彼は今のドアを閉めた。確かに空気がちょっとね……。レイヴは方向転換をして、錆びた通路を走り始めた。
彼はどうやら南の方へ向かってるみたいだ。南の方にあるのは高級住宅街や大通り広場、ノアズの本拠点だけど、まさか一人でノアズに乗り込むわけはないよね。
「ねえレイヴ、どこにいくの?」
「近くに行ったら話す。」
ああそう……。どこに行くのか予想をしながら、私はずっとレイヴの背中にしがみついていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる