星空に恋するハッピーゴースト

meishino

文字の大きさ
114 / 127

114 倉庫の事務室で

しおりを挟む
 車がボトボト落ちてくる地獄から脱出した我々は、人気のない近くの倉庫の事務室へと入って、そこで待機をした。そこには小さな冷蔵庫があって、中には炭酸ジュースが入っていたので、それをイオリ、レイヴ、ダニーがたらい回しに飲んだ。

 私はいらないって言ったけど、イオリがくれた。しかもダニーとレイヴが見てるのに口移しで飲ませてくれた。口移しのついでに、彼は私に舌が絡むキスをくれた。顎を押さえられて、すごい激しかった。

「……もしもし?」

 レイヴの一言でそれは終了した。我々は気を取り直して、その場で軽く装備を装着し直した。イオリがフォレスト大佐に通信を入れると、彼女が答えた。

『アルバレスの現在地を確認した。その場所はまだボードンFOCが支配しているから、合流するのに時間がかかる。よくそこまで突っ込めたな……。』

「敵は空を飛んでいくクイーンに気を取られていましたから。」

『本当、我らの最高指揮官は空を飛んでどこへ行ったことやら。まあそういう状況だから、我々の部隊がそちらに行くまで、その場で静かに待機していてくれ。』

「了解しました。」

 ここで待ってることになった。いつまでだろう、結構長い間ここにいることになりそう。でもみんなヘトヘトみたいで、レイヴを始めに、床に寝そべり始めた。

 イオリも床に寝転がったので、私は彼の隣で寝転んだ。後ろから抱きつかれた。彼の大きな手をぎゅっと抱きしめた。

 レイヴと目が合った。

「あの時さ、俺のこと助けてくれたよな?飛んできた弾丸を撃ち落とすなんてさ、やっぱリアちゃんはすごいよ。」

「そうかな、ありがとう。無事で良かった。」

「……この戦いが終わったらさ、あと数日しか一緒に居られないし、思い出残したいな。例えばラップを一緒に歌うとか。」

「えー私がコーラスするの?」

「だね。」

 何それ。私は少し笑った。ダニーも笑っていた。すると背後から声が聞こえた。

「……時間が無いのだから、レイヴは遠慮しろ。この戦いが終わったら、俺はアリシアと二人で引きこもるからな。その辺のアパートを借りて。」

「えー俺は?」

「引き続きトレーラーで暮らせ。」

「はあ!?なんでよ!ノアズ職員の中でトレーラー住まいがいると思ってんのかよばーか。」

「お前が歴史を作るんだ、光栄だとは思わないか?」

「…………一瞬喜んだだろ!ふざけんな!」

 レイヴの発言に私とダニーが同時に笑った。そしてその時に、イオリのノアフォンがブーブー震えた。フォレスト大佐からだった。

『アルバレス、因みにイルザ様の護衛は誰だった?彼女の名前は聞いたか?』

「いえ、知りません。名前も……申し訳ない。」

『いや、そうか。どうやらその護衛が、車を撃ち落としてハロルドをやったようだ。計算してなのか、そこまでは分からんが。そうか、ならばあとでイルザ様にその者が誰なのか確認をして礼を……。あと、不思議なことがあった。』

「不思議というのは?」

『その者はノアズ内で魔術を放った。イルザ様がスナイパーで狙われていたようで、その者が救った形だ。魔術をノアズ内で放てば履歴が残る。そうだろう?』

「それは、その通りですが。」

『……しかし履歴が残らなかった。』

 それを聞いたイオリがばっと体を起こした。

「ばかな!確かに魔術を?」

『ああ、カメラに映っていた。しかしどこにもそれらしい履歴がない。アンノーン属性などあり得るのか?それかもしやイルザ様が作ったロボットとか。』

「そんな、SF映画ではないのですから。」

『……まあ、そういうことだ。兎に角ハロルドは死んだ。礼をアンノーンに言いたいが、イルザ様と何処かへ消えた。二人のスポーツカーは追跡されないようにしてあるから、どこに行ったのか分からずにとても不安ではあるが、レイモンドが必ず戻ると言っているから、信じることにしよう。』

「余談ですが大佐、レイモンドが彼女の夫であることを知っていましたか?」

『……知っていたよ。FOCに捕虜として奪われた時は、背筋が凍るかと思った。まあお前には世話になったな。あれでもしレイモンドがオリオンに殺されていたら、イルザ様は悲しんだだろうから。』

「いえ。」

『ああそうだ、バリー、それからハロルドが消えたことで、ボードンFOCのトップがカタリーナになった。厄介なことだ、シードロヴァ様の妻だからな。取り敢えず捕まえることを目指すけれど。』

「そうですね、後の処遇は難しいかもしれませんが、ボードンFOCはこの戦いで消す必要がある。それがノアズの為です。」

『お前が戻ってきてくれて良かった。あと願わくば、イルザ様にもなる早で戻ってきて欲しい……ははっ、それでは。』

 通信が切れた。イオリがノアフォンを消すとそれを床に置いて、また私を後ろからぎゅっと抱きしめた。

「てかさー」レイヴが私とじっと見つめたまま言った。「ラズベリーはショックかな。お父ちゃん、車にさ。」

 私は答えた。

「本人に聞けば?この戦いが終わったら。」

「まあ確かにそうだよなー。俺がラズベリーを心配してどうすんのってことだしなー。てかハロルドは俺を殺そうとしたしなー。でもそれは俺があの人を殺そうとしたからだしなー。なんかもうよく分からねえ。」

「確かにすごく複雑だね。」

「うん。俺ちょっと眠いから、何かあったら起こして?」

 そう言ったレイヴは、我々に背を向けて体を丸めた。よくこの状況で眠れるなと思った。すごいタフな精神してる。

 私は寝返りをうった。至近距離でイオリと目が合った。

「何だ?」

「いや、別に。目が合うなと思って。」

「……相変わらず綺麗な瞳だ。俺は色彩に詳しくないからその色を調べてみたんだ。アズールブルーという名前の色らしい。」

「そうなんだ。イオリの瞳は夜空の色だよ。」

「そうか、はは。気に入ったか?」

「気に入ってる。」

 彼が優しく微笑んで、私の顎に手を添えて、キスをしようとしたその時に、背後から「んんえええフッん!」と、大きめの咳払いが聞こえてきた。

 振り返るとレイヴが背を向けたまま、鼻を擦っていた。もう一度イオリの方を見て、静かに、軽くキスをした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...